PROFILE
市川亮祐(LeaPla Team Lead) 大学卒業後、新卒で学校法人瓜生山学園に入職し、学生募集業務を経験。その後、教学部門へ異動し教育システムの運用に従事。京都芸術大学では教学IR(学修成果の分析)に取り組み、データベースや統計の知識を習得。2023年にはIRフォーラムに登壇するなど、教育データ活用の専門性をさらに深める。2025年より同学園からクロステック・マネジメントへ出向し、教育現場の知見を活かした事業推進に取り組む
挑戦し続ける教育現場で、学びと成長を支える
──新卒で瓜生山学園に入職されたきっかけから、これまでの歩みについて教えてください。
正直に言うと、最初から教育業界に強い関心があったわけではありません。就職活動が厳しい時期で、大学に在学していたころから子どもがいたこともあり、とにかく「安定した職に就いて家族を守らないと」という一心で就職活動をしていました。学校法人なら安定しているだろう、というのが瓜生山学園に入職した大きな理由です。
入職後は、まず専門学校で学生募集の業務を担当しました。経営に直結する重要な仕事でしたが、入学した学生が退学してしまう姿を見ることもあり、当時の自分の視野では、学生募集だけでは学生一人ひとりの学びや生活を十分にサポートできないのではないか、と感じることもありました。
その後、人事異動で教務の仕事に携わるようになりました。学生の学習支援やデータ管理を担当する中で、学生一人ひとりの学習や生活、人生に直接関わることができるようになり「人の役に立っている」と実感できる瞬間が増え、教育現場で働き続ける原動力になりましたね。
気づけば、入職してもう14年くらいになります。続けてこられた理由は、学園全体に「変化を恐れない気質」があるからだと思いますね。教育機関って、どちらかというとカリキュラムや制度も「決まったものを守る」という安定的で保守的なイメージを持たれることが多いと思うんです。でも瓜生山学園は、「もっと良くできるんじゃないか」「今ある制度や仕組みを変えていこう」という空気が常にある。そこに魅力を感じてきました。また、学園内で異動があり、私はもともと京都芸術デザイン専門学校に所属していたのですが、後に京都芸術大学へ異動しました。専門学校と大学では制度も業務スタイルも全く違い、正直「転職に近い」経験でした。そうした大きな環境変化があったことで、毎回新しいチャレンジがあり、新鮮な気持ちで働くことができているんだと思います。
デジタルで広げる学びの可能性──クロステック・マネジメントとの出会い
──クロステック・マネジメントのプロジェクトに関わることになったきっかけを教えてください。
きっかけは、クロステック・マネジメントの発足当時に「学内のシステムやデータのことをヒアリングさせてほしい」と声をかけてもらったことです。
京都芸術大学に異動後は、教学IR(教育の質保証のためのデータ分析)として学修成果や教育活動のデータを収集・分析し、大学の教育改善や戦略立案に活用する業務に携わってきました。全国規模のIRフォーラムで大学向けに登壇する機会もあって、気づけば「教育データに詳しい人」として認識されるようになっていたんだと思います。何回かヒアリングを受ける中で、教学に比重を置きながら、クロステック・マネジメントに関わる機会が増えていきました。
──クロステック・マネジメントのプロジェクトに関わる中で、衝撃を受けたことは何ですか?
現クロステック・マネジメント代表の小笠原が言っていた「東アジアで1000万人の教育圏をつくる」というミッションを聞いたときに衝撃を受けました。大学の枠組みの中にいると、どうしても「定員」という物理的な限界に縛られます。たとえば数十人増やすだけでも文科省とのやりとりに何年もかかる。でもデジタルの活用加えて法令や制度の正しい解釈を行えば、その枠を一気に超えて、圧倒的に多くの人に学びを届けられる。「これは学びの世界が変わるかもしれない」と直感しました。
私はずっと「学生のために」という想いを大事にしてきました。大学を退学してもまた戻ることができたり、休学しても学びを継続する手段があるなど、学び直しのチャンスを増やしたい。だから、教育の機会を広げることをミッションに掲げるクロステック・マネジメントに声をかけてもらったとき、「自分がやるべきことはここにある」と自然に感じられました。デジタルを使えば、物理的な制約を超えて圧倒的に多くの人に学びを届けられる。そのインパクトに触れたとき、自分のキャリアが一本の線でつながったように感じましたね。
学生の学習体験を再設計する─LearningDept.の取り組み
──現在はどのような業務を担当されているのでしょうか。
Learning Dept.に所属し、「学生の学習体験を新しくする」取り組みを進めています。
現在は、新たな学習体験を設計するための基盤づくりに取り組んでいます。学校として最低限抑えるべき基本構造を明確にし、それをベースにどのような学びを提供できるかを検討しているイメージです。
背景にあるのは、デジタル技術によって「学習の選択肢が広がった」ということです。これまでは大学の教室という「箱」に依存して教育が成立していましたが、オンラインや通信教育によって学習の機会は格段に増えました。
例えば、経済的な理由で退学した学生が、通信を利用して安価に学び直すことができるとか。正規課程に入らなくても、大学が公開する講座をアラカルト的に受けられるようにするとか。そういう仕組みを整えることで、「機会損失」されてきた人に学習のチャンスを提供できるはずだと考えています。
自分自身も大学時代に留年や休学を経験していて、「18歳で進路を決めなければならない」という硬直的な仕組みに疑問を持ってきました。学びは人生のどのタイミングでもいいし、1年だけでもいい。そんな多様な学びのスタイルを支える仕組みをつくるのが、今の業務の大きな目的です。
DXの本質に向き合う楽しさと、学びを支える挑戦
──クロステック・マネジメントで働く魅力は何ですか?
クロステック・マネジメントで働く魅力は、「DXとは何か」という本質に真正面から向き合える点です。世の中ではDXと聞くと、「デジタルやAI技術を使った業務改善」と捉えられがちですが、その革新の恩恵はそれだけに留まらないと私は考えています。
私はクロステック・マネジメントに関わる前から、AIという人間とは異なる知能の台頭を目の当たりにしながら、「そもそも教育はこれからどう変わっていくのか?」という問いを持っていました。既存の仕組みが急速かつ抜本的に変化する時代に合わせて、教育もアップデートしていく必要があると強く感じていたのです。単なる業務改善にとどまらず、時代に応じて変化していくことこそが求められるのだと思います。
デジタルやAIの技術進歩と、「DXとは何か」という本質に真正面から向き合うクロステック・マネジメント。京都芸術大学が持つリソースを掛け合わせることで、場所や身体的条件、言語の違いに関わらず、学びたい人すべてに最適な学習体験を提供できると感じています。もしかしたら、「18歳になったら大学に行く」といった従来の価値観は変わるかもしれません。あるいは、「大学は4年間で学位を取る場所」という固定観念も見直されるかもしれない。そんな未来を想像するだけで、純粋にワクワクします。
──Learning Dept.のメンバーと一緒に仕事をしていて感じる面白さは?
僕たちは日々、新しい学習体験を支えるためのシステムや仕組みを考えていますが、その中で毎日のようにLearning Dept.のメンバーにツッコミを受けるんです。「なぜカリキュラムはこのような構造なんですか?」「学籍は本当にこう管理しなければいけないんですか?」といった具合に。捉え方次第では、自分がこれまでやってきたことを否定される場面も多いんですが、それが逆に面白い。全ての前提が問い直されることで、「なぜこの構造になっているのか」「そもそもこの構造でなければいけない理由はあるのか」と改めて考えさせられるんです。
そうして固定観念が揺さぶられると、次に自然と「学生や学習者にとって、私たちの組織は何を提供できるのか」という視点につながっていきます。日々のこうしたやり取りの中で、自分の価値観も少しずつ変わりながら、学びを本当に支える仕組みづくりに向き合えているなと感じます。