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相続手続きという「知らない仕組み」をエンジニアリングする魅力

こんにちは、AGE technologiesの黒川です。

今日の記事では、私たちが最初の事業領域として選択した「相続手続き」とは一体どんな事業領域なのか、そしてエンジニアリングの観点で見た時、どんな課題が眠っているのかを紹介します。

相続手続きの想像つかなさ

そもそも相続手続きと言われても、どんな事業領域なのかほとんど全くイメージがつかないのではないでしょうか?少なくとも私はそうでした。

現在に至るまでを振り返って、相続領域の想像が難しかった理由を考えると、

  • 人生を通して、体験する機会がほとんどないから
  • 類似の事業領域も想像しづらいから

という点が挙げられます。つまり、体験できないし類推もできないということです。

例えばビジネスSNSの開発なら、少なくとも個人消費者としてなら簡単に触れることができます。勿論それだけで全貌が見えるわけではありませんが、業態を推測する足がかりは比較的簡単に手に入るでしょう。

しかしその点、相続手続きはどうでしょう。普通に生活していると、類似の事業の想像さえつきません。「手続き」という言葉から婚姻届や転居届の提出を想像することはできますが、そこから発展して人が亡くなった時に起こる手続きや、そこにどんな課題が眠っているのか、そしてどうやってテクノロジーで解決するのか、を明確に想像できる方は多くないはずです。

私自身も(幸いな事に)身近に相続手続きを経験したことはありません。ですから最初は、この領域にどんな課題が眠っているのか全く想像できませんでした。

ですからまずは相続手続きを想像しやすくなるように、「相続」と「手続き」の2つのキーワードについて解説をします。

※相続手続きがライフエンディングに関わる領域であり、感情的なケアが必要な場合があることは自明です。特にその点については、他業種と安易に比較することはできません。しかし本稿では明快さのため、事業理解が進みやすい点に絞って解説をします。

「相続」とは財産の移動

まず「相続」ですが、これは「亡くなった方が遺された財産(物も権利も含む)を、ご遺族の皆様が受け継ぐ」という出来事です。よって、本質的には財産の移動イベントだと理解することができます。

この観点で類似の業態を探すと、ネットショップなどがわかりやすい例として挙げられます。ただし私たちが一般消費者として触れる「買うものを選ぶ体験」ではなく、その裏側にある在庫管理などの仕組みの方が、より本質に近いです。

私たちが現在チャレンジしている不動産を例にしてみましょう。

ネットショップが在庫よりも多くの商品を販売してしまったら注文取消しが発生してお客様の体験を損なうように、相続でも存在しない土地や間違った権利を扱おうとすると非常に大きな不具合が生じます。

故人様は土地や家の「権利」を所有された状態で亡くなります。この権利をご遺族の方が受け取るイベントが、不動産の相続であると言えます。

「手続き」とは意思決定と表明の業務フロー

次に「手続き」ですが、実はこれは普段から事業開発やシステム開発をしている方にとっては、非常に身近なものです。なぜなら手続きとは、単に業務フローを指すものだからです。

たとえばネットショップで買い物をする時、

  1. 顧客が商品を選んでカートに入れる
  2. 顧客がログイン、または会員登録する
  3. 顧客が決済する
  4. 店舗が在庫を確保する
  5. 店舗が発送する

というような手順があるとします。このような手順と同じように、役所手続きにも特定の手順があります。不親切なUXや馴染みのない単語に苦しむ場面は多いですが、決められたステップに従えばちゃんと終わる点は同じです。

また、業務フローの中には「何を買うか決める」などの意思決定が挿し込まれることがあります。納得のいく意思決定のためには、他の類似商品との比較や予算の検討が必要です。

この点については、相続の手続きでも「誰がどの財産を取得するか」を意思決定する必要があります。普段馴染みのない法律や情報に触れるので、適切なデータをもとに納得のいく意思決定をする必要があります。

以上、私たちが取り組む領域がどのようなものか、他業種との比較をしつつ解説をしてきましたが、これを総合すると、相続手続きとは亡くなった方の財産をご遺族に移動するための、役所を巻き込む業務フローだということがわかります。

これを踏まえて改めて想像を巡らせると、役所特有のレガシーさを緩和したり、聞き馴染みのない情報を整備し適切な意思決定をサポートしたりなど、チャレンジングなトピックがたくさん眠っていることがお分かりいただけるかと思います。

相続手続き x エンジニアリング

相続手続きをエンジニアリングするにあたってハードルが高く、つまり面白い点は2つあります。抽象化ポイントが多い点と、模倣できない点です。

まず抽象化についてですが、当社のチャレンジしている相続手続き領域では、様々な財産や帳票、個人や法人、数多の金額計算ロジックや法律が開発スコープに含まれます。これらをどのように解釈し、最適な形で抽象化するか検討し、プロダクトとして実装していくか検討することは、ハードな分試行錯誤の価値が高いと考えています。

さらに模倣できない点については、相続手続きは簡単に体験することができないため、技術的に同業他社の模倣をすることが難しい領域です。よって良いプロダクトを生むためには、体験する以外の形で高品質な一次情報をかき集め、学びをアウトプットに変換し続けることが要求されます。

しかしこれらを超えれば、現行の手続き手順が抱える負債や、日本政府の歴史的経緯によるデータ不整合さえも飲み込み、美しいプロダクトを世に提供することができます。そして今までは法律家の先生や役所の係員を通してのみアクセスできた難解な手続きに、容易にミスなくアクセスできる社会を実現することができます。

そのチームに所属する経験は、これから当社にジョインしてくれる誰にとっても、非常に良いキャリアとなるはずです。

正直に言って、役所とのインターフェースがアナログ中心な以上、ある程度人の作業に依存することにはなります。むしろその事実を無視してペーパーレスやデジタルに振り切るジャッジは、バランス感覚を欠いていると言わざるを得ません。

しかし同じ作業を休みなくミスなく何度でも繰り返すことができるITの力は、私たちの短いサービス運用期間だけでも、何度も手続き効率の最適化に大きく貢献してくれました。これをさらに大きな規模で実現していけば、上に書いたような社会は遠からず訪れると考えています。

AgeTech x エンジニアリング

当社は「高齢社会にテクノロジー革命を起こす」をミッションに活動しています。私は、高齢社会に根ざす様々な社会課題に、エンジニアリングの文脈で切り込む面白さは、やはりそこに眠る歴史の遺産だと考えています。

すでに何かの形で提供されているサービスや仕組みをオーバーラップするためには、現行制度が今までに救ってきた人や解決してきた課題に最大限の敬意を払うことが必要です。社会に実装された仕組みの「歴史的経緯」を知らなければ最適な解決手段を見出すことはできません。

また「AgeTech」という高齢社会の課題を解決する事業領域において、日本を代表する企業となるためには、様々な事業領域を横断的に知る必要があります。結果としてこの領域にチャレンジすると、税務なら会計、手続きなら行政の仕組みや契約管理、金融なら財務など、様々な領域にバランスよく触れ続けることができます。

このように高齢化、人口減少という切り口から様々な事業領域に触れられることが、AgeTechという切り口で戦う面白さといえます。



少しでも興味を持てるなと思う方は、ぜひ一度お話ししましょう。

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