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【開発生産性Conference登壇レポート】大手企業の開発内製化事例 ~内製化の3ステップ~

開発生産性Conferenceとは?
日本のエンジニアリングの向上につながることを目標とし、各企業のベストプラクティスや開発生産性向上への取り組みについて紹介するイベント。ファインディ株式会社の主催で、2023年7月13日に開催されました。
『LeanとDevOpsの科学』著者登壇!開発生産性Conference (2023/07/13 09:30〜)
開発生産性Conference 2023 エンジニア不足が叫ばれるなか、開発生産性が今注目を集めています。 インターネット・テック企業はもちろんのこと、大手企業における内製化の取り組みも生産性を上げる1つの手段として向き合う企業が増えてきています。 ...
https://dev-productivity-con.findy-code.io/


今回は本イベントに登壇したKINTOテクノロジーズ 取締役副社長である景山さんが、「大手企業の開発内製化事例」についてお話ししたLTをレポートします!


景山 均(かげやま ひとし)
KINTOテクノロジーズ株式会社 取締役副社長。
楽天にて、楽天グループのデータセンター・ネットワーク・サーバーなどのインフラや、ID サービス・スーパーポイントサービス・メールサービス・マーケティング DWH・ネットスーパー・電子マネー・物流システムなどの開発を統括。その後、ニトリの IT、物流システムの責任者を経て、2019年6月にトヨタファイナンシャルサービスに入社。デジタル IT 部隊の立ち上げをゼロから実施。2021年4月より現職。

KINTOテクノロジーズの組織とサービスについて

2020年にスタートした300名規模の内製組織

セッションの冒頭では、KINTOテクノロジーズの組織概要とサービスについてご紹介しました。KINTOテクノロジーズはもともと、トヨタファイナンシャルサービス(以下、TFS)のIT部隊からスタートしています。エンジニア向けの人事制度を整えた上で、TFSを100%株主として2020年4月に設立されました。

現在、オフィスは東京に2箇所と名古屋、大阪に構え、従業員数は300名ほど。このうち、エンジニアが9割を占めています。

景山:日本国内のみならず、グローバル向けサービスの開発部隊も組成しており、外国籍社員比率は25%です。グローバル開発部隊は海外をメインに仕事をしているため、ドキュメントもコミュニケーションも全て英語です。

低調スタートから現在までに累計申込数55,000件を突破した「KINTO ONE」 

KINTOテクノロジーズが手掛けるのは、車のサブスクサービスを提供している「KINTO」だけではありません。世界中のKINTO IDをつなげ、関連サービスを使えるような世界観を目指して、グローバルなITプラットフォーム・アプリの開発を行っています。

また、Woven Cityで利用する決済機能やトヨタグループのMaaSサービス「my route」、決済アプリ「TOYOTA Wallet」など、トヨタグループのデジタル領域の開発もKINTOテクノロジーズの役割です。

現在こそ好調な「KINTO」ですが、当初は一筋縄ではいかない部分が多かったのが実情です。リリース当時の状況について、景山さんは以下のように語りました。

景山:クルマのサブスクサービスは、自動車保険やメンテナンス、消耗品などの費用が全て「コミコミ」になっているのが特徴です。トヨタグループとしては販売店ではなく、初めて直接お客様に車をお届けするサービスでした。スタートしたときは、トヨタの社内のみんなは様子見でした。

とはいえ、今後はWebサービスを介して車を購入する形態からは逃れられない世界になっていくはずだと、誰もが認識していました。「KINTO ONE」は2019年3月にスタート。2019年12月時点で累計申込数1,200件という低調スタートでしたが、お陰様で2022年12月時点では、累計申込数55,000件を突破しています。

KINTOテクノロジーズが有する開発組織の特徴

開発スピードを求めてあらゆるIT領域を内製化

以上のようなサービス開発を行う上で、欠かせなかったのが開発組織の内製化でした。ベンダー頼みでは開発スピードが上がらず、プロダクトのアップデートをはじめとした事業サイクルも上手く回らないからです。

そこで組成されたのが、KINTOテクノロジーズでした。

景山:私は内製開発部隊の最初の1人として、2019年6月にTFSに入社しました。今後、競合他社に負けないような事業展開を行うにはシステムを自分たちで作らなければならないことは、社長自身も強く実感していましたね。実際にトヨタでシステムを作ろうとすると、大規模でない開発でも計画からリリースまで半年や1年かかっていたという状況があり、内製化部隊を作る運びになったのです。

現在はクリエイティブディレクターやWebデザイナー、フロントエンド・バックエンド・アプリ・インフラエンジニア、QAなど、あらゆる職種を全て内製化しています。

とはいえ、まだまだリソースは不足しているのが現状です。内製組織の300名に加え、さらに300名のパートナーエンジニアにご協力をいただいています。採用にも注力しており、現在は中途採用率が100%です。

開発内製化組織づくりと開発生産性

誕生期~成長期において重視したビジネスサイドと開発サイドの連携

セッションは続いて、「開発内製化組織づくりと開発生産性」というテーマへ。KINTOテクノロジーズの場合、特に重要だったのがビジネスサイドと開発サイドの連携です。内製化組織を組成するにあたっても、景山さんはまずビジネスサイドのキーマンに対して内製開発の必要性をインプットした上で、初期メンバーを集めました。

景山:一人では何もできませんから、キーマンになる人たちに向けて「なぜこのビジネスで内製開発をすべきなのか」を、4ヶ月ほどかけて延々と説き続けました。部長クラスの中にも、「エンジニア組織を持つのはコスト増になる」「ベンダーで構わないのではないか」と考える方々はいましたが、まずは経営陣を口説いたのが功を奏したようです。

その上で、採用活動を進めました。通常のWebを利用した採用フローでは自分がやりたいことをやれる人材が集まるかどうか自信がなかったため、まずは私のネットワークからマネージャークラスの人材を募り、組織を立ち上げ。2019年の年末までに20名の部隊に成長させました。

誕生期から成長期へと動き始めていくにあたっても、やはりビジネスサイドとの意識の違いが問題になったといいます。

景山:ビジネスサイドは「発注者」の意識が強く、内製部隊に対して「言ったことをやってほしい」という姿勢があったんですね。一方でビジネスサイドが考える要件定義や作ってほしい機能は内容がざっくりしがちでしたから、内製開発部隊との付き合い方をビジネスサイドに啓蒙していく必要がありました。

内製化組織がビジネスプランの立案から参入し、開発生産性を高めた

ビジネスサイドとの意識を擦り合わせていくことには成功しましたが、そこで新たに課題になったのは、開発生産性を高めるためのアプローチ方法でした。

景山:KINTOテクノロジーズが手掛けているシステムは、ビジネスそのものです。ビジネスプランが立てられた後で「こんな開発がしたい」と相談されても、時間やコストがかかりすぎて結局必要な時期に開発ができないという状況に陥ってしまう場合もあります。

そこで、ビジネスプランを考える際はKINTOテクノロジーズも一緒にジョインすることになりました。その上で、まずは小さなシステムを素早く作ってリリースし、必要であれば新たな機能開発を行う流れに。こういったアプローチのほうが開発生産性は高まりますし、本当に必要な機能の開発だけに注力できます。

成熟期と未来構想について

自社ならではの「内製開発スタイル」の確立と浸透が必要

今後成長期から成熟期へと向かうにあたり、景山さんが感じているのは組織が拡大したがゆえに発生しているコミュニケーションの課題でした。今後、人員は増え続けていく想定だからこそ「内製開発スタイル」の言語化と浸透が重要になっていくと考え、新たな取り組みを実施しています。

景山:組織の立ち上げ期は、メンバー一人ひとりと話しながらどんな開発を行うのかを決めていくことができましたが、300名にまで組織が拡大した今、全員と話すのは難しい状況です。

そこで、メンバーやマネージャークラスを中心に「KINTOテクノロジーズの内製開発スタイル」を言語化。自分たちがどういう働き方を目指していて、そのためにどんな取り組みが必要なのかを明示できるようにしました。今は、その内容を絶賛社内浸透中です。

とはいえ、「内製開発スタイル」はSIerや大手ベンダー、ソフトハウスのキャリアを持つような人たちにはあまりピンとこない概念ですから、言葉で言うだけではなかなか伝わりません。そこはWebサービス系企業出身のメンバーが現場で自主的に内製開発スタイルを実践してくれているので、非常に助かります。

現場主導でいろいろチャレンジしてくれるので、私はSlackで「景山承認」っていうスタンプを押すだけというのが現状ですね(笑)


もう一点、景山さんが言及したのは、技術を持つ会社として最先端のテクノロジーを追求する重要性でした。

景山:我々の業界は、最先端のテクノロジーを追いかけ続けないとすぐに陳腐化してしまい、会社としての競争力も低下してしまいます。いかに、新しい技術を用いながらプロダクト開発をするか――。ここは私よりも現場のメンバーのほうがこだわって、勉強会を頻繁に開催したり新しい技術を積極的に採用したりといった動きを見せてくれていますね。

LTは盛況のうちに終わりました。

組織はまだまだ拡大フェーズにあり、今後も内製化組織として開発生産性の向上に取り組んでいきます。





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