将来的に起業をしたいならまず企業でビジネスを学ぶべきか、それとも、悩んでいる時間を惜しんで今すぐ動くべきか。起業を見据えた就職活動において、そんな問いと向き合っている人は多いはずです。
しかし実は、もうひとつ第三の道があります。それは若手のうちから事業責任者として事業づくりの経験を積める場所に身を置くこと。
今回お話を伺ったのは、大手総合商社に8年勤務したのち独立し、定額制パーソナルジム『KARADA BESTA』とスマートミラーデバイス「MIRROR FIT.」を手がけるRILISIST株式会社 代表の黄皓(こう こう)さん。大企業・独立起業の2つの道と、2025年8月にセブンリッチと戦略的資本提携を締結し、第三の道をセブンリッチとともに歩むことを決めた背景や黄さんの信念について、率直な思いを語っていただきました。
黄皓:中国湖南省出身。10代で来日し、早稲田大学卒業後、大手総合商社に入社。貿易事業を担い、メキシコに駐在する。その後独立し、日中間において北米・アフリカからの資材輸入を行う貿易物流会社の代表取締役を務める。2016年、RILISIST株式会社を設立し、定額通い放題のパーソナルジム『KARADA BESTA』を展開。さらに2020年、オンラインフィットネス事業を行うミラーフィット株式会社を設立。スマートミラーデバイス「MIRROR FIT.」を通して、オンラインフィットネス事業を展開。250名以上を束ねる経営者として活躍する。
大手総合商社での活躍から起業・独立の道へ
── 黄さんは、新卒で大手総合商社に入社されています。学生時代どのような軸で就職活動をしていたのでしょうか。
黄:大学時代は明確なビジョンがありませんでした。その分将来の選択肢を最大化できる場所に行こうと思ったとき、多種多様な事業を取り扱う総合商社でビジネスの基礎を身につければ、将来的な自分のキャリアの可能性を大きく広げられると考えたんです。
── 実際に総合商社に入社されて、特に印象に残っている出来事はありますか?
黄:誰もが知る世界的IT企業との取引に漕ぎつけた経験です。当時、日本の商社がその企業から素材の受注を獲得するのは、困難を極めていました。しかし、国内の優秀なメーカーの素材を自ら発掘したことで、自社グループとして初めてサプライチェーンに入り込むことに成功したのです。このときは、大きな達成感でいっぱいでしたね。
── 大きな成果をあげたのですね。そこから起業・独立という道を選んだのは、どうしてですか。
黄:大きかったのは「会社の看板と自分の実力の境界線」を明確にしたいという気持ちでした。
先ほどお話しした世界的IT企業との取引も、自分に「業界最大手の総合商社」というバックグラウンドがあったからこそ実現したものです。また、扱う売上が何十億、何百億と大きくなるにつれて、巨大な組織のシステムがいかに完璧に構築されているかを痛感しました。
強力なバックグラウンドも、強固な仕組みもない状態で、同じような成果を出せるのか。自分個人ではどんな価値を生み出せるのかを、肌で感じてみたくなってきたんです。
また、総合商社は各部門が高度に専門化されている分、クライアントから担当領域外の相談を受けた際、組織の壁を越えた自由な提案がしづらいと感じる場面もありました。
ゼロからイチを生み出すことや、領域を横断して事業を作ることに面白みを感じていた自分にとって、少しずつ自分の志向性と会社の方向性の違いを感じるようになってきたのも、起業・独立が選択肢に浮かんだ理由のひとつです。
── そこから、実際に独立へと踏み切ったきっかけは何だったのでしょうか?
黄:海外駐在2年目のことです。広大な担当エリアを車で回る業務の中で、ハイウェイを運転しながらふと自身のキャリアについて、ふと考えたんです。「人生で一番バイタリティのある20代。独立して自分の力で勝負するなら、今この瞬間も惜しんで挑戦に向かうべきではないか」って。
それに気づいたらもういてもたってもいられなくて、その日の夜に辞表を書き、翌日には提出していました。ただこの時点では、どのジャンルや業界で起業しようかは決めていない状態でしたね。
──帰国後はどんな起業準備をされたのでしょうか。
帰国後は父の会社に入り、仕事をしながらどのような起業をするか考えていました。転機は、ふと自分の身の回りに目を向けた時でした。
プライベートでパーソナルジムに通っていた際、そのビジネスモデルの素晴らしさを実感しつつも、一方で「なぜこれほど価格が高いのか」という疑問が芽生えました。そこで、自分で適正価格のパーソナルジムを作ろうと、トレーナーに声をかけて動き出したのが始まりです。
その後、コロナ禍で「24時間ジムは3密だ」と言われている中で、「人が密集しないパーソナルジムは安全」という世間の風潮があり、事業は成長。店舗数は3倍になりました。
一方で「もし仮に、人が二度と外出できないような未来が来たらどうするだろうか」とも思ったのです。
「パーソナルジムのような事業は、実店舗でのリアルな接点がないと、深い体験価値を提供しきれない」という物理的な限界も感じていました。それに顧客目線では、実店舗に通うにはどうしても時間や場所の制約が伴います。
「自宅に居ながらにして、店舗レベルの体験を届けられないか」
そんな思いが次第に使命感へと変わり、テクノロジーの力で課題を解決するスマートデバイス事業の創業に至りました。
起業家から見たセブンリッチ
── そんな黄さんとセブンリッチの出会いや、グループインを決めた背景を教えてください。
黄:セブンリッチ副代表の福島さんとのご縁から始まりました。
福島さんとコミュニケーションを重ねながら、セブンリッチは「しあわせの総量を増やす」というビジョンのもと、会計事務所を祖業に多角的に事業を展開する中で、ウェルネス領域の事業にも力を入れていることを知りました。「食事・睡眠・運動」を軸に、社員の健康をサポートすることで企業価値を高めていく姿勢に感銘を受けたんですよね。
また、セブンリッチにグループインすることで、バックオフィス業務を移管できること、セブンリッチの社員がジムを利用してくれること、など実務上のメリットも大きかったのです。
経営者の仕事は、社会への還元と組織の成長への貢献だと思っています。そのために、より早く、より実現性が高い選択肢を選び続ける。セブンリッチへのグループインはとても自然な流れでした。
── グループインする前と後で、セブンリッチへの印象は変わりましたか?
黄:グループインの前は、成長意欲がとても強い会社という印象でした。実際にグループインしてみると、その成長意欲はそのままに、足元が非常に堅い会社だと感じました。ビジョナリーな代表と、実務を強固にまとめ上げる経営陣のバランスが絶妙で、バックオフィスには総合力があり、各事業部が自立している。とても居心地が良く、かついい意味でのプレッシャーがある稀有な組織だと感じています。
── 就職活動で大手企業に応募するか、自分で起業するか迷っている学生がいるとして、黄さんが考えるメリット・デメリットは何でしょうか?
黄:まず大手企業は、巨大な規模の事業に触れ、確立されたビジネスモデルや高度な専門性を学べる環境です。社会的な信用も絶大で、スケールの大きな仕組みを動かす力を身につけたい人にとっては最適な学び舎になります。一方で、組織は「1人に依存しない」ように設計されているため、個人の裁量は限られやすいという側面もあります。 また、将来の起業ドメインと担当領域が一致しない場合は、積み上げた専門知識が直接活きにくいこともありますね。
次に独立起業は、自分のビジョンを実現できる大きな可能性がある道です。 その分、すべてを自分でコントロールしなければならず、責任もリスクも自分に直接降りかかります。 究極のハイリスク・ハイリターンといえますね。
── 第三の選択肢として、若手のうちからセブンリッチで事業責任者として事業づくりをすることについてはどう思われますか?
セブンリッチでの事業責任者という選択は、両者の良いところを掛け合わせた合理的な道だと感じます。
起業の成功確率を上げる一番の近道は、一度ビジネスをゼロからつくる経験をしておくことです。しかし、自己資金でいきなり挑戦して致命傷を負ってしまうと、次へ活かす学びを得る前に再起不能になってしまうこともあります。
約40もの事業があるセブンリッチでは、事業の撤退ラインやKPI管理が明確に敷かれています。そのため、仮に失敗しても傷が浅いうちに次の一手が打てて、すぐに次の打席へと立つことができる。下に芝生が敷かれたブランコのように、思い切り高く漕いで落ちてしまっても、致命傷にはなりにくい。
加えて、定期的な合宿で事業責任者同士がナレッジを共有し合い、成功例の横展開や失敗の防止に繋げています。個人の経験が「組織の資産」として還元される仕組みがあるのです。さらに、経営陣との週次1on1など、適度なプレッシャーの中で次々と仮説検証を回せる環境も整っています。まさに高い熱量を持って事業づくりに打ち込める場所だと思いますね。
── 最後に、学生へメッセージをお願いします。
いずれは起業したい。そのためにもまずは圧倒的なスピードで打席に立ち、事業づくりの手応えを感じたい。そんな方にとって、セブンリッチは良い選択肢のひとつになると思います。興味のある方は、ぜひ飛び込んでみてほしいですね。