「希望の案件に入れます」
SES企業の求人票で、一度は見たことがある言葉ではないでしょうか。
一見すると、とても魅力的です。
自分のやりたい技術に挑戦できる。キャリアも思い通りに積める。そんな未来を想像してしまいます。
しかし現実には、入社後まったく希望していない案件にアサインされる――いわゆる「案件ガチャのハズレ」が、いまだに後を絶ちません。
なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。
結論から言うと、それは個人の問題ではなく、構造の問題です。
「案件ガチャ」が起きる、本当の理由
SES企業のビジネスモデルはシンプルです。
エンジニアが案件に参画して初めて売上が立ちます。
つまり、エンジニアが現場に出ていない「待機(アベイラブル)」の状態は、そのまま会社の赤字に直結します。
この構造が、すべての歪みの出発点です。
本来であれば、エンジニアのキャリアや希望を丁寧にすり合わせ、最適な案件を選ぶべきです。
しかし現実には、そうもいきません。
特に月末や四半期末など、数字の締めが近づくタイミングでは、状況はより顕著になります。
- とにかく誰かを案件に入れたい営業
- 少しでも早く稼働してほしい会社
- まだ案件が決まっていないエンジニア
この三者の力関係の中で、最終的に優先されやすいのは「キャリア」ではなく、「稼働しているかどうか」です。
結果として起きるのが、
- スキルとミスマッチな案件
- レガシー環境へのアサイン
- 本人の希望と大きく乖離した業務内容
いわゆる「案件ガチャのハズレ」です。
「嘘」というより、「言えない構造」
ここで一つ、冷静に考えるべきポイントがあります。
「希望の案件に入れます」という言葉は、本当にすべて嘘なのでしょうか?
実は、多くの場合そうではありません。
正確に言うと、「嘘をついている」というよりも、「言えない構造になっている」のです。
営業も人事も、本音ではこう思っています。
「できる限り希望に近い案件に入れたい」
「でも、状況によってはそれが難しいこともある」
ただ、それをそのまま伝えるとどうなるか。
求職者は不安になりますし、選考にも影響が出る。
結果として、「基本的には希望に沿えます」という、少し曖昧で都合のいい表現に落ち着いてしまうのです。
この「グレーな約束」こそが、入社後のギャップを生み出します。
面接で見抜く「魔法の質問」
では、どうすればこのギャップを防げるのでしょうか。
シンプルですが、非常に効果的な質問があります。
「もし希望の案件がなかった場合、どういう対応になりますか?」
この質問を投げたときの、企業の回答に注目してください。
🚨 危険な回答
「大丈夫です、絶対にあります!」
「これまでそういうことは一度もないですね」
こういった「100%を保証する回答」は、正直かなり危険です。
なぜなら、この業界において「絶対」はありえないからです。
案件は水物であり、タイミングや市場状況に大きく左右されます。
それを断言するということは、
- 現場を知らない
- もしくは、リスクを隠している
どちらかの可能性が高いと言えます。
✅ 信頼できる回答
一方で、信頼できる企業はこう答えます。
「希望の案件が見つかるまで待機して探すか、
もしくは一定期間だけ別案件に入っていただく可能性があります」
「例えば3ヶ月限定で経験を積みながら、並行して次の案件を探す形になります」
このように、
- リスクを明確に伝える
- 代替案を具体的に提示する
企業は、かなり信頼度が高いです。
都合の悪いことも含めて説明してくれるかどうか。
それが、入社後の満足度を大きく左右します。
「選ばれる側」から「選ぶ側」へ
SESという働き方そのものが悪いわけではありません。
実際に、さまざまな現場を経験できるメリットもあります。
ただし、その裏側にある構造を知らないまま選んでしまうと、ミスマッチが起きやすいのも事実です。
大切なのは、「企業に選ばれる」だけでなく、自分も企業を見極める視点を持つこと。
- リスクをきちんと説明してくれるか
- キャリアについて現実的な話ができるか
- 都合のいいことだけを言っていないか
その一つひとつを丁寧に見ていくことで、「案件ガチャ」に振り回される可能性はぐっと下がります。
「希望の案件に入れます」という言葉は、確かに魅力的です。
でも、その言葉の裏にある現実を知らなければ、後悔する可能性もあります。
大事なのは、甘い言葉を疑うことではなく、その言葉の「条件」を確認すること。
少し踏み込んだ質問をするだけで、見える景色は大きく変わります。
あなたのキャリアは、会社任せの「ガチャ」ではなく、自分の意思で選べるものです。
また、希望案件に入るためには何が足りていないのか、アクションとして何が必要なのか、
現在地から希望案件や理想のエンジニア像に近づくために「今、市場で価値を出すために何を学ぶべきか」まで伴走してくれる会社は良い会社と言えるでしょう。
元エンジニアの私の肌感覚ですが、やりたい領域からはちょっと外れるけど学習していたことが、数年後に点と点が線になって価値を爆上させるというのはよくある話です。
会社任せではなく継続した学習とそれに裏付けされた理想をしっかりと会社と話すこと、それができる環境に身を置くことが希望する案件にチャレンジできる鍵なのではないでしょうか。