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【起業家対談】nanapi × ママリの仕掛け人が語る「人を動かすコミュニティの作り方」(後編)

Supership株式会社取締役でnanapi創業者 古川健介氏と、コネヒト代表大湯との対談後編です。0から起業をし、事業をつくり上げた二人が、これからのメディアとコミュニティの未来を考えます。(前半はこちら


最近のメディアに求められていることとは

古川:Connehito社では、メディアを始めてから、2年くらいたちますよね。この2年間で、最近変わったなーと思うことはありますか?

大湯:以前から断続的に感じていたことですが、今は個人が誰でもメディアになれる時代です。メディアって言わなくてもメディア業やってる感じ。そのなかで大きなプラットフォームになるものはなんだろう、と今一度考えることが増えました。

Twitterでつぶやくのもひとつのメディアです。じゃあその中で、ビジネス的な意味で優劣がつくポイントってなんだろうと考えています。


アプリに合わせて進化するユーザー

古川:なるほど。では、最近チェックしてるメディアってMERY以外で何かありますか?すぐみんなMERYっていうから(笑)。

大湯:メディア……という見方はあまりしていないのですが、コミュニケーションの形という意味で最近面白いなと思ったのは、ゴルスタ(全国に友だちができる、中高生のための放課後アプリ)、nana(ユーザー参加型の音楽アプリ)、あとは定番ですが、メルカリ。これらのアプリはコミュニケーションの文脈でもおもしろいなぁと思いました。

古川:最近、放課後アプリ急に聞くようになりましたね。

大湯:CMも結構やっていますよね。ゴルスタはツイキャスとアメーバピグとツイッター……と流行りものを全部のせした感じ。作り手目線だとよくこんなに盛り込んだなと思いますが、ユーザーはその機能を使いこなしてるんですよね。時代にあわせてユーザーが進化しているんだなと思います。


古川:思えば、最近若い起業家から「放課後アプリを作りたい」という話を聞くようになったので、この分野キテるんだろうな、と最近思います。

大湯:僕らがサービスつくろうとすると、こんな盛り盛りにはならない。フッター7個ってすごくないです?フッター7個にメニューがまたある、みたいな。そういうのは普通作らない。なんかすごいんですよ。

古川:割と僕らの世代は、「シンプルに分かりやすいのがいい」というのがブームだったんですが、今は「わかりやすさ」よりも「楽しさ」だったり、Snapchatのような「使い慣れた時のスピード感」だったりが評価されている気がしますよね。


今、スマートではないメディアがおもしろい

大湯:登録のときも面白くて、登録導線の中で「あなたは中高生ですか?」という表示が出て、「違う人は登録したら警察に通報します!」みたいなことが普通に書いてあったりして・・・インターネット面白いなぁ、となんだか胸が熱くなりました(笑)



古川:いいですねえ、、。

大湯:シンプルで分かりやすいサービスって、Webの導線設計を知ってる人が作ったが故になんていうか、普通すぎて逆におもしろさを感じない。

古川:カオス感が重要ですよね。ゴルスタくらいのほうが覗いてみようかな?と思う。

大湯:三木谷さん(楽天創業者)や笹森さん(チケットキャンプを展開するフンザのCEO)もおっしゃってましたけど、「人気(ひとけ)」って大事で。ゴルスタはすごくこのひとけがある。登録すると1日で50人くらいファンがつくんですよ。通知がいやというほどくるんですけど、ユーザーにとっては多分それが楽しいんですよね。

古川:え、中高生じゃないのに登録したんですか?警察に通報しますよ?


常識を疑うクリエイティビティ

大湯:けんすうさんは、最近注目しているアプリはありますか?

古川:全然関係ないですけど、One tap buy(株の売買が簡単にできる証券取引アプリ)には注目しています。


古川:なんていうか、Onboarding( 新規ユーザーにサービス登録・利用を促すステップ)が半端ないんですよ。

アプリの会員登録時って、個人情報をたくさん入力するじゃないですか?普通だったらいかに登録者の負担を減らすかを考える企業が多いと思うんですけど、One tap buyの場合は違っていて。情報を少し入力するごとに、アニメがはじまるんです。

ゲーミフィケーションの一貫だと思うのですが、ユーザーはゴルファーという設定で、ゴルフカップにボールが入るアニメーションが流れて……。



大湯:これは、、、久しぶりにチュートリアルで笑いました。笑

古川:きっとこれって、ユーザーの会員登録時の負担が大きいから、物語を進めることで楽しく登録をしてほしいという意図ですよね。でも、普通に考えて、ゴルフと株の取引って全然関係ないじゃないですか。そして、アニメを見せるのは、ユーザーの時間をより多くとってしまうので、なかなか僕は思いつかない。ただ、数秒、アニメを見せるほうが、初心者の人はとっつきやすいかもしれないわけです。

なんでこういうクリエイティビティが自分にはないんだろう……と、落ち込んだのが最近です。

大湯:(会員情報を入力しながら)これおもしろいですね・・・全部持って行かれちゃいました。

古川:あと、これもOne tap buyでいいなと思ったんですけど、掲載されている企業の漫画がついているんですよ。「Google誕生秘話」みたいな感じで。その企業について、あまり知らない人が見たときに興味を持つような工夫ですよね。

本質論で考えすぎるがあまりに、ユーザーが本当に求めているものに気づかない、みたいなことがあると思っていて、インターネットにも株にも詳しくない30、40代の主婦が使う、という場面を考えた時に、意外と こういう愚直な方法がいいのだろうなあ、と思って参考になりました。


メディアとコミュニティの正の循環

大湯:ママリは、メディアとコミュニティが一体となったサービスです。けんすうさんは、メディアとコミュニティというサービスにどんな未来を見ていますか?

古川:おそらく 大湯さんと、考えていることが一緒だと思います。メディアは、単にSEOをうまくやって、ユーザーに着地してもらっても意味がないんですよね。ユーザーにちゃんとブランドを指名してアクセスしてもらう必要がある。

入口としてメディアから入ってきてもらって、そこで解決できないより深いことは、コミュニティに移動して自分で投稿することで解決してもらう。ママリならママリというサービスに対して、よりStickiness(粘着質)になって接触時間をのばしてもらうことが重要かなと思います。

そして運営側は、コミュニティに寄せられたユーザーの声を拾い上げてメディアに還元する仕組みを作ることが大切なのではないかなと。。たとえば、コミュニティ側でやりとりされたものが、コンテンツとしてメディアに掲載されていくとか。

大湯:そうですね。

古川:残念ながら、メディア単体で収益を立てることができるエコシステムは現状見つかっていません。たくさん記事書いてたくさん人が来ました、それでGoogleのAdsenseのようなものを貼って自動広告で少し収益化されて終わり、が今。

SEOというひとつのルールのもとで無数のプレイヤーが、検索で上位に表示されることを目指して局地的に戦い続ける、結果、収益が分配され事業としての天井も見えてしまっている……そういう世界は辛いです。1人でブログとかで収益をあげる分にはいいのかもしれませんが。

だからこそ、メディアからお金を生み出す循環を作らなくてはいけません。その意味で、クックパッドや食べログは僕らが目指すところに近いサービスです。ユーザーの投稿をコンテンツ化して、一般ユーザーがSEO経由でその投稿を読み、読者だったユーザーたちの一部がまた投稿する側にまわるという形ですね。


メディアの目的は”解決”、コミュニティの目的は”解消”

大湯:クックパッドや食べログ以外で、ここはユーザーの循環がうまいなと思うところってありますか?

古川:ママリが一番うまいんじゃないですかね。メディアにコミュニティつけるのって、理論上はみんなやりたい、って言うんですけど、実際やるのは超難しい。ママリは奇跡的にそれができている場所です。もし、普通の人たちがママメディアからコミュニティをつくろうとしたら、9割方失敗すると思います。


大湯:有難うございます。笑 

正直、タイミング、ユーザー属性がかみあってくれたのが大きいなって思っています。メディアとコミュニティが、相互に強くなるっていうのはすごく大事で、特にこの領域(妊娠・子育て)は情報だけでは納得出来ないことが多いのが良かったんだと思います。

古川:メディアの目的は”解決”で、コミュニティは”解消”みたいな感じですよね。それぞれ運営するときに使う脳が全然違うので、理論的には筋が通っても、この分野(メディアとコミュニティの循環)をやるのは難しいと思います。The First Penguin(Supershipが運営する起業家向けメディア)とかでやってみるのは面白いかなと思う。まずはSlackとかのコミュニケーションツール上で。

大湯:どういう層が行き来するイメージですか?

古川:起業したいギリギリにいる人かなあ。起業したいのにできてない人は、ある意味、彼氏と別れたいのに別れない人と同じだから。正論を言われても解決しないような悩みを持っている人にこそ、コミュニティサービスはひびくのではないかと。

大湯:メディアとコミュニティの両立という意味で言うと、梅木さん(The Startup代表取締役 梅木雄平氏)がうまいなって思います。私は直接存じ上げていないですが、すごいなあと。あれは「人」っていうブランドがあってこそだとは思いますが。

古川:梅木さんは奇跡的なキャラクターで、もう人がプラットフォームなんですよね。二度とあの場は生まれない。本当にぼくはいいと思います。大湯さんも会ってみるとよいと思います。とても柔軟な方なので大変勉強になると思います。


自分に矢印が向けられたコンテンツの時代

古川:コンテンツの話に戻ると、昔流行った「◯◯するための7つの方法」みたいな記事はもうこれから流行らないだろうなという感覚があります。なんて言うかお腹いっぱい感がある。大湯さんは、次に求められるのはどんなコンテンツだと思いますか?

大湯:個人的には「共感」がひとつキーワードになると思っています。そのコンテンツがユーザーにとって「自分に矢印が向いている」内容であることが大事です。

具体的には、画面の向こうの誰かが自分だけに向かって発信しているということです。たとえ出てくる結論が同じでも、自分でGoogle検索して解答が表示されるのと、人格を持った誰かが、時間と労力を使って自分だけのために回答をくれるのとでは、意味が違う。

とくにママリはユーザーが女性で、妊娠・出産というつながりを求めている瞬間だからということもありますが、ユーザーその人に向けて発信されたコンテンツは高い満足感を生むと思っています。


(ママリQ上で交わされる、ユーザー同士のコミュニケーション)

大湯:私たちのサービスでは、ユーザーの質問に対して別のユーザーが回答します。その中でどんなやり取りが生まれるかは、化学反応のようなもので、運営側で完璧にコントロールすることはできません。

それでもアプリのユーザーにとっては、スマホ画面に表示される質問・回答ひとつひとつが”ママリの”コンテンツという見え方をします。ユーザーの満足度を高めるためには、本来なら予測できないコンテンツとの出会いに事前に仮説を立て、それぞれが求める最適な質問・回答との出会いを生み出す必要があります。

現在もすでに、技術の力を使ってユーザー同士をマッチングさせていますが、今後この「出会いの精度」を更に高めていきます。ユーザーひとりひとりに太く、適切なコンテンツの矢印を飛ばすことで、今まで以上にファン度の高いコミュニケーションを実現したいです。

古川:ママリのこれからが楽しみです。今日はありがとうございました。

大湯:こちらこそ、ありがとうございました!



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■ プロフィール

古川 健介
Supership株式会社取締役。
1981年6月2日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。複数の事業立ち上げを経験後、2009年にHowtoサイト「nanapi」を運営する株式会社ロケットスタート(のちの株式会社nanapi)代表取締役に就任。2014年10月よりKDDIグループにジョインし、2015年11月にnanapi等グループ企業3社が統合してSupershipが誕生、同社取締役に就任。
大湯 俊介
Connehito株式会社代表取締役社長。
1988年生まれ、慶應大学卒。在学中にアメリカ留学を経て帰国後の2012年にConnehito株式会社を創業。
2014年より、同社にて「人の生活になくてはならないものを作る」というミッションのもとママリ事業を開始。2016年に同社はKDDIにグループ入りし、KDDI子会社のSyn.ホールディングスのもとで引続き代表取締役社長を務める。
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