今回は、入社直後から1人部署の部長としてEC事業部の創設に立ち会った河野友美さんにお話を伺い、2年間で売上1億円を達成したハートウエルのEC事業がどのように成長してきたかをご紹介します。
入社当時のEC事業は「実質稼働ゼロ」
——まずは河野さんの入社からEC事業部立ち上げまでの経緯をお聞かせください。
河野さん「ハートウエルに出会ったきっかけは転職期間中にWantedlyの募集を見たことです。前職では東京のサイバーエージェントの子会社へ出向し、メディアの運営をしていましたが、もともと地方創生に関心があったため、社会人1社目は地元小田原のEC事業を主力とする企業で就職をしており、ハートウエルも愛媛・今治という地方都市で頑張っている会社として好印象を抱いていました。入社前の面談で前社長の池永とお話ししたところ、当時ハートウエルのECサイトは存在しているものの稼働していない状況だと伺いました。そのため池永からは「何をしてもいい」と言っていただき、それならチャレンジしてみようかと思い、2020年1月に入社しました」
——EC事業の稼働が実質ゼロという状態からでも取り組もうと思える、ハートウエルの魅力は何だったのでしょうか?
河野さん「1社目で入社した会社は地方にありながらEC事業で大きな成果を上げており、事業を成功させること自体はどこでも可能だと感じていました。また、ハートウエルの場合は糸の染色から織りまで内製できる体制がありました。。OEMではなく自社の商品を作り販売できることに魅力に感じ、ECの力でさらに利益率の高い事業を創出できればと思いました」
——入社当時のECサイトはどのような使われ方をしていたのでしょうか?
河野さん「過去のデータを見ると2回ほどリニューアルされたことがある様子でしたが、EC担当者はいなかったため集客施策も打たれておらず、サイトはただ存在しているだけでした。一応月に一件ほど受注はあったようで、そのときは卸の出荷を担当していた部署がついでに出荷してくれていたそうです。そんな状況の一方で、過去のリニューアルは外部に委託してまで行っていたようで、きっと社内でも「ECをやらなきゃいけない」という意識があったものの取り組み方が分からない、というのが実態だったのかなと思います」
まずは大手モールへの出店から
——ハートウエルのEC事業部としてスタートしたときはどのような心情でしたか?
河野さん「個人的に前職まで扱っていたものがスマホケースなどの雑貨品だったので、肌に触れて使うタオルのような日用品をネットで売るのは難しいんじゃないか、と感じて少し不安でした。一方で「今治タオル」ということによって一定の需要がある市場はやりやすいのと、タオルという商品はギフトとしての需要も高いということがわかったので、この場合は店頭販売よりもネットの方が相性がいいだろうと感じていました」
——では具体的にどういった形で取り組み始めたのかを教えてください。
河野さん「会社から「こうしてほしい」という方針は与えられず、自由にやってよいとのことだったので、まずはAmazonや楽天など大手のECモールに多店舗出店しました。これは私の経験からモール運営が得意だったことと、ゼロの状態から独自ドメインの自社サイトを集客して伸すイメージが湧かなかったためです。自社サイトの運営に関しては、池永から「サイトをリニューアルしたい」と言われていましたが、「モールでの売上を立ててから、その資金でサイト構築の外注を出そうと思います」と伝えていました」
——まずは自社サイト以外での売上を安定させてから、という順番だったんですね。
河野さん「そうですね。とりあえず目の前の資金が欲しいフェーズが続いていたため、短期的に売上を立てるのはモール店舗で、将来的に利益を回収するのは自社サイトで、という計画で取り組んでいました」
——EC事業部の立ち上げ時、メンバーは河野さん1名のみという状況だったと伺ったのですが、事業部の体制はどのように進められてきたのでしょうか。
河野さん「当初はできるだけ小さい組織でやろうと思い、しばらく1人で進めるつもりでしたが、そのときコロナ禍によってマスクの需要が急激に上がったんです。そこでハートウエルでもマスク製品を企画・販売したところ受注件数がとんでもない数になってしまって、人手不足を補うために採用を行いました。まず採用したかったのはお客さま対応のできる方と、各モールでの担当者です。後者に関しては、例えば楽天ならポイント施策、Amazonなら値引きや配送スピードなど、モールごとの特性に応じた施策を考える必要があるので、個別の傾向を掴むために担当者を増やすことが目的でした。そうした流れで2020年9月に入社したメンバーのうちの1人がデザイナーだったため、その方にECサイトのリニューアルも依頼し、2021年3月に自社サイトのリニューアルが完了しました」
3年目を迎えたEC事業部のこれから
——自社サイトのリニューアルも完了し、ひととおりEC事業は刷新されたかと思いますが、そうして2年目を迎えたEC事業部は安定した状態だったのでしょうか?
河野さん「それがずっと大変で、爆発的に売れたマスクもその後は需要が減っていき、今度こそ「ネットで選びにくい日用品としてのタオル」をどう売っていくのか、という問題にぶつかりました。ただ、ちょうどEC事業部と同時期に立ち上がった企画部の企画した新商品がメディアで取り上げられるなどして、定期的にバズる状況を作ってもらえたので、それに応じた売上が生まれるのが2年目でした」
——たしかにネットでの反響はECとも相性がいいですもんね。そして今、マーケティング部EC事業グループとして3年目の最中です。
河野さん「3年目となって今度こそバズの勢いに頼ることも難しくなり、いよいよ自力で売上を立てていかなければいけない段階になっていますが、ECの基盤に関してはモール・自社サイトとも技術的に整っています。これからは「どんな施策を打っていくのか」「メルマガをどう運用するのか」「どうすれば顧客のライフタイムバリューを上げられるのか」といったことにフォーカスできるので、ハンドリングはしやすいです。バズに頼っていると、その瞬間は想定外のタスクに追われてしまってサイトの機能リリースが遅れてしまうなどの弊害もあったため、実直にこつこつ進められるのは良い状態なのかなと思います」
ツールの導入と製造現場の協力
——ここまで苦労されたことはありますか?
河野さん「入社当初はEC事業が全く稼働していなかったことから、本社の在庫状況を把握・連携するためのシステムも整っておらず、どれだけ受注していいのかなど自力で確認が取れず大変でした。最初は電話で確認したり現場に行って写真を撮ってくるなどしていましたが、現場の方に話を聞いてもタオルのづくりの専門用語が理解できず二度手間三度手間になることも多々ありました。現在は商品管理のツールを導入し、モールでの販売状況とも連携できています」
——やりがいやモチベーションにつながったエピソードはありますか?
河野さん「私は入社してからフルリモートでEC事業に取り組んでいましたが、それに応じて製造現場の方々にコロナ禍での出勤・稼働をしてもらうのは少し負い目を感じていました。それでも本社の方々は好意的に捉えてくれていて、「出荷はお祭りみたいなんだよ」と笑い話にしてくれていたのが印象深いです。商品管理やチャットのツールの導入に際しても積極的に使いこなしてくださり、会社をあげて前に進むための姿勢を感じられたのはやりがいにつながりました」
フルリモート下で個人の生活を大切に
——EC事業グループの特徴や雰囲気をご紹介ください。
河野さん「効率化を重視する傾向が強いですね。定時内で帰りたいなど、ライフワークバランスを意識している人が多いです。あとは、誰もが扱える業務に関してはタスクを明確に縦割りのような分担をせず、そのときできる人が引き受けるという体制をとっています。各メンバーが「デザインが強い人」「広告が強い人」「お客さま対応に優れた人」など個別の強みを持っているので、それ以外の誰でもできる業務はあえて個人を指定せずに都度呼びかけて、ミスもみんなで防いでいくというスタイルです」
——フルリモートとのことですが、コミュニケーションはどのようにとっているのでしょうか?
河野さん「バーチャルオフィスというものを導入していて、出勤時はバーチャルオフィス上でアイコンを近づけると音声通話につながるので、実際のオフィスと同じ感覚で話しかけることができます。バーチャルオフィス上に「フリーエリア」や「個人作業部屋」なども用意してあるので、仕事の状況や取り組みたいスタイルに応じて環境を選べます。メンバーの中でも積極的に会話をしたい人やそうでない人はいるので、定例のミーティングはしっかり設けて、最低限のコミュニケーションの機会を確保するようにしています」
製造現場との連携を楽しめる人に期待
——では、EC事業グループとしての今後のビジョンをお聞かせください。
河野さん「会社としてのビジョンも去年制定され、それを踏まえて「ファンとのコミュニケーションを大切にしていく」という方針があるので、自社サイトでもポイント機能や交流の場所を設けるなど、今までモールの方に割いていたリソースを移していくフェースだと考えています。また、EC事業グループとして常に意識しているのは利益率です。私たちが利益率を上げればきっと製造現場の人たちの給与水準も上がるだろうし、ものづくりの余白も生まれる。今後もまず私たちが頑張ることで会社全体にいい流れが生まれると思っています」
——最後に、EC事業グループにぜひジョインしてほしい人物像を教えてください。
河野さん「コミュニケーションを楽しめる人ですね。フルリモートですが製造の現場との連携が必要な場面はたくさんあるので、それに積極的にチャレンジできる人がいいと思います。こちらから接点を持たなければ製造現場の人たちとはコミュニケーションが生まれにくいので、職人に対してリスペクトを持ちながら交流でき、気軽に雑談が生まれるような環境を作れる人なら、会社の結束力にも良い効果を与えてくれると思います。また、ハートウエルの商品は国産のものが中心です。このことを「高くて売るのが難しい」と否定的に捉えるのでなく、強みとしてポジティブに捉えて、タオルのことを好きになるまで向き合える人を待っています」
——ありがとうございました!