株式会社関門海(以下、関門海)では、それぞれにキャリアの異なる社員が、お客様の笑顔のために日々仕事に励んでいます。
今回取材した、経営支援本部 課長の藤井 裕一朗(ふじい ゆういちろう)さんは、学生時代のアルバイトを経て、関門海に入社した一人です。一般社員・店長・エリアマネージャーを経験し、現在は全社の労務・総務などのバックオフィスを担当している藤井さん。
一見すると、華々しいキャリアを歩んできたように思えますが、その裏では数々の苦労と挫折を乗り越えた経験があったのでした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[取材・執筆・校正]
株式会社ストーリーテラーズ ヤマダユミ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「すべては意識の問題」入社して培ったタフマインド
「『意識が変われば行動が変わり、行動が変われば結果が変わる』。
入社1年目に教わった言葉を指針に、今日まで目の前の仕事に取り組んできました。
望む結果が出ないのは、周囲や環境のせいではなく、自分の意識の低さが原因であることが多い。そう考えています」
現在入社18年目を迎える藤井さんは、40歳を目前に控えた若きエリート社員。穏やかで柔らかな口調とは裏腹に、内に秘めたる屈強なマインドを感じさせる方です。
そんな藤井さんですが、はじめからタフな精神力の持ち主だったわけではありません。ここからは、藤井さんの価値観を形成するに至った、過去の挫折経験に迫っていくことにしましょう。
アルバイト時代の自信が崩れ去った、入社1年目
学生時代に心理学を学ぶため、大阪で一人暮らしを始めた藤井さん。「両親に金銭的な負担をかけたくない」という想いでアルバイトを探したところ、出会ったのが「とらふぐ料理 玄品(以下、玄品)」の前身となるふぐ料理店でした。
「店長や先輩が家族のように接してくれたので、お店を『第二の実家』のように感じていました。悩みごとの相談に乗ってもらったり、シフトが入っていない日でも、皿洗いを手伝ってまかないを食べさせてもらったり。まるで本当の家族のように、かわいがってもらいました」
いつしか、学業よりもアルバイトに精を出すようになった藤井さん。しばらくすると、その働きぶりを見ていた事業本部の社員から、「卒業後はうちに入社しないか?」と誘いを受けるようになりました。
「学校に通い始めた当初は、困っている誰かの支えになれる、心理カウンセラーを目指していたんです。でも、『玄品』のアルバイトを通じて、次第にその気持ちが変化しているのを感じていました。
必ずしも、心理カウンセラーになることがすべてではない。自分がここで店長になれば、若い子たちの居場所や支えになれる。そんな考えが頭に浮かぶようになっていたんです」
そうして、入社の決意を固めた藤井さん。ところが、1年目に配属されたのは、前の店舗とは180度雰囲気の異なる、厳格な店長が仕切るお店でした。
入社後しばらくして、藤井さんは業務中に店長に叱られました。
「俺に頼るな」
藤井さんには、その言葉の意味がまったく理解できなかったといいます。
「今の自分の立場より、もう一段上の仕事をしていくことを心がけろ。店長の俺は、エリアマネージャーの視点で仕事をする。副店長は、店長の視点で仕事をする。店長を目指す一般社員は、副店長の視点で仕事をする。
そうやってみんなが、もう一段上の仕事をしていくからこそ、お店が成長していく。だから、いちいち俺に聞くな。自分で考えて仕事しろ」
藤井さんは当時をこう振り返ります。
「アルバイト時代にリーダーを任されていたので、少なからず自信を持っていました。でも、『すべて思い上がりだった』と、このとき気づかされたんです。
それからは、常にこれまで以上の働きを求められました。体力的にも精神的にも追い込まれて、気づけばお店から逃げ出したこともあって…。本当に辛い1年でしたが、このときの経験が今の自分を形作っていると断言できます」
ときを同じくして、藤井さんはある言葉を店長から教わります。それが、「意識が変われば行動が変わり、行動が変われば結果が変わる」という教訓でした。
これまでのさまざまな苦労や実体験が思い出され、その言葉は藤井さんの脳裏に深く刻まれました。
その後、入社2年目に店長に抜擢され、2店舗の店長を経験した藤井さん。
「みんなの心の拠り所となる場所を作りたい。その想いを胸に抱いて働き続け、店長になってようやく、自分が思い描いていた理想のお店を作ることができました。そのことがうれしくて自分では満足していたのですが、当時の社長から思わぬ声がかかったんです。
『東京の店舗を仕切り直したいと思っているんだが…藤井くん、行く気はあるか?』と」
自分の理想を実現した直後に、提示された新たな土地でのチャレンジ。動揺しながらも、「はい!」と即答した藤井さん。ここから、次なるチャレンジが待ち受けていました。
逆境から結果を出した、人生のターニングポイント
藤井さんが任されたのは、東京エリアの大型店の一つ、浅草店でした。お店で働くスタッフは、自分よりも年上の社員やアルバイトスタッフばかり。
しかし、異動して早々に、藤井さんはスタッフと意見が対立してしまいます。その一件がきっかけで、スタッフとなかなか信頼関係を築けずにいました。
「このままではいけない。0から信頼を積み上げよう」
早速藤井さんが始めたのは、手の空いた時間にお店を掃除することでした。
「誰もやりたがらない仕事を率先して行うことで、お店に懸ける想いを伝えたいと考えていたんです。始めた当初は周囲から斜めに見られていましたが、構わずに続けていたら、ほかのスタッフが手伝ってくれるようになって」
すると、藤井さんへの否定的な視線は、日に日に弱まっていきました。気がつくと残りのスタッフもすすんで掃除を行うようになり、藤井さんの話に耳を傾けてくれるようになったのです。このとき藤井さんは、先輩社員やスタッフへ、敬意を込めた丁寧な伝え方を学んだといいます。
「意識が変われば行動が変わり、行動が変われば結果が変わる」
藤井さんの胸に、あの日の店長の言葉が蘇りました。「予想外の課題は、教訓を実践したからこそ乗り越えられたんだ」と腑に落ちました。
その後、藤井さんは実績が認められ、東京・関西エリアのマネージャーに昇進しました。
「浅草店での経験がなければ、先輩方のマネジメントをする役回りなど、到底務まりませんでした。無我夢中でやってきたことは、未来に繋がっていた。今はそう思えます」
未来を担うのは、高い理想・信念・行動力を併せ持つ人材
現在、店舗運営の第一線から離れ、全社のバックオフィス業務を担当している藤井さん。今力を入れて取り組んでいるのは、規定された年間休日の徹底取得です。
「少しずつでも、同じ方向を向く人を増やすことが、私の役目だと思っています。そうすれば、自ずと全員の意識が揃うときがやってくるでしょうから」
藤井さんは対象の社員一人ひとりと面談し、休日取得の重要性を説明しています。この取り組みが功を奏し、徐々に「休むのが当たり前」の文化ができてきました。社員全員が同じ未来を見据え、足並みが揃うのはもうすぐそこです。
関門海の企業理念には、こんな一文があります。
「高い理想・信念・行動力を併せ持つ、主体性ある進化する個人を育てる」
自らの理想や信念を掲げ、行動を起こせる主体性ある進化する個人こそが、会社の未来を担っている。藤井さんは、その理念を体現する一人といっても、決して過言ではないでしょう。
いずれ、関門海の歴史を振り返ったとき、藤井さんの挑戦が転換点となっている。今は見えぬ新たな未来が待っていることを、予感させられた取材でした。