私たちトリノ・ガーデンの営業には、少し変わったところがあります。
押して決めることが、ほとんどありません。そして、決まるまでに何年もかかることがあります。
■ 3年、寝かされた案件
あるベーカリーチェーンの代表は、雑誌の編集長から弊社代表を紹介され、話を聞いて「非常に興味が湧いた」と言ってくださいました。
それでも、その場では依頼されませんでした。
理由は、こうです。その頃は組織としても未熟な部分が多く、分析を受けるだけの土壌がまだ整っていないと感じていた、と。
そこから3年近くかけて地盤固めをして、組織としてもしっかりしてきたなというタイミングで、改めてご依頼をいただきました。
この判断は正しかったと思っています。私たちの分析は、事実を並べるところまでしかやりません。その先どう動くかを決めるのは、いつもクライアント自身です。だから、決めて動ける組織でなければ、どれだけ精緻なデータを渡しても紙のまま終わります。
営業の仕事は、この見極めを一緒にすることでもあります。
■ 売り込まなくても、話が来ることがある
一方で、向こうから飛び込んでくる案件もあります。
ある大手アイスクリームチェーンの執行役員は、日曜朝のテレビ番組で私たちを見て、その場で連絡をくださいました。外食企業の経営者のあいだで名前が話題にのぼり、そこからご相談をいただくこともあります。
雑誌、テレビ、経営者どうしの口コミ。きっかけはばらばらですが、共通しているのは、誰も値段で選んでいないことです。
■ 相見積もりが、ほとんど発生しない
店内カメラの映像を、人が目視で1コマずつ数えて数値化する。これを事業としてやっている会社は、ほとんどありません。だから「A社とB社で比べて安いほう」という商談になりにくい。値引きの詰め合いも、期末の押し込みもありません。
そのぶん求められるのは、まだ体験したことのない相手に、これが何の役に立つのかを腹落ちさせることです。
■ 事実が、話術の代わりをしてくれる
提案の場で効くのは、話術よりも事例です。
席を減らしたら客数が増えた。機械より人の手のほうが速かった。1日に一度も座られない席があった。1品つくる間に3品を仕上げる人がいた。入口で待たせていた3分を初めて測ったら、店長が眠れなくなった。
実際に起きたことを並べるだけで、相手の姿勢が変わる瞬間があります。売り込む営業ではなく、事実で興味を引き出す営業です。
■ 一度きりで、終わらない
そして、受注はゴールではありません。
ある大手牛めしチェーンとは5年で19のプロジェクト、あるラーメンチェーンとは3年で9本、投資ファンドとはその投資先6社。一度の受注で終わらないのは、数えるたびに次の問いが出てくるからです。
機会損失を数えに行ったはずが、価格の話になる。調理動作を測っていたら、厨房設備の設計に行き着く。営業の仕事は、売り切ることではなく、この長い関係の入口をつくることです。
■ がんじがらめの人にこそ、効く
先ほどの3年待ってくださった代表は、最後にこう話してくださいました。課題を深く考えすぎて、困り果ててがんじがらめになっている人たちにこそ「効きます」とおすすめしたい、と。
これは、私たちにとって大事な指針になっています。何も考えていない現場に数字を渡しても、たいてい何も起きません。考えすぎて動けなくなっている人に事実を渡すと、その日から動きだします。
だから営業の腕は、押しの強さではなく、相手がいまどの状態にいるかを見極めるところに出ます。
私たちのフィロソフィーは「Make It Fun」。
誰も見向きもしなかった地味な場所を掘り下げた先にこそ、本当の面白さがある、という信念です。値段でも話術でもなく、事実で選ばれる。そういう営業をしてみたい方と、話をしてみたいと思っています。