建築部工事課 根塚 陸
入社5年目の若手施工管理として、多くの現場を経験してきた彼が、「自分の図面で現場が動いた」と実感した瞬間とは。そして、変化の波が押し寄せる建設業界のなかで、次の時代に選ばれる存在になるために、今どんなことを考えているのか。
建物に心奪われた高校時代
新潟市亀田で生まれ育った根塚さん。建築への興味は、高校時代のふとした気づきから始まった。
「東京へ行ったときに、街中のビルを見て“どうやって作ってるんだろう”と思ったんです。変わった形の建物を見ると、自然と目がいってしまう。“建物を見るのが好き”っていう気持ちが、自分の中でずっとあったんだと気づきました」
身近にある建物に魅せられた少年は、進路を考えるなかで「建てる側」へと興味を深め、建築系の専門学校へと進学した。
「学校では2年間、かなり詰め込まれました。1限から4限まで毎日授業があって、夏休みも短い。他の大学生に通っていた友人と全然違ってハードでしたけど(笑)今につながっていると思います」
まちと人に寄り添う会社との出会い
就職活動は、新型コロナの影響で制限が多く、説明会の参加もままならなかったという。
「いろいろな企業を見るのが難しかったので、新発田建設しか受けていないんです。でも、通っていた学校が新発田市にあって、このまちの風景に関わる仕事がしたい、という気持ちが自然と強くなっていきました」
会社を調べるなかで、目に留まったのが新発田建設のホームページにあった「お客様に寄り添う」という言葉だった。
「それがすごく印象に残って、実際に会社に行ってみると、社員の方々の雰囲気も柔らかくて。こういう会社なら、安心して働けそうだなって思いました」
地元への想いと、人の温かさ。その二つが重なり、彼は新発田建設への入社を決めた。
「自分の図面で現場が動いた」上越の現場で得た自信
入社後は研修を経て、現場へ配属。最初の2年間は改修工事を中心に経験を積み、その後、3年目で初めて新築現場を担当することになった。
「そのときに、初めて施工図を描かせてもらったんです。今までは上司が描いた図面を見て現場を進めていましたが、自分が描いた図面で、現場が実際に動き出したときは、今までにない手応えがありました」
特に印象に残っているのは、上越市の大型低温倉庫の工事中に施工した、敷地内にある21㎡ほどの常温倉庫内の事務所の増築工事だった。倉庫本体ではなく付属施設だったが、自分が初めて施工図を描いた案件であり、施工者としての原点となった現場だった。
「自分で描いた図面をもとに現場が動いていくのを間近で見られたことで、“自分もこの仕事の一員になれた”という実感が湧きました」
コミュニケーションが苦手だった彼にとって、これは大きな転機だった。経験も知識も少なかった1年目には、年上の職人との会話すら緊張の連続だったという。
「最初は、何を聞かれても答えられなかったし、どう接していいかも分からなかった。でも、わからないことは素直に聞こうと決めていました。そうしているうちに、少しずつ現場の人たちとの距離が縮まっていったんです」
自分の描いた図面で、職人たちと直接会話しながら現場を進める「自分が現場の一員になった」と強く実感した、最初の現場だった。
“任される存在”になるために
現在は、新潟支店を拠点に現場管理を担当する日々。根塚さんが掲げている目標は、1級施工管理技士の資格取得と、30代後半での現場所長就任だ。「最終的には、大きな現場を自分の責任で動かす立場になりたいと思っています。そのために、まずは技術も経験も一つずつ積み重ねていきたいです」
一方で、現場業務を担う立場として、待遇や制度面での改善への想いも正直に語ってくれた。
「現場ごとに遠方移動も多いので、車の支給や補助のあり方については、もっと改善されると嬉しいですね。やっぱり生活にも関わる部分なので。待遇が良くなることは、若手のモチベーションにもつながると思います」
その声には、“待遇を上げたい”というだけでなく、“任せてもらえるようになりたい”という責任感もにじんでいた。
変化の時代を、現場から動かす
今、新発田建設は「次の時代に選ばれる会社になる」というスローガンを掲げている。
その言葉に対して、根塚さんは「若手が現場を進化させる役割を担う時代だ」と話す。
「たとえばiPadを使った管理とか、今までと違うやり方を取り入れていくことも、僕たち若手の役割だと思っています。現場のやり方も少しずつ変わっていく中で、“どうしたらもっとスムーズに、安全に回せるか”を自分ごととして考えていきたいです」
それは、社内で決められた方針をただ守るのではなく、「自分たちの手で現場を変えていく」という意識に他ならない。
時代が変われば、技術も、働き方も、求められる力も変わっていく。その中で、“選ばれる会社”であり続けるには、まず「選ばれる人材」になることが必要なのかもしれない。
仲間になるかもしれないあなたへ
インタビューの最後に、これから新発田建設を志す若者たちに、根塚さんからの言葉をもらった。
「この仕事は、正直言って簡単ではありません。毎日いろんな人と関わるし、責任も大きい。でも、自分が関わった建物が、何年経ってもまちに残っているって、すごく誇らしいことだと思うんです」
建物には名前が載らない。だけど、その中に、自分が悩んで決めた寸法や判断が、ちゃんと残っている。
振り返ったときに、「あのときの判断、やっぱり良かったな」って思えるような、そんな積み重ねが、この仕事の価値なのだ。
まちをつくり、人の暮らしを支える。その一歩を踏み出した若手社員の物語は、まだ始まったばかりだ。