前編に引き続き、グローバル・ブレインのDirector重富さん、SXキャピタル取締役投資部長遠藤さんとファーメンステーション代表酒井の対談をお届けします。(聞き手:COO北畠)
前編では、主に投資に至った経緯やファーメンステーションの事業の独自性についてお二人にお話しいただきました。
後編では、ファーメンステーションの今後の成長課題やどのような人材とその課題を乗り越えていくとよいか、女性投資家・起業家の視点で考えるファーメンステーションという働く環境についてお話を伺いました。
事業性と社会性の両立を追求することで見えてくる課題
―将来に向けての視点になりますが、事業性と社会性の両立を目指しつつ、将来そのインパクトも大きくしたいと思いながらやっているのですが、ファーメンステーションのポテンシャルとして期待していることや、成し遂げてほしいことなどありましたら、お話いただけますか。
重富さん:
今は、世の中として社会性も重視したビジネスの流れがきており、普通のビジネスでももっと社会性を見る動きが出てきています。この流れは変わらないので、ファーメンステーションは今までやってきたことをこのままやっていってもらえれば良いと思います。この市場はこれから更に大きくなっていく段階ですので、今後参入してくるプレイヤーも含めて一緒に市場形成していく必要があると思います。ファーメンステーションの場合は、事業性が伸びれば自ずと社会的なインパクトもついてくるので、普通に事業を伸ばすことに注力して進めていただけたらと思います。
遠藤さん:
社会性と事業性に分けて考えるのではなく、特にファーメンステーションに関しては、やりたいことをやっていくと社会性も事業性もついてくるので、このようなことをやっていると結果としてビジネスとしてもきちんと成り立つということを、早く数字で示せると良いなと思っています。また、正しいからやっているのではなく、よく酒井さんが仰っている、楽しいからやっているということはとても大事ですよね。正しさはあまり人を動かさず、消費者の購買も生まないですが、社会にとってもビジネスとしても成り立っているこの事業はとても楽しいということをもっと分かってもらえるといいと思っています。楽しいし、モノも良いし、ビジネスとしても成り立っているから儲かっている。資源が循環しているだけではなく、気持ちもちゃんと回り続いていく、という風にビジネスが広がっていってほしいですね。
―ありがとうございます。酒井も私も、社会性と事業性は別々ではなく、お互い関係しあって大きくなる一方、そうなるためにはボトルネックや課題もあると思っています。投資家目線で、そのような壁や課題はありますか?
遠藤さん:
直近でぶつかるかもしれないと思う壁は、マーケットと価格のバランスです。反対する人はいない事業ですが、具体的な案件を考えると決して安くはないですよね。小さなマーケットを大きくした時に、どこまで自分たちのプライシングポリシーを維持し今の価格帯でやっていくのかというバランスは課題ですね。
―どのようなマーケットを狙って広げていくのか、ということですね。
遠藤さん:
どのような仕掛けで使ってもらうか、パートナーになってもらうかが大事ですよね。下請け業者になってしまうと、疲弊して良くないビジネスモデルになってしまうリスクがあると思います。
―どのようなマーケットを狙うのか、誰が買ってくれるのか。ビジネスモデルとして、対消費者と対企業について、そしてお金の流れなど、全体の色々なパーツの組み合わせだと感じました。
遠藤さん:
とても難しそうですが、楽観的にやってくれるだろうと信じています。
―ありがとうございます。重富さんはいかがでしょうか。
重富さん:
ファーメンステーションの場合、オリジナル原料であるお米由来のエタノールの販売の方が生産性だけを考えるとよいかもしれませんが、目下ニーズの高い協業相手からすると協業先企業が抱える廃棄物をエタノールに変換することの方が需要が高いのかもしれません。ファーメンステーションにとって後者は受託的な検証や開発をする必要があるので一時的に生産性が落ちてしまう可能性がある一方で、新たな原料やサステナブル事例の獲得や市場形成にも繋がると思いますので、長期的にはファーメンステーションにはメリットになると思います。長期・短期の両方の視点でトレードオフする課題をどのように解決してマーケットの拡大を追求していくかは課題ですね。
―ありがとうございます。酒井さんはどう思いますか?
酒井:
まず仰っていただいたことについては、細かくできることはたくさんあります。非効率なところはまだありますし、コストを下げるなど普通の会社としてやるべきこともあると思っています。あとは大きく考えると、私たちは今までとは違う価値を作っていると思いますので、新しい文化を作るという価値にも諦めずにチャレンジしていきたいです。どのようにスケールするかという目線で意思決定しないといけないですね。
遠藤さん:
ファーメンステーションが、圧倒的な出口まで作れると良いですね。
―遠藤さんが仰っていたマーケットについては、より多くの方々を対象にする話とも繋がると思っています。長い目で見ると共創相手と1対1だけで事業を大きくするのは限界があるので、世の中の資源のインプットとアウトプットをつなげる仕組みを私たちがうまく提供できるようになるのが理想形ですね。
遠藤さん:
ファーメンステーションが、N対Nのハブになれると良いですね。
※対談はオンラインで実施:左上から左回りに、SXキャピタル遠藤さん、グローバル・ブレイン重富さん、ファーメンステーション代表酒井、ファーメンステーションCOO北畠
企画から実行まで一気通貫で事業開発できる人材と課題解決を
―自分たちが全てのプロセスをやっている今の経験は、大きな財産になると思っています。短期的にはそこで収益を得つつ学びも得ながら、将来的には仕組み化して社外ともコラボレーションし、レベルアップしていきたいですね。今後への期待や課題を踏まえ、どのような人がファーメンステーションに入ってきていただけるとよいでしょうか?スキルや経験など、人材の観点でお話いただけますか?
重富さん:
これから一番大事なのは、色々な人を巻き込んで、市場を更に大きくしていくことですよね。また、ファーメンステーションの事業は農業の方や岩手の方など、様々なステークホルダーがいるので、連携しながらサステナブルな市場を広げていく必要があります。これは新しいことなので、スキル云々よりも、イニシアティブを取って動いていけるパッションがある人が重要だと思います。
遠藤さん:
パッションにプラスして、新しいマーケットや仕組みについて取り組むので、考えるだけでなく実行に移すことができ、且つ売る力のある事業開発が必要だと思います。自分で企画して売るところまでやりたい人の方が楽しめますよね。
重富さん:
売れる人は大事ですね。今ファーメンステーションへの引き合いは多いですが、人手不足から全ての機会を刈り取れていない部分もあると思いますので、1つでも多く実行に移してくれる人が重要ですね。
―酒井さんはいかがですか?
酒井:
仰ってくださったように、今のステージでは、やっていることへの共感も必要ですし、事業性が大きなチャレンジですので、数字にできる人は必要だと思います。
※現在募集中の事業開発ポジション(企画から営業、オペレーションまで事業のすべてを担当いただきます)
関わる人それぞれの多様なあり方を実現できる場へ(女性投資家・起業家の視点で)
―ファーメンステーションは女性起業家である酒井さんと投資家サイドにも女性がお二人いらっしゃり、この規模にしてはスタートアップ界隈では珍しいのかなと思います。是非女性として働くことや、女性の起業家・投資家として日ごろ考えられていることをお話しいただけますか?
遠藤さん:
まずお断りしておきますと、女性起業家だからファーメンステーションに投資したわけではないです。確かにVCにいる女性の割合はまだ少ないかもしれないですが、女性だからできない仕事ということは全くないです。また、私個人の考えとしては、女性は長く働くほど、そして歳を重ねるほど、仕事に対する気持ちが楽になるということは、これから働く若い方々にお伝えしたいですね。私も20代の頃は分からないことやできないことが多く、仕事が辛かった時期もありましたが、長く仕事をしていくと自分の経験や感じたことを伝えられるようになるので、楽になってきましたね。進化しないといけないというプレッシャーはありますが、純粋に仕事ができ、やりたい方向にシフトしていきます。すぐに結果が出なかったり、認められなかったりする経験にも諦めず、長く続けていくと気持ちが楽になる時がくると思います。
重富さん:
遠藤さんのお話に励まされました。私はまだ悩んでいますが、酒井さんは投資先として応援したいのはもちろんのこと、個人的にも大ファンです。社長として働き日々事業や社員のことを考えながらも、ご家族のことをケアされている姿を身近で見て、このような女性になりたいと感じています。社長でなくてもよいですが、自分のやりたいことを貫いている方が増えると嬉しいですし、励みになる方も増えると思います。そのような方をVCとして支援できたら嬉しいですね。
―酒井さんは、女性がトップや株主、役員であることに対して、事業をやっている上で意識していることはありますか?
酒井:
今は女性だからこれをやっているなど、何かを背負っている気持ちはほとんどありません。ですが過去を振り返ると、日本の金融機関にいた最初の数年間、多くの時間はそのようなことを考えていました。色々なことが不条理だと思う反面、逆にチャンスと思うことも多く、その葛藤を抱えながら日々仕事をしていましたが、今考えると無駄なエネルギーだったなと思いますね。女性起業家が少ない現実を見ると、会社のメンバーや投資家の方々のご理解はもちろん、家族も分かってくれて、背中を押してもらえているのはありがたいですね。私の場合は、家族の理解があるからできていますが、それが当たり前の世の中を作りたいですね。ファーメンステーションは女性に対して活躍できる環境を作ることができているということだけではなく、そのような女性を支えられる男性も作っていかないといけないですし、お母さんが絶対家にいないといけないという価値観が全てではない、そのような家族でも可哀想ではなく、それぞれのあり方が幸せということを伝えたいです。
遠藤さん:
どのような形でもその人が幸せであることが大事ですよね。ポジションはこだわらないですが、うまくいっているベンチャーにはキーパーソンに女性がいることは多いです。活躍している女性はたくさんいるので、諦めている女性がいたら、活躍する場所はたくさんあるということを伝えたいですね。むしろ女性にとっては、ベンチャーの方がシステムも固まりすぎてなくライフスタイルに合わせて柔軟に働きやすい環境だと思います。もっと活躍する女性が増えてほしいですね。
―事業としてもダイバーシティが大事なので、そのような土壌を作っていきたいと思える人たちに入ってもらいたいですね。
遠藤さん:
今後はグローバルに展開したいと仰っていたので、海外の方も溶け込みやすいグローバルなチームになっていくと良いですね。
いかがでしたでしょうか。前編・後編を通じて、投資家として客観的な視点と伴走者としての視点の両面でファーメンステーションへの期待や成長課題についてお話しいただきました。
ファーメンステーションでは、事業性と社会性の両立をスタートアップとしてのチャレンジに一緒に取り組んでいただける仲間を絶賛募集中です。興味を持っていただけたらご連絡お待ちしています!