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【起業家対談】エウレカ赤坂×コネヒト大湯 M&Aを経た両社が語る「急成長の舞台裏」(前編)

今回は、500万人以上が利用する恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」とカップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」を運営する株式会社エウレカ取締役顧問 赤坂優氏をお招きして、コネヒトCEOの大湯と共に「急成長の舞台裏」をテーマに話していただきました。

実は、不思議と共通項が多い両社。ベンチャー支援プログラム「KDDI ∞ Labo」での出会いから、両社のピボット・M&Aの裏側まで。共に戦った二人だからこそ分かる、人の生活を支えるサービスをつくる経営者としての想いを語ります。

最初の印象は”したたかなやつ”でした(笑)

大湯:赤坂さんとの出会いは、KDDI ∞ Labo第2期の顔合わせのときでしたよね。

赤坂:その頃、大湯くんはまだ学生?

大湯:あの時は大学卒業直後ですね。

赤坂:すごく若かったよね。僕はあのとき、創業すでに4年目に入ってたところだから、正直大湯くんに対しては「なめんな」って気持ちがあって(笑)

大湯:(笑)

赤坂:KDDI ∞ Laboって、4チームで優勝を争うバトルなわけですよ。だからこそ、すでに起業して競争社会に身をおいている自分としては、絶対に勝たなくてはいけないと思ってた。

大湯:懐かしいですね。

赤坂:起業してからの環境って、野生児のバトルみたいな感じだから、大湯くんみたいなエリートじゃ勝てないぞ、って思っていたかな。

大湯:それに対して僕は、すごく無邪気に「赤坂さん!」って近づいていってましたよね。

赤坂:それ、僕は戦略だと思ってたよ!

一同:(笑)

赤坂:相手が(メンターなどの)年上の方でも、大湯くんはしっかりした言葉で積極的に話すから「大人びた胡散臭さ」みたいなものを醸し出していて。だから「こいつ戦略的で、すごいしたたかなやつだな」っていうのがはじめの印象。

大湯:そんなふうに思われていたんですね…!


(左:大湯、右:赤坂)


赤坂:だから実は本格的に仲良くなり始めたのはKDDI ∞ Laboが終わってからだよね。KDDI ∞ Laboでコネヒトが優勝した後少ししてから、大湯くんからこまかいヒアリングをされるようになったんですよね。

大湯:ちょうど、KDDI ∞ Laboでグランプリをもらったアート系サービス「Creatty(クリエッティ)」が行き詰まっていた時期で、解決策を求めて日々もがいていました。

赤坂:苦しい中、真剣に相談されて「この人本気なんだな」と思ったんだよね。僕は「どんなことがあっても会社を守る」という気持ちがあるやつが、最後までしぶとく生き残ると思っているんだけど、当時大湯くんと話していてその気概をすごく感じた。心が一気に近づいた感じですね。

大湯:ありがとうございます。

赤坂:当時「最悪、クリエッティをつぶしてでも会社は残る。そこからもう一度新しいサービスを考えたい…」ってチラッと言っていたんだよね。それを聞いて、好きだなって印象を持ったのがあの時期。

大湯:クリエッティは準備期間を含め実質3年ほど運営していたサービスですが、実はこのままだとキツイかもしれないと気づきつつあった矢先のKDDI ∞ Laboでの優勝でした。

優勝したからには成功しなければという責任感と、グランプリをもらったということはもしかしたらいけるのかもしれないという期待がありました。今思うと「優勝の呪縛」のようなものがあったのかもしれません。大きな大会で優勝したプレッシャーを無意識のうちに感じていました。

もちろん最後は、思い切ってピボット(※事業転換)を選択してママリ事業を立ち上げたからこそ、今があるのですが。


ミッションありきで生まれた「ママリ」

大湯:ところで赤坂さんはミッションやビジョンなどのメッセージを社内に向けて伝える時、どんなことを意識していますか?

僕たちは、クリエッティ時代はサービスが最上位にありそれに付随してミッションが存在する主従が逆転した状態だったんです。ママリへの事業転換を経験してからは、ミッションやビジョンの大切さを感じる場面が増えました。

赤坂:僕は「会社のフェーズにあったコーポレートフィロソフィーがあればいい」と考えています。たとえば起業してから会社が軌道にのるまでの不安定な時期に、受託事業をやってでもとにかくキャッシュを稼がなくてはならない状況下で「世界中の人のために!」なんて言っても、社員には響かない。

大湯:たしかにその状況では、まわりを巻き込むことができないですよね。

赤坂:最初はとにかく組織を安定稼働させるために、社員のモチベーションを引き上げる力強いワーディングが必要。僕の場合は、組織が50人を超えだしたころに改めて「何のために会社をやってるんだっけ?」と立ち止まって考えるようになりました。

現在のエウレカのミッションは「普遍的に優秀な人材として成長し続け、人々の人生を豊かにするものを提供し続ける」です。つまり、世界中の人々が使うサービスを自分たちの手で作ろうということですが、実はその想いは会社を設立した当初から変わってないんです。やっとそこに落ち着くことができただけであって。

大湯:なるほど。コネヒトが今のミッションを設定したのは、クリエッティを閉じて次のサービスを模索している時期のことです。社員数人で毎日議論をする中で、全員に共通している想いが見えてきました。それが一過性のエンタメではなく、人の生活に寄り添い役に立つようなサービスをインターネットを通じて作りたいという気持ちだったんです。それが今の「人の生活になくてはならないものをつくる」というミッションになっていて、その想いを元に生まれたサービスが「ママリ」です。

赤坂:ママリはミッションが元になって生まれたサービスなんだね。

大湯:はい。実はミッションのほかに3つあるバリューも、ママリを始めて1年半ほど経った頃、メンバーで泊まり込みの合宿をして話し込んで決めたものです。メンバーと一緒に会社を作っていきたいという気持ちが強くありますね。


(コネヒトのミッションとバリュー)


多くを学んだピボットのタイミング

赤坂:僕は「Pickie(ピッキー)」(KDDI ∞ Labo出場時運営していた自分にぴったりのアプリを探すサービス)をリリースの2ヶ月後にやめているんですよね。

大湯:早いですね…。

赤坂:ピッキーをリリースして1ヵ月後にはもう次のサービスを作ってました。

大湯:僕、ピッキーってイケてるなと思ってたんです。洗練されたデザインで、ムービーもかっこよくて。あのサービスを2ヵ月で閉じたというのは今改めてうかがって衝撃でした。なぜピボットという決断をしたんですか?

赤坂:理由はシンプルで、ピッキーはサービスとして未来を見すぎていて「直近のユーザーニーズを満たしていない」と気づいたからですね。2歩先、3歩先の世界に向けたサービスを作っても、ユーザーは直近の課題解決で忙しくて使ってくれない。じゃあ「直近のニーズをつかまえにいくサービスを作ろう」となって生まれたのが「Pairs」です。ピッキーのことは勉強代だと思って、すぐにやめる判断をしました。

大湯:なるほど…サービスが時代を先取りしすぎてしまっていたんですね。

赤坂:クリエッティ時代のコネヒトにも共通するところがあるんじゃないの?

大湯:そういい切るもの難しいですが、そういう側面があったかもしれません。自分が描いた未来(アーティスト自身が直接稼ぐ場所を持つ、ネットを通じた1対1の消費が一般的になる世界)がいつか来る、という圧倒的な自信があったらあのまま続けていたのかもしれませんが、当時は自信がなかったんですよね。初めての起業で、どんどんお金がなくなっていく日々の中で…。

赤坂:その未来が訪れる日を待って永遠に続けることはできないしね。

大湯:クリエッティを運営していて記憶に強く残っているのは、ユーザーのニーズと自分たちの仮説の「ズレ」に気づいたときのことです。

僕らはアーティストが物作りで生きていける世界を目指して、クリエッティを提供していましたが、実際に作り手の人たちにヒアリングしてみると「アートは趣味でできればいい」「週末に作ることができたらそれで幸せ」という言葉が返ってきたんです。そのとき、ユーザーに対する自分たちの仮説が間違っていたことに気づきました。

同時に自分はこのプロダクトに人生かけていいのだろうかと、疑問が湧き始めました。

赤坂:助けたい人が悩んでない(笑)

大湯:そうなんです。この先5年10年この事業に自分たちの人生をかけられるかと考えたときに、ちょっと違うなと思いました。

赤坂:それがピボットのタイミング?



大湯:そうですね。そこから一度クリエッティをたたみ、また一からサービスを作ることになりました。後から思うと、クリエッティと必死に向き合う中でコミュニティサービスを運営する知見や、アプリ開発の技術、エンジニアの成長など今のママリの基盤となるパーツがそろったのだと思います。

赤坂:なるほど。クリエッティでの挫折を通じて学んだ一番大きなことって何ですか?

大湯:一番大きな学びは「本当に困っている人がいる領域で勝負をする」ことの大切さです。その学びがママリでは活きていると思っています。


やらなきゃダメ、やらなきゃダサい。

赤坂:ピボットした時期はいつごろですか?

大湯:2013年の後半です。KDDI ∞ Laboに出てから1年後ぐらいですね。そこからママリ事業を始めたのが2014年の3月ごろです。

赤坂:エウレカがPairsを始めて1年2ヵ月経ったぐらいのときかな。お互い、KDDI ∞ Laboに出場したときのサービスをやめているわけですね。

大湯:エウレカはPairsがヒットして売り上げがどんどん伸びていて、外から見ていると順風満帆に見えました。実際、会社の内側はどうだったんですか。急成長する中での「成長痛」のようなものはありましたか?

赤坂:組織系の悩みはあったかな。会社が大きくなってくると「社長である自分がいつまでもプロダクトの、いちプレイヤーでいていいのか」という議論が生まれてくるんです。いろいろ試行錯誤しながら後任の担当者を決める中で感じたのは、サービスの今後を任せるプロデューサーには優秀さはもちろん「タガを“外せる” か ”外せない” か」という感覚が不可欠だということです。

大湯:その感覚すごく分かります。

赤坂:たとえば今月の売り上げが5000万円だったとき、上に立つプロデューサーが「来月は1億円を目指そう」と言っても「6000万円を目指そう」と言っても社員は基本は「ハイ」と言ってついてきてくれるでしょう。

ただ僕は目指す先の世界をどこに設定するかによって、結果は全然違ってくると思っています。本当にいけるかはわからない。でも「1億円を目指そう」と言える冒険心がプロデューサーには必要だなって。



赤坂:世の中には現実主義の人がすごく多い。世の中の95%…もしかしたら99%の人は、実現が難しそうに思えることを感じたままに「無理です」と口にします。一見して無謀に思えることに対して「やってみよう」「やる方法を考えよう」と、トライできる人は全体の1%ほどしかいないんですね。そして、そういう人がいないとうちの会社は伸びないと思っています。

大湯:なるほど。僕は数ヶ月前まではプロデューサー業も兼ねていたんです。社長兼プロデューサーですね。今はプロダクトの大部分をCOOに任せています。

サービスを渡される側って会社全体の期待を背負うじゃないですか。だから僕もその期待に沿うだけの人選をしなくてはいけないというプレッシャーが良くも悪くもありました。

赤坂:僕は今はもう、エウレカの事業内容についてはほとんど細かいことを言わないですが「無謀と思えることにもまずはトライしてみるマインド」は後任者にも引き継ぐことができた部分だと思っています。事業を見ている担当役員も、社員がありえないっていうような数字目標を立てて「やります」って言っています。「やらなきゃダメ、やらなきゃダサい」って。



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以上、前編では二人の出会いやサービスをピボットした話についての対談を中心にお送りいたしました。

後編では、いよいよM&Aの裏側やサービスへの想いについての対談をお届けいたします!(後編はこちら


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■コネヒト社員インタビュー

【CTO 島田達朗】インタビュー

ぼくがコネヒトを選んだ日。vol.1【エンジニア 高野福晃】

ぼくがコネヒトを選んだ日。vol.2【COO 松井佑樹】

ぼくがコネヒトを選んだ日。vol.3【デザイナー 古市聖恵】

ぼくがコネヒトを選んだ日。vol.4【ディレクター 山口真吾】


■ プロフィール

赤坂 優
株式会社エウレカ 取締役顧問
法政大学在学中に、博報堂C&Dでインターン。その後、イマージュ・ネットに入社し、メディアプランナーとしてECサイトのメディア収益化を行う。新規事業、アライアンスにも従事。在籍中に、個人でデザインのクラウドソーシングサイト「MILLION DESIGNS」を立ち上げ、起業後、ランサーズ株式会社へ売却。2008年、株式会社エウレカを設立し、代表取締役CEOに就任。2016年9月、取締役顧問に就任。


大湯 俊介
コネヒト株式会社 代表取締役社長
1988年生まれ、慶應義塾大学卒。在学中にアメリカ留学を経て帰国後の2012年にコネヒト株式会社を創業。2014年より、同社にて「人の生活になくてはならないものをつくる」というミッションのもとママリ事業を開始。2016年にKDDIにグループ入りし、KDDI子会社のSyn.ホールディングスのもとで引続き代表取締役社長を務める。
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