蛇口をひねれば水が出る――そんな“当たり前”をスタートアップの足元で支えてきたのがクロロクです。テクノロジーと仕組みで労務を再構築し、10年連続IPO伴走やのれん分け制度、コードを書く社労士など独自の挑戦を続けています。
今回の記事では、クロロクのはたらき方やこれからの展望について、代表・栗本さんにお話を伺いました。
序章 “存在を意識させないインフラ”をめざして
「理想の社労士は“水道”のような存在。蛇口をひねるたびにありがたみを感じる人はいないけれど、もし止まった瞬間に生活は立ちゆかなくなる――そんな“当たり前”を支えたい」。
クロロク社労務士法人(以下、クロロク)の代表・栗本 裕司は、スタートアップの労務領域を10年以上にわたり裏側から支えてきた。上場企業を10年連続で輩出する快挙を成し遂げてもなお、本人は「たまたま優れた会社とご一緒できただけです」と笑う。
第1章 “逃げ”から始まったキャリアが、スタートアップ支援の原点に
大学時代、就職活動に熱が入らなかった栗本は「家業が社労士事務所だったこともあり、“逃げ” で資格勉強を始めた」という。
狭き門を突破して入所した最初の職場は、IPO直前フェーズの企業を専門に支援する事務所。シリーズD前後のクライアントに伴走しながら「10年間がむしゃらに働いた」。
だが経験を積むにつれ「正しいことを言うだけでは、急成長企業のビジネスは回らない」と痛感。より初期フェーズのベンチャーと“グレーの線引き”を一緒に悩みたい――その思いが独立の原動力になった。
第2章 “卵か鶏か問題”とテクノロジー導入のターニングポイント
独立後3年間はプレーヤーとして奔走。「社員採用が先か、顧客拡大が先か」という労働集約型ビジネス特有のジレンマに向き合った。転機は2015〜16年。
「Slackが英語版しかなかった頃から導入し、SmartHRやGASを組み合わせて業務をフルクラウド化した。社労士用ソフトに依存しない体制をつくり、クライアントと同じコラボレーション環境で仕事を進める方が合理的だと確信した」
この頃から社内には「毎年作り直すプロジェクト文化」が根づく。算定基礎や年末調整をプロジェクト化し、前年よりもスマートなフローを必ず提案する。「変化を楽しむ」というバリューはここから生まれた。
第3章 10年連続IPO、その“再現性”の秘密
現在クロロクは210社超・最大4500名規模のクライアントを抱える。クライアントがIPOを行うのは「10年連続」。だが栗本は「私たちが上場させたわけではない」と首を振る。
「魅力的な会社が正当に評価された結果。私たちは足もとを整えただけ」
その裏側にあるのは「正確性を担保し続ける仕組み・時代に合わせてアップデートするメンテナンス・現場でフロー通りに回すオペレーション」という“三位一体モデル”だ。
第4章 のれん分け制度――“出る人”も“残る人”も主役に
クロロク最大の特徴は、一定のクライアントを持って独立できる“のれん分け制度”。
「優秀な仲間が収入ゼロで独立し、安売りに走ってしまうのは業界の損失。数百万円規模の契約を引き継いで、自分の力を存分に発揮してほしい」
判断基準はシンプル。「クライアントを安心して任せられるか。クライアントサイドに立って意思決定できるか」。だからこそ在籍中の教育に“独立/残留”の線引きはない。「徹底的に育て、選択肢を広げる」のがポリシーだ。
2022年に新しいオフィスに移転しました
第5章 社労士×プログラミング――“作業そのもの”を再構築
社労士法人の代表がコードを書く。業界では珍しいが、栗本は必然だと語る。
「知識だけなら法改正を追えば横並び。差別化は“作業のあり方”を設計し直せるかにある。プログラミングは最速で価値を高める手段」
GASスクリプトで内製したワークフローは、クラウド会計ソフトのアワードで表彰も受けた。生成AIも積極的に試験導入し「顧客対応時間を創出する」仕組みづくりに余念がない。
第6章 分業とプラットフォーム化――これからのクロロク
業務効率化で空いたリソースを、コンサルティングに投下する。だが顧客が増えれば再び作業は膨らむ。「だから設計・メンテナンス専任者/オペレーション専任者という分業を推進し、将来的には卒業生も利用できるSaaSプラットフォームを構想している」。
この構想が実現すれば、クロロクは“社労士版 GitHub”のようなナレッジ共有基盤になるかもしれない。
第7章 クロロクが求める4タイプの“変化を楽しむ人”
- 仕組みから仕事をデザインしたい人
年次業務のフローを毎年刷新し、思わず「今年はラクになった」と言わせたい。 - テクノロジーと法律の橋渡し役が好きな人
Slack・SmartHRはもちろん、生成AIやPythonで「面倒」を自動化することにワクワクする。 - クライアントファーストで“グレーを線引き”できる人
「法律的に正しい」だけではなく「事業を止めない選択肢」を示せる胆力。 - キャリアを自分で描きたい人
独立するのも良し、社内で専門特化して大企業もスタートアップ支援もできる姿をめざすも良し――道は複線。
第8章 メッセージ――“黒子”の誇りを胸に、新しい景色を
最後に、栗本から未来の仲間たちへ。
「独立が偉いわけでも、残るのが正解でもない。大事なのは、“やりたいことを選べる状態”を自らつくること。そのフィールドとしてクロロクを使い倒してほしい」
クロロクが掲げるミッションは「スタートアップの成長を支えるインフラであり続ける」こと。
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