先週11月14日・15日に「NIIGATA INNOVATION EXPO by Canon Imaging Systems」を開催いたしました。ご来場いただいた方には「面白かった」「ためになった」「楽しかった」などのご感想をいただき、また多くの皆様にご来場いただき、心より御礼申し上げます。
本イベントは、もともと社員同士が成果を共有し交流することを目的として、2022年にスタートした社内の展示会でした。今年は、当社が入居しているビル「PLAKA」を中心に開催されたイノベーションイベント「LAST NIIGATA」の一環として、社外の方々にもご参加いただける形で実施いたしました。
社員の方々には少々戸惑いもあったようですが、ご来場された方と直接お話しすることで日常業務では得られない気づきがあったという声も多く聞かれました。一方で、社外の方に説明するのは緊張するし難しかったという感想もありました。
展示会は「会社」をアピールする場ではありますが、来場される方は「社員」を通じて会社を知ることになります。つまり、その「社員」の説明の如何によって会社への評価が決まってしまうといっても過言ではありません。
今後、当社としても「攻勢をかける」ために社外に向けた発信の機会を増やしていく方針ですので、いわゆる「プレゼンテーションスキル」の重要性はますます高まっていきます。
かくいう私も、かつてはプレゼンテーションが大の苦手でした。
若い頃、あるビジネス研修に参加した際、アイスブレークとして「一人10分程度で自己紹介をしてみましょう」という課題が出されました。同じテーブルの参加者は10分以上話し続けていたのに対し、私は3分ほどで話が尽きてしまい、アイスブレークどころかコッチン・コッチンに体が固まってしまいました。優しいメンバーからなんとか質問を受けながら10分をつないだものの、苦い思い出として残っています。
ただ、その時の研修講師が非常に魅力的に映り、「いつか自分も研修講師をやってみたい」と、話すことが苦手でありながらも密かに決意を固めました。
ある日、社内会議のために研修センターを訪れた際、館内の廊下で人材開発課の課長と偶然出会い、こう声をかけられました。
「廣木くん、コーチング研修の講師に欠員が出たんだけど、やってみない?」
研修講師をやってみたいという思いがあった私は、後先を考えず「はいっ!」と即答してしまいました。その後、上司を説得するのは大変でしたが…。
講師を務めるには、3日間と2日間の計5日間にわたる「コーチング研修講師養成研修」という合宿に参加する必要がありました。研修が始まると、トレーナーから「研修の成功はプレゼンテーションにかかっている」と、いきなりプレッシャーをかけられました。
最初の3日間は、プレゼンテーションのトレーニングにみっちり取り組みました。
プレゼンテーションでは、ラポール(フランス語で「一致・調和」)が重要です。そのためにアイスブレークを行い、ペーシングやミラーリングを通じて、話をブリッジ(前の話題をつなぎながら本題へ導く)していきます。また、内容は相手に分かりやすく伝えることが大切であり、特に技術者にありがちな略語の多用は避けるべきだと学びました。
さらに、グランディング(プレゼンの場にしっかりと根を下ろすこと)、ストラクチャリング(話の構成を明確にすること)、クリーンアジェンダ(「失敗したらどうしよう」といった不要な感情を排除すること)など、プレゼンテーションの要点を体系的に学びました。
非常に充実した研修で、基礎を学んだだけなのに、すっかりプレゼンの達人になった気分になり、のぼせもんの性格も手伝って、さまざまな場面で教わったことを活用しました。
ある時、特許に関する内容で、約500人の前でプレゼンをする機会がありました。地味なテーマではありましたが、アイスブレークを取り入れてラポールを築き、構成を工夫し、少しユーモアも交えて、興味を持ってもらえるような内容に仕上げました。
特許の業界では、自社の特許が他社に侵害されている疑いがある場合、相手に警告文を送ります。この警告文は、業界内で通称「Love Letter」と呼ばれています。当時、無線技術に関して北米や欧州などから「Love Letter」が届いており、その中にはカナダの企業からのものもありました。そこで私は、「カナダからも“Love Letter”が届いています♪」と発表したところ、これが大いにウケました。正確には、ある年齢以上の方々にはウケました(若い方はぜひご両親に聞いてみてください)。
この発表をきっかけに、社内で私のプレゼンテーションが評判となり、社内報の「人を動かす伝達技術」という特集では、「達人に聞け」というコーナーで、プレゼンが苦手な方の質問に答える機会もいただきました。
プレゼンテーション研修の中で、私が最も印象に残っている言葉が「Visual Aid」です。
皆さんがプレゼンテーションを行う際、ほとんどの場合PowerPointを使用されると思います。そして、スライドを美しく仕上げることに力を入れる方も多いでしょう。
しかし、それはあくまでも「Visual Aid」、つまり補助的な役割に過ぎません。主役は、あくまで発表する“あなた”なのです。
発表中にスクリーンを見ながら聴衆に背を向けて話す方もいらっしゃいますが、これではスライドが主、発表者が従、のようで主従が逆転してしまいます。主役はあくまでもあなたです。聴いてくださる方々の表情(フィードバック)を見ながら、一人ひとりに語りかけるように、コミュニケーションを楽しみながらプレゼンテーションを行うことが大切です。
例えば、聴いている方が眠そうな顔をしていた時は、「失礼だな」と思う前に、発表している「内容がわからない」「興味がわかない」などのフィードバックととらえてください。わかりやすく丁寧に説明したり、興味をもちそうな話題をはさんだり、時にはジョークを入れたりして、聴いている方々とのラポールを取り続けるように工夫してみましょう。
このコラムを読んでくださった皆さんも、プレゼンテーションを行う機会があるかと思います。その際には、プレゼンテーションの「主役は自分」であることをを意識し、伝える力で未来を切り開いていってください。
※次号は11月24日(月)リリース予定です