「2人とも代表。ワクワクしたんですよね」
そう笑いながら語るのは、リアルアキバ発・世界基準のブレイクダンスカンパニー「FNMD」の共同代表、WINGZEROとDRAGON。
先日7月1日に共同代表制を発表したFNMD。ISARIBIと同じREAL AKIBA GROUPに属し、ブレイクダンス(ブレイキン)に関する様々な事業を展開している。そもそもブレイキンで事業を行う難しさとは何なのだろう。
同じグループのISARIBI代表・田川が2人の今を率直にインタビューしてみた!
「会社をつくる」よりも、「カルチャーを生きる」だった
田川:
まずは改めて、おふたりFNMDの共同代表就任おめでとうございます。正直「2人代表」って、世の中的にはまだまだちょっと珍しいんじゃないかなと。
ISARIBIのスローガンが「バイアスをぶちこわせ」なんですが、まさにそのスローガンを体現するニュースだったなと。改めて二人はどんなこと今感じてますか?
7月1日よりFNMDの共同代表に就任したDRAGON。
DRAGON:
最初この話もらったとき、「自分が代表になるってことは、もしかしてWINGが一歩引いちゃうのかな?」ってちょっと思ったんです。でも、「いや、2人代表で行こうぜ」ってなったときに、そっちのほうが面白そうだなってワクワクしたんですよね。
WINGZERO:
実際、DRAGONはもともと役員として関わってくれていたから。FNMDってFound Nationっていうチームが母体になってるんですけど、そこの活動をビジネスに変えていく流れのなかで、よりエンタメ領域でのプレゼンスを高めたくて、DRAGONに代表になってもらった感じなんです。
DRAGON:
自分、数字とかの実務は得意じゃないんですけど、逆にフィールドでの体感とか、場数は踏んできたし。だからこそ、会社の「顔」になれる部分はあると思ったんです。代表って言葉よりも、現場とカルチャーの“先頭”に立つって感じですね。
田川:
そういえばFNMDって、ちょっと不思議な名前ですよね。どんな意味なんだろう?
WINGZERO:
これはですね、いくつか意味をかけてて。まず「FN」は僕たちの原点であるブレイクダンスチーム「Found Nation」。このチームがあったからこその会社です。で、「MD」にはいろんなニュアンスが込められてるんですけど、いちばんは──“Making Dollars”。
田川:
なるほど。「金にする」ってことね(笑)
Found Nationとは・・・2002年に山梨にてDRAGON、DOVERMAN、WINGZEROにより結成されて以来、現在に至るまで様々なコンテスト・バトルイベントで好成績を残しているブレイクダンスチーム。
WINGZERO:
そうなんです。実は「EPMD」っていう80年代のレジェンドラップデュオがいて、「Erick and Parrish Making Dollars」の略でEPMDなんですよ。それがめちゃくちゃカッコよくて、自分たちも「Found Nation Making Dollars」──つまり「自分たちのカルチャーでちゃんと稼ぐ」をストレートに表現しようと。
でも“Dollars”って言葉には、ただ金もうけっていう意味じゃなくて、「食えるようにする」「地位を上げる」っていう想いも入ってて。FNMDって、そういうヒップホップの矜持を継承しつつ、ブレイキンで食べていける社会を本気でつくりたいっていう旗印なんです。
田川:
そして、FNは「Found Nation」の意味でもあるけど、「ブレイキンの地位を上げる」っていう意味もこめられてるってことですね。
「文化系ブレイカー」WINGZEROの、異端が武器になる瞬間
田川:
ちなみにWINGZEROさん、ネットで「文化系ブレイクダンサー」って呼ばれてましたよね。あれ、どういう意味で言われてたんですか?
FNMDの共同代表のWINGZERO。
WINGZERO:
たぶん、見た目もスタイルも“体育会系のB-BOY像”からは外れてたからじゃないですかね(笑)。自分、もともとガジェットとかカードゲームとか、いわゆるナードっぽいものが好きだったんです。書くのも好きだったし、ハイパーヨーヨー、けん玉、ミニ四駆、ビーダマン……。どれも本気でハマって大会出るくらい。
田川:
まさにオタク的な集中力を持ったプレイヤー。
WINGZERO:
そうそう。ハマったら止まらない。で、ブレイクダンスもその一つだったんです。技を覚えて、検定受けて、次に進むみたいな。そのループにどっぷりハマっていったら、もう20年経ってたみたいな感じで。
田川:
僕がWINGさんすごいと思ったのは、昨年ISARIBIとFNMDでブレイキンの大会をやった時に、WINGさんがほとんどインスタのDMとかで選手を呼んでて。しかもほとんどオリンピックのメダリスト(笑)。友達かよって(笑)。
WINGZERO:
ていうか、友達なんでね(笑)
DRAGON:
そこが強みですよね。僕たちの。本当にコミュニティの中でみんなと距離が近いっていう。
DRAGONが加わった意味
田川:
そんなWINGさんが長らく率いてきたFNMDにDRAGONさんも共同代表になったわけですけど。どういう気持ちだったんだろう。
FNMD共同代表のDRAGONは、YouTube登録者80万人の人気オタクダンスユニット「REAL AKIBA BOYZ」のメンバーでもある。
DRAGON:
俺はずっとダンスの世界にいて、ちゃんと社会人経験ってものがないままここまで来ちゃってて。RAB(リアルアキバボーイズ)で活動しながら、ずっとカルチャーと現場に身を置いてきたんですよ。社会人として経験がない部分はWINGがいるので、頼もしい部分ではありますね。
WINGZERO:
DRAGONが代表になったことで、明らかにFNMDの“対外的な見え方”が変わると思うんですよ。業界的な信用や、彼自身のアイコニックな存在感ってすごく大きい。
DRAGON:
REAL AKIBA BOYZなどで培ったそういうメリットは、ちゃんと使っていきたいなって。ブレイクダンスって楽しいもんだよっていうことを伝えていくことが当面のミッションなのかなって。
田川:
二人が本当に対等ってのがいいよね。対等の代表。
WINGZERO:
まあ、責任も半分になるんで(笑)
DRAGON:
え?あ!そういうことか!?
WINGZERO:
そうですよ。これからは、謝罪に行く時も対等ですから(笑)
「ブレイキンを広げる」活動を地道におこなったDRAGONの力
田川:
そんなFNMDから見て、ブレイキンの課題ってなんだろう?
昨年はパリの五輪もあって、ブレイキンを知らない人にも知れ渡って。かなり追い風ではあるものの、それでもまだ課題はある気がしていて。
DRAGON:
やっぱり触れる人たちの数ですかね。
僕たちの時代は、それこそ「めちゃイケ」とかで岡村さんのダンスを見て、ブレイキンに触れる人がいて。
でもその人たちがずっとダンスを続けているかというとそうでもない。途中で抜けてしまった人がたくさんいるんですよ。やっぱり職業としての「ブレイクダンサー」は成立しなかった。
でも今は、RABもそうだけど、インフルエンサーとしてダンサーで活動するとか、いろんな仕事がダンスにも存在できる時代になっている。そういう活動を増やしていきたいですね。
WINGZERO:
俺は「にわかファン」を増やすことだなと思ってて。俺の親父、野球のこと大して知りもしないくせに、めっちゃ語るんですよ。そういう「にわかファン」がどんどん増える環境を作りたい。
ブレイキンってまだまだ「わかりにくさ」があるので、「にわかファン」がまだいない。それを壊していきたいですね。
田川:
ラグビーは「にわかファン」を獲得してブレイクスルーしましたよね。「にわか」って言葉を否定せず、むしろ「にわかでいいんだよ」って肯定してくれていた。ブレイキンもそれが必要なんでしょうね。ちなみにFNMDでその「にわかファン」を増やすためにやってることって何かあるんですか?
WINGZERO:
それがYouTubeチャンネルの「FLAVA JAPAN」ですね。
田川:
なるほど。今、登録者ってどのくらいでしたっけ?
WINGZERO:
今もう10万です。
田川:
おお!!そんないるんだ。なんでそんなに伸びたんですか?
WINGZERO:
やっぱりそれはDRAGONの力が大きいっすね。
FNMDが制作を行うYouTubeチャンネル「FLAVA JAPAN」。ブレイキンを中心に様々なダンス業界のニュースや、トレンドを発信している。
DRAGON:
最初は大変でした。ちょうどコロナ禍で、なかなか興行やイベントもできなかったので。今のうちにYouTubeやっておくべきだみたいなのがあって。RABのノウハウだったりとか、自分自身もブレイクダンサーでもあるので、こういうものがみんな見たいだろうということをコンテンツにしていったんです。
そうしたことを地道にやっていったら10万を達成して。世界的にもブレイキンのチャンネルで10万ってすごく珍しくて。それをやってみたという達成感もあるんですけど、でもまだこれからですね。ここからいろんな発信をより強くしていきたいと思っています。
田川:
メディア持つって意味合いは大きいですよね。
イングランドのプレミアリーグって収益の柱が3つあって、1つはチケット。もうひとつは協賛。そして3つ目が放映権。たぶんスポーツマネジメントで一番成功しているのがプレミアリーグじゃないかなと。
それと比較してみると、今のブレイキンはまだ協賛しかないのだけれど、見る人が増えればチケットも増えるし、そして会場では見るのが難しいという人が増えると放映権というものにも価値がつく。「にわかブレイキンファン」を作る機能として、「FLAVA JAPAN」ってめちゃくちゃ重要な存在になり得るんでしょうね。
ISARIBIの代表取締役、田川浩巳。FNMDとは同じグループとして様々な事業で連携している。
自分たちが一緒に働きたい人は?
田川:
最後に、これWantedlyに掲載される予定なので、最後に就職活動に関連することを聞いておきたいなと。
FNMDが一緒に働きたい人ってどんな人でしょう?
DRAGON:
やっぱり何かにのめり込んだことがある人ですね。これに尽きる。のめり込んだことがある人って、のめり込んだという経験だけで活かせるものがあるので。ブレイキンじゃなくてもいい。ジャンルはなんでもいいと思っています。その人が何かにのめり込んだという経験や、その時の感情を、ブレイキンの事業でも活かせると思ってます。
WINGZERO:
FNMDには細々としたデザイン業務なんかもたくさんあるので。DRAGONが言ったように何かにのめり込んだ経験がある人で、そしてデザインワークがフットワーク軽くできる人はすぐにでも会いたいですね。
まだまだ小さい会社なんですけど、雰囲気はとてもいいと思うので。ぜひいろんな人に会えたらいいなと思っています。
田川:
ISARIBIのグループの応募でたくさんいい人が来るといいですね!今日はありがとうございました!