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AIは「仕組み」で使いこなす。 CTOが語る、再現性のある「AI開発戦略」。
金融システム、Web3、クリプトスタートアップ──。常に技術革新の最前線でキャリアを築いてきたCTO、澤田健都。彼はシンセカイテクノロジーズの創業期にジョインし、プロダクトの技術基盤を構築してきた。そして今、彼は開発組織における大変革を主導している。それは、AIによる開発の内製化だ。
今回は株式会社SHINSEKAI TechnologiesのCTO(最高技術責任者)の澤田に、キャリアを転換させた出会いから、AIが事業にもたらす変革、開発手法のパラダイムシフト、そしてCTOとして見据えるプロダクトの未来について、話を聞きました。
株式会社SHINSEKAI Technologies
CTO
澤田 健都
「Web3」との出会い。金融システムからクリプトの世界へ
──はじめに、澤田さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
大学でコンピューターサイエンスを専攻していましたが、在学中からソフトウェア開発の仕事に熱中しすぎてしまい、大学は中退しました。その後、東京の金融システム会社で約5年間、FXや証券の取引システムの開発に従事し、そこでビットコイン関連の製品開発に携わったのが転機になりました。
ビットコインの仕事が面白かったので、知人が立ち上げたクリプト・スタートアップに参画しました。事業売却後、一時的にベトナムに移住していたのですが、ちょうど日本に一時帰国したタイミングで、現CEOの大社と出会いました。
──それがジョインのきっかけになったのですね。
はい。当時、大社は「web3コミュニティ」の会社を立ち上げようとしており、web3に強く、開発組織全体を率いることができるCTOを探していました。私がweb3やコミュニティという概念に強く共感していたのはもちろんですが、それ以上に「バチっとはまった」のは、具体的な事業構造の構想でした。
私自身が、ちょうど「ベトナムで開発拠点の会社を作るのも有りだな」と具体的に構想していたタイミングだったのです。大社の「強力な開発組織が必要」というニーズと、私の「ベトナムで開発拠点を作りたい」という具体的なプランが、構造とタイミングの両方で完璧に合致しました。これがジョインを決意した最大の理由です。
AI駆動開発へのシフト。エンジニアの役割はどう変わったか
──創業当初の構想から、開発体制は大きく変わったのでしょうか?
はい、大きく変わりました。ジョインのきっかけとなったのは、先ほどお話ししたベトナムでの開発拠点設立という構想でした。当初はそこを軸に開発リソースを確保する計画でしたが、この1年で最大の変革、AIの登場によってその前提が覆りました。
AIによる開発が現実的になったことで、従来の「開発リソースの確保」という考え方そのものが変わりました。結果として、ジョイン当初に描いていたベトナム拠点の構想は停止し、それまで利用していたベトナムでのアウトソース(外注)もストップさせ、AIを中心とした内製化へと大きくシフトしたのです。
──AI中心の開発とは、具体的にどのようなものでしょうか?
まず、コードを書くだけのエンジニアは、もう社内にいません。AIの登場により、エンジニアに求められるスキルが完全に変わりました。AIは指示通りにコードを書けるので、私たち人間に必要なのは、より上流工程、つまり「何をしたいのか」というシステムの要件を定義し、それをAIに指示できる言語化の能力です。
もちろん自然言語だけで全てを指示できるわけではなく、AIが理解できるように噛み砕いて教えたり、出てきたコードを修正したりする必要はあります。私や開発チームのメンバーも、手で一語一句コードを書くのではなく、AIに指示を出し、そのアウトプットを管理・修正するという働き方に変わりました。
「AIとの対話」の罠。属人化を防ぐ「ドキュメント化」という戦略
──AIとの「対話」で開発を進めるのは、難易度が高そうです。
一般的に「AIと対話しながら仕事をする」というイメージがあると思いますが、それには「再現性がない」という大きな弱点があります。
例えば、エンジニアAさんがAIと対話して作ったアウトプットと、Bさんが対話して作ったアウトプットは、おそらく違うものになります。それでは、開発結果がエンジニア個人の「AIとの対話力」という属人的なスキルに依存してしまい、組織として機能しません。「AIマスターの〇〇さんがいないと開発できない」という状況は避けたかったんです。
──その「属人化」を防ぐために、どのような仕組みを構築しているのでしょうか?
私たちは、AIにやってほしい要件を「ドキュメント化(文書化)」しています。この1年、岡崎(CAIO)とも議論を重ねながら試行錯誤し、文書のフォーマットや記載ルールの精度を上げてきました。
このフォーマットで仕様を書いてAIに「これを見ろ」と指示すれば、作業者によってアウトプットが大きくブレることがありません。入力が同じだからです。AIにある程度レールを敷き、方向性を示すドキュメントをセットで渡すことで、安定したアウトプットが得られます。この「仕組み化」こそが、AI開発を破綻させないために最も重要です。
ネットやSNSには「AIは何でもできる」というデモ動画が溢れていますが、あれは特定の制約がない新規開発など、うまくいった例だけを見せている場合がほとんどです。実際の開発では、既存の機能との連携や文脈の読み取りが必要になり、そこで破綻します。私たちは、実際にAI開発を使っている企業の話を聞き、地に足のついた仕組みを構築しています。
CTO兼、情報システム責任者。スタートアップの「守り」を固める
──澤田さんはCTOでありながら、社内の情報システムの責任者も兼務されていますよね。
はい。スタートアップのCTOはプロダクトを作る「攻め」の技術だけでなく、社内のITインフラやセキュリティという「守り」の技術も管掌します。プロダクト開発と情報システムは、CTOが両方見るのが一番効率的だと考えています。
具体的には、社内で使用するPCの管理、ネットワーク構築、セキュリティポリシーの策定、Google WorkspaceやSlackといったSaaSツールの管理・運用など、社員が安全かつ快適に働ける環境を整備するすべてが私の役割です。
特に重要視しているのはセキュリティです。金融システム出身ということもあり、セキュリティに対する意識は強く持っています。会社の成長フェーズに合わせて、過剰すぎず、しかし堅牢なセキュリティ体制を構築・維持することもCTOの重要なミッションです。
MURA(ムーラ)コミュニティの未来。AIが「人の温度」をどう実現するか
──今後、AIによってMURAコミュニティや会社はどう変わっていきますか?
「見えるところ」と「見えないところ」の2つがあります。 「見えるところ」、つまりMURAのプロダクト面で言えば、すでに実験的にAIチャットボットを導入しています。将来的には、これがイベントの告知やリマインド、特定のユーザーへのケアといった、これまでモデレーターが担っていた業務の一部をサポートし、役割を分担していくと考えています。
「見えないところ」、つまり社内の話で言えば、開発チームはすでにAI中心なので、今後サービスがどれだけ大きくなっても、エンジニアの数を100人、200人と増やす必要はおそらくないでしょう。AIを管理できるスキルを持った少数の人間がいればいい。これは他のチームも同様で、コミュニティの提案や立ち上げ設計といった業務も、AIエージェント化が進み、自動化されていく未来は近いと思っています。
──AIが業務をサポートするようになると、「人の温度」が失われる懸念はありませんか?
AIが人間の役割を代替すると「冷たくなる」とか「シラけてしまう」という懸念は当然ありますよね。私たちが目指すのは、技術によって「人の温度」を感じられるプラットフォームです。
その実現には2つのアプローチがあると考えています。 ひとつは、「AIと人間の自然な共存」です。AIが定型的な対応をサポートし、人間はより感情的なケアや対話といった、人にしかできない業務に集中します。将来的にはモデルがさらに進化すれば、ユーザーがAIか人間かを意識する必要がないほどシームレスな体験を提供できるようになるかもしれません。
もう一つは、「AIです」と明言した上で、愛されるキャラクターとして楽しんでもらうアプローチです。例えばインフルエンサー自身が、自分のコミュニティにいるAIキャラクターを可愛がってくれれば、ファンの皆さんも一緒に遊んでくれるかもしれない。技術で「人の温度」を無理に再現するのではなく、技術と「見せ方」で新しい体験を創出することが重要だと考えています。
未来のメンバーへ。AI時代の両端を担う「考える力」
──最後に、未来のメンバーに期待することは何ですか?
AI中心の開発組織になることで、求められる人材は明確になりました。AIは、仕様を書けばその通りにモノを作ることはできます。だからこそ、人間に求められるのは、その両端の能力です。
つまり、仕様を作る「前」の段階で、この機能が他の仕様とぶつからないか、本当に必要なのかを深く考える力。そして、AIがコードを出してきた「後」の段階で、それが本当に正しいかを判断し、レビューする力。
この「両端」を、自分の頭でしっかり考えられる人。これはウチの組織に限らず、今後AI化していく全ての開発組織で求められる人材だと思っています。
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