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【CTO就任対談】発酵テクノロジーの専門性を大幅に強化し、次のR&Dステージへ

こんにちは!

今回はファーメンステーションにとって大きなニュースをお届けします。それはCTO(Chief Technology Officer)の就任です!

発酵テクノロジーを活用し、未利用資源のアップサイクルを事業とするファーメンステーションにとって、技術や研究開発は事業の根幹をなす最も大切な機能の一つ。これまでも代表の酒井を中心に、社内で様々な試作や分析、製造プロセスの試行錯誤を行い、アルコール発酵を中心に技術を磨き、原材料から製造まで国内完結の国産のエタノール製造や発酵粕の化粧品原料化、様々な未利用資源のアップサイクル原料化など、「普通に考えると無理」と言われるようなイノベーションを複数生み出してきました。

事業が進化し、求められる品質基準も高度化するとともに、グローバルでのサステナビリティに関連するテクノロジーの進化や市場の拡大が顕著になり、ファーメンステーションでも今まで見えてこなかった事業機会が目の前に広がる中で、技術や研究開発の面で「次のステージ」に進む必要性を切実に感じていました。

そんな中、この2022年6月にファーメンステーションのCTOとして参画する杉本さん。杉本さんは発酵テクノロジーのど真ん中で研究開発を長年リードされ、技術に関する豊富な知見とともに大企業とスタートアップの連携に関しても自らが実践者として多くの実践知を持たれています。

そんな杉本さんがなぜファーメンステーションを次のフィールドに選び、何を手掛けていくのか、お聞きしました。
(代表取締役酒井との対談、聞き手は取締役COO北畠)

CTO 杉本 利和(Ph.D)

九州大学農学研究科を1996年に修了後、協和発酵、アサヒグループ各社(アサヒビール、ニッカウヰスキーなど)にて、基礎研究、生産技術開発、および新規事業開発に至る幅広いR&D業務に従事。麹菌の新規な液体培養技術に関する研究で第21回生物工学技術賞を受賞、2012年に東京大学より農学博士号を授与。2022年よりファーメンステーションに参画。鹿児島県出身。

「発酵テクノロジーのプロ」と「オープンイノベーションの担い手」としてのキャリア、そしてファーメンステーションとの出会い

――最初に杉本さんのこれまでのご経験を教えてください。

杉本:大学時代は、CO2から生分解性プラスチック素材を生産できる微生物の培養技術に関する研究をさせてもらい、日夜、培養実験に明け暮れていました。就職するにあたり、微生物による発酵テクノロジーの無限の可能性に興味が尽きず、1996年に九州大学の修士課程修了後、協和発酵というバイオテクノロジー企業に入社しました。協和発酵では酒類部門に配属され、以降ずっと、お酒の発酵に関する研究開発に取り組んできました。協和発酵在籍時に、広島県にある国税庁の醸造研究所(現在の酒類総合研究所)にも研究員として1年間派遣させてもらい、麹菌の遺伝子研究など学術研究にも携わりました。2002年に協和発酵の酒類部門がアサヒグループに営業譲渡された関係で、アサヒグループに転籍しました。アサヒグループでは、アサヒビールやニッカウヰスキーなどのR&D部門に配属され、基礎研究や生産技術開発、新規事業開発など幅広い業務を行いました。また、国内外の大学や他企業とのオープンイノベーションの実務を担当させてもらい、研究者として、またプロジェクトマネジャーとして数多くの経験をさせてもらいました。

――杉本さんとファーメンステーションの出会いは少し特殊ですよね。

杉本:2019年にアサヒグループ内に中長期の研究を担うアサヒクオリティーアンドイノベーションズという独立研究子会社ができ、その設立直前に大企業とスタートアップのオープンイノベーションを推進するプログラムに、私がスタートアップ連携担当として参加したのですが、そのDemo dayにファーメンステーションがいたのが初めての出会いでした。

酒井:アサヒさんはアルコールの会社なので必ず一緒に何かできると思いました。当時、ちょうどJR東日本さんとリンゴのお酒シードルの製造時に出る搾りかすをアップサイクルした原料化・商品化を始めていて、技術的な課題も色々とありましたし、事業としても必ず何かできると思って、アサヒさんとの構想をピッチしたことを覚えています。そこで杉本さんが、こんな発想でアルコールがつくれるのは面白いと言っていただけたことをよく覚えています。当時杉本さんはアサヒグループのニッカウヰスキーにも所属されていて、正直アルコールの会社さんは競合にもなりえるので多少警戒もしていたのですが(笑)

※当時酒井が渾身の提案をしたピッチ

――杉本さんが持たれたファーメンステーションの最初の印象はどうだったのですか?

杉本:広い意味でのアルコールとしては、飲料のアルコールもファーメンステーションが手掛けるエタノールも一緒ですが、用途や価値が全く違うというのが衝撃的でした。以前、バイオエタノールの研究が盛んだったころに色々と調べたこともありましたが、一般的なエタノールはリッター当たり100円程度のコモディティ商品だったところ、それをファーメンステーションでは10倍100倍の高付加価値で価格付けして化粧品原料としていることもすごいと思いましたし、小さい規模ながら既にマーケットに最終商品の形で出ているのもすごいと思いました。合わせて、当時所属していたアサヒの組織でのミッションとしても、「製造から出てくる副産物(ビール粕等)を活用する方法の探索」があったので、その意味でもいきなり核心の部分を話せた感じがしました。

――お互いの最初の印象はどうだったのですか?

杉本:酒井さんはピッチで一番元気が良かったですね(笑) 他は男性の研究者ばかりがピッチしている中で目立っていたし、何かがアクティブに動いていきそうな印象を受けました。

酒井:私は良い人そうだという印象を持ちましたね。意地悪そうな感じがしなかったです。大企業の人と協業前提で話すときは結構意地悪なこと言われることが経験上多かったのですが(笑) すごく良い人に会えたとチームに共有したのを覚えています。技術的にも驚くほどぴったりの方で、人柄としても警戒しなくてよい人だと思ったので、色々と今後相談したいと思ったのが最初でした。

――ビジネスの場で協業候補として出会われたものの、技術としても人柄としても相性が良い感じがお互いにあったのですね。

酒井:さすがに最初から採用しようとか声をかけようとかはなかったですが、「杉本さんにいつか入ってもらえたらいいのにな」とチームメンバと話していたのを覚えています。今から思うと協業の中でファーメンステーションで技術を担当するメンバとも実務的に関りがあったことも大きかったですね。人柄としても信頼できる方として、アサヒさんというより「杉本さん」として見ていた気がします。

杉本:私もまさか将来的に入社するとはまったく思わなかったですね(笑) でも、大企業の規模の視点から見ると、当時のファーメンステーションは普通に考えると小さすぎる規模で、「これはスケールしない」と考えてしまうステージだったと思いますが、私はこの規模でビジネスになっていることに逆に可能性を感じていました。あとは協業を担当させていただく過程で岩手の製造現場を見せていただき、最初から単純に楽しそうで、よいものができそうな予感はすごくしていました。色々としっくりときていたのかもしれません。

※りんごのお酒シードルの製造過程で出るりんご搾りかすからアルコール抽出しできた除菌ウエットティッシュ

人生の節目で交差した自身のキャリアとファーメンステーションの進化の必要性

――その先はまずはアサヒグループとファーメンステーションの協業という形になったわけですね。(杉本さんが担当として推進した共創) 協業をしている先で、どういういきさつで参画という話になったのでしょうか。

酒井:採用とかは全く考えていなかったのですが、信頼できる色々助けてもらえる人だとは思っていたので、逐一事業の進捗報告はしていました。資金調達したとか、引っ越したとか、こんな商品出ましたとか。そんな中で、2021年にスタートアップとして加速をしていく決意をして、杉本さんを知るチームメンバから「今後どういう人がいたらいいんですかね?」と聞かれて「技術の責任者がほしい」と言ったら「良い人がいるならどうして誘わないんですか?声かけてみては?」と言われたのがきっかけです。以前に参画してくれたメンバでも勇気を出して声をかけたら仲間になってくれた経験もあって、思い切って伝えてみることにしました。

――杉本さんは、報告が逐一きてどう感じておられましたか?

杉本:どんどん広がっているなと思っていましたし、一ファンとして「いいですね!」と言っていました。仕事というより一個人として感心していたし、進展を嬉しく思っていました。声をかけていただいた時は驚きましたが、純粋に嬉しいし、ご縁だなと思いました。そのような機会はあまりないので、「興味があるので、話を聞かせてください」と言いました。

――何が決め手になったのでしょうか?

杉本:ありがたいなと思ったものの、現実的に考えるとその時の会社での責任もありましたし、実際辞められるのかなとか思いましたが、色々と話して前向きに考えてみることにしました。決め手は何ですかね。技術や事業は面白いのはわかっていましたし、岩手に拠点があるのも素晴らしいと感じていました。私自身が鹿児島出身のため、地方との関わりはずっと考えていることだったのですが、社会的要請としても自分の人生観としても、地方と関わることをやる時期に来たのかなと考えたところがありました。ファーメンステーションでできることは大企業でやれないことばかりで、これを自分でやりたいなと純粋に思うようになりましたね。あとは、私は10年スパンくらいで仕事をしてきているなと振り返って改めて思ったんですよね。20代は仕事や社会について勉強をした期間、30代は麹の研究を深く一生懸命して、基礎から実用化に至る、いわゆる0→1(ゼロイチ)の仕事を完遂しました。そして博士号を取ることもできました。40代でそれまでの研究開発一筋からは全然違うオープンイノベーションや新規事業を創ることに挑戦しました。ちょうど50歳になったタイミングで、ここから10年どうしようかと考え始めたころでもありました。

※東京拠点メンバでCTO杉本さんを囲んで

東京にラボ機能を立ち上げ、発酵テクノロジーの拡張へ

――参画後にまず何をやりたいと思っていますか?

杉本:私は東京ベースでR&Dをやることになりますが、岩手の製造拠点には頻繁に行って現状の実務を理解して技術の適用や製造プロセスをより良くすることはまずやりたいと思っています。あと、短期的には東京の顧客に近い場所でスピーディーに試作したり、実験ができるスペースを作りたいですし、OEM等の商品開発をしているメンバともしっかりと連携していきたいです。とはいえ、小さい所帯ですので、しっかりとしたR&Dについては、外部とのオープンイノベーションの視点を入れつつ、大学の先生とも連携させていただきながら、その基盤を早めにつくりたいと考えています。

――改めて、杉本さんから見られたファーメンステーションの強みや課題は何でしょうか?

杉本:独自の発酵テクノロジーやこれまで培ってきた原料や製造ノウハウはもちろんですが、そのスピード感は一つの強みです。そのサイクルをどんどん上げたいと思いますし、東京側に試作の機能を持つことで、顧客に近いところでR&D機能を強化し、岩手の製造とのフィードバックサイクルを進化させたいですね。

あとは、スケールアップをどうするか、次の技術の発展はどうあるべきかをしっかりとやっていきたいです。そこは重要な課題だと認識しています。単純に規模を追求する一般的なスケールアップではなく、今のファーメンステーションの強みである徹底した資源循環や社会性を維持しながらのスケールアップは大きなチャレンジだと思っています。

――中長期ではどうでしょうか?

杉本:規格外の農産物や食品・飲料製造における副産物などの未利用資源を持っているプレイヤーとの豊富なコネクションや、どんどん情報が集まってくる立ち位置にあることが強みです。よくある「アップサイクルの原料があります」という会社とは違う優位性がそこにあると思います。それら素材を発酵テクノロジーを使ってどう付加価値をつけるかが勝負所ですが、そのためには既存のアルコール発酵に留まらない「発酵」の拡大解釈が必要だと考えています。酵母、乳酸菌、色々な微生物をどのようにうまく活用するか、今はアルコール発酵が得意な会社ですが、発酵にも色々あるので、その技術の幅を広げていきたいと思います。環境に良いプロセスや技術についてもより積極的に開発していきたいですね。これらがうまく融合できれば、未利用資源へのリーチでは圧倒しているので、かなり強い技術基盤をつくれると思います。また、グローバルでも日本の発酵技術や発酵文化は大変興味を持ってもらえます。日本らしい発酵を活用したプロダクトを考えて、グローバルに打って出たいです。

――それは儲かりそうですか?(笑)

儲かるんじゃないかと思いますよ(笑)

ファーメンステーションならではのR&Dモデルの確立と事業開発との連携

――酒井さんにお聞きするのですが、杉本さんが入ってファーメンステーションがどうなることを期待していますか?

酒井:すべてがバージョンアップすると思います。「発酵」もこれまでの定義から広がると思います。杉本さんがこれまで触ってきている微生物も発酵物の幅もかなり広いので、それがファーメンステーションに適用されることで、これまで扱うことができていなかった「未利用資源」も扱えるようになるのではないかと思います。また、私が、杉本さんがいいと思うのは、ファーメンステーションが大事にする循環への意識がすごく強いこと。杉本さんは「美しい循環」とよくおっしゃるのですが、これから事業が大きくなっていく中で一般論としては難しくなる循環をしっかりと実現していくことができると考えています。例えば、今でもやっている発酵粕の化粧品原料や飼料としての活用。より付加価値のある化粧品原料や飼料は何か、どう活用できるかの技術も向上すると思います。グローバルのご経験もおありなので、グローバルスタンダードで先端的な技術や考え方を取り入れていけることを期待しています。

――杉本さんが入ることでどういう変化がチームにあると思いますか?

酒井:以前は私がどこかで何かを話して形になるということが多かったのですが、スタートアップとして大きく舵を切ったここ1年くらい、私だけじゃなくチームから何かの起案があって形になることがどんどん増えてきています。杉本さんが入ることで、それがさらに加速がするのではないかと思います。単純にできることも増えるので、営業のし甲斐が増えそうですし、お客様の要望に応えられることも増えると思います。「酒井の会社」から「ファーメンステーション」へ完全に変わると思います。

ところで、ずっと司会していますが、北畠さんとしては杉本さんが入ることはどう考えていますか?

――そうですね、ちょっと発言させていただきます(笑) 今までのファーメンステーションは機会ドリブン・クライアントベースで開発することが比較的多くて、それは新しいものを探索するという意味ではよかったと思っています。ただ、それだけやっていてもムーンショットは出ないのではと思っていたところもありました。そこは中から、R&Dのポートフォリオを考えて、パイプラインを整備して、ロードマップを描いて中期的なR&Dをやりたいと思っていました。杉本さんが入れば、それができると思います。一般的なスタートアップを見ると、研究開発型のスタートアップは、逆にパイプラインがあってそれがうまくいけば成功、できなければ解散というイチかバチかが多いですが、ファーメンステーションはシーズアウトもありつつ既存の強みであるマーケットインの部分もあるので、その組み合わせがR&Dスタートアップとしては他社が真似できない強みになると思います。この両方をぐるぐる高頻度で回すことができるとユニークなR&Dモデルを作っていきたいですね。R&Dと事業開発がしっかりと組んでR&D戦略を考えて強化していきたいと思っています。

――最後にお聞きします。これからFSで業務をスタートされますが、どういうR&Dチームを作っていきたいと思いますか?

杉本:今は発酵テクノロジーによってエタノールや化粧品原料などの素材開発を中心にやっていますが、更にもう一歩これらを進化させるために、この香りはどうか、好まれるテクスチャーはどうかなど、お客様が何を好むのかを官能評価したり、分析ができるようになりたいですね。ここはファーメンステーションらしい素材開発における特徴であり、強みになると思います。また、それらを支える品質保証技術も強化していきたいです。分析や品質を担える人材と出会いたいですね。あとは発酵全般に言えることとしては、「やってみないとわからないこと」が多い技術領域だということです。もちろん理論はありますが、例えば香りがどうなるかなど「やってみないとわからないこと」が多いので、たくさん実験してみる、たくさん試作してお客様に評価してもらう、そのサイクルを早くする。これができる人に来てほしいですし、そういったカルチャーは大切にしたいですね。頭でっかちになりすぎないことを大事にしたいです。あとはオープンイノベーションというか、異分野の技術も積極的に探索して組み合わせるアンテナも大切にしたいと思っていますので、異能は大歓迎です!

新CTOの杉本さんに焦点を当てた対談、いかがでしたでしょうか?

次のR&Dステージに入り、第二創業期とも言えるファーメンステーションでは、多様な経験や個性を持ったメンバが協働し、日々研究開発と事業開発に奔走しています。

技術ドリブンに事業開発したい方、サステナビリティに関心がありその事業化とはどのようなものか気になっている方など、カジュアル面談からお話しすることも可能です。

ファーメンステーションやそこで働く仲間に関心を持っていただけましたら、お気軽にご連絡ください!

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