「データが人を動かす。透明性が組織を変える」━━ 理系院卒エンジニアから介護経営者へ。後藤副社長が起こした組織革命
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理系院卒、NECエンジニアから介護業界へ転身し20年。FACグループで新たな挑戦を始めた異色のキャリアが生み出すイノベーション
はじめに
「誰も数字を管理していない。誰も現場を見ていない。でも、みんな一生懸命働いている」
ForA-careerが買収した日本介護センターの副社長に就任した後藤さんが最初に感じたのは、この組織の持つ大きな可能性でした。理系大学院を出てNECでエンジニアとしてキャリアをスタート、その後、介護施設の経営に20年以上携わってきた後藤さんにとって、この状況は「宝の山」でした。
週に一度の郵便で届く紙の書類、誰も確認できない経費の妥当性、ブラック化した施設があっても誰も気づかない管理体制。赤字は続き、資金ショートの危機が目前に迫っていました。
しかし、大学院とエンジニア時代に培った論理的思考と、介護業界での20年の経験を持つ後藤さんは、この混沌を整理し、組織を変革する道筋を明確に見出していました。
FACグループにジョインしてから1年。今では営業活動が活性化し、採用応募者数も増加。何より、現場スタッフが自ら改善提案をするようになり、3ヶ月で224件もの改善活動が生まれました。
理系大学院からエンジニアへ━━異色のキャリアが見た介護現場の現実
━━ 後藤さんの経歴は本当にユニークですね。理系大学院からNECエンジニア、そして介護業界へ。
40代になった今振り返ると、すべてがつながっているんです(笑)。大学院では論理的思考を徹底的に鍛えられ、NECではそれをシステム設計に活かすことを学びました。
━━ なぜ介護業界に転身されたのですか?
20年前、親族が経営する介護施設を手伝うことになったのがきっかけです。最初は「ITの知識を活かして少し手伝う」程度のつもりでした。でも、現場を見て衝撃を受けました。人の命と尊厳を支える崇高な仕事なのに、経営やシステムがあまりにも前時代的だったんです。
━━ 20年の介護経営経験の中で、どんなことを学ばれましたか?
いくつかの介護施設の経営に携わる中で、この業界の構造的な問題が見えてきました。素晴らしいケアをする職員がいても、それが正当に評価されない。効率化できる部分があっても「昔からこうだから」で済まされる。何より、データに基づいた経営判断ができていない施設が多すぎました。
━━ FACグループに参画された理由は?
ForA-careerが日本介護センターを買収するという話を聞いた時、「これは面白い」と思いました。外部資本が入ることで、業界の常識にとらわれない改革ができる。しかも、FACグループには若くて優秀な人材と、最新のテクノロジーへの理解がある。私の20年の経験と彼らの新しい視点を組み合わせれば、介護業界に革命を起こせると確信したんです。
紙の山に埋もれた組織━━副社長就任時の衝撃
━━ 日本介護センターの副社長に就任された時、最初に感じたことは?
正直、20年この業界にいても驚きました。全部の業務プロセスが紙ベースで、各部署からの紙が週に一回の郵便で送られてくる。令和の時代に、情報が1週間遅れるなんて、NECでエンジニアをしていた頃なら考えられません。
━━ 具体的にはどんな状況だったんですか?
シフト作成、購入申請、事故報告書、採用関連など、決裁が必要なものはすべて紙。しかも、各施設でシフトが独自に作成されていて、本社は誰がどう働いているか把握できていない。一部の施設では人員配置がギリギリで、スタッフが疲弊していても気づけない。
赤字が続いているのに、誰も何が原因なのか分からない。経費の妥当性も確認できない。これでは、そもそも改善のしようがありませんでした。
エンジニアリング思考で挑む介護DX
━━ 最初に着手した改革は何だったんですか?
エンジニア時代の経験から、まずはデータの可視化が必要だと判断しました。「カイポケ」という介護ソフトを導入して、各拠点の売上をリアルタイムで把握できるようにしたんです。
━━ カイポケ導入でどんな効果がありましたか?
劇的でしたね。以前は1週間後に「先週の売上が低かった」と分かっても手遅れ。でも今は、売上が下がりそうな兆候を察知したらすぐに対策を打てる。データをリアルタイムで見られるということが、これほど経営に大きな影響を与えるとは思いませんでした。
━━ 次のステップは?
8月から「ラーク」というコミュニケーションツールを導入しました。情報の流れを整理することが、組織効率化の第一歩だと考えたんです。メッセージ、カレンダー、ビデオ会議、すべてを一つのプラットフォームに統合しました。
特に効果的だったのは、QRコードを使った営業報告と経費申請のデジタル化です。携帯から簡単に報告・申請ができるようになり、データがすべて蓄積されるようになりました。
20年の経験が導いた「透明性のある評価制度」
━━ 評価制度の改革は、後藤さんの経験が活きた部分ですね?
はい、これは20年間ずっと課題だと思っていたことです。介護業界では、頑張っている人が報われない構造があります。そこで、個人の売上や営業活動、改善提案すべてを点数化する仕組みを作りました。
━━ 現場からの反応はどうでしたか?
最初は不安の声もありました。でも、私は20年の経験から確信していました。介護職員は本当は評価されたがっているんです。ただ、今まで適切な評価軸がなかっただけ。
実際、運用を始めると現場から好評でした。自分の頑張りが数字として見える。上司の主観ではなく、客観的な基準で評価される。これが職員のモチベーションを大きく向上させました。
━━ 改善活動「ノンテク」も大成功だったそうですね?
「ノンテク」という問題解決の仕組みを導入しました。現状の問題点、原因、解決策を個人ごとに挙げてもらうんです。最初は「そんな難しいこと...」という反応でしたが、小さなことから始めてもらいました。
小さな変化の積み重ねが大きな変革につながることがあります。現場の職員に、現状の問題点、原因、解決策を提案してもらったところ、3ヶ月で224件の改善提案が集まりました。
これは私の予想を超えていました。20年間、多くの施設を見てきましたが、これほど現場の知恵が噴出したのは初めてです。
テクノロジー×経験値=介護の未来
━━ 今後の展望について教えてください。
まず、AIを使ったヒヤリハット分析に注力します。過去のインシデントデータから事故リスクのパターンを抽出し、予防につなげたいんです。
シフト管理も革新します。「medicaシフト」というアプリケーションを導入して、複雑なシフト作成を効率化。ただし、完全自動化ではなく、AIと人間のハイブリッド方式です。20年の経験から、介護は人の温かさが不可欠だと知っていますから。
━━ FACグループでの可能性をどう見ていますか?
無限大です。私の介護業界での20年の経験と、FACグループの持つ革新的な企業文化とテクノロジーへの理解。この組み合わせは、業界に大きなインパクトを与えられます。
実際、若い社員たちから学ぶことも多い。彼らの新鮮な視点と、私の経験を融合させることで、今までにない価値を生み出せています。
異色のキャリアが求める「変革の同志」
━━ どんな人と一緒に働きたいですか?
まず、現状を疑える人。私もずっと「なぜ?」を追求し、「もっと良い方法は?」を考え続けてきました。介護業界の「当たり前」を変えていける人と働きたいですね。
次に、データと論理を大切にしながら、人の温かさも忘れない人。私のキャリアは一見バラバラに見えるかもしれませんが、すべて「人の役に立つ仕組みを作る」という軸でつながっています。
━━ 組織の雰囲気はどう変わりましたか?
FACグループの文化と、改革の効果が相まって、組織は見違えるように変わりました。若手が積極的に発言し、ベテランが経験を共有し、全員がデータを見ながら議論する。これが今の日本介護センターです。
━━ 最後に、後藤さんの夢を聞かせてください。
理系の大学院を出て、エンジニアとしてシステムを設計し、介護経営者として20年。このすべての経験を活かして、介護業界に新しいスタンダードを作りたいんです。
「データが人を動かす。透明性が組織を変える」━━これは、私の40年以上の人生で培った信念です。数字は冷たいものじゃない。人の価値を正しく映し出し、組織を進化させる力なんです。
FACグループという新しい環境で、この信念を実現していく。それが、私が次の20年をかけて成し遂げたいことです。
日本介護センターと共に次世代の事業開発を進める株式会社CyXenでは、介護業界の未来を創る仲間を募集しています
理系大学院、エンジニア、介護経営。一見関係ない分野を経験してきた後藤副社長が証明したように、多様な背景を持つ人材こそがイノベーションを起こせます。
あなたの経験を、FACグループの革新的な環境で活かしてみませんか?介護経験は問いません。必要なのは、現状を変えたいという熱意と、データとテクノロジーの力を信じる心、そして何より、人の尊厳を大切にする想いです。
共に、介護業界の新しいスタンダードを創りましょう。