探究学舎には、子どもたちの「好き」「おもしろい」「もっと知りたい」という気持ちに火をつける、LXDer(授業コンテンツ企画・制作)という仕事があります。
LXDerとは、Learning Experience Designerの略。
授業のテーマを深くリサーチし、コンセプトやシナリオ、スライド、アクティビティに落とし込み、子どもたちが前のめりになる“学びの体験”をつくる人です。
今回は、日本史シリーズを手がけたLXD部部長・木元隆雄にインタビュー。
歴史をただ暗記するのではなく、子どもたちが「なぜ?」「もっと知りたい!」と探究し始める授業は、どのように生まれるのでしょうか。
授業づくりの裏側から、探究学舎が大切にしている学びのあり方をお届けします。
1. なぜ「戦国時代」から学び始めるの?
——学校の歴史の授業と、探究学舎が届ける日本史の学びは、何が違うのでしょうか?
学校の歴史教育も変わってきてはいますが、ベースはどうしても「網羅して覚えること」になりがちです。旧石器時代から順番に長い時間軸をやっていくと、「人間ドラマ」が薄い時代から入ることになり、感情移入できない子どもたちは面白さを感じられず歴史嫌いになってしまうことがあります。
だから探究学舎の日本史シリーズは、最初から全てを網羅するのではなく、あえて「戦国」「江戸」「近代」の3つの時代だけを深く探究する構成にしました。
2. 戦国・江戸・近代の3つの時代にフォーカスする理由
——なぜ、数ある時代の中からこの3つを選んだのですか?
それは、僕らが今「日本っぽい」と感じる文化や社会システムが、実は戦国時代以降に作られたものが多いからです。
つまり、この3時代を学ぶことは「現代の日本(私たちが生きる社会)が、どうやって作られてきたのか」という、地続きの500年の物語を探究することなんです。
だからこそ、激しいダイナミズムと人間模様が渦巻く「戦国時代」から飛び込んでいく(学び始める)ことにしました。
3. 常識を疑う歴史探究の面白さ
——第1章の『戦国乱世編』では、どのように歴史を探究していくのでしょうか?
第1章では、「人の評価って難しいよね」ということを子どもたちに深く問いかけます。
授業の主人公は「徳川家康」。長い戦国乱世を終わらせた英雄として誰もが知る家康ですが、ドラマや映画によってその人物像の描かれ方はバラバラですよね。一体、家康は本当はどんな人だったのでしょう?
——確かに、タヌキ親父なんて言われたり、苦労人だったり、色んなイメージがありますね。
そうなんです。授業では、楽しいクイズを交えながら、当時の史料を紐解き、情報をつなぎ合わせて家康の「本当の素顔」に迫っていきます。
さらに授業のクライマックスでは、“歴史を紐解く技”を使って、戦国時代でも特に有名な「長篠の戦い」を紐解きます。これが家康の人生、ひいては戦国史における重要なターニングポイントになっているんです。
4. 歴史の真実と向き合うことで見えてくるもの
——面白そうですね!他にも有名な武将は登場するんですか?
もちろんです。例えば「織田信長」も扱います。ドラマや漫画のイメージだと「常識外れ」「残虐」「無頼者」といった印象があると思います。でも、最新の研究や実際の史料(手紙など)を見ると、信長はめちゃくちゃ「常識人」で「保守的」だったりするんです。
——えっ、そうなんですか!?
世間のイメージと実際の姿は違うんです。「じゃあ、この史料から見ると、彼はどういう意図でこの行動をとったのか?」を、子どもたち自身に読み解いてもらいます。
かの有名な「喧嘩両成敗」も同じです。現代の感覚だと「どっちも罰するなんて理不尽」に見えますよね。でも、中世の日本は「やられたらやり返す」が当たり前の自己責任社会でした。その無限の報復の連鎖を止めるために、当時の権力者が苦肉の策として生み出したのが「喧嘩両成敗」だったんです。
一見理不尽に見えるルールにも、当時の人たちの必死の知恵と理由があります。歴史の真実と向き合い、当時の価値観に触れて、戦国人の思考を徹底解剖する。意外な発見の連続に笑って、驚いて、明日誰かに教えたくなる。そんな風に、歴史が「生々しい人間ドラマ」へと一気に変わる体験を用意しています。
5. 頭だけでなく“身体”で歴史を実感する
——探究学舎のオンライン授業では、子どもたちが歴史を「体感」できる工夫もされているそうですね。
はい。例えば、日本地図を作った伊能忠敬の偉業を学ぶシーンがあるんですが、実はこの当時の地図づくりと同じ手法(測量)を、探究学舎スタッフで実際にやってみたんです。すると驚くことに見事に地図ができたんです。前回の『日本史シリーズ』を開講した時にすごく印象的だったのは、実際に「歩測」で近所の公園や家の周りを測る子どもが続出したことです。
「日本中を測り歩く大変さが、実際に自分の足で測ってみてわかった!」「身体で歴史の偉業の凄さを実感できた」という感想を沢山聞けて、すごく感動しましたね。
——他に、授業を受けた子どもたちに、どんな変化がありましたか?
お城の防御システム(石垣の積み方など)を授業で扱った時は、「近所の山城の跡地に家族で行ってきました!」という声がたくさん届きました。有名な天守閣ではない、もう石しかないような場所でも「ここは攻めにくい地形だね」と、かつての武将の目線で地形を見れるようになるんです。
歴史を探究したことで、ただの山や石垣が「極上のエンターテインメント空間」に変わる。この日常の視点の変化こそが、探究学舎が届けたい体験ですね。
6. ただの「歴史好き」で終わらない、その一歩先へ
——最後に、この授業を通して子どもたちにどうなってほしいですか?
歴史を学ぶ本当の意義は、年号を覚えることではなく、「現代の自分たちの社会を相対化して見る力」を養うことだと思っています。
ある出来事に対して、「この史料にはなぜそう書かれたのか?」「勝者の都合で書かれたものじゃないか?」と、情報源を疑い、精査し、自分なりに解釈する。
これって、今の言葉で言えば「クリティカルシンキング(批判的思考)」そのものですよね。
現代はニュースやSNSなどで情報が溢れ返っています。過去の人々と対話し、事象を読み解くトレーニングをすることは、現代社会で情報を受け取る時に必要な力と全く同じなんです。
ただの「歴史好き」で終わらせず、現代を生き抜くための「一段階濃くて深い思考力」を、この授業でぜひ手に入れてほしいですね。
探究学舎では、子どもたちの「好き」「おもしろい」「もっと知りたい」という気持ちに火をつけ、探究を学びの文化にしていく仲間を募集しています。
授業制作の裏側に興味をお持ちの方は、ぜひ一度お話ししましょう!