「365日、誰が作っても同じ品質を!」商品設計と工程で支えるナリコマの美味しさ〈後編〉| 製造本部 本部長 高橋 和樹
「"ALL for ONE SPOON" 食の可能性をデジタルで広げ、『一さじの喜び』を届け続ける」
食事を通して人々に生きる喜びを届けるべく、高齢者福祉施設や医療機関向けに食事サービスを提供する、株式会社ナリコマホールディングス(以下、ナリコマ)。大阪府大阪市に本社を構え、関西を中心に成長を続け、この春からは東京拠点にも力を入れ、全国にサービスを拡大してきました。
今回は前編に続き、ナリコマ 製造本部 本部長の高橋 和樹にインタビュー。後編では、毎日53万食、365日違う献立を4つの食形態でご提供することを実現するための工夫、そして今後の展望について、詳しく語ってもらいました。
なお記事の執筆には、株式会社ストーリーテラーズさんにご協力いただきました。
毎日53万食、365日違う献立を4形態で![]()
ナリコマでは現在、全国で約18万名様分、1日3食、合計53万食のお食事を毎日製造しています。さらに、365日全食異なる献立でご提供しています。
これを支える重要な役割の一つが、購買部門、つまり食材を調達する部門です。毎日毎食異なる献立を実現するためには、それに対応できる調達体制が不可欠であり、購買部門がその役割を担っています。
たとえば最近では、日中関係の悪化により、中国から輸入している食材の一部が入手しにくくなるといった影響も出ています。そうした状況に対しても、早い段階でリスクを察知し、別の国の食材に切り替えたり、国産のものに置き換えたりと、原価を維持しながら安定調達ができるよう柔軟に対応しています。これも、毎日のお食事を滞りなくご提供し続けるための重要なポイントです。
また、当社のお食事は通常食・介護食・ソフト食・ミキサー食の4つの食形態でご用意しています。たとえば通常食でハンバーグをお出しする場合、介護食のソフト食・ミキサー食・ゼリー食の3形態でもハンバーグをお出しします。ただし、工程表やレシピは食形態ごとにすべて別のものになり、それぞれの食形態を専門に調理するキッチンに調理場所が分かれており、味とクオリティを安定して維持しています。
つまり、当社では「1日3食分の献立 × 4つの食形態」を365日分ご提供しているのです。
当然、運営する上で大変なこともあります。たとえば、「船の欠航でニンジンが届きません」といった急な事態が起こることも珍しくありません。
そうした場合には、別の食材に切り替え、献立そのものを組み直す必要があります。その際、商品開発部門や献立を作る部署、そして購買部門が連携し、「この代替案でいこう」と即座に判断します。その内容を営業部門とも共有し、お客様へ速やかにお伝えすることで、4つの食形態すべてを滞りなくご提供し続けています。
外的要因による突発的な影響は避けられないものですが、こうした対応が可能なのは、日頃から仕組みがしっかり整っているからこそですね。
365日違う献立へのこだわり![]()
365日毎食違う献立をご提供すること。これは当社の大きな強みであり、お客様からも高く評価をいただいている点です。もしこのこだわりがなければ、もっと多くの機械を導入し、さらに仕組み化・簡素化することもできるでしょう。
それでも当社がこの形を貫いている理由は、「美味しさを追求し、飽きのこないお食事を届けること」を何より大切にしているからです。
もちろん、これまでサイクルメニューにするという選択肢を考えなかったわけではありません。正直に言えば、「サイクルメニューにしたい」と思った瞬間は10回や20回ではきかないと思います。実際、営業部門からも「競合他社のように28日サイクルでも良いのではないか」という声が出ることもありました。
サイクル化すれば、お食事づくりは安定しますし、食材の調達もしやすくなります。必要なアイテム数も減るため、管理面でも非常に楽になりますし、仕組み化もしやすい。合理性という点では、良いこと尽くめです。
それでも、社内で何度も協議を重ね、お客様のお声をお聞きする中で、「このポリシーだけは変えてはならない」という結論に至りました。変えてしまえば、競合他社さんとの差別化が難しくなるからです。
実際、他社さんではサイクルメニューを採用しているところも多いです。業界全体を見ると、商品設計は自社で行い、調理は外部の食品工場に委託する、いわゆるOEM型の企業さんもたくさんあります。
自前で工場を持って調理するか、外部委託するか。2つの選択肢がある中で、ナリコマは前者を選び続けてきました。自前のセントラルキッチンで調理しているからこそ、365日3食すべて異なる献立にも対応できているのです。
献立作りの仕組み化![]()
365日毎食異なる献立のご提供を続けるためには、献立作りそのものも仕組み化しなければなりません。そこで近年は、献立作成の一部にAIを活用しています。
以前は、1年間の献立を管理栄養士が一からすべて考えていましたが、現在はベースはシステムで作れるようになっています。その上で、ベテランの管理栄養士たちが内容をチェックし、細かな調整やブラッシュアップを重ねながら、より良い献立に仕上げていくという流れです。
人の手で全ての献立を考えていた時は、管理栄養士への負担は相当なものでした。今はベースがシステムで作られることで、管理栄養士はメニューを磨き上げることに集中できるようになり、結果として献立の質も上がり、しっかり定時で帰れるようになってきました。こうして、毎日毎食異なる献立を無理なく作成できる土壌を整えています。
急拡大する工場、キャパシティ問題への対応![]()
社会状況や時代背景もあり、当社のお客様はどんどん増えています。本当にありがたいことではあるのですが、その一方で製造本部として今、課題になっているのが「セントラルキッチンのキャパシティ」です。これは最近、ナリコマグループ全体でもよく話題に上がるテーマです。
現在は全国6ヶ所のセントラルキッチンで、本州・四国・九州のお客様のお食事をカバーしていますが、このままのペースでいくと、将来的には明らかにキャパシティが足りなくなってきます。すでに岡山に新しいセントラルキッチンを建てている最中で、さらに仙台での開設も決定しています。
ただ、セントラルキッチンは建てて終わりではありません。新たな従業員を採用し、トレーニングを行い、育成し、安定して運営できる体制をつくる必要があります。日々53万食のお食事を作り、お届けし続けながら、その裏側で新しいセントラルキッチンの運営準備を行うというのは、なかなか大変な作業になってくると思います。
また、当社の事業の最大のマーケットは、福祉施設や病院の数が圧倒的に多い関東です。当社はこれまで関西を中心に成長してきましたが、昨年からは東京での営業やデジタルマーケティング体制を強化し、関東以北にも事業領域を広げています。
それにもかかわらず、関東エリアにはまだセントラルキッチンが1つしかありません。本音を言えば、もう1つ、できれば2つは必要だと思います。現時点では具体的な建設計画までには至っていませんが、関東以北でもよりスムーズにお食事を供給できる体制を整えていかなければならないと考えています。
私はナリコマに入社してからの15年間、新しいセントラルキッチンが次々と立ち上がるのを見てきました。この時代に、この規模の会社が国内でこれだけの投資を行うのはなかなか珍しく、本当にすごい勢いだと思います。多くの企業が国内投資を抑え、海外に進出していく中で、国内で拡大を続けているのは、この事業ならではだとも感じています。
純粋に営利目的だけを考えるのであれば、今の日本の状況でこれだけの投資を続ける判断はできないかもしれません。建築費はこの数年間で倍以上に跳ね上がっており、他業界では工場や建物の新設を見送る企業も非常に多くなっています。
しかし、当社はそんな厳しい状況下でも、「お困りのお客様がいらっしゃるのであれば、ぜひとも力になりたい」という考え方を大切にしています。その結果として、気がつけばこれだけ多くのセントラルキッチンを新設してきた、という感覚です。
また、建築費が高騰する中で、「これ以上、新規のお食事を引き受けない方が賢明だ」という判断も一理あるかもしれません。ただ、それは当社の社風に合わない。だからこそ、当社は怯むことなく、このままの勢いで走り続けるのだろうと思っています。
これからのナリコマ製造本部![]()
当社は縦割りの強い組織ではありません。営業部門など他部門と日常的に意見を交わしながら仕事を進めています。
最近は特に、新しい取り組みを進めるうえで、単独の部署だけで完結する仕事はほとんどなくなってきています。営業本部と製造本部が連携しながら進める案件も増えています。そんな中でも、各本部の考え方やマインドに大きなズレが生じていないのは、日頃からしっかりコミュニケーションが取れているからだと思います。
私自身、気がつけば製造メンバー以上に営業メンバーと話している時間のほうが長いかもしれません。製造現場には、信頼して仕事を任せられる仲間が大勢います。一方で、営業部門と製造部門をどうつなぎ、どう形にしていくかという部分は、どうしても私が関わらなければならない場面が多いんです。
製造本部のこれからとしては、日々のお食事づくりとお届けを止めることなく、新しい工場を一から建て、立ち上げていく。正直、なかなか大変な日々が続くと思います。
それでも、誰が作っても同じ美味しさを届けるために、商品設計と工程づくりを徹底するというナリコマの考え方は、これからも変わりません。この味、この品質を守りながら、全国のナリコマのお食事を必要とされるお客様にお届けし続けていく。その責任とやりがいを胸に、これからも挑戦を続けていきます。
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[執筆・校正・取材]株式会社ストーリーテラーズ 平澤 歩
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