2025年10月21日(火)、「PR TIMES カレッジ Vol.10」に参加してきました。今回は名古屋会場で東京からのオンライン配信を視聴し、その後の交流会では名古屋会場に那須太輔さん、中村博行さんの二名のゲストが登場。オンラインとリアル両方の熱量を体感できる、なかなか贅沢な一日でした。
番組制作のプロ、X Corp. Japan代表、インタビューの達人、そして名古屋のメディアゲストという4つの異なる視点から、「伝える」ことの本質を学ぶ濃密な時間でもありました。備忘録も兼ねて、広報PRの最前線について学んだことを整理してシェアします。
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第一部:「無名なものを“語りたくなるもの”へ」—番組制作プロが語る企画術
第一部では、「ZIP!」「DayDay.」「テレビ千鳥」など人気番組を手掛ける放送作家のソマシュンスケ氏、西村隆志氏、澤井直人氏が登壇。「無名なものを『語りたくなるもの』へ」と題して、番組制作のプロの企画術について語ってくれました。映像制作の現場で培った企画論は広報PRにも通じる内容で、とても参考になりました。主なポイントは以下のとおりです。
クオリティへのこだわりが全て
どんなに良い企画でも、質が伴わなければ人は語りたくならない。まず「無名なものを語りたくなるものへ」という言葉どおり、伝えたいネタのクオリティをしっかり高めることがスタート地点になります。
ブルーオーシャンは“ズレた組み合わせ”で生まれる
印象的だったのが「ズレた組み合わせ」の威力です。たとえば「ウーロン茶 × シャンパンタワー」のように、想定外の組み合わせこそ話題のスイッチになるとのこと。キーワードは次のとおりです。
- 空白地帯を狙う(誰も手を付けていない組み合わせや切り口を探す)
- 時勢を捉える(コロナ禍などタイミングやトレンドを活かす)
- 予定調和ではなく少しズレている(ありがちな展開では刺さらない。意外性がありつつ納得感のある組み合わせを見つける)
少人数チームの強みを活かす
広報担当が1~2名といった少人数の組織も多いはずですが、「人数が少ないからこその強み」があるとの指摘が目からウロコでした。少人数だと意思決定が早く方向転換も素早いので、小回りの利く環境を最大限に活かせるのです。フットワークの軽さでチャンスを逃さないことが大切です。
企画は「ネタ3つ」で引き出しを用意
企画を考える際は常に次の3種類を用意しておくと良いそうです。
- 攻めのネタ(思い切った攻めたアイデア)
- 守りのネタ(安全策・リスクの低いアイデア)
- 普通のネタ(スタンダードなアイデア)
状況に応じてこの3つを使い分けられるようにしておくことで、急な展開にも柔軟に対応できます。
量が質を生む
そして何より大事なのは「とにかく企画書をたくさん書くこと」。数をこなすことでアイデアの質も向上するという点は、広報PRでも同じ。日々ネタ出しと企画書作成を繰り返し、引き出しを増やしていきたいと感じました。
第二部:「0クリック時代」がやってくる — X Corp. Japan代表が語るAI時代の情報発信
第二部では、X Corp. Japan代表取締役の松山歩氏が登壇。Twitter買収から3年が経ち、X(旧Twitter)が目指す未来について熱く語っていただきました。特に、検索やSNSを取り巻く環境変化とAI時代の情報発信についての話が印象的です。主なポイントをまとめます。
0クリック時代の到来
検索が「入力(クエリ)」中心の体験に変わりつつあり、ユーザーはより複雑な問いに対してAIの助言を求めるようになると言います。クリックしなくても答えが得られる「0クリック時代」が目前に迫っており、これからはAIフレンドリーなコンテンツ作成が必須になるとのこと。ユーザーが検索結果やAIアシスタント上で直接情報を得られる時代に備え、発信側もコンテンツの構造を工夫する必要があります。
Xのアルゴリズム進化とGrokの実装
年内には、XのAIアシスタント「Grok(グロック)」に何かを頼むとリアルタイムに反映される仕組みが実装予定だそうです。アルゴリズムの進化に伴い、投稿で気をつけるべきポイントとして次の3つが挙げられました。
- エンゲージメント(投稿に対する反応・交流の度合い)
- 情報の鮮度(どれだけタイムリーで新鮮な情報か)
- アカウントスコア(アカウントの信頼性や影響度を示す指標)
これらを意識して投稿することで、アルゴリズム上で有利に働く可能性が高まります。
Grokでユーザーインサイトを捉える
松山氏曰く「人間の本音を一番知っているのがGrok」だそうです。GrokはX上の投稿から膨大な情報を引っ張ってこれるため、ユーザーの本音やトレンドを把握する強力なツールになるとのこと。例えばキャンペーンやイベント企画の際にGrokで関連する投稿を分析すれば、ユーザーが今何に興味を持ち何を求めているかを読み解き、最適な施策設計ができるでしょう。参考事例として紹介されていたDuolingo(語学学習サービス)のX投稿は、BtoC企業でありながらBtoB企業も学ぶべきポイントが多い内容でした。ユーモアやユーザーとの距離感など、ユーザー心理を突いた発信ができているかが重要です。
BtoB企業のX活用
Xの基本ユーザー層はビジネスパーソンが多いという視点も示されました。Xはニュースアプリ的な側面も持っているため、情報収集を目的に訪れるユーザーに対してどう価値を提供するかが鍵になります。BtoB企業こそ、ニュースとして読まれるような有益な情報発信を心がけ、ユーザーのタイムラインに役立つコンテンツを届けると良いというアドバイスでした。
第三部:「心理的安全性」が最高のインタビューを生む — 塚原沙耶氏が語る聞く技術
第三部では、プロインタビュアーの塚原沙耶氏が登壇。人物へのロングインタビューを行う際の準備と心構えについて、具体的で実践的なメソッドを教えていただきました。特に「心理的安全性」が最高のインタビューを生むというテーマで、相手の魅力を引き出すテクニックが満載でした。印象に残ったポイントを整理します。
インタビューの質問をAIで作らない
塚原氏が強調していたのは、取材前の質問案をChatGPTなどAIに頼りすぎないこと。「相手がそれを分かると気持ちよくない」——この一言に尽きます。便利だからとAI任せで質問を用意すると、相手に見抜かれたときに不快感を与えてしまうとのこと。インタビューは相手への敬意と誠実さがあってこそ成り立つもの。質問づくりも自分自身で丁寧に行うことが大切です。
徹底的な事前準備
良いインタビューの8割は事前準備で決まると言っても過言ではありません。塚原氏はインタビュー前に以下のプロセスを踏むそうです。
- 資料収集:相手の経歴や活動について徹底的に情報収集する。過去のインタビュー記事やプロフィール、発信内容などを読み込む。
- 定番エピソードの把握:その人物がこれまでによく話している鉄板エピソードを押さえておく。過去の講演やインタビュー動画で盛り上がった話題をチェックする。
- イメージトレーニング:収集した情報をもとに、対話の展開を頭の中でシミュレーションしてみる。「こう答えたら次はこう聞こう」といった具合に想像を膨らませる。
- ファン目線の想像:相手のファンであれば何を聞かれたら嬉しいか、どんな話が聞きたいかを考えてみる。ファン心理を想像することで質問の角度が広がる。
- 年表作成:相手の人生やキャリアを時系列にまとめた年表を作る。同時にその時々の世の中の動きも添えて整理することで、質問に歴史的・社会的文脈を持たせる。
- 感情が動いたポイントの想像:年表やエピソードを眺めながら、「このときこの人はどんな感情だったのだろう?」と想像してみる。嬉しかった瞬間、悔しかった経験など、感情が揺れたであろうポイントを推測して質問に織り込む。
人物を立体的に捉える「4つの層」:インタビュー相手を深く理解するために、次の4つの層から情報を集めることが大事だと教わりました。
- 表の表:公式の顔。インタビューや記者会見など、公の場での発言や姿。
- 表の裏:舞台裏の顔。密着取材やドキュメンタリー映像など、公の場では見せない素顔やエピソード。
- 裏の表:うっかり見せてしまった顔。SNSでの発言やオフショット、本人が意図せずとも表に出た一面。
- 裏の裏:隠された裏の顔。週刊誌の暴露記事やゴシップ情報など、本人は見せたくないであろう一面。
質問案の練り方
事前準備を経て具体的な質問案を作る際には、次のステップを踏むと良いそうです。
- 膨らませる:まずは聞きたいことを自由にたくさん書き出し、質問を膨らませる。
- 短くする:出てきた質問をできるだけシンプルで短い言葉に削ぎ落とす。質問は簡潔なほど答えやすく、本質が伝わりやすい。
- 声に出してみる:質問案を実際に口に出して読み上げてみる。第三者から聞かれたと仮定して、自分なら面白く答えられるか?答えが広がるか?をチェックし、ブラッシュアップする。
インタビュー中に気をつけること:心理的安全性の確保
インタビュー本番では、相手が安心して本音を話せる空気づくりが最も大切です。そのために塚原氏が挙げた具体的なポイントは以下です。
- 自分が話しすぎない:インタビューアーは聞き手に徹し、つい自分の話を挟みすぎないよう注意する。
- 待つこと・間をとる:相手が考えているときや話し終わった後、すぐに次の質問に飛びつかず静かに待つ。沈黙も大事な間。
- 過度な相槌やリアクションをしない:相手の話を遮るような「ああ!」「なるほど!」といった大袈裟なリアクションは控え、相槌は相手のリズムを崩さない程度に。
- 無言の相槌:頷くなど言葉を発さない相槌で、話をしっかり聞いていることを伝える。相手の語りを邪魔せず受け止める姿勢が重要。
- メモや台本を見すぎない:用意した質問リストやメモに執着しすぎず、相手の目を見て話を聞く。会話の流れに沿って柔軟に質問を変えていく。
- 話すスピード・声の大きさを相手に合わせる:インタビュイーのペースやトーンに自分をチューニングして、居心地の良いリズムを作る。
- 感想や解釈は控えめに:相手の話に対してその場でこちらの感想や解釈を述べすぎない。評価や分析を押し付けず、あくまで相手にスポットライトを当てる。
- 誘導しない:自分の聞きたい答えに誘導するような質問の仕方はしない。中立的なスタンスで、相手の言葉をそのまま引き出すよう心がける。
- 相手の言葉を要約しない:相手が話した内容を「つまり○○ですね」などとまとめて返さない。そのまま受け取って深掘りする方が、相手は安心して話せる。
質問の深さを調整する
塚原氏は「質問の粒度を変えてみる」ことも提案していました。たとえば**「なぜ日本に来たのですか?」と事実を問うのではなく、「フランスを離れるとき寂しくなかったですか?」**と感情に踏み込んだ聞き方をするだけで、答えの深みがまるで変わります。相手の仕事や行動だけでなく、それによって生まれた感情や背景に踏み込む質問を投げかけることで、より本音に近い話を聞くことができます。
「個人的には…」は奥の手
インタビュー終盤まで取っておく“切り札”として、「個人的には○○が気になっていて…」と自分自身の視点から尋ねる質問もありだそうです。ただし最初から多用するとくどくなるため、本当に聞きたい最後の一問にとっておくのがポイントとのこと。
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交流会の様子
交流会:名古屋メディアゲストが語る「テレビが取り上げたくなるもの」
オンライン配信での全セッション終了後、名古屋会場ではゲストとして地元メディアのお二人、那須太輔さんと中村博行さんがお越しくださいました。実際にテレビ番組を制作する立場から「テレビが取り上げたくなるネタ」についてお話を伺える貴重な機会でした。テレビに情報を採用してもらうには何が必要なのか、興味深いポイントがいくつも語られました。
テレビが取り上げたくなる3つの条件
まず、テレビ番組がネタを採用したくなるための条件として次の3点が挙げられました。
- 多くの人が見たくなる“キャッチ”がつくこと – いわゆる見出し(キャッチコピー)の強さです。例えば「話題!すべて半額の激安ショップ なぜそんなに安い??」といった、一目見て「え、それは気になる!」と思わせるタイトルがあると強いとのこと。ポイントは間口の広いキャッチを意識すること。テレビの画面下に出るテロップ(サイドスーパー)にどんな文言を入れられるかを考えて企画すると良いそうです。実例として、「快挙!世界一のピザ職人は11歳 修行開始から約1年で達成」というニュースの見出しが紹介されましたが、これも誰もが思わず注目してしまう分かりやすい切り口ですよね。
- 視聴者の「へぇ」があるか – 思わず「へぇーそうなんだ!」と感心してしまう意外性・ギャップ要素です。例えば先ほどの激安ショップの例なら、「その安さの裏にはこんな秘密が…」という驚きの事実を用意するイメージです。具体的には:
- 不良在庫を安価に仕入れている(メーカーで余った在庫品を格安で譲り受けて販売)
- ネット通販の返品商品を一括購入している(返品された新品同様の商品を安く仕入れて再販)
- メーカーの駆け込み寺になっている(在庫処分に困ったメーカーから相談が殺到)
といった具合に、視聴者が「へぇ、そんな方法があったのか」と感じる情報が盛り込まれているかが重要です。
- ロケ映えする画がイメージできるか – テレビで実際に取材・放送する際の映像シーンが頭に思い浮かぶかどうか。例えば、
- 激安ショップのネタであれば、お客さんにインタビューして驚きの声を拾う場面や、山積みの商品にリポーターが囲まれる画が想像できます。
- ピザ職人の話であれば、最後にその11歳の職人がピザを焼いて審査員や出演者が「おいしい!」と食べるシーンが浮かびます。
こうした画作りのビジョンが描ける企画は通りやすいそうです。
「世界一」に弱い!!「凄そう」がいる!
“凄そう”な要素が必要」とのこと。またストーリーの重要性があり、単に「世界一の記録」よりも、「世界一になるまでにこんなドラマがあった」「世界一だけど実は○○」といった、人を惹きつける付加情報が求められるという意味でしょう。視聴者に「なんだか凄そうだぞ?」と思わせる仕掛けがいるわけです。
情報提供の経路:テレビ局や番組が企業発の情報を得る経路についても話題になりました。主なルートは以下の3つです。
- ネットで見つける – SNSやニュースサイトでバズっている話題。
- 企業からの売り込み(情報提供) – プレスリリースやPR担当者からの直接アプローチ。
- リサーチ会社経由 – 番組が契約するリサーチ会社から提供されるネタ。
- 画にならないと意味がない:テレビの世界では「映像映えしないものは取り上げられない」という厳しい現実も語られました。広報としてリリースを書く際も「これテレビで放送するとしたらどんな映像になるかな?」とイメージしてみることは有用です。実際、「シューイチの○○さんがこのネタをもらったらどう調理するか?」を想像してみるというアドバイスもありました。常に“画”を意識して企画や情報提供を考えることで、テレビに刺さるコンテンツに近づけそうです。
- 出たい番組を絞ってアプローチ:闇雲にプレスリリースをばら撒くのではなく、「このネタは絶対○○(番組名)向き!」と狙いを定めてピンポイントで仕掛けることも重要だそうです。媒体ごとに求める絵やストーリーは違うため、出したい番組・媒体を定めて戦略的にアプローチする方が成果につながりやすいとのことでした。
- キー局全国区への動線:地方発のネタを全国ネットに持っていくにはどうするか、という話もありました。最近はキー局も予算が限られているため、SNSでバズったネタはテレビ番組間で奪い合いになるといいます。だからこそ映像など素材の量が大事。例えば自社でネタに関する動画をしっかり撮り溜めておけば、「映像込み」で提供でき、番組側も取り上げやすいとのこと。自社オウンドメディアにエピソード動画を蓄積しておくなど、使ってもらいやすい状態でネタをストックしておくとチャンスが巡ってきやすいようです。そして撮影の際はスマホでも必ず画角は横で(テレビは横長ですから)、これも見落としがちな重要ポイントとして挙げられました。
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素敵なストラップを頂きました!
まとめ:「伝える」ために必要な多面的視点
今回のPR TIMES カレッジで得られたのは、「伝える」という行為の多面性についての学びでした。それぞれ異なる立場のスピーカーからお話を聞くことで、情報発信の引き出しが一気に広がった気がします。
番組制作のプロから学んだのは、企画発想力の大切さ。
“ズレた組み合わせ”の発想や質へのこだわり、小回りの利くチームの強みなど、良いコンテンツを生み出すためのクリエイティブな視点を教わりました。
X(Twitter)の日本代表からは、AI時代の情報設計。
0クリック時代を見据えたコンテンツ作成や、Grokを活用したユーザーインサイトの把握など、最新のプラットフォーム戦略を学びました。
インタビューの達人からは、人の魅力を引き出す技術。
徹底した準備と心理的安全性の確保、質問の工夫によって相手の本音とストーリーを引き出す方法を体得しました。
名古屋のメディアゲストからは、テレビが求める“画”とストーリー。
テレビに取り上げてもらうための条件や、企画の尖らせ方、ビジュアルの重要性についてリアルな視点を得ました。
異なる角度からの学びでしたが、根底にあるのは「どうすれば相手に伝わり、心が動くか」という共通のテーマだったように思います。それぞれのプロの知見を吸収し、伝える力の引き出しを増やせたことは大きな収穫でした。
名古屋会場というリアルな場で参加しつつ、東京の熱量をオンラインで同時に感じ取れるハイブリッドな構成も、とても刺激的でした。配信越しに感じる東京会場の盛り上がりと、最後に名古屋で那須さん・中村さんと直接お話できたこと。その両方があったからこそ、より多角的で立体的な学びになったと感じます。
学んだことは広報活動に少しずつでも活かしていきたいと思います。参加された皆さん、お疲れさまでした!広報PRに携わる方なら毎回新たな発見があるはずです。今後もこのような学びの場を積極的に活用して、自身のスキルを磨いていきたいと思います。
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