こんにちは。クラウン情報テクノロジーの増井です。
「現役エンジニア社長シリーズ」第15回です。
前回のストーリーでは、金融ITの仕事で最初にぶつかる「言葉の壁」について書きました。
金融ITの現場では、株式、債券、先物、オプション、約定、受渡など、最初は聞き慣れない言葉がたくさん出てきます。
でも、最初から知っている必要はありません。
大切なのは、分からない言葉をそのままにせず、一つずつ調べていくことです。
では、その先はどうすればいいのでしょうか。
金融用語をたくさん覚えれば、「金融ITに強いエンジニア」になれるのでしょうか。
私は、それだけでは足りないと思っています。
業務知識は、言葉を覚えるだけではなく、実際の業務とシステムを結びつけることで身についていく。
今回は、私自身が金融ITの現場で感じてきた「業務知識の身につけ方」について書いてみたいと思います。
まずは、分からない言葉を調べる
最初の一歩は、前回も書いた通りです。
分からない言葉が出てきたら、まず調べる。
例えば「債券」という言葉が出てきたのであれば、債券とは何なのかを調べる。
さらに仕事の中で「利回り」「償還」「クーポン」といった知らない言葉が出てきたら、それも調べる。
一つ調べると、また知らない言葉が出てくることがあります。
それも調べていく。
最初は大変ですが、これを繰り返していると、少しずつ金融の世界の言葉が分かるようになります。
ただし、ここで終わってしまうと「金融用語を知っている人」にはなれても、まだ「金融ITに強いエンジニア」とは言えません。
大切なのは、ここからです。
「この言葉が、このシステムのどこにあるのか」を見る
業務知識を身につけるうえで私が大切だと思っているのは、調べた知識を、実際に担当しているシステムと結びつけることです。
例えば、ある金融商品の仕組みについて調べたとします。
次に見るのは、自分が担当しているシステムです。
「この商品は、このシステムではどのように管理されているのか」
「どんなデータを持っているのか」
「どのタイミングで、どんな処理をしているのか」
「その結果は、次にどこへ渡されるのか」
こうやって業務とシステムを行ったり来たりしながら理解していくと、単なる知識だったものが、実際の仕事とつながってきます。
「業務を知る → システムを見る → もう一度業務を調べる」
この繰り返しが、とても大切だと思っています。
データを見ると、業務が見えてくる
私は、システムを理解するときにデータを見ることも大切だと考えています。
設計書を読むだけでは、なかなかイメージできないことがあります。
そんなとき、実際にどのようなデータが入っているのかを見る。
項目名を見る。
値を見る。
前後の処理を見る。
すると、「この項目は、この業務のためにあるのか」「この値が変わるのは、このタイミングなのか」といったことが少しずつ見えてきます。
逆に、データを見ていて分からない項目があれば、その意味を調べる。
そこから新しい業務知識につながることもあります。
金融ITでは、業務を知ることでデータが分かり、データを見ることで業務が分かるということがよくあります。
設計書だけ、プログラムだけを見るのではなく、その向こう側にある業務まで想像する。
これが業務知識を深める一つの方法です。
「なぜ?」を一つ増やしてみる
業務知識を身につけるために、もう一つ大切だと思っていることがあります。
それは、
「なぜ、この処理が必要なのだろう?」
と考えることです。
システムには、必ず何らかの理由があって処理があります。
なぜこの項目が必要なのか。
なぜこの計算をしているのか。
なぜこのタイミングで処理するのか。
なぜこのチェックが必要なのか。
仕様書に「こうする」と書いてあるから、その通り作る。
もちろん、まずはそれも必要です。
でも、そこで一度、
「なぜ?」
と考えてみる。
調べていくと、その先に金融商品や実際の業務が見えてくることがあります。
この「なぜ?」が増えていくほど、システムを表面的に見るのではなく、業務から理解できるようになっていきます。
詳しい人の話を聞く
自分で調べることは大切ですが、すべてを一人で理解しようとする必要はありません。
金融ITの現場には、その業務を長く経験している人がいます。
エンジニアだけではありません。
お客様側には、実際に金融業務を担当している方もいます。
そういう人たちの話には、本やインターネットだけでは分からない情報があります。
「実際の業務ではこう使います」
「この処理があるのは、こういう理由です」
「以前こういうことがあったので、このチェックが必要になりました」
こうした話を聞くと、システムの仕様に理由があることが分かります。
ただ質問するだけではなく、自分なりに調べたうえで、
「私はこう理解したのですが、合っていますか?」
と聞いてみる。
その方が、自分の理解のどこが合っていて、どこが違っているのかも分かります。
人から教えてもらうことも、金融ITの専門性を身につける大切な方法です。
一度覚えただけでは、業務知識にはならない
金融の本を一冊読んだから、金融業務が分かる。
私は、そんなに簡単ではないと思っています。
調べたときには分かったつもりでも、しばらくすると忘れてしまうこともあります。
ところが、実際のシステムで何度もその言葉に出会い、設計し、テストし、お客様と話していると、少しずつ自分の知識になっていきます。
一度調べた。
一度経験した。
それで終わりではありません。
調べる → システムで見る → 実際に使う → また調べる。
この繰り返しによって、知識が定着していきます。
だから金融ITの専門性は、短期間ではなかなか身につきません。
逆に言えば、何年も積み重ねてきた人の業務知識は、簡単には代替できない強みになります。
少しずつ「点」が「線」になっていく
金融ITの仕事を続けていると、あるとき、それまで別々だった知識がつながる瞬間があります。
以前調べた金融商品。
別の案件で見たデータ。
過去に担当した処理。
お客様との会話。
それぞれが最初は「点」だったものが、経験を重ねることで「線」になっていきます。
すると、新しいシステムを見たときにも、
「この処理は、あの業務と関係があるのではないか」
「ここを変更すると、こちらにも影響するのではないか」
と考えられるようになります。
さらに経験を重ねれば、言われたことを理解するだけではなく、こちらから質問や提案ができるようになる。
私は、そこが業務を知っているエンジニアと、そうでないエンジニアの大きな違いだと思っています。
目指してほしいのは「業務とITをつなげられる人」
以前のストーリーでも書きましたが、私がクラウン情報テクノロジーのエンジニアに目指してほしい姿があります。
それは、現役のトレーダーやファンドマネージャーと、金融業務について会話しながら要件定義ができるエンジニアです。
そこまで到達するために、何か特別な近道があるわけではありません。
最初は一つの言葉を調べるところから始まります。
金融商品を知る。
業務を知る。
システムを見る。
データを見る。
分からないことを調べる。
詳しい人に聞く。
そして「なぜ?」を考える。
その積み重ねの先に、業務とITの両方を理解し、その間をつなげられるエンジニアがいるのだと思います。
最後に
金融ITに強いエンジニアは、最初から金融に詳しかった人とは限りません。
知らない言葉に出会ったときに調べる。
調べた知識を、実際のシステムと結びつける。
データを見る。
「なぜ、この処理が必要なのだろう」と考える。
分からなければ、詳しい人に聞く。
そして、それを何度も繰り返す。
とても地道です。
でも私は、この地道な積み重ねこそが、金融ITエンジニアの専門性をつくるのだと思っています。
知識を覚えるのではなく、業務とシステムを結びつけて理解する。
それができるようになると、システムの見え方も、お客様との会話も変わってきます。
そしていつか、
「この人なら、私たちの業務を理解したうえでシステムの話ができる」
とお客様から思っていただけるエンジニアになる。
クラウン情報テクノロジーでは、そんなエンジニアを一人でも多く育てていきたいと考えています。
金融ITという領域を、狭く、深く。
その専門性は、一日では身につきません。
だからこそ、時間をかけて積み上げる価値があると思っています。
クラウン情報テクノロジーに少しでも興味を持っていただけましたら、ぜひ一度カジュアル面談でお話ししましょう。
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