【創業者インタビュー】「福祉はゴールではなく、通過点だ」型破りな起業家が挑む、社会を“競争”から“共走”へと変革する第二創業期のリアル
「障がい者支援」と聞いて、あなたはどんな景色を思い浮かべるでしょうか。
単調な作業や、閉鎖的な空間、あるいは「支援してあげる」という一方的な関係性かもしれません。しかし、私たちTOBIRAが展開しているのは、自社アパレルのEC運営やWEB制作、農業からサラダショップの企画まで、一般的な福祉のイメージを覆す多岐にわたるビジネスです。
今回は創業者の南さんにインタビューを実施しました。多様な事業領域へ飛び込み、自ら道を切り拓いてきた彼は、なぜ福祉業界にたどり着いたのか。そして、組織が急拡大する「第二創業期」を迎えた今、どのような仲間を求めているのか。社会を“競争”から“共走”へと変革する覚悟と、描く未来について伺いました。
南 森弥
福井県出身。10代の頃、父親の病気を機に物販事業を立ち上げ、若くしてビジネスの道へ。その後、飲食事業での店舗運営やセントラルキッチン立ち上げ、エンジニア派遣、民泊、飲食店経営など多領域で事業を展開する。約10年前、自社スタッフの仕事創出をきっかけに福祉事業を開始。現場で社会課題の深刻さに直面し、本格的に福祉領域へ参入。2022年に就労継続支援A型を主軸とする合同会社TOBIRAを設立。「社会を競争から共走へ変革するトビラを開く」という使命のもと、経営を牽引している。
枠に収まらなかった過去。自らの手で道を切り拓いて培った生きる力
ーー南さんのこれまでの経歴を伺うと、多様な領域で事業を立ち上げられています。もともと起業家志望だったのでしょうか?
いえ、最初から「起業して社会を変えるぞ!」といったビジョンがあったわけではありません。私は福井県の田舎出身で末っ子として育ったのですが、昔から決められた枠の中で生きることがどうにも息苦しくて。
早くから自立して自分の世界を広げてみたいという思いから、全寮制の高専に進学したのですが、そこでも決められた道筋に沿って進んでいくことに、少し窮屈さを感じていたんです。
「もっと自分らしい生き方を見つけたい」そんな風に将来を模索しながら10代の終わりを過ごす中で、私の人生観を決定づける大きな転機が訪れました。父親が大きな病を患ったんです。
ーーそれは、ご家族にとってもご自身にとっても、大変なご経験でしたね。
「自分がもっとしっかりしなければいけない」と大きな危機感を覚えました。そこから、手元にあった貯金を元手に物販事業を立ち上げたのが、最初のビジネスの原体験です。
その後は飲食事業の会社に入り、店舗での接客だけでなく、集客サイトを自分で考案したり、セントラルキッチンの立ち上げを任されるようになりました。役員にならないかというありがたいお話もいただいたのですが、一つの場所にとどまらず、もっと自分の可能性を試してみたいという思いが強くなり退職することになりました。
そこからは、まさに怒涛の挑戦の連続。インド人のエンジニアを雇ってシステムを作り、納品する事業や、民泊運営、ハンバーガー屋の立ち上げなど、興味を持った領域に挑戦してきた人生でしたね。
福祉との偶然の出会い。そして、支えるから「送り出す」支援へ
ーーそこから、どのような経緯で福祉業界に関わっていったのでしょうか。
実は偶然の出会いだったんですよね。約10年前、自分が立ち上げた事業の中で「スタッフの方に何か仕事をしてもらえないか」と考えたのが、福祉事業を始めた最初のきっかけでした。しかし、実際に事業説明会に行き、現場で障がいを抱える方々と関わっていくうちに、これが単なる雇用の問題ではなく、根深い社会問題であることに気がついたんです。
そこには、働く意欲も十分な能力もあるのに、「障がいがある」という理由だけで社会から切り離され、決められた枠組みの中でしか生きられない人たちがたくさんいたんです。
かつての私が枠に息苦しさを感じていた以上に理不尽な状況が放置されている。「この現状をなんとかしなければ」という使命感が芽生え、そこから福祉領域に本腰を入れるようになりました。
ーーTOBIRAの事業内容について改めて教えてください。
弊社は「就労継続支援A型」を主軸に、多角的なビジネスを展開しているベンチャー企業です。特徴は、福祉から連想されがちな「内職」ではなく、一般企業で即戦力となる「専門スキル」の習得に特化している点です。
具体的には、自社アパレルのEC運営やグローバル輸出、WEB制作や動画編集といったクリエイティブ受託、さらには物流代行や自社農園での農業まで、多岐にわたる実践的な業務を用意しています。
ーー就労継続支援A型とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
就労継続支援A型は、一般就労の難しい障がいや難病のある方が、雇用契約を結んだ上で一定の支援がある職場で働くことができる福祉サービスです。そして、就労継続支援A型事業所は、一般就労を目指す方が、就職に有利な専門スキルを身につけ、自立への一歩を踏み出せるよう支援することを目的とした場所です。
TOBIRAがA型事業にこだわる理由は、「可能性がある人と一緒にチャレンジしていきたい」という想いがあるからです。B型事業は雇用契約を結ばず、体調などに合わせて自分のペースで無理なく働けるという大切な役割を担っています。
しかし、私たちはより一般就労に近い環境で実践的なスキルを磨き、彼らが本来持っているポテンシャルを最大限に引き出したいと考えているんです。
ーーそうした一般就労にこだわる背景には、福祉業界や社会に対するどのような課題感があるのでしょうか?
現在の福祉業界を取り巻く課題として、精神的な不調や障がいを抱える方が近年増加傾向にあるという現実があります。また、企業側には「障がい者雇用を何%しないといけない」という規定がありますが、実態としては別物として切り分けられ、「本当に一緒に働いているわけではない」というケースも散見されます。
そうした隔離された環境や単調な業務では、彼らが本来持っているポテンシャルが埋もれてしまい、働く喜びや自己肯定感を得ることは難しいと考えています。
弊社は、彼らをただ支えるだけで終わらせたくありません。もちろん支えること自体は素晴らしいことですし、それを批判するつもりは一切ありません。しかしTOBIRAは成長にフォーカスし、専門スキルと「自分は社会に通用する」という自信を持たせて一般社会へと「送り出す」ことにこだわりたいんですよね。
社会を「競争」から「共走」へ。多角化経営に隠されたユーザーファーストの真意
ーーTOBIRAは、この業界としては異例の幅広い事業展開を行っていますね。このスタイルには、どのような強みがあるのでしょうか?
多様な人が活躍できる場所を作れること。これこそが最大の強みであり、私たちの存在意義だと思っています。
会社としての生産性を高めることだけを考えれば、得意な領域一つに絞った方が効率的かもしれません。しかし、そうしていると「多様な人が活躍できる場所」を作れないんです。雇用側の都合ではなく、ユーザーファーストを目的として、活躍できる人にフォーカスするための多事業展開です。
ーーTOBIRAが掲げる「社会を競争から共走へ変革するトビラを開く」という使命には、どのような想いが込められているのでしょうか?
資本主義社会である以上、「競争」は避けられません。しかし、関わる人すべてが自分らしく、前向きに生きられる社会を創るためには「共走」が必要です。
少し変わった例えかもしれませんが、水中の微生物を想像してみてください。一般的には「嫌なもの」「不要なもの」として除け者にされがちですが、そうした存在こそが、環境全体を循環させ、バランスを支える重要な役割を担っているんですよね。
私は、人間社会もこれと同じだと思っています。誰かを除け者にするのではなく、一見不完全に見える個性もすべて含めて共存していくこと。それこそが、社会全体の理想のあり方だと信じています。
実際にTOBIRAの現場では、今までAIに全く触れてこなかった利用者が、のめり込むくらいにスキルを身につけ、やがて指示を出す側に回るといったケースも生まれています。当事者として弱さや生きづらさを知っているからこそ、人の気持ちがわかる。彼らに「自信を持たせられる場」を提供できる瞬間が、私にとって一番のやりがいですね。
日本に希望を創る。第二創業期のゼロイチを楽しむ開拓者たちへ
ーーTOBIRAの今後の展望について教えてください。
目下1〜2年の目標としては、TOBIRAを経由して一般就労に移行する方を増やしていきたいと考えています。それが彼らの可能性を広げることになりますし、彼らの給与水準を上げることにも直結します。
さらに中長期的には、日本の伝統文化を継承するようなプロジェクトにも関わっていきたいと構想しています。例えば、能登の震災で多くの九谷焼という400年弱の歴史を持つ伝統的な磁器が割れてしまった際、障がいを持つ方々と一緒にその欠片を集め、つなぎ合わせて新しいお皿として再生させている方々がいるんです。そうした活動を見ると、とても素晴らしい取り組みだと共感します。私たちTOBIRAも将来的に、そうした文化や伝統を紡ぐような事業に挑戦していきたいですね。
ーー最後に、これからジョインする仲間へのメッセージをお願いします。
今、30年後の日本に対して希望を見出している人は少ないかもしれません。労働力不足や様々な社会課題があります。しかし私は、障がい者が当たり前に活躍できる社会を創れたとき、日本は必ず変わると希望を持っています。働けるのに働けない矛盾を解消し、確かな自信を掴んだ一人ひとりが、地域の、そして日本の未来を支える力になるはずです。
TOBIRAは今、2022年の設立から急速に組織が拡大し、50〜60名規模となる第二創業期の真っ只中。マニュアルに沿った仕事ではなく、自ら考えてゼロから仕組みを作り上げる面白さがあります。社内はフラットで、EC担当が農業の現場にアイデアを出したりと、職種の壁を越えてマルチタスクをこなすスピード感が求められます。
市場で勝てる事業を創りながら、社会課題を本気で解決したい。そんなミッションを楽しみ、現場のスタッフや利用者と共に考え、走り抜けられる方と、ぜひ一度お話ししたいですね。