最近、地域と宿泊施設の関係づくりについて、講演や質問を受ける機会がたまたま2度ほどありました。
前職UDSで、宿泊施設がどのように地域とつながれるかは重要なテーマだったので、当時の記憶を蘇らせつつ、いつも以上の熱弁に。。
と同時に、ぼくらがいま都農町で「まちづくりの合宿所」をコンセプトに経営している HOSTEL ALAの改善、さらには、来年度から高鍋町ではじまる観光協会のお仕事を踏まえ、宿泊施設と地域の共創関係やあたらしい観光の創造についての考えをまとめてみました。
考えるフレームとして、パターン・ランゲージを活用した、慶應SFC井庭崇教授との共著「おもてなしデザイン・パターン」の28パターンから8つのパターン(=コツ)を紹介します。
1.キャラを立てる
まず最初に、地域とつながりをつくるにあたって、
◯◯ホテルの人
◯◯会社の人
では関係が深まりません。
自分の個性・強み・持ち味を活かして接することがスタート。
会社やマニュアルに縛られず。
自分にとって自然な振る舞いや特徴を押さえ込まずに。
それが適度ににじみ出るように。
自分らしくいきいきとしたコミュニケーションの実践が欠かせません。
このパターンのもとになったあるホテリエのエピソード
いままでのホテルだと、こうあるべきという着ぐるみをきて接客してました。ここでは、時折、着ぐるみのファスナーをおろして素を出せるので自分らしい接客ができて、ゲストの満足度も高まってる気がします。
2.面で迎える
自分のホテルに来るゲストに、なんと言って挨拶をするのか?
そんな問いからはじめた、島であたらしくつくるホテル開業準備メンバーとのレゴ®️シリアスプレイ®️ワークショップ。
そこで出た結論は
「ようこそホテル◯◯へ」
ではなく
「ようこそ◯◯島へ」
でした。
自分たちのミッションは、ホテルの運営ではなく、島の海を守ること
彼らが開業前に導き出したコンセプトでした。
3.好きから入る
ホテルの開業準備打合わせでの会話
レストランのコンセプトを決めるにあたって、「生産者の顔が見えるレストランってやっぱ素敵だよね」という話題から「ホテリエが獲った魚をレストランで提供できたら面白いけど、、あれ、そういえばAさん、魚突き、趣味じゃなかった?この際、漁師になっちゃおうよ!」とその場が大いに盛り上がり、全国でもめずらしい「ホテルマン×漁師」が誕生しました。
Aさんのシフトは週4日フロント、週1日魚突き。
地元の漁師さんと飲み倒し、漁師免許も手に、獲れすぎたときは普通に市場におろしていました。
その後、シフトが逆転、いまでは漁師として独立しました!
4.裏側のストーリー
これだけSNSやネットが浸透してくると事前に調べることができるため、地域のおすすめ情報をわかりやすく紹介するだけでは、ゲストをワクワクさせることはできません。
何かを紹介する際にはガイドブックやネットには載らないような、その地域の人だからこそ知っている背景や成り立ちのストーリーや、自分が見て回って感じ取った体験談などを添えてみるのはいかがでしょうか?
5.ローカルな楽しみ方
ゲストに地域を深く味わってもらえる情報を提供したい状況で、メディアで紹介されている情報は、訪れてきた人が非日常として楽しむことに重点が置かれていることが多く、その地域の本来の楽しみ方とは異なることがあります。
その地域に暮らしている人たちや常連の人たちの楽しみ方を伝え、それを味わうことができる情報も提供してみてはいかがでしょうか?
6.偶然を楽しむ余白
ゲストに地域の楽しみ方を提案しようとしている状況で、きっちりと中身の詰まったプランを組んでしまうとゲストがそのときどきに感じたふとした気づきやその場で生まれた興味を大切にできなくなってしまいます。
感動や驚きなど、そのときの気持ちをじっくり味わえたり、偶然の出会を楽しむことができたり、またそのときに自分で選ぶ楽しさを感じられたりするような、余白のあるプランを提案してみてはいかがでしょうか?
7.出会いのデザイン
ゲストに、この場を離れてもときどき思い出してもらえるような時間を過ごしてほしい状況で、今ここでめいっぱい楽しんだとしても、その場所から離れたら忘れられてしまうかもしれません。
そこで、ゲストが地域の人に出会えるように紹介し、人と人のつながりができるように橋渡しをしてみてはいかがでしょうか?
8.外から見た良さ
地域の魅力を活かした企画や発信をしていきたい状況で、地域の独自性やポテンシャルは、その地域に詳しくなければわかりませんが、ずっとそこにいる人には見出すことは難しいものです。
そこで、地域の中にいながらも、外からの視点も持つようにし、その2つの視点を強みとして、地域の魅力・独自性を引き出してみてはいかがでしょうか?
9.まとめ
慶應SFCの井庭崇教授によると、「もてなす(持て成す)」の語源を紐解くと、
「持て」は
”意識的に” ”心で大切にして”
「成す」は
”事を成し遂げる” ”生み出す”
つまり、おもてなしとは、
意識して何かを生み出すこと
自分で考えることや、発想や工夫を大切にすることが求められるのだとわかります。また、心地よい体験をつくるためには、お客様の経験の連続性を捉える想像力も欠かせません。
自分たちの「持て成し」を実現するためには、自分の持ち場を超えた視点を持ち、「丁寧な接客」を超える自分で考えるクリエイティブな姿勢でいることが大切なのだと考えてます。