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【Arbletインタビュー】 ソニー出身エンジニア 松本の語る「信号処理」の魅力

こんにちは、Arblet(アーブレット)採用担当です!
Arbletで働く人たちのストーリー&インタビューと題しまして、信号処理エンジニアとして参画した松本にインタビューしました!

松本はソニーで定年まで活躍した後、Arbletに参画しました。
ベンチャー・スタートアップ界隈にて定年を迎えたシニアエンジニアが参画するのは珍しいかもしれませんが、ベテランエンジニアとして、いち社会人の先輩として、これまでの経験を存分に発揮しております。

Arbletの事業コアでもある生体信号処理は自分の経験と資産を活かせると思った

Q. Arbletに参画された経緯を教えてください

実は最初にお話を聞いた時は受け身でした。
前職のソニーを定年まで勤めて退職したのち、別の仕事をしていたのですが、それも一段落してこれからどうしようかと考えていました。
そんな時にArblet 取締役の縣ニキさんと私の共通の知人を介して、Arbletを紹介してもらったのがきっかけでした。

新しい会社に入ろうとする時、2つの考え方があると思います。
ひとつはまったく新しいことをやる、これまでやったことがない仕事をするということですね。
もうひとつは今までの経験を活かして仕事をするということです。
私は保守的なこともあり、後者の方を選びました。
Arbletの事業コアでもある生体信号処理はソニーで長年働いてきた自分の経験と資産を活かせると思ったからです。

Q. (Arblet代表取締役社長の)清水さんの第一印象はいかがでしたか?

エンジニアとして優秀で鋭いという印象を受けました。
また、自ら解決しようとしているテーマについて、深い理解と気概に満ちた人だと感じました。

             インタビューはリモートで行いました

生活を豊かにするものを低コストで組めるのが信号処理の魅力です

Q. 改めまして、松本さんはこれまでどのような仕事をしてこられたのですか?

ずっと音声信号やオーディオ信号などに関わってきており、これら音を出す"モノ"についてその信号処理の部分を担当してきました。

特に印象深いのは90年代頃になりますが、携帯電話の黎明期に電話の根幹である音声信号処理に関わっていたことです。 当時はキャリアに使ってもらえる端末を作ろうとしていて、携帯電話の原理試作から端末の完成まで携わった事が自分の中では大きな仕事であり、これを通じてエンジニアとして成長できたと思っています。

並行してMPEGや3GPPといった規格化会合に出向き、国際標準化活動に参画しました。
この仕事はなかなかタフでしたが、その甲斐があっていくつかの技術アセットは国際標準として採択される結果となり、中でも 2kbps という超低ビットレート音声符号化技術はMPEG-4 オーディオ符号化規格の一部となっています。
この活動を通して自社特許の重要性を痛感し、同時に他社との交渉、協業、かけひき、時にはバトルなど「大人の事情」ともいうべき部分など多くの貴重な体験ができたと思います。
特に特許がビジネスの中心となっているドルビーやFhGなどの貪欲でアグレッシブな戦略には苦労しましたが、とても良い勉強となりました。

音声符号化技術開発が落ち着いた後はATRACシリーズやICレコーダー独自コーデック、自動車メーカーのカーエンターテイメント用信号処理、オーディオ信号伝送技術、HiFi/Hi-Resolutionオーディオなどを担当するようになっていきました。また音源分離や波面合成など新しいオーディオ技術の開発にも携わりました。

Q. これまでの音声信号処理の経験はArbletの仕事において、どのようにつながったり役に立っていますか?

やってきたこと全てが活きていますね。
"ハードに関わる下位レイヤーのアレコレを上位レイヤーに伝える"というのを長年やってきていますが、下位レイヤーが分かる人はそんなにいないので、とても強みだと思っています。

Q. 信号処理の魅力について教えてください

信号処理とは、そもそも電気回路的でこんなことが出来ますというものでした、アナログの時代ですね。 60年代後半からデジタル処理に変わっていきますが、デジタルで取得したデータは数値なので、数学にダイレクトに結びつけることができます。 数学という人類のアセットとアナログから変換したデジタルデータを直結して処理できるようになった、これは大変革でそこから面白い時代が始まったのだと思います。
デジタル化されたデータを数学的に処理することで、ある事象の特徴(エッセンシャルなもの)を抽出すること、それが信号処理の非常に大きなメリットであり、また同時に大変面白く、かつ難しい部分だと思います。 例えば時系列データにしても、データを眺めると大事なものとそうではないものが分かります。

信号の特徴を抽出して、それを違う事象にマッピングすることで新たな事象を創出したり、重要な部分だけを抽出することで情報全体の持つ帯域幅を下げることが可能です。 それはすなわち機能性やコストに多大なインパクトを与えることに直結します。デジタル信号処理ではこのようなことが容易にできるようになった、そこに面白さと魅力を感じます。

現在、私はArbletで光センサによる静脈血流信号から心拍数を推定する技術開発に取り組んでいます。
例えば手を振ったり走ったりすると、信号の波形がぐちゃぐちゃになります。 そこから"本質"である心拍数を抽出することになりますが、カオスな信号の中から大事なものを抽出するというのが面白いと感じています。

生活を豊かにするものを低コストで組めるのが信号処理の魅力です。
機械学習が最近トレンドですが、信号処理の技術やセンスは機械学習を含む他の技術に対しても有効な手段を与えることができます。 地味な分野ではあるものの、原理原則であり、応用範囲が広いですね。 観測の対象としているものの本質は何なのか、というのを捉えるには信号処理はとてもよい"ツール"なのかなと思います。

加えて、私は信号処理のアウトプットやパフォーマンスの優劣を判断は人間の感性に委ねられる場面が多いと考えています。 機械的な計算の結果が人間の五感に大きな影響を与え、面白いことが起こる。 信号処理の計算結果に対して、人間の感性(聴覚視覚等)が絡んで最終的な良し悪しが判断されるという点に限りない魅力を感じます。

松本はデータ収集・測定のため、モーションキャプチャーセンサーを装着しています。

Arbletのヘルスケアには人の感性や、アートな意味で「ここが大事」というものを盛り込みたい

Q. 最後に一言お願いします

仕事の進め方について、特定分野だけに注力するのは良いことですが、それだけでは成長は難しいと思います。 自分のコアを持ちながらマクロな視点で将来の方向性を探す、この2つを両輪として進めていくと良いのではないでしょうか。
長い社会人生活の中で一時期はコア部分に固執する時期があってもよいとは思いますが、専門性を持ちながらも広い視野を持つこと、また時には自分のやっている事の意味・価値を客観的に評価する姿勢も大事だと思います。

またモノづくりにあたって「機械的に計算をして(何だか分からないけど)これで終わりました」といった姿勢ではユーザーに響かないと思います。 Arbletのヘルスケアシステムには人の感性や、さらにはアートな意味での「こだわり」「ここが大事」というポイントを盛り込んでいきたいですね。

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