地域は、誰かの“好き”からはじまる——。
今回取材をしたのは、大分出身で大学4年生・LOCUS BRiDGEでインターンをしている菅陸太さん。
授業での出会いをきっかけに、自らの「地域への想い」に気づき、LOCUS BRiDGEでのインターンに飛び込みました。
「プロモーションがしたい」そんな気持ちから始まった挑戦は、やがて “地道な仕事” の中にある本質に触れていきます。
今を全力で吸収しながら、地域にも、自分にも、丁寧に向き合っていく——。そんな姿をご紹介します。
菅 陸太(合同会社LOCUS BRiDGE インターン)現在大学4年生。経営とデザイン思考を中心に勉強中。映像制作や音楽制作にも取り組んでいた。大分県出身で、大学の公共について考える授業をきっかけに地方や町への興味を自覚した。2025年3月よりインターン開始。ふるさと納税支援やデータ収集、新卒採用を担当中。
公共・地域のキーワードから紹介された、LOCUS BRiDGE
LOCUS BRiDGEのインターン一期生として挑戦をしている菅さん。そもそもLOCUS BRiDGEに関わるきっかけはどんなところにあったのでしょうか。
「今は東京理科大学国際デザイン経営学科の4年です。変わった名前の学科ですが、デザイナーが商品やサービスを企画するときの “考え方(デザイン思考)” を鍛えながら、グローバルな視点を取り入れた多角的な経営を学んでいます。グループワークが多くて、実践的に学べるのが特徴です」
高校の進路選択で選ぶには少々難解な学科という印象もありますが、菅さんの選択理由は至ってシンプルでした。
「高校の時は放送部に所属していて、映像制作をやっていました。当時部長だった僕は、メンバーが制作しやすい環境をつくるには、どんな仕組みが必要だろう?どんな役割分担がいいのか?を考えるのがとても楽しくて。その時 “場づくり” の面白さに気づいて、デザイン思考とグループワークの多いこの学科に興味を持ちました」
菅さんがLOCUS BRiDGEに出会ったのは、大学3年生の終わり頃。鈴木美央さん(*1)の授業から急展開が起きていきます。
「Global Public Lifeという授業があって、“Public(公共)” という響きがいいなと思い、なんとなく履修したんです。衝撃でした。 美央さんの『答えがなくてもいい』というスタンスと、『地域の人たちを元気にしたい』という思いや行動に触れた瞬間、大学を選んだときに僕が興味を持っていた “(所属場所の)場づくり” が一気に拡張性を帯びて、『どうすればみんなが楽しく暮らせるか?』に興味が広がったんです」
「しかも、授業の中で自分の故郷を紹介するという課題があったんですが、みんな10分くらいで発表しているのに対して、僕は40分も語ってしまったんですよ(笑)。この時はじめて、“僕は故郷が大好きなんだ” と気がつきました。18年間育ってきた場所だからこそ、好きという意識を持ったこともなかったし、誰もが同じくらい故郷に思い入れがあると思っていたんですよね」
自分の新たな好きを発見した菅さん。就職活動にも公共・地域のキーワードを加えたといいます。
「アパレルも好きなので、自分の好きに正直に、色々な会社を見て探していた時に、たまたま美央さんから『私の知り合いの会社、面白いよ』と紹介されたのがLOCUS BRiDGEでした。その後すぐに、共同代表の林さんにお会いする機会があって。『この人たちとなら、もっと地域に関わる仕事ができるかも』と思ったのが最初のきっかけでした」
惹かれたのは「地域への真摯さ」。実際に働き感じたギャップとは
すでに多種多様な企業を見ていた菅さんでしたが、LOCUS BRiDGEに一瞬で惹かれていきます。そこにはどんな理由があったのでしょうか。
「地域に対する真摯さに驚かされました。床面積や売上など経済的な視点も大事ですが、それ以上にLOCUS BRiDGEには “地域の人がどうすれば幸せになれるか” を本気で考えている大人たちばかりがいて。地域のことを熱心に語っている姿をみて、こんな働き方があるんだ、ちょっと覗いてみたいと思いました」
実は、実際に関わってからは思い描いていた仕事像とギャップを感じているという菅さん。赤裸々に教えてくれました。
「正直、最初は “企画” とか “プロモーション” とか派手な仕事ができると思っていたんですよ。でも実際に働きはじめたら、ECサイトの説明文を書いたり、SEO対策をしたり、数値のチェックをしたりと地道な仕事が多くて。でも今は仕事って地道なことの積み重ねだと思っています。
考えてみれば、僕はまだまだ力がないし、地域のことも知らない。だったら、今自分にできることを積み重ねて、少しずつ理想に近づいていくしかないなと
地道な仕事を続けていると、そこから作り手の思いや地域の背景が見えてくるんです。だから、地道な仕事はただの事務作業ではなく、意味のある仕事なんだと気づきました。そう考えられるようになったのは、間違いなくこの環境のおかげです」
地域・仕事に対するスタンスを学べる場所で、できること
とても前向きに、丁寧に、一つ一つの仕事と向き合っている菅さん。愚直に努力ができる背景には、LOCUS BRiDGEで一緒に働く仲間の大きな存在もありました。
「皆さん、商品にとても詳しいし、いつもオフィスで熱く語っているんですよ。そういう先輩たちを見ると、『あ、こんな風に地域と向き合っていいんだ』って思えるんです」
仕事を受託するまで接点のなかった地域でも、菅さんが40分授業で語ったのと同じくらいの熱量で語るLOCUS BRiDGEのメンバーたち。それは何度も何度も地域に足を運び、理解し、自らが好きになっているからこそ。そんな大人たちの姿に、菅さんの心は大きく揺さぶられていきます。
「モチベーションが高い大人に囲まれて働けることって、本当に貴重な経験だと思っています。LOCUS BRiDGEには仕事を “やらされている” 人が一人もいない。そして、 “自分のやりたいこと” を仕事にしている大人は本当に輝いているし、やりたいことをやるためには、ちゃんと力をつけて、責任を持てる人になる必要があることも教えてもらいました。
だからこそ、僕は今はとにかく『自分が吸収できることは全て吸収しよう』という気持ちで働かせてもらっています。いずれこのご恩を返せるタイミングがくると信じて、今はできるだけ多くのことを学びたい。無駄なことなんて、ひとつもないと思うので」
派手なことじゃなくても、今できることをひとつずつ積み重ねることが、いつか地域を動かす力になる。
LOCUS BRiDGEでのインターンを通じて、菅さんはそんな “仕事の本質” に触れながら、着実に歩みを進めていました。
(*1)鈴木美央さん東京理科大学 経営学部国際デザイン経営学科(講師)「横浜大さん橋」を手がけた設計事務所Foreign Office Architects ltdにて2006年から2011年まで勤務。 コンセプトステージから竣工まで世界各国のプロジェクトを担当。帰国後、慶應義塾大学理工学研究科勤務、公共空間研究を開始。2016年よりO+Architectureを主宰。建築意匠設計、行政・企業のアドバイザー(ビジョン提案、公共空間活用、商店街支援等)、マーケットの企画・運営、研究・教育と建築に関わる業務を多岐に行う。 2018年に「マーケットでまちを変える人が集まる公共空間のつくり方」(学芸出版社)を出版、第九回不動産協会賞受賞。