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「ちっちゃい頃からずっと生きづらかった。」自分との対話の先に行き着いた離島で、ものづくりと向き合う生活。

日本海の隠岐諸島に位置する島、海士町。
人口約2300人のこの離島には、なにかの引力がはたらいているかのように、
多様なバックグラウンドを持つ人々が引き寄せられ、生活をしています。

離島の営みを紹介する連載「わたしの離島Life」。今回は海士町の玄関口の商店にて、いつも旅人と島民を優しい笑顔で迎える山口開人さん。自分との対話の先に行き着いた海士町で、自分の好きを追求している山口さんの離島Lifeに迫ります。

Profile:山口 開人(やまぐち かいと)
大学を出てそのまま海士町へ。現在は地域開発事業部にて、店舗の企画運営と、自社のライフスタイルブランド『Okum』の商品企画と製造を行う。趣味は虫捕り、魚釣り、散歩。


自分の特徴に合う生き方を求めて

ー海士町にはどういう経緯で来たんですか?

ちょっと長くなるんですが、ちっちゃい頃からずっと、生きづらいと思うことが多かったんです。みんなと興味を持つ部分が違ったり、対人関係にストレスを感じやすくて、一人でできることが好きだったりとかして、「変やな」と言われることも多くて。大学に進んで、いざ就職ってなった時に、「このまま就職して生きていけるんかな。生きていくの楽しいのかな?」というふうに考え込んでしまったんです。

ちょうどその時期に、交通事故に遭ったのも重なって、家から出れんくなったんですよ。就活の時期を逃して、新卒も無理やなと思って、1年半ぐらい引きこもっていました。その間に精神科とか通ってたんですが、hsp(ハイリーセンシティブパーソン)っていう気質があるよ、と教えていただいて。そういう性格を持ってるっていうことを知りました。自分が今までダメな人間やと思ってたんですが、いろんなことで腑に落ちたんで、それに合う生き方がしたいなと思いました。 それで、これまでずっと都会暮らししてたんですけど、自然の中で暮らした方が合ってんのかなと思ったり、自分は物作りしたいなと思って、そういう仕事を探しました。その時に海士町の求人を見つけて応募したという感じですね。

ー実際に島を訪れてみてどうでしたか?

はじめはお試し来島みたいな感じで2泊3日で来ました。そこでまさに今一緒に仕事をしている事業統括の春馬さんや、伊藤茜さんたちとご飯を食べたんですが、個性を楽しんで受け入れてくれるみたいに感じました。「面白いね。」みたいな感じでいろんなことを認めてくれるのがいいなと。なんでも言いやすい感じだな、と思った印象が残ってます。それは一緒に働く今もその感じはそのままです。


仕事で心が跳ねる瞬間を目指して

ー株海士ではどんなことをしてるんですか?

最初はいろんな業務をしたんですが、合わないものもあったりでチームを転々としました。それで株海士が運営する港にある複合施設で、食品とお土産とかを販売している商店の運営に携わっているのと、最近では『Okum』という自社ブランドの商品づくりに関わらせてもらっています。

ーお気に入りの業務はありますか?

まず、お菓子とか商店で販売するものを考えて発注することですかね。ベーシックなものとか、常に買ってもらえるやつはいつも同じものを発注するんですが、特に決まりがなくて自分で売るものを選んでいいんで、自由に選んでます。心がこう、「おっ」てなるかみたいな、そんな感覚で選んでいます。

覚えてるやつで言ったら、サウナチロルっていうチロルチョコがあるんですけど、パッケージが可愛かったんで仕入れてみたら、いろんな人に面白いねって言って買ってもらったり、 そこから会話が生まれたりして、そういうのも楽しみながら働いています。

ー自分で売るもの決めれるのっていいですね。

そうですね。でもいろんな価値観を持った人を想像しながら発注しています。自分だけじゃなくて、海士町に住むおばあちゃんとか自分とは逆の人を想像したりして、こういうの好きな人だったらめっちゃ嬉しいんじゃないかな、みたいな。


「本当にいい」と思えるものづくりへの挑戦

ーものづくりもはじめたんですね。

最近だと『Okum』っていう自社のお土産ブランドを自分のいる地域開発事業部で作り始めました。ブランド自体は食品とそれ以外のプロダクトの2つに分かれてるんですけど、僕はプロダクトに 関わらせてもらえるようになりました。制作自体はもう一人のプロジェクトメンバーと一緒に今作ってるんですけど、1から作っていく難しさを感じています。

ぼくが作っているのが、『つかり』という、昔、海士町で漁師さんがサザエを入れたりする袋として使っていた袋をリバイバルさせた商品で、リュックみたいに使えるファッションアイテムです。実際に手作業で綿の紐を編み合わせてひとつひとつ作るということをしています。これからいろんな大きさとか色合い、色を展開していきたいみたいな話になってて、それを一緒にやっているメンバーとこういう風にした方がいいなといった試行錯誤しながら作ってます。他にも使われていない木材とかもたくさんあると聞いたんで、木材の何かとか、あとは服とかも作っていけたらいいなと思っています。

ーカイトくん自身がものづくりで大切にしていきたいことはありますか?

ぼくは、 なんだろうな、でも、ごまかしたくないみたいな気持ちはあります。『つかり』もそうでなんですが、見えないところまでちゃんとこだわりを持って作りたいというのがあって、一緒にやっている伊藤さんもそこは同じ考えを持っていて、嘘つかずに、本当にいいと思えるものを作っていきたいみたいなのはあります。


休みは虫捕り、魚釣り、散歩。なんか子供みたいですね(笑)

ー島の暮らし自体はどうですか?

よく散歩してます。写真撮りながら散歩するとか多いですね。あとは虫取りとか、魚釣り。なんかやってること子供みたいですね(笑)。虫捕りって大体ちっちゃい頃みんな好きやけど、だんだん薄れていくじゃないですか。僕は薄れずに今も好きって感じです。

ーめっちゃいいね(笑)。都会に住んでたことが多いと思うけど、その時と自分自身の変化を感じることはありますか?

多分、僕は結構自分と対話するのがめっちゃ大事な人間で、都会におると、この流れが正解みたいな軸が結構あって、それに自然と寄せられていくみたいな感覚があったんです。だけどここやとそれがなくて、なんかほんまの自分と向き合えてる感覚がめっちゃあって。結構嘘ついてたということに気づきました。都会にいる時は、それに合わせるために。

ーここなら本当の自分に向き合えてる気がする?

そうですね。考えなくてもいいことを考えなくなったから、より集中できるようになって、余裕ができたのかもしれないです。こういうこと好きなんだとか、こういうことやりたいんだみたいな。とか気付けるようになりました。例えば最近、色の組み合わせが本当に好きだって気づいて。

ー色の組み合わせですか。

家のインテリアを決めている時とか、ここ動かしたらめっちゃしっくり来る、みたいなとか、料理する時も、料理の色に合わせてお皿選ぶし、ここをこの色使ったらめっちゃしっくりくるみたいな。その中で、自分ってそういうところあんねんや、こういうの好きなんやとかに気づきました。

ーちなみにどういう料理を作るんですか?

野菜とかはもう島の野菜だけで料理します。やっぱ「ないものはない」っていう海士町のスローガンと一緒で、島の野菜だけ買っていくと、季節によってすごい偏りがあるんですよ。根菜しかない時期とか。でも、その中でどう飽きずにレパートリーを増やすかとか考えたりするのが楽しいです。その中で、この野菜とこの野菜の色合わせいいかも。みたいな。


不安定な時期を経たことでわかる”心の安定”

ー会社のミッションにもある「豊かさ」ってなんだと思いますか?

なんだろう。心の安定かもしれないです。やっぱ不安定な時があったから、 そう思っちゃうんですけど。不安定な時って、全然生きてても楽しくないし、俺なんて。みたいな気分でずっと落ち込んでいく感じだったんです。でも心が安定すると、 「やっぱりこれやりたい。あれやりたい。」みたいな欲求も出てくるし、 そういう前向きなことに挑戦してる時間ってすごい充実してるなってめっちゃ感じるんで、最近なんか幸せやなみたいな。

自分をまず肯定してあげられるようにならないとだと思うんですが、僕の場合は、結構人の意見とかを鵜呑みにしてしまうというか、響いてしまうので、海士町やったらそういう自分の個性を認めてくれたりするんで、そういうのが重なって自分も自分を認めれるようになってきた気がします。

ー最後に株海士への就職や転職を検討している人にメッセージはありますか?

試行錯誤がまず好きな人は絶対楽しいと思います。自己主張がちゃんとできる人、これやりたいって言ったら結構それ通してもらってる感じもあるし。僕はあんまり主張できないけど、見てたらそう思います。

そうですね、 あと自分を持ってるっていうのもあるかもしれないですね。なんかこう、誰かに決められることに安心感を持ったりしてると、結構生きづらいかもしれない。これどうしたらいいんだろう。みたいな。自分で楽しんで考えられる人には面白いかもしれないです。

(企画・執筆:吉田雄太)

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