『外部のパートナーとして、一歩引いた視点から「会社全体として、今本当に伝えるべきメッセージは何か?」を常に問いかけます。』
その徹底した思想を武器に、企業のコミュニケーション戦略から撮影・コンテンツ制作までを一貫して手掛ける、株式会社撮影ティブ。
単なる制作会社ではなく、クライアントの事業成功に深くコミットする真のパートナーであり続ける彼らは、なぜそこまで徹底してクライアントに寄り添うのか。元バンドマンという異色の経歴を持つ代表・堤が、これまでの人生の中で見つけ出した「本質的な価値提供」の哲学に迫る。
堤 康允 / 代表取締役
大学卒業後、プロミュージシャンを目指しバンド活動に専念。25歳でキャリアチェンジし、インターネット放送局に入社。その後、株式会社ツードッグスでディレクターとして、ブランディングからクリエイティブ制作まで幅広く経験。2021年、株式会社撮影ティブを設立。2024年にはインフォネットグループへ参画し、子会社社長として事業を推進している。
2000人の熱狂と、40代の現実。回り道で見つけた「クリエイティブを構造化する」という天職
ーー堤さんは、元々プロのミュージシャンを目指されていたそうですね。どのような経緯でクリエイティブの世界に進まれたのでしょうか?
大学卒業後、3年間は本気でプロミュージシャンを目指していました。原体験は高校の文化祭で、2000人もの観客の前で初めてギターを弾いた時の、あの地鳴りのような歓声と熱狂が忘れられなくて、「これだ」とやられてしまったんです。大学でもバンドを続け、卒業後もフリーターをしながらライブハウスに音源を持ち込む日々でした。
ただ、25歳になった時、ふと自分の将来を考えたんです。7年間続けた焼肉屋のバイト先に、40代半ばになっても夢を追い続けるバンドマンの先輩がいて、その姿に15年後の自分の姿を重ねた時に、「今のままでいいのか」と自分の将来を真剣に考える大きなきっかけになりました。25歳を一つの区切りにしようと決めていたので、音楽の道を諦め、初めて就職しました。
ーーそこから、どのようにしてクリエイティブの仕事に?
ハローワークで見つけたインターネット放送局に就職しました。音楽で作曲などをしていたので、「クリエイティブ」という言葉に親和性を感じたんです。ただ、入社して1年で事業が大きく変化し、20人いた社員が最終的に5人になりました。
残った僕ら5人は、ポジションに関係なく、カメラも回せば番組の台本も書く。映像編集もする。ディレクターもオペレーターも関係なく、全員で全てをやる。ポジションや職域に捉われず、全員で事業を前に進めていく。そのカオスな環境が、結果的に僕にクリエイティブのあらゆる基礎を叩き込んでくれました。何より、困難な状況を共に乗り越えた仲間とは今でも仲が良く、チームで一つの目標に向かうことの尊さを学んだ、かけがえのない時間でした。
ーー壮絶な社会人デビューですね。そこから、次のキャリアはどのように考えたのでしょうか?
3年ほど経った頃、「このままでは自分の市場価値は上がらない」という焦りを感じ始めました。もっと成長したい、ちゃんとお金を稼ぎたい。そんな想いで転職活動を始め、採用エージェントに「ディレクター」という職種を教えてもらい、前職のツードッグスに出会いました。
ツードッグスは、ブランディング、クリエイティブ、システムの3チームが連携する会社で、僕はそこで初めてディレクターとして、企業のブランディングという最上流から最終的なアウトプットまで関わる経験を積みました。
ーーそこで得られた、ご自身の中で最も大きな変化や学びがあれば教えてください。
ここで得た二つの学びが、今の僕の根幹になっています。
一つは、「クリエイティブを構造化し、マネタイズする視点」。当時担当していた某大手ジュエリーブランドのECサイト用撮影は、年間数千カットにも及びました。その中で、当時の社長から「どこにクオリティの線引きを置き、どう伝えれば顧客は価値を感じ、納得して対価を払うのか。コストを抑えつつそれを実現するには、カメラマンと何を話すべきか」という、クリエイティブ全体の構造を徹底的に学びました。
もう一つは、「抽象的なものを言語化する力」です。クライアントに求められるクリエイティブのイメージとして「春っぽく可愛らしく」といった曖昧な要望を、ブランドの思想と結びつけ、具体的なクリエイティブのコンセプトに言語化し、カメラマンに伝える。このプロセスを叩き込まれたことで、今の事業の軸ができました。
「企業の外部広報室」という着想。クライアントの課題と、自らの野心が交差した創業期
ーーその後、ツードッグスの代表だった方と一緒に撮影ティブを創業されます。どのような経緯があったのでしょうか?
ツードッグスがセキュリティ関連の会社に売却され、クリエイティブチームが解散することになったのが、僕のキャリアの大きな転機でした。
「もっと成長したい」「いずれは独立したい」という想いは常に持っていましたが、まだ早いかもしれないと悩んでいたタイミングでもありました。そんな中、声をかけてくれたのが、当時の代表です。彼はいくつもの会社を立ち上げてはバイアウトを成功させる、常に次の事業機会を探している連続起業家でした。
彼から「タイミングが来たね」と誘われた時、これは悩んでいる暇はない、またとない挑戦の機会だと感じました。彼の新たな事業戦略と、僕自身が次のステージへ挑戦したいという想いが重なり、共に新しい会社を創ることを決意した瞬間でした。
ーー改めて、撮影ティブが掲げる「企業の外部広報室」とは、具体的にどのような役割を担うのでしょうか?
多くの企業では、広報やマーケティング、人事といった部署が縦割りになっていて、それぞれが異なるメッセージを発信してしまっています。僕たちはその外部ハブとして、まず企業の「優位性」、つまり社会に対して本当に伝えるべきことは何かを定義することから始めます。そして、その一貫したメッセージを、Webサイト、SNS、記事、映像といったあらゆる媒体に最適な形で展開していく。その戦略立案から実制作までを一貫して担うのが、僕たちの「外部広報室」としての役割です。
ーーその「外部広報室」というあり方は、「クライアント以上に、クライアントを考える」という価値観に繋がっているのですね。
その通りです。企業の担当者の方は、どうしても自部署の目標や目の前の数字に視点が限定されがちです。僕らは外部のパートナーとして、一歩引いた視点から「会社全体として、今本当に伝えるべきメッセージは何か?」を常に問いかけます。
だからこそ、担当者の方の話だけを鵜呑みにせず、時には他の社員の方へのインタビューなどを通じて、その企業の体質や隠れた魅力までを掴みに行く。クライアントが抱える複雑な課題に対しても深く向き合う。時には耳の痛いことを言うかもしれないですが、そうすることで担当者よりも広く、深い視座でブランドの未来を考えることが、僕たちの提供価値だと信じています。
ーー他社にはない独自の価値提供として、「広報資産」という考え方や、生成AIの活用にも積極的に取り組んでいると伺いました。
僕らは納品して終わりのコンテンツではなく、様々な媒体で二次利用・三次利用できる「広報資産」を創ることを意識しています。例えば、一つの質の高いインタビュー記事を作れば、それはWebサイトだけでなく、パンフレットや営業資料、SNS投稿など、様々な「武器」として活用できます。
また、生成AIのような新しい技術も積極的に研究しています。クリエイティブ業界は、まだまだ非効率な部分が多いと感じており、その課題を解決したいと考えているからです。具体的には、情報収集、競合分析、メッセージ構築といった僕たちの戦略プロセスを、それぞれ役割分けしたプロンプトとして体系化し、AIで作業を効率化する仕組みを構築しています。これにより、人間は「ディレクション」という最も価値のある部分に集中できるようになります。
将来的には、僕たちが培ってきた「ディレクションのノウハウ」そのものをプロンプトという新しい価値に変え、社内の生産性を高めるだけでなく、クライアントにも提供していくことを考えています。
「何者になりたいか?」と問う理由。メンバーの人生にまで伴走する、撮影ティブの流儀
ーー堤さんは、メンバーのキャリアや成長に深く向き合うことを大切にされているそうですね。
僕が若い方を採用する時、それはその人の「一番の伸び盛り」の貴重な時間を預かることだと考えています。だからこそ、その時間が「無駄じゃなかった」と思えるように、僕も責任を持って向き合わなければならない。そう考えるタイプです。
だから、メンバーにはよく「何者になりたいの?」と聞きます。それは、仕事のスキルだけでなく、その人の人生観や将来の目標まで含めて、本気で向き合いたいからです。例えば、家庭と両立したいという想いがあれば、それに合わせて仕事のやり方を一緒に考える。会社に全てを捧げてほしいとは思いません。むしろ、撮影ティブでの経験を、自分の人生を豊かにするための糧にしてほしい。僕も「人生を一緒に走る」くらいのつもりで、一人ひとりをサポートしたいと思っています。
ーーメンバーの「人生を一緒に走る」というのは、すごい覚悟ですね。その個人の成長の先に、撮影ティブという「組織」の未来はどのように繋がっていくのでしょうか?
僕は会社を100人、200人の規模にしようとは考えていません。むしろ、うちで実力をつけたメンバーが、どんどん独立していけばいいと思っています。そして、独立した先で、対等なパートナーとして一緒に協力し合える。そんな「仲間」を一人でも多く輩出していくことが、僕の理想です。自分の会社を大きくすることよりも、そういう仲間づくりに興味があるんです。
ーーその思想を実現するために、「少数精鋭」のチームであり続けることにこだわりがあるのでしょうか?
そうですね。正社員であるコアチームには、一つのスキルを突き詰める「特化型」ではなく、戦略から制作まで領域を広げていけるジェネラリストであってほしいと考えています。そして、ライティングや映像制作といった専門的な実制作の部分では、高いスキルを持つ外部のプロフェッショナルと連携する。このハイブリッドな体制が、少数精鋭のまま、どんな課題にも対応できる機動力と品質を両立させる秘訣です。
ーー共に未来を創る仲間として、どのような方に来てほしいですか?
「今の仕事や自分の人生に、どこかモヤモヤしている」「自分を大きく成長させるような、新たな一歩を踏み出したい」。もしあなたがそう考えているなら、撮影ティブは最高の環境になるはずです。
一つのスキルを突き詰める「特化型」の人よりは、戦略、制作、クライアントワークと、領域を広げていくことに意欲を感じられる方。そして、会社の歯車になるのではなく、組織づくりから関わりたいという当事者意識のある方。僕たちが求めているのは、そんな野心あふれる「仲間」です。一緒に、クライアントの、そしてあなた自身の未来をデザインしていきましょう。