「うちの会社を表現する言葉は、たぶん世の中にないんですよ」
日本で働きたい外国の方と、その力を必要としている日本企業をつなぐ。ルネサンスが手がける仕事です。
ただ、採用したい企業と求職者をマッチングするだけではありません。
企業自身もまだ気づいていない仕事や、海外から日本に来た人の中に眠っている可能性を、直接会い、話をしながら見つけていく。
既存の言葉だけでは、なかなか説明しきれない。そんなルネサンスの事業と、これからつくろうとしているチームについて、代表の海老原さんに伺いました。
人を集めるところから、始めなくていい
僕たちの事業を一言で言うと、日本で働きたい外国の方と、その人の力を必要としている日本の会社をつなぐ仕事です。
ただ、同業他社とは少し構造が違うんですよね。人材紹介の会社って、コストの構造がだいたい決まっているんです。一番大きいのが人件費で、その次に来るのが広告費です。仕事を探している人と出会うために広告を出して、登録者を集める。普通はそこに、かなりのお金と労力を使います。
でも、うちはそこがすでにあるんですよ。母体のオークハウスには、現在約4,000人の外国の方が暮らしています。毎月300人から400人ほど新しい方が入ってきますし、過去に住んでいた方まで含めると、さらに多くの方とのつながりがあります。30年近くシェアハウスをやってきた会社なので、その積み重ねがあるんですよね。
つまり僕たちは、すでに隣に、日本で暮らしている人たちが何千人もいる状態から仕事を始められる。この差はかなり大きいと思っています。走り出すまでの速さが、ルネサンスの強みだと思います。
では、人を集めるために使わなくてよくなった時間で、何をするのか。
僕たちは、その分、企業に会いに行きます。
企業も気づいていない「本当の困りごと」を見つける
企業を一日3件、4件と回って、直接話を聞いていきます。
この間、都心で英語を使った学童保育を展開している大きな会社に行ったんです。うちには英語を話せる方がたくさんいるので、最初は、先生として働ける人を紹介できるんじゃないかと思っていました。
でも、話を聞いてみると、先生はちゃんと採用できていたんです。本当に困っていたのは、現場をまとめるマネジメント側の人材でした。
日本語をベースに仕事ができて、英語でもある程度コミュニケーションが取れる人が欲しい。英語はネイティブじゃなくていいし、マネジメントの部分は入社してから育てられる。最初にこちらが想像していた人材とは、全然違ったんですよね。
こういうことが本当に多いんです。一軒一軒行けば行くほど、行く前には想像もしていなかったニーズが出てくる。
たとえば、日本酒をつくっている会社が、これからフランスに商品を売りに行こうとしているとします。
でも、その会社の中にフランス語を話せる人がいるかというと、たぶんいないじゃないですか。場合によっては、フランスに新婚旅行で一度行ったことがある、くらいの人が担当することになるかもしれない。
一方で、うちには日本が好きでフランスから来て、何年も日本で暮らしている人がいます。日本の会社や文化のことも分かっていて、フランスのことも分かっている。その人が母国に向けて営業したら、たぶん全然違うことが起きると思うんです。
単に日本語をフランス語に訳せる、という話ではありません。なぜこの日本酒がつくられたのか。つくっている人が何を大切にしているのか。日本では当たり前すぎて説明していないような細かな魅力やニュアンスまで、相手の感覚に合わせて伝えられる。
それは、日本人が外国語を覚えて営業するのとは、また違う強みになると思うんですよね。日本企業が、これまで当たり前のように日本人に任せてきた仕事の中にも、実は海外から来た人のほうが向いている仕事がある。でも、そこに気づいていない会社って、日本にものすごく多いと思うんです。
僕たちが探しているのは、単に「外国人を採用したい会社」ではありません。企業と話しながら、その会社が本当は何に困っているのかを一緒に探していく。人を探しているというより、まだ名前のついていない仕事や役割を見つけている感じに近いんですよね。
つながりを、関係に変えていく
ただ、人とのつながりがあるだけではダメなんです。
以前、「仕事のことについて話したい人はいますか」という、軽い内容のアンケートを送ったことがあります。そうしたら、70人くらいから反応が返ってきました。話したいと思っている人は、たくさんいるんですよ。でも、その人が本当はどんな仕事をしたいのか、何に困っているのかは、アンケートだけでは分かりません。
会って話さないと、出てこないことが本当に多いんです。遠慮していたり、周りに気を遣っていたりして、自分が本当に思っていることをうまく言えない人もいます。かしこまって面談するより、冗談を言い合えるくらいフラットな関係になったほうが、本音が出てくることもあるんですよね。
だから、僕たちは直接会って話す場を大切にしています。オークハウスのグループでは、入居者向けのイベントを年間約330回開催しています。仕事の相談会ではなくて、食事をしたり、お酒を飲んだりしながら、そこにいる人たちと普通に話します。そうすると、日本に来てから半年間、仕事が全然見つからなかった人が、自分の経験を話してくれることがあります。
市役所に一人で行けなくて、手続きに困っている人もいます。こちらから会いに行かないと、届いてこない話ってたくさんあるんですよね。そういう場を重ねていると、あとになって「実はこういう仕事を探していて」と相談してくれることもあります。もちろん、いつもイベントから関係が始まるわけではありません。僕たちから企業や求職者に連絡して、そこから少しずつ知っていくこともあります。入り口はいろいろあっていいと思っています。
ただ、どんな出会い方であっても、求人票や経歴書だけを見るのではなく、目の前の人をちゃんと知ろうとする。そこは変わらないんですよね。一番いいと思っているのは、来た案件をただ処理するんじゃなくて、自分から仕事を見つけてくる状態です。
たとえば、イベントで話した人から面白い話を聞いたら、写真を撮って、インタビューして、記事にしてみる。その人の経験が、同じように困っている誰かに届くかもしれないじゃないですか。
誰かに言われる前に、自分で仕事の種を見つけて、形にしてくれる。そういう状態が一番いいなと思っています。
まだ決まっていないから、面白い
この事業を始めるとき、最初にやったのは、きれいな資料をつくることではありませんでした。人材業界で働いている知り合いに連絡して、「実はこういうことをやろうと思っているんです」と話しに行ったんです。実際に人に話すと、一気に解像度が上がるんですよね。良いところだけじゃなくて、ダメなところもちゃんと言ってくれますから。それを何回か繰り返しているうちに、少しずつ事業の輪郭が見えてきました。
完璧なものをつくってから持っていくというより、まだ完成していない状態でも、一度人に見せてみる。そこで出てきた反応を受けて、また変えていく。たぶん、そのほうが今の僕たちには合っているんですよね。そうやっていろいろな人と話していく中で、自分の意思で日本を選び、ここで暮らしている人たちの存在が、改めて見えてきました。
その一方で、その人たちの力を必要としているのに、まだ自分たちでは気づいていない企業がある。僕たちがやっているのは、その間にあるものを一つずつ見つけて、つないでいく仕事なんだと思います。
正直、やり方はまだ決まっていません。
事業を始めてまだ数か月ですし、いろいろな人と相談したり、意見を言ってもらったりするたびに、たぶん変わっていきます。僕が今話していることも、1か月後には変わっているかもしれない。でも、それでいいと思っているんです。だからこそ、ここでやろうとしていることを面白いと思ってくれて、自分でも動いてくれる人と働きたい。決められた仕事を受け取るのではなく、自分から人に会って、仕事を見つけて、形にしていく。
まだ名前のない仕事を、一緒につくっていく。そういう人たちと、これからのチームをつくりたいと思っています。