株式会社NINAE代表・文山泰汎が、事業成長の背景と、これから目指す姿をお伝えします。
AIの会社というと、どんな仕事を想像するでしょうか。
AIを使ったシステムを開発する。自社でAIプロダクトをつくる。
企業のAI戦略を上流から設計する。
たぶん、このあたりを思い浮かべる人が多いと思います。
でも、僕たちNINAEは、そのどれも事業の中心にはしていません。
大規模なシステム開発も、自社プロダクトの販売も、経営やAI戦略を上流から幅広く支援することも、僕たちは創業当時から「あえてやらない」と決めてきました。
僕たちが主に向き合っているのは、企業がすでに持っているAIを、実際の仕事の変化につなげていくことです。いわゆるビジネスモデルとしては人月型ではありますが、僕たちは、お客様の現場に入りながら、AIの定着化支援や技術伴走支援をしています。AIの使い方を伝えて終わるのではなく、その会社の業務にどう落とし込み、実際に使われる状態までどう持っていくのか。そこまで一緒にやるのが、僕たちの仕事です。
こうした領域に絞ってきた中で、ありがたいことに事業も成長し、
創業3期目で売上は10億円を超えました。
もちろん、最初から勝ち筋がすべて見えていたわけではありません。
お客様と向き合う中で、僕たちがより深く入るべきところと、他の会社と一緒にやったほうがいいところを見極めながら、少しずつ今の事業の形をつくってきました。ただ、ここまでを振り返ると、なぜ僕たちがこの領域で事業を伸ばすことができたのか、自分たちなりに見えてきたことがあります。
今回は、なぜ僕たちがAIの「導入したあと」に向き合っているのか。
そして、その中でどんな強みが生まれ、ここからどんな事業をつくっていきたいと思っているのか。
NINAEの事業について、改めてお伝えします。
AIは使われ始めた。でも、仕事はどこまで変わったのか
ここ数年で、企業のAI活用はかなり進んできました。
分からないことをAIに聞いたり、メールや資料のたたき台をつくってもらったり、会議の内容を整理してもらったり。
少し前までは、「まずAIを触ってもらうこと」自体が一つの大きなテーマでしたが、お客様と話していても、一度使ってみるところまでは、この1〜2年でかなり進んできたように感じます。
ただ、その先を見ると、まだ変えられることはたくさんあります。
たとえば、これまで30分かかっていた資料作成が、AIを使うことで15分になったとします。それだけでも、もちろん十分価値があります。
一方で、会社全体の仕事の進め方まで変えようとすると、「一つの作業が少し早くなった」だけでは終わりません。
そもそも、この資料を今までと同じ形でつくり続ける必要があるのか。人がやっている工程のどこまでをAIに任せられるのか。その前後まで含めると、仕事の流れそのものを変えられないのか。
そこまで考え始めると、AIの機能を知っているだけでは足りなくなってきます。
実際、数千人、数万人が働くエンタープライズ企業では、その部署の業務を理解して、どこなら変えられるのかを考え、実際に試す。そのうえで、ITやセキュリティ、リスク管理などとも調整しながら、現場で本当に使われるところまで持っていく必要があります。
僕たち自身も、最初からそこまで分かっていたわけではありません。
以前は、研修をして、使い方を伝えて、活用事例を増やしていけば、もっと自然に社内へ広がっていくんじゃないかと思っていたところもあります。
でも実際には、研修の場では使ってもらえても普段の仕事には残らなかったり、おもしろいユースケースが生まれても、その人や一部の部署だけで止まってしまったりする。
そうした経験を重ねる中で、少しずつ考え方が変わってきました。
AIの使い方を伝えることと、会社の仕事を変えることは、似ているようで少し違います。
そして、僕たちが思っていた以上に、その間には大きな仕事がありました。
なぜ、僕たちはこの領域で事業を伸ばすことができたのか
NINAEの注力領域:AI・組織人事・ITコンサルを横断する支援(株式会社リブ・コンサルティング「コンサルティング業界カオスマップ2026」に加筆)
振り返ると、大きく二つの理由があったと思っています。
①「導入したあと」を担うプレイヤーが、AIという市場に足りていなかった
一つ目は、そもそもAIの「導入したあと」を担うプレイヤーが、思っている以上に少なかったことです。
たとえばMicrosoftのようなグローバルベンダーは、優れたプロダクトをつくり、それを世界中の企業に届けています。導入を支援するための仕組みもあります。ただ、一社一社の現場に深く入り、「営業ではどう使うのか」「人事のこの仕事は変えられるのか」「なぜ一部の人にしか使われていないのか」といったことまで、一つひとつ伴走していくことが彼らの役割ではありません。
一方で、SIerには大規模なシステムを設計し、実装しきる強さがあります。
コンサルティング会社には、経営や戦略の視点から大きな絵を描く強さがあります。
どちらも、企業がAIを活用していくうえで欠かせない存在です。
ただ、僕たちが実際にお客様と仕事をする中で何度も出会ったのは、戦略を描くことと、システムを導入することだけでは埋まりきらない、「そのあと」の課題でした。
CopilotやCopilot Studioのような具体的な製品を理解しながら、「この会社の、この仕事ならどこまで変えられるか」を考える。現場の方と一緒に試し、ITやセキュリティとも話しながら、実際に使われるところまで持っていく。
かなり具体的で、かなり実行に寄った仕事です。
では、それを企業の中にいる情報システムやDX推進の方々が自分たちでやればいいのではないか、と思うかもしれません。
大手企業のAI推進を担う方ほど、AIだけを見ていればいいわけではありません。一人で複数のプロジェクトを持ちながら、社内から届く相談に答え、ITやセキュリティとも話し、経営とも現場とも向き合う。そのうえで、数千人の社員に新しい使い方を届けていく必要があります。
数千人、数万人の会社で、導入したあとの支援まで自社だけですべてやり切るのは、簡単ではありません。
グローバルベンダー、SIerやコンサルティング会社、そして企業の中でAI推進を担う方々。
それぞれに強みと役割がある一方で、その間にある「具体的なAIを使って、現場の仕事が本当に変わるところまでやり切る」という役割を担うプレイヤーは、まだ多くありませんでした。
僕たちは、そこに入っていきました。
②やることを増やすより、やらないことを決めた
もう一つは、できることを増やし続けるのではなく、やらないことを決めてきたことです。
AIの仕事をしていると、お客様からいろいろな相談をいただきます。
「このシステムもつくってほしい」
「もう少し上流から戦略を考えてほしい」
「このAIエージェントを開発してほしい」
会社として考えれば、それらの仕事を受けて事業を横に広げていく選択肢もありますし、僕たち自身、何度も考えてきました。
ただ、少なくとも今は、大規模なシステム開発や上流コンサルティングを自分たちの主戦場にはしていません。僕たちより強い会社がいるなら、その会社と一緒にやったほうがお客様にとってもいい。
その代わり、AIを導入したあと、実際の仕事が変わるところには深く入る。
何でもできる会社になるのではなく、このテーマに人も時間も集める。
今振り返ると、この選択はかなり大きかったと思っています。
同じような課題に何度も向き合うことで、「このケースでは最初にこの部署を巻き込んだほうがいい」「ここまで説明しても、現場ではこういう理由で使われない」といった学びが、少しずつ会社の中にたまっていきました。
市場に必要とされている仕事があった。
そして、その領域から広げすぎず、そこに人も時間も集めてきた。
シンプルですが、この二つが、僕たちがここまで事業を伸ばすことができた大きな理由だと思っています。
僕たちの強みは、「具体製品」と「実行」の両方にある
NINAEの強み:Enterprise AIへの深い知見と、エンタープライズ企業に特化した支援体制
同じ領域に向き合い続けてきた結果、僕たちの中にも少しずつ強みができてきました。
最近、自分たちの強みについて社内でよく話しているのが、「具体製品 × 実行」です。
ここでいう「具体製品」とは、AIについて抽象的な知識を持っているだけではなく、CopilotやCopilot Studio、Claude Enterpriseなど、実際にお客様が使っている製品そのものを深く理解していることです。
僕たち自身も、新しい機能が出れば実際に触って、「この機能なら営業のこの仕事を変えられそうだ」「便利ではあるけれど、この会社のルールではそのまま使うのは難しそうだ」と考えます。
製品として何ができるのか、どこに制約があるのかまで理解したうえで、それをお客様の具体的な業務にどう使えるのかまで考える。
とはいえ、それだけで企業の仕事が変わるわけではありません。実際に進めるためには、お客様の業務を理解して、相手に合わせて伝え、関係する人を巻き込みながら、プロジェクトを前に進める必要があります。
ここで必要になるのが、もう一つの「実行」です。
僕たちがいう「実行」は、単に手を動かすという意味ではありません。
現場の方が何に困っているのかを聞く。ITやセキュリティの方が何を気にしているのかを理解する。その間に立ちながら、「じゃあ、どうすれば実際に進められるか」を考える。
そういう、かなり泥臭いところまで含めて「実行」だと思っています。
特にエンタープライズ企業では、この難易度が一気に上がります。人数も多い。関係する部署も多い。これまで長い時間をかけて事業を支えてきたルールや業務プロセスもあります。
「AIが便利だから、明日から全部変えましょう」とはいきません。
だからこそ、具体的な製品を深く理解していることと、現場やIT、セキュリティなどを巻き込みながら、実際に前へ進められること。
僕たちは、この領域に集中して成功も失敗も重ねてきたことで、「具体製品 × 実行」という力を少しずつ磨いてきました。
あるお客様との仕事で学んだことが次のお客様との仕事に活き、そこでまた新しい課題に出会う。そういう循環が生まれ始めていることには、少しずつ手応えを感じています。
AI活用が進むほど、次に解くべき課題も変わっていく
導入支援から定着化支援、効果創出、事業創出・組織変革へ。NINAEが支援する4つのステップ
ここ数年、お客様からいただく相談の内容も少しずつ変わってきました。
少し前までは、「まずAIを使ってもらうにはどうするか」が大きなテーマでした。
でも、使う人が増えてくると、今度は「使う」だけではなく、「どうすればもっと高いレベルで使いこなせるのか」が課題になる。さらにその先では、「実際にどれくらい効果が出ているのか」「AIを高度に使いこなせる社員をどう増やすのか」といった話も出てきます。
活用が進めば、業務プロセスそのものをどう変えるのか、AIが参照するデータや情報をどう整えるのか、セキュリティやガバナンスをどう考えるのか、と論点もさらに広がっていきます。
AIそのものも、ものすごい速さで進化しています。
数か月前にはできなかったことが、気づけばできるようになっている。新しいことができるようになれば、「じゃあ、今の仕事ならどこまで変えられるだろう」と、また考えることが増えていきます。
つまり、AI活用は一度「使われるようになったら終わり」ではありません。
使うところから、使いこなす。
その先で効果を出し、さらに組織の働き方そのものを変えていく。
前に進むほど、次に解くべき課題も変わっていく。
それが、今お客様と向き合う中で実際に起きていることだと思っています。
「AIの定着化が得意な会社」で終わりたいわけではない
AI活用の可能性が広がる、さまざまな産業領域※イメージとなります
私たちは、AIの定着化を起点に、実際の仕事や組織が変わり、企業の成果につながるところまで伴走しています。 この一連の変化を支える領域を、NINAEでは「Enterprise AI Enablement」と呼んでいます。
そこで目指しているのは、人と組織がAIの進化を自分たちの力に変えていける状態をつくることです。
そのために必要な支援は、AIの進化や、お客様が抱える課題に合わせて変わっていきます。だからこそ、NINAEも「AIの定着化が得意な会社」という枠にとどまらず、自分たちが担う役割を広げていきたいと考えています。
今は主にデスクワーカーの仕事を変えることに向き合っていますが、AIが進化すれば、変えられる仕事の範囲もさらに広がっていくと思います。フィジカルAIでフロントワーカーの働き方が変わるかもしれないし、これまでとはまったく違う領域に変化が起きるかもしれない。
さらに、お客様と向き合う中で「AIを使えばここまで変えられるのに、まだ世の中にそれを解くものがない」と気づけば、自分たちで新しい事業をつくることもあると思っています。
僕たちの中では、中長期的にNINAEを「定着化から始まる事業開発カンパニー」にしていきたい、という話をしています。
最初から「次はこのプロダクトをつくる」「次はこの事業をやる」と決めるのではなく、まずは目の前のお客様にちゃんと向き合う。 その中で次に解くべきことが見えてきたら、そこにまた深く入っていく。
今の事業を大きくするだけではなく、
その先にある事業まで自分たちでつくっていく。
NINAEを、そういう会社にしていきたいと思っています。
この事業の、その先を一緒につくりたい
2035年の売上2,000億円を目指す、中長期の成長ロードマップ(各数値は目安)
今、「AIによって企業の働き方が最終的にどう変わるのか」に、完成した答えを持っている人はいないと思います。
だからこそ、その変化の途中にいられることがおもしろい。
と僕は思っています。
お客様と「これができたら、おもしろくない?」と話して、実際に試してみる。うまくいかなければ、また考える。今はまだ一つの実験に見えるものが、何年か後には企業の当たり前になっているかもしれません。
僕がときどき思い浮かべるのは、インターネットがまだ今ほど当たり前ではなかった頃の、創業者たちの時間です。
孫正義さんや藤田晋さん、サイバーエージェントの創業期のメンバーたちが、「インターネットで、この先かなり世界が変わるかもしれない」と話していたような時代。まだ何が正解かも分からない中で、「これができたらおもしろくない?」と未来の話をしていた。そういう時間って、単純にすごく楽しそうだなと思います。せっかく今、AIが大きく変わっていく真ん中にいるなら、僕たちも「これができたらおもしろくない?」と話しながら、その先を一緒につくっていきたい。
今のAIにも、少し似たところがあると思っています。
今はまだ「こんなことができたらおもしろいよね」と話していることが、数年後には当たり前になっているかもしれない。
そのとき、今一緒にいる仲間と「あの頃、こんな話してたよね」「あれ、本当に当たり前になったね」と笑って振り返れたらいい。
そういう時間を仲間とつくれたら、僕はすごくうれしいと思っています。
僕たちが今、仲間と熱中しているのはAIです。
AIの可能性をただ眺めるのではなく、実際の仕事や事業に変えていきたい。そんなことを思っています。
最後に...
この記事では、僕たちがこの事業に向き合っている背景や、これからやっていきたいことを書いてきました。
NINAEはまだ創業3期目で、事業も会社もこれからつくっていくフェーズです。
AIによって仕事や会社のあり方が大きく変わっていく中で、その変化を一緒につくりながら、NINAEという会社そのものも一緒に大きくしていける仲間と出会えたらうれしいです。