クラフトバンクの「地域事業本部」は、全国7エリアに根ざし、各地の建設業の経営に伴走する組織です。
本部長を務めるのは、青森出身、入社4年目・29歳の高橋さん。毎年ねぶた祭りの時期になると、海外出身の友人たちを連れて地元に帰るのだそうです。時には10人以上をアテンドしながら帰省することもあるとか。
理由を尋ねると、「恩返しと、地元を知ってほしい気持ちと……あと半分は、義務感ですね(笑)」と語る高橋さん。その「義務感」の正体をたどっていくと、クラフトバンクが地域に根ざし、建設業を支援する、本質的な理由が見えてきました。
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地元の価値を教えてくれたのは、海外の「日本フェア」だった
まず、高橋さんの地元について聞かせてください。
私は1997年、青森県の田舎に生まれました。りんごは買うものじゃなくもらうものだったし、小学校ではりんごが30種類くらい印刷された下敷きが配られてたので、見て食べて品種を当てる「利きりんご」も自然とできるようになりました(笑)。
ウニやアワビが入った「いちご煮」っていうスープが郷土料理で、よく食べてたんですけど、それが贅沢なものだとは思ってませんでした。ねぶた祭りも毎年参加してましたけど「近所のお祭り」って感覚で、身近すぎてすごいと思ったことはなかったですね。
地元への見方が変わったのは、視野を広げたいという気持ちで海外に留学してからです。海外ではよく日本フェアが開かれているんですが、アニメと並んで大々的に紹介されていたのは、日本各地の名産品や特産物でした。
京都の抹茶、東北の日本酒、江戸切子に、高級包丁。愛媛みかんに、山梨のブドウ、それから青森のりんご! 日本独自の自然環境と職人技に、みんな興味津々なんですよ。
それを見て、ビジネスの中心は東京だとしても、価値の源泉は地方にあるんだと気づきました。青森のりんごの価値は、世界中に届いていた。当たり前で普通だと思っていたものは、外から見ると“誇れる資源”だったんです。
でも地元に帰ってみると、そこは「閉じた世界」でもあります。
基本的には外から来るものや新しいものに抵抗感があって、意思決定もゆっくり。だからこそ昔から変わらずに、地域で誇れる資源を保存しているという側面はあるので、良くも悪くもなんですけどね。
ただ現実には、IT化がなかなか進まず、人も資本も入ってこない。そういう土地だからこそ多くの若者は都会に憧れて出ていってしまうし、せっかくの価値を発揮しきれずにビジネスの場で取り残されてしまう傾向にあると思っています。
「外」に対して閉じた側面がある代わりに……と言ってはなんですけど、地域の「中」での結束とネットワークはものすごいです。地元が同じならたいてい1人や2人は共通の知り合いがいますし、1人からたどれば全員とつながれるんじゃないかって思います。「あいつが地元に帰ってきてるらしい」の情報はSNSなんかよりも早いですしね(笑)。
地元のためにできる、自分なりの「地方創生」
そんな地元に対して、高橋さんはどう向き合ってきましたか?
そうですねぇ。地元の持つ「海外でも通用する価値」に気づけば気づくほど、資源はあるのに活かしきれずに過疎化していく様子を見て、もどかしく思ってました。
とはいえ当時の私が地方創生に貢献できたわけではなく。お金も知識もなかったので、帰国してからはとにかく中小企業の社長に会いに行って「働かせてください!」と直談判して、仕事を手伝わせてもらって、経験値を貯めてきました。東京に拠点を持ち、起業して、ビジネスの流れもわかってきた。
その時ふと、地元と外の世界の接続は自分の役割なんじゃないかと思って。地元への課題感、東京や海外の目線、中小企業やビジネスへの解像度。そんな条件を全部持った上で地方に向き合える人材は、そう多くないと思うんですよね。
ねぶたに海外出身の友人を大勢連れて帰るのも、その延長です。地元の魅力をもっと知ってほしいし、お世話になってきた人たちへの恩返しもしたい。地元に対して私ができることの選択肢のひとつとして「海外から人を連れてくること」が入ってる感じです。
夏はねぶた祭りや自然遺産を案内するとすごく感動してもらえますし、冬は温泉に連れていくと「雪を初めて見た」「文化が面白い」と喜んでくれます。私にとっては見慣れた景色ですけど、彼らの反応を通して地元の価値を再確認させてもらっている感覚もありますね。
まあ、あと半分は正直、義務感です。地元の祭りを牽引してるのって、実は建設業の人たちが多いんです。ねぶたもそう。青森出身者として、そしてクラフトバンクで建設業を支援する人間として、顔を出さないわけにはいきません(笑)。
東北エリアのお客様にご招待いただき、メンバーでねぶた祭りを満喫!
地元の祭りの主催者は、建設業の人たちなんですか?
実は地方では、建設業界が地域の真ん中にいることが多いんです。祭りに限らず、地元のコミュニティラジオを運営しているのも建設業界の人だったり。なぜそうなるかというと、建設業界が地域を拓き(ひらき)、守る存在だからです。
拓き、というのは実はイメージしやすいかもしれません。
土地を拓いて道を作り、家や店を建てて、町にしていく動きですね。工事があれば資材が動き、職人が集まり、周りの町にも雇用と消費が生まれます。青森だと、1市区町村の求人の半分以上が建設業なんてこともあるくらいですから、地方を元気にしようと思うなら避けて通れない業界です。
一方、守る、の部分が一番わかりやすく表れるのは、災害のときかなと思います。災害救助や復興といえば自衛隊、と思うかもしれませんが、実際は地元の建設業の人たちがより早く駆けつけ、現場で継続して復興支援を行っています。
2026年7月の熊本地震のとき私はたまたま現地にいたんですが、熊本から福岡に帰る道中、建設業のトラックと何台もすれ違いました。地震が起こった瞬間から誰が何をしなくちゃいけないかわかっていて、すぐに駆けつけているんだと実感した瞬間でした。
壊れた道路を直して、人や物が行き来できるようにする。電気や水道などのインフラを繋げなおす。臨時の医療拠点や、仮設住宅を建てる。そんなふうに、救命や生活の土台となる部分を作っている建設業の方々の存在は、意外と知られていません。
日本は災害が多いからこそ、地域ごとに建設業の人たちが絶対に必要だし、この業界を衰退させちゃダメだって本気で思います。
話をまとめると、祭りを支えているのも、地元経済の中心にいるのも、被災した地域を立て直す基盤になってくれているのも、建設業の人たちなんです。
ただ、その建設業界には今、課題が山積みになっています。後継者がいない、職人が足りない、経営が苦しい。これは経営判断における順番の問題だと思うんです。腕一本で会社を立ち上げ、現場を回してきた方ほど、まず磨いてこられたのは職人としての技術。資金繰りも肌感覚でしっかり掴まれていて、だからこそ会社を伸ばしてこられた。一方で、会社が大きくなるにつれて「数字を見える形にして判断する」仕組みが必要になってきます。そこに手を回す時間がなかった、というのが実態に近いと思います。。
私たちはこれまで培ってこられた技術がしっかりと利益や持続的な経営に活かされるように、私たちにできる様々なサポートで、この業界を変えたいと思っています。
建設業を支えることは、地域そのものを支えることになる。それが、私がクラフトバンクにいる理由のひとつです。
よそ者のままでは、何も変えられないから
そんな建設業の方々と、どのように向き合っているのですか?
まず前述の通り、地方は外から来るものや新しいものに抵抗感を持つ「閉じた世界」です。東京から来た会社がいきなり「経営改善しませんか!」と提案しても、話を聞いてもらうことはできません。ポイントは、その「閉じた世界」にどう入っていって、どう信頼してもらうか、ということでした。
だから私たちは、地元民として隣に立つことにしました。それを形にしたのが「地域事業本部」です。
すぐに駆けつけられる距離に住むメンバーが、地元トークができる解像度で、地元の会社に向き合う。フルリモートで全国に社員がいるクラフトバンクだからこそできる関わり方だと思っています。
地域にいるメンバーで一丸となって支援したいからこそ、地域事業本部では職種の垣根なく、地域という単位で組織を設計しています。何度も足を運んで現場内外の課題をヒアリングして掘り起こし、ツールを使いこなしてもらうところまで伴走しています。
最近特に印象的だった支援先は、人口3.6万人ほどの東北の町にある工事会社さんです。平均年齢が高く、紙とエクセルで経営を管理していて、スマホを使わない方が多い現場でした。社内体制を立て直す一環として、弊社が提供する専門工事会社の業務と経営のDXを進める経営管理サービス「クラフトバンクオフィス」を導入いただき、その後半年ほど伴走させていただいたタイミングで、現場の方から直接聞けた言葉が胸に残っています。
「働き方が変わった。家族と過ごす時間が増えたし、有給も取れるようになった」
「業務で使ううちにスマホを覚えて、孫とうまく連絡が取れるようになった」
現場の職人さんや経営者さんの嬉しそうな顔を見るたびに、私たちの存在価値はこれだ、と思います。そういう嬉しい瞬間に、自分の地元で立ち会える。それがこの仕事の面白さですね。
そうやって泥臭く伴走するうちに「何かあればクラフトバンクに相談しよう」と思ってもらえるような信頼関係を築きたい。そうなれば、どんなSNSよりも情報の早い地元のネットワークが味方になってくれます。紹介が紹介を呼んで、地元で一番有名な企業の方に食事に誘われる、なんてこともあるんですよ!
最後に、読者の方へメッセージをお願いします!
地元というのは、自分と切っても切り離せない価値観や、忘れられない原体験の生まれる場所です。実家があって、地域に育てられて、愛着を持っている人も多いと思います。
でも都会に出てビジネスをしている人たちにとって、地元は「戻りたくても戻れない場所」になっていないでしょうか?
地元には仕事がない、キャリアが続かない、年収が下がる。地元で経営者になるのも、ハードルが高い。そう思って踏み出せずにいる人に、ぜひクラフトバンクを足掛かりにしてほしいと思っています。
クラフトバンクの地域事業本部では、全国各地の「地元」で働きたい人を求めています。勤務地による給与差は設けていません。これまでの経験やキャリアを活かしつつ、最新のAIやノウハウを使って、難度の高い挑戦ができます。そしてなにより、自分の生まれ育った地域のために働ける。
いまのところ建設業には馴染みがないという人も、きっとがむしゃらに働いていくうちに、建設業がいかに地域にとって大切な存在か、肌で感じられると思います。そして建設業を元気にすることで、地元の経済が回り、地域全体が元気になっていくさまを目の当たりにできるはずです。
地方にも建設業にも課題は山積みですし、難しいことばかりです。でも地元が好きだし、まだまだ成長したいし、もっと密に人と関わりたいと思っています。まだまだ未完成の組織ですが、完成された環境より「作るフェーズ」だからこその面白さもたくさんあります。だから私にとってクラフトバンクで働くことは、仕事というより趣味に近いですね。ここまで楽しんでるのは私だけかもしれませんけど(笑)。
自分にとって愛着のある場所で、自分の能力や価値を高めながら、自分のやりたいことをしてください。
日本各地の地域のために、一緒に試行錯誤してくださる方を待っています。
(執筆・撮影:青柳ゆみか https://x.com/aopan_na )