はじめに
AIが分析もコーディングも担える時代になり、 「データサイエンティスト(以下、DS)の価値はどこに残るのか?」 そんな問いを抱えるDSは少なくありません。
KiZUKAIでは、DSを「技術とビジネスの両面から事業を動かす存在」として位置づけています。
今回は、データソリューション部の責任者・徳永に、部署改名の背景からAI時代に求められるDS像について話を聞きました。
目次
はじめに
I. なぜ「データソリューション部」なのかーー部署改名に込めた想い
II. AIが進化するほど、人に求められるのは“問いを立てる力”
III. 技術を極めるか、事業を創るかーーキャリアの転換点
IV. 次世代DSに求められる3つの力
1. 目標設定力・ゴール設定力
2. 感性・こだわり・価値観
3. 継続力(粘り強さ)
V. KiZUKAIで育つ「事業を動かすDS」とは
VI. AI時代に価値を持ち続ける人材像とは
最後に
I. なぜ「データソリューション部」なのかーー部署改名に込めた想い
インタビュアー(以下、I ):
まずは、部署名変更について伺います。 以前は「データサイエンス&コンサルティング部」でしたが、「データソリューション部」に変えた理由を教えてください。
徳永(以下、T ):
もともとは
・DSが分析を担当
・コンサルが課題整理や提案を担当
という役割分担で進めていました。
I:
2名体制で役割を分けていたということですね。
T:
はい。ただ実際のDX支援では、 DSがビジネス文脈を理解できないと分析が活きず、 コンサルもデータ理解が足りないと価値提供が難しい。
どちらか片方の専門性だけでは成果に結びつきにくくなり、 自然と職種の境界線は解けていきました。
そこで、役割分担をなくし、 「データで課題を解決する」という成果軸でチームを再定義しようと考え、 ソリューションを一気通貫で提供する組織として 「データソリューション部」に名称変更しました。
II. AIが進化するほど、人に求められるのは“問いを立てる力”
I:
AIやLLMの進化で、DSの役割はどう変わりましたか?
T:
最も大きいのは、 “何を解くべきか”と“成功の定義”を決める力の重要性が増したことです。
昔は、課題設定から手法選定、実装まで、 ゴールに向かうプロセスをすべてDSが担っていました。 でも今は、「この課題に対して、こういう分析をしたい」という方向性さえ定まれば、 手法選定やコード生成の大体をAIやLLMが補ってくれるようになりました。
I:
専門的な作業の多くをAIが代替できるようになったわけですね。
T:
はい。だからこそ人が担うべきは、
「何を解くのか」=課題設定
「どこまでを成功とするのか」=ゴール設定
この2つです。
AIは確かに優秀ですが、前提や課題設定を誤ると全くズレたアウトプットを返します。
I:
ここはコンサル的な力も必要になりそうですね。
T:
そうですね。ただ、コンサル力だけでも不十分です。
コンサルはビジネス設計が得意だけど、分析の妥当性評価が難しい場合もある。
DSは手法に強いけれど、ビジネスゴールの設計が弱いケースもある。
どちらも“もう片方の視点”を取りに行く必要があります。
今や、AIのアウトプットを正しく評価できなければ、 人間側がボトルネックになる時代でもあります。
だからこそ、 ビジネス × データの両輪で判断できるベース知識と経験が必要です。
III. 技術を極めるか、事業を創るかーーキャリアの転換点
I:
徳永さんは研究職からキャリアをスタートしていますよね。 その後の選択肢としてどんな道がありましたか?
T:
当時は、純粋に場数を踏んで技術を磨き続ける道(SESなど)も考えていました。 しかし、KiZUKAIの最終面接で 「何を解決したいのか」「どんな事業をつくりたいのか」 と問われた時、ハッとしたんです。
I:
技術ではなく“価値”を問われたと。
T:
はい。技術を磨くのは好きですが、 その技術で何を実現したいのかを語れないと、価値にはならない と気づきました。
そこから 「技術を武器にしながら、自分で価値を定義し、事業を創る側に回る」 という選択肢が、自分にとって新しいけれど“しっくりくる軸”だと感じて、KiZUKAIを選びました。
I:
実際に働いてみて、どんな変化がありましたか?
T:
一番変わったのは、「視座」と「伝え方」です。
以前の自分は、分析手法や背景を細かく説明しがちでした。
でもクライアントが知りたいのは、
・今どこまで進んでいるか
・進め方は妥当か
・次に何をすべきか
という“意思決定に必要な情報”だけなんです。
I:
技術より視座やコミュニケーションの比重が大きくなったと。
T:
はい。相手の立場によっても求められる情報は違います。
ビジネスを俯瞰し、 “必要な情報を、必要な量で伝える力”が鍛えられました。
IV. 次世代DSに求められる3つの力
I:
AI時代のDSに求められる力を改めて整理すると?
T:
この3つだと思います。
- 目標設定力・ゴール設定力
- 感性・こだわり・価値観
- 継続力(粘り強さ)
1. 目標設定力・ゴール設定力
T:
まずは、目標設定力とゴール設定力です。
AIがプロセスの大部分を代替できるようになった今、 “何を解くのか”を曖昧にしたまま走ることのリスクが、以前より格段に高まりました。
AIは、前提が1つズレるだけで、まったく違う方向に最適化してしまいます。
プロンプトもテクニックではなく、 課題・背景・前提をどれだけクリアに言語化できるか が本質です。
私自身、AIと対話していると、「この情報が抜けていたからこう答えるのか」と自分の設定の甘さに気づくことが多くあります。
暗黙知も含めて補足し、前提を丁寧に積み上げる必要があります。
I:
AIを活かすには、“問いの質”が核心になるわけですね。
T:
はい。そしてこれは、単にロジックではなく、「何に価値を置くか」を自分で決める力でもあります。
・このプロジェクトは何を守るべきか
・逆に、何は“切り捨てていい”のか
・誰のための価値を最大化したいのか
ーーこうした“意思”を持てるDSは、AI時代に強いと思います。
2. 感性・こだわり・価値観
I:
2つ目の「感性・こだわり・価値観」とは?
T:
AIは合理性の塊です。 だからこそ人間は、 “非合理にこだわれる部分”が価値になると思っています。
例えば、
・「誰が何と言おうが、この指標は追うべきだ」
・「この体験設計だけは妥協したくない」
といった“違和感を拾い、こだわり抜く力”です。
I:
合理だけでは、人は動かないですもんね。
T:
そうなんです。 人は「正しいから」ではなく、 “納得できるから”動く。
その“納得”をつくるのが、時に 感性・こだわり・価値観 です。
例えば、私が大事にしているのは、
・統計的に正しいだけでなく、“現場の感覚”と矛盾しないか
・数字で説明できても、クライアントの腹落ちにつながるか
・ユーザーが使ったときに「なんか好き」と感じてもらえるか
こういう部分です。
AIは膨大な知識から最短距離を示せますが、
“どの道を選ぶべきか”という思想は人にしか決められない。
そこが人の価値だと思います。
3. 継続力(粘り強さ)
I:
最後に「継続力」ですね。
T:
はい。AIやハウツー情報が溢れる今、
“すぐに答えが手に入る”という錯覚が強くなっていると感じています。
しかしデータの仕事は、本当に泥臭いんです。
何度仮説検証しても、外れることの方が多く、成果は非線形で単純に積み上がりません。
・50やっても成果は0
・でも120やったら、一気に200の成果に跳ね上がる
という世界なんです。
だから横ばいが続いても、
「あともう少しやってみよう」
と思える粘り強さが大切になります。
I:
AIがプロセスを助けても、跳ねる瞬間を迎えるには人が積み上げるしかないですね。
T:
その通りです。
“目標を立てる → AIと対話する → 評価する → また考える”
このサイクルを止めないことが、最終的な価値につながります。
AI時代でも変わらない、もっともアナログで、もっとも強い力だと思っています。
V. KiZUKAIで育つ「事業を動かすDS」とは
I:
最後に、KiZUKAIで育つDS像を教えてください。
T:
一言でいえば、 データという武器を持ちながら、事業を動かせる人 です。
KiZUKAIのDSは、クライアントへのヒアリングから課題発見、仮説設定、分析〜示唆出し、伴走支援──さらにプロダクト化のコアロジックを設計するところまで一気通貫で携わります。
その一連の流れの中で自然と鍛えられるのが、
・データの専門性(武器としての分析力)
・課題設定力(問いの質を上げる力)
・解決力(仮説を形にする実行力)
・ビジネス理解(事業の仕組みを読み解く力)
・コミュニケーション力(相手の文脈を想像し伝える力)
という、事業推進に必要な全方位スキルです。
I:
「分析者」にとどまらず、「事業を動かすプレイヤー」ですね。
T:
その通りです。特に KiZUKAI は DSが主語になる会社 なので、 “ソリューションの核”を握る機会が多い。
データという強力な武器を軸に、 どこでも戦える汎用性の高いスキルセットが身につきます。
VI. AI時代に価値を持ち続ける人材像とは
T:
最後に、これはDSに限りませんが、 AIで多くの仕事が効率化される中で価値を持ち続けるのは、
・問いを立てられる人
・ソリューションを設計できる人
・事業の核心をつくれる人
だと思っています。
I:
まさにAI時代に求められる人材像ですね。
T:
はい。AIを使えば、マーケも開発も営業も、一定レベルのアウトプットが出せてしまう。 だからこそ、必然的に中途半端なスキルはAIに代替される時代になると思っています。 AIによって部署の境界もどんどん溶けていくのではないでしょうか。
だからこそ、職種を問わず、 自ら価値をつくりに行ける人が強い。
その力は、どんなキャリアでも強みになります。
最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AIの進化によって、データサイエンティストという仕事も大きく姿を変えつつあります。
KiZUKAIは、その変化を恐れるのではなく、
「AI×人」の協働で、データから事業を動かす新しい価値を生み出す
ことに挑戦している会社です。
技術だけを極めるのでも、ビジネスだけを見るのでもなく、
データという武器を手に、問いを立て、ソリューションを設計し、事業のど真ん中で価値をつくっていく。
そんな挑戦をおもしろがれるDSを、KiZUKAIはいつでも歓迎しています。
「技術だけでなく、事業づくりにも踏み込んでみたい」
「AI時代でも通用する“事業を動かすDS”として成長したい」
もし少しでもそう感じていただけたなら、ぜひ一度カジュアルにお話ししましょう。