公務員といえば「安定」の代名詞。
不況に強く、社会的信用もあり、定年まで安心して働ける。多くの人が羨むそのレールを、自らの意思で降りた人がいる。
パブリックコネクトでリクルーティングプロデューサーとして活躍している西田さん。 彼の経歴は、一言で言えば「異色」だ。
新卒でSEになり、その後「目の前の人を助けたい」と神奈川県内で消防士に転職。さらに市役所への出向を経て、公務員として約14年間従事した。
そして今、西田さんはスタートアップ企業であるパブリックコネクトに身を置いている。 かつては顧客としてこのサービスを利用していた西田さんが、なぜ「中の人」になることを選んだのか。 そこには、外側からしか変えられない「自治体の常識」への挑戦心と、好奇心があった。
「最初は詐欺かと思った」
顧客としての衝撃的な出会い
西田さんとパブリックコネクトの出会いは、一本の電話から始まった。
当時、市役所で採用担当として働いていた西田さんのもとに、ある日、電話がかかってきたのだ。
その電話の相手こそ、パブリックコネクト代表の平田さんだった。
受話器の向こうで語られる内容は、あまりにも条件が良すぎた。「正直、詐欺かなと思いました(笑)。でも、自治体相手に詐欺をしてもメリットはないだろうし、とりあえず話だけ聞いて断ろうと思っていました。」
しかし、実際にサービスの説明を受けるうちに、その疑念は驚きへと変わっていった。「今までになかった発想だ、と。自分もSEの経験があったので分かるのですが、仕組みとして非常に合理的でした。何より、規模の大小に関わらず、どの自治体でも使えるという点に可能性を感じたんです」
実はその頃、西田さんは自身のキャリアについて思い悩んでいた。
公務員生活も長くなり、仕事は安定している。しかし、どこか物足りなさを感じていたのだ。
西田さんの好奇心旺盛な性格を象徴するエピソードがある。
公務員時代、なんとJAXAの宇宙飛行士選抜試験を受けたことがあるというのだ。「面白いことがやりたかったんです。パイロット試験を受けたこともあります。結局、落ちてしまいましたが、常に『何か新しい刺激』を求めていたんだと思います。」
公務員としてあと5年、10年と働き続ける未来が見えたとき、「ここでけじめをつけよう」と決意した。
「外の人」だからこそ、言えることがある
現在、西田さんは自身の公務員経験をフル活用し、リクルーティングプロデューサーとして全国の自治体の採用活動をプロデュースしている。
最大の武器は、自治体の「中の論理」と、民間の「外の論理」の両方を知っていることだ。
「自治体の中にいると、当たり前すぎて疑問に思わないことがたくさんあります。でも、外から見るとそれは『変なこと』だったりするんです」 例えば、採用試験で実施される筆記試験。「民間企業の採用では、筆記試験のみで足切りすることは多くない」と伝えるだけで、担当者はハッとする。
「担当者の方は変えたいと思っていても、いろいろな壁があって諦めているケースが多いんです。そこで私たちが『他市ではこうやっています』『本来はこうあるべきです』と伝えることで、意識が変わり、一気に改革が進むことがあります。」
かつて自分が身を置いていた場所を、外側からより良くしていく。「自分が変えていくというより、自分たちが関わることで自治体が変わっていく姿を見るのが面白いんです。」
「就職ならパブリックコネクト」と
言われる日を目指して
西田さんには、叶えたい未来がある。
「結婚が決まったら『ゼクシィ』を買うように、就職を考えたら当たり前に『パブリックコネクト』そんな文化を作りたいんです。」公務員になりたい人だけでなく、民間企業を志望する人も含めて、すべての求職者が自然と官公庁・自治体の仕事を選択肢に入れる社会。
もっとフラットに、地域のために働きたい人が集まる場所にしたい。
「公務員の安定を捨てることに、迷いがなかったわけではありません。妻や子供もいますから。でも、それ以上に『ここなら面白いことができそうだ』というワクワクが勝ったんです。」
そう語る西田さんの表情は、かつて宇宙飛行士を目指した頃のように、まだ見ぬフロンティアを見つめているようだった。