メドエックスが創業に至るまでには、情熱の人右高を冷静に支え続けたブレインがいました。何度も試行錯誤を重ねながらも、メディッチの提供にたどり着けたのは、彼女の存在があったからこそ。
今回は、その立役者である五嶋さんのこれまでのキャリアストーリーと、この事業を通して目指す未来への想いをお届けします。
── 五嶋さん、今日はよろしくお願いします。まずはご出身と、生い立ちからお聞かせいただけますか?
はい、よろしくお願いします。私は岐阜県出身で、父は電気設計士、母は看護師という家庭に育ちました。幼い頃からものづくりや人を支える仕事に親しんでいて、小学生の頃にはすでにお菓子づくりに夢中でした。自然と「将来はパティシエになりたい」と思うようになったんです。
──パティシエですか!素敵な夢ですね。
製菓学校卒業の際の写真、一番左が五嶋さん
ありがとうございます。製菓専門学校を卒業後、洋菓子店に勤務し、約3年間パティシエとして働きました。ただ、腱鞘炎の発症や労働環境への違和感をきっかけに、「この先どんな仕事をしていきたいのか」を改めて考えるようになったんです。
── そこでキャリアの方向性を見直されたのですね。
はい。自分を見つめ直す中で、「人を支えること」や「裏方として仕事を回すこと」に喜びを感じる自分の性格に気づきました。特に後輩の育成やPC業務にやりがいを感じていたこともあり、別の形でキャリアを築く決意をしました。
また、母が看護師として長年働く姿を見てきたこともあり、医療・介護の世界には以前から関心がありました。小学生の頃には、夏休みを利用して母が勤める老人ホームに実習として参加させてもらったこともあり、その経験は幼い自分にとって貴重な体験となりました。医療や福祉は社会的に必要とされ続ける分野で、長期的にキャリアを積めるという点も、転職を決めた理由のひとつです。
── 現在はどのようなお仕事をされているのですか?
現在は、愛知県内で訪問看護ステーションやデイサービスを複数展開する企業のコーポレート部門に所属しています。入社当初は労務・総務のアシスタントとして業務をスタートし、実務を積み重ねながら現在は同部門の統括を担当しています。
── コーポレート部門での経験から、どんなことを感じていますか?
業界や職種を越えて経験してきたことを通じて、「現場を支える人を支える」ことの重要性を実感しています。私は直接ケアをする立場ではありませんが、間接的にでも医療や介護の現場を支えることで、少しでも良い仕組みや働きやすい環境をつくれることが、今の大きなやりがいになっています。
── メドエックスに参画されたきっかけを教えてください。
今から3年前の2022年6月、当時の私は、ビジネスパーソンとしての視野を広げ、より長期的なキャリアを描くために、現職の支援を受けながらグロービス経営大学院へ入学したばかりでした。
在学中、共通の知人から「医療業界の人材領域に関心を持っている方がいる」と紹介されたのが、現代表の右高さんです。当時はまだ会社設立前で、まさに起業に向けてビジネスモデルを練っている真っ最中。テーマは「医療業界の人材不足の解消」でした。
その話を聞いた瞬間、「医療分野に間接的に関わりながら、経営学の学びを実践できる貴重な機会だ」と直感しました。本職ではなかなか経験できない、新規事業開発や経営戦略の初期フェーズに携われるチャンスでもあったのです。
さらに、母が看護師として長年働く姿を身近で見てきた経験もあり、「医療現場で働く人を支える仕事に、自分の経験や強みを活かせるのではないか」という想いも後押しとなり、自然な流れで参画を決意しました。
立ち上げ当初は、大学院の同期数名とともに週1回集まり、まだ形のないビジネスモデルについて議論を重ねていました。「これでいいのか?」「もっと現場に寄り添える形はないか?」と試行錯誤を繰り返した日々は、今振り返ると、とても懐かしく貴重な経験です。
── InstagramやTikTokなど、SNSを活用したメドエックスのサービス、メディッチの採用活動について、どのように感じていますか?
特に20代〜30代前半の層に対して非常に有効な手段だと感じています。医療・介護業界の人材不足は深刻で、人材紹介を活用した採用が常態化している中、高額な紹介手数料に悩む医療法人や事業者も少なくありません。
そうした中で、InstagramやTikTokなどのSNSは、無料で始められることに加え、特定の媒体に依存せず幅広い層にアプローチできるという点で、大きな可能性を感じています。特に、すぐに転職を考えているわけではない“潜在層”にも自然とリーチできることは、従来の求人媒体にはない強みだと思っています。
── SNSならではのメリットは、他にもありますか?
動画や画像を通して働く人の雰囲気や現場の空気感を直感的に伝えられる点です。
はい、テキスト中心の求人票だけではなかなか伝えきれない情報ですが、人間関係や職場の雰囲気、労働環境は看護・介護職の退職理由になりやすい部分。だからこそ、事前にこうした“見える化”をすることは、ミスマッチ防止や離職率の低下にもつながると考えています。
── 採用への効果はどのように見ていますか?
SNSは即効性のある採用手法ではありません。ただし、投稿への反応やフォロワーの増加を通じて、自社への関心を徐々に高めていくことができます。採用だけでなく、ブランディングや企業認知の向上にもつながるという意味で、中長期的に見ても非常に価値のある取り組みだと思っています。
── 一方で、SNS運用にリスクは感じますか?
はい、本業でリスク管理にも携わる身としては、とても重要な視点だと思っています。影響力が大きい分、炎上などのリスクは常につきまといます。だからこそ、慎重かつ適切な運用が不可欠です。ただし、運用体制や発信内容にしっかりと向き合いながら活用できれば、いまの時代、これほど強力な採用・広報手段は他にないと感じています。
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幼い頃に芽生えた想いはパティシエとしての経験を経て、医療・介護業界で“現場を支える人を支える”という形に進化しました。
現在、医療界ではまだ新しい取り組みであるSNSを活用した採用というメドエックスの事業に携われていることに、大きなやりがいを感じているという五嶋さん。
従来の採用手法に頼らざるを得なかった現場に、より柔軟で人に寄り添った仕組みを届けられることは、まさに社会を変えていく実感につながっているそうです。
次回の中編では五嶋さんが強く共感するメドエックスのビジョンや、日々の仕事で「幸せ」を感じる瞬間、そしてスタートアップの正解がない中で仕組みをつくり続ける醍醐味をお届けします。少し意外な“しっかり者の裏の顔”や、代表とのユニークなやりとりにもご注目ください。