普段から、応募書類を見ることの多い立場です。
ご自分の長所として、人の話を聞くこと を挙げてらっしゃる方をよく見かけます。
私も自分がキャリアシートを書くことになったら多分そう書きます。人前で話すことと人の話を聞くことだったら、まあどっちもできる(教師の経験があると人前で話せるようになる)のですが、マネージャーの立場になってより一層求められるスキルが 人の話を聞くこと だなと思います。
「人の話を聞くこと」 は 奥深く、難しいものです。
マネージャーの役割について考えること
教員になりたての頃は、リーダーシップ=厳しく注意ができること だと思っていました。無知でした。言い訳をすると、職員室にちょっとそういうムードもありました。厳しく𠮟る指導スタイルが合う人もいるのでしょうが、私は基本的に怒るということが苦手です。
その後転職をして、別の企業で働く友達の話を聞いたり、自分でマネジメント論を勉強したりする中で、リーダーシップのイメージを書き換えました。
今は、自分の役割を支援者だという風に考えています。
編集部のメンバーの業務を支援する、成長を支援する。
ですので、編集部長とメンバーの関係も、上下関係というより役割の違いという風に思っています。
佑人社は中途採用しか行っていませんので、社員の年齢やキャリアも様々です。私が古株ではありますが、最年長という訳でもないので、メンバーの皆さんが活躍できるように支援する という気持ちです。
さて、そんなわけですので、メンバーの話を聞くことをとっても大切に思っています。
例えば何かメンバーにミスがあった場合。どんなトラブルも事情や背景があるものですが、もうこれは9:1いや10:0でこの人のミスだなと思えて、指導が必要な場合でも、まず相手の話を聞きたいと思います。指導をする際には、その人がどういう認識で取り組んでいたのかという確認が欠かせず、それは相手に聞くしかないからです。
「大丈夫?」 という投げかけの残酷さ
新人さんに対して、「何か分からないことある?」「困ってることある?」という質問の仕方は、実はあんまりうまくないなと思っています。大体が「大丈夫です」という回答になってしまうからです。
「大丈夫です」という日常的な返事。私には苦い記憶があります。
昔、目上の人に傷つけられたことがあります。その方も悪いと思ってしきりに私に謝ってくださいました。謝ってくださってはいても、どうしようもなく私は傷ついている。だけれども謝罪の言葉を受け取らない訳にはいかない。そんな時に投げかけられた忘れられない言葉が「…大丈夫?」でした。
その方はきっと、私が苦笑いしつつ「わかりました、いいですよ」と言っているところに、ひとしきり謝り続けたあとで、思わずご自分でも不安になって「大丈夫?」と聞いちゃったんだと思います。しかしその投げかけに対して、私は全然大丈夫じゃないのに「大丈夫です」と言わざるを得ないのです。これほど残酷な質問はないな、と思いました。
そういうこともあって、新人さんには「何か分からないことある?」「困ってることある?」ではなく、「今一番分からないこと/困ってることは何?」と聞くようにしています。そうすると結構「コレコレが分からなくて…」と教えてくれます。
1on1でもよく私は「辛いこと、嫌なことはそう言ってね」とメンバーに伝えます。本心からそう思って伝えてはいるものの、チラッとあの時の「大丈夫?」が心をよぎります。
辛い時に辛いことを伝えてもらえるかどうか、その関係性の構築は、マネージャーの側にボールがあることを忘れないようにしたいです。
人の話を聞くことは、うまい質問を投げかけること
いわゆる発問というスキルですね。これはもう、教員時代に授業をする中で相当鍛えられたなと思います。
生徒から答えを引き出すために、良い発問をする。
今の仕事では、別に授業をするわけではありません。メンバーから引き出すのは、「答え」ではなくて「考え」や「思い」だったりします。
人の話を聞くことは、相槌を打って共感することだけではないです。受け止めて、相手の考えや思いを引き出すこと。自分の考えや思いに気づいていない人、心の深い部分に考えや思いが沈んでいる人もいます。だから難しいなと思います。
こういう風に考えてくると、人の話を聞くよりも、人前で話すことの方がよっぽど簡単に思えてきます。
人の話を聞くのが得意な皆さんへ。
あなたは質問に自信がありますか?
目の前の人の思いを引きだせていますか?
そして、その人のために自分の考えを伝えられていますか?
それは編集者としてクライアントの要望に応えるうえで、大切なスキルです。