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引き継いでいくこと


目次

  • 地方のこれから

  • 農山村の暮らし

  • 山林を引き継ぐ意味

  • 引き継ぎ方

  • ひとまず目指す姿

地方のこれから

 2011年、私は仙台市で東日本大震災を経験しました。物流とライフラインが途絶えたとき、「お金でモノ・サービスを買う」生活のもろさを痛感しました。2017年に17年間勤めた会社を辞めて、秋田県仙北市(実家)との2拠点生活を始めました。

 人口戦略会議では、2020年から2050年までの30年間で若年女性人口が50%以上減少する自治体を「消滅可能性自治体」と定義しました。2024年4月に公表された『地方自治体「持続可能性」分析レポート』によると、秋田県は、秋田市以外すべてが消滅可能性自治体です。

"消滅する可能性がある"744自治体 全体の4割に 人口戦略会議 | NHK
【NHK】民間の有識者グループ「人口戦略会議」は全体の4割にあたる744の自治体で、2050年までに20代から30代の女性が半減し...
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240424/k10014431611000.html

 このような情報を目にするたび、あと25年もすれば人が居なくなるかもしれない場所で、これまでと同じ方針で農地を整備することや治山・再造林をすることが正しいとは思えません。では、どうするのが良いのか、様々な分野の方々からお話を伺い、考え続けています。

農山村の暮らし

 地方の暮らしは、経済的には豊かとは言えないかもしれません。秋田県では、人が住まなくなった家や藪になっていく田んぼや畑が増えていくのを日常的に目にします。そして、ここ数年はクマやイノシシによる被害も劇的に増えています。

 一方で、地方には季節に寄り添った暮らし方があり、それは理にかなっていると感じることがあります。春、厳しい寒さが和らぎ、雪が消えて植物が芽吹いたのを見るだけで幸せを感じられます。夏は畑の野菜や果物、秋には山の恵みであるキノコや木の実を収穫していただきます。冬は荒天の日は家にこもり翌年のことをじっくり考え、天気が良い日は、雪があるからこそできる仕事や遊びをします。

 生活に制約が多いことは苦痛でもありますが、工夫する面白さには困りません。都市部では、生活に必要なインフラやサービスが当たり前に身の回りにあって、生活するために自分の手でやる活動はあまり多くありません。家事でさえも代行サービスがあります。一方、地方では、基本的には自分のことは自分でやる人が多く、そのうえで、近所の人たちとサービスを含む物々交換をしているように見えます。農家でなくても、庭で立派な野菜を育てる人、刈払い機で草を刈る人、チェンソーで薪を作る人、ローダー等を乗りこなし除雪する人、など私の周りには多才な人がたくさんいます。

 当然、都市部でしかできない体験もあります。どちらの暮らしにも一長一短があり、また向き不向きもあります。私は秋田で生まれ18年を過ごし、その後、盛岡市4年、米国1年、横浜市9年、仙台市9年、2拠点生活7年を経験し、今は農山村での暮らしが面白いと思っています。それは、秋田の実家には両親がいて、仙台の自宅には自分の家族がいるからかもしれません。この環境だからこそできることは何かを考え、やっていきたいと思っています。

山林を引き継ぐ意味

 当社は、山林経営と山林から得られる林産物の販売を主な事業にしています。こう言われても一体何をやっているのか、具体的にイメージできる方は少ないと思います。

 まず山林経営ですが、当社の場合、門脇家の山林を引き継いだところがスタートであり、まだ事業実績もなくただ山林を所有しているにすぎません。想定しているのは、所有する山林の木を伐って売ってまた植えるということですが、今の時代に、それだけをやっている山林所有者を見たことがありません。世の中の山林経営の認識はどうか?chatGPTやgeminiに「山林経営とは何か?」を問いかけてみたところ、次のような回答が返ってきました。

【ChatGPT】山や森林を適切に管理し、持続可能な形で利用する活動を指します。具体的には、森林の植 林、伐採、木材の加工・販売、森林資源の保全、また生態系の保護や気候変動への対応など、幅広い活動が含まれます。
【Gemini​】森林を効率的に利用し、持続可能な形で管理していくための活動です。単に木を切るだけでなく、植林、間伐、下草刈りなど、森林が持つ多様な機能を最大限に引き出すための様々な作業が含まれます。

 今は山林所有者が山の木を売っても十分な収入になりません。下記ページの資料Ⅱ-3 [全国平均山元立木価格の推移] が山林所有者に入る売上の単価です。(スギ、ヒノキの山本立木価格は上昇)と書かれていますが、1㎥あたり数百円の上昇にすぎません。1,2年前にウッドショックで木材価格高騰などのニュースがありましたが、山林所有者には何も恩恵がありませんでした。

第1部 第2章 第1節 林業の動向(1):林野庁
令和3年度 森林・林業白書について紹介します。
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r3hakusyo_h/all/chap2_1_1.html

 そこで、山林を管理していく意義を見出す必要があり、山林の公益的機能という概念が出てきたのではないでしょうか。最近は、林業・木材産業の関係者の間でも、木材生産を目的とする「経済林」と水源かん養などの公益的機能の発揮を重視する「環境林」という二つの概念が語られるようになっています。

 経済林では、木材生産に加えて森林が吸収する二酸化炭素をクレジットとして販売できるようになったり、環境林でもキャンプ場や森林浴などに貸し出し収入を得たり、新しい動きもあります。ただ、これらの事業が民間単独で黒字化できるのか、森林環境税・譲与税を使って民間ができるようになるのか、公益的な機能として公共事業にすべきなのか、生活者であり納税者である方々と意見交換してみたいと思っています。

 続いて、林産物の販売ですが、当社では高齢級の丸太を製材した一枚板や内装材などを販売しています。これらは先代から引き継いだもので、まだその価値を言語化して需要とマッチングさせることができていません。

木の成長には時間がかかります。仮に幅1mの一枚板のテーブルが欲しいと思ったら、少なくとも樹齢100年以上の木があること、それを伐れる人がいること、それを山から出してくるための道があり運ぶ人がいること、それを製材(板に加工)する人がいること、それを製品に仕上げ(磨いたり塗装したり)する人がいること、と言ったサプライチェーンが必要になります。

 このような希少な商品は貴重だと思う一方で、売れ行きは芳しくありません。需要がないのか、需要と出会えていないだけなのか、いまはそれを知るために、家具店、建築事務所、木材市場などを訪問させていただいています。 

引き継ぎ方

 生産性をKPIにすると高性能林業機械の導入や製材機械の自動化などは必須で、すでに多くの方が取り組んでいます。こうした設備投資をして日々事業を回している会社や経営者は、本当に凄いと思います。私にはできそうにありません。代わりに、当社は小さくても収益があげられる事業を見つけ、今この地域で暮らしている方々に喜んでもらえることをやっていきたいと思っています。

 もし自伐型林家や山林所有に関心がある方がいれば、門脇商店までご相談ください。

会社情報
健全な森林を後世に引き継ぐ 創業のきっかけは、門脇家が所有する1,000ha以上の山林を家族で継承していくことに限界を感じたことです。
https://kadowakishouten.com/?page_id=126

 一緒に山に行ってみたり、初心者でもできる作業をやってみたり、本格的な研修を紹介したり、仕事にする一歩手前を喜んでサポートいたします♬

★ 就業前の研修・体験制度 ★ - あきた森の仕事ナビ
「林業就業トライアル研修生」を募集します! 林業に関心のある、または林業へ就業を希望する者への支援研修で
https://akita-no-mori.com/akita-job-navi/trainingandtrial/#trial
秋田林業大学校
秋田林業大学校(秋田県林業トップランナー養成研修)とは、将来の秋田の林業をリードする若い林業技術者を養成するため、秋田県林業研究研修センターが開講している2年制の研修制度です。  秋田林業大学...
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/genre/14049

ひとまず目指す姿

 この地域が暮らしやすい場所になり、この地域に人が増え、消滅可能性都市でなくなり、山林や事業を引き継ぎたいと思う人と出会えることを楽しみにしています。

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