今回は、Helical Fusion2人目の新卒社員で、R&Dチームで活躍する筑間さんにお話を聞きました!
柔和な語り口と笑顔が印象的な筑間さんですが、内に秘めた意思の強さが光るルーキーです。
なんと中学生まで遡るという、フュージョンエネルギーに関心を持つきっかけや、紆余曲折を経て、核融合炉を開発する日本のスタートアップに入社を決意する道のりは、進路に悩む学生の方にも、人生の軸を見直す社会人の方にも参考になるはずです。
筑間 弘樹 / 研究開発部門
岐阜県出身。岐阜高等専門学校 電気情報工学科(電磁気学や電子回路、プログラミングといった情報工学を総合的に学ぶ学科)を卒業したのち、同高専の専攻科(大学学部に相当)へ進学。高専では核融合を扱う研究室に所属。大学院では、北陸先端大学院大学先端科学技術専攻に進学し、博士課程を修了後、
新卒でHelical Fusionに入社。
―筑間さんは、高専で核融合を専攻していたそうですね。どんな背景があったのでしょうか。
中学生の頃からエネルギー生産、とりわけ発電技術に興味を持っていて、それが電機情報工学科への進学を決めた一番のモチベーションでした。
授業を通じて、熱や運動エネルギーが産業を動かす力へと転換されるプロセスを学ぶ中で、その技術的挑戦と可能性に深く惹かれたんです。また、私が中学1年の頃に東日本大震災、原発事故が起きました。原子核のエネルギーが極めて莫大であることを再認識し、それをもっと安全に平和的に活用できないかと調べるうちに、核融合発電のことを知るに至りました。
加えて、高専の3年生の時に核融合研究者の先生が赴任してこられまして。「これは運命だ」と思ってその先生の研究室を志望しました。
―でも、博士課程では核融合とは異なる分野を研究していたんですね。
はい。高専の専攻科を卒業する時点で、核融合分野だけに拘泥するべきではないと考えていました。当時は、国内にHelical Fusionのようなスタートアップも立ち上がっていなくて、核融合の道でキャリアを築く選択肢が非常に限られていたんです。そういったこともあって、まず異分野を経験してからもう一度進路を見直そうと思ったんです。とはいえ、キャリア云々よりも、これまで触れてこなかった他の世界を見たい好奇心の方が本音だったりします。
一方で、プログラミングなどこれまで電気情報工学科で身につけた技術を活かしたいという気持ちもあり、大学院では化学シミュレーションと機械学習を組み合わせた研究に取り組んでいました。
―博士課程を経て新卒入社したということですが、Helical Fusionとの出会いのきっかけはどのようなものだったのですか?
博士卒の就職活動を進め、企業や研究機関、大学といったいくつか選択肢も出てきた段階で、あらためて高専時代の恩師に相談したのがきっかけです。核融合分野への未練が心にあった私に、
「核融合の道に戻ってみないか」と、先生が紹介してくれたのがHelical Fusionでした。
高専を卒業する時にはなかった、「国内で核融合炉開発を目指すスタートアップ」という選択肢が現れた瞬間でした。
―新卒の就職先として核融合炉開発を目指すスタートアップを選んだ決め手はなんだったのでしょうか。
一言で表すなら、「夢を諦めきれなかった」。
それまでは、大学院で研究してきた化学系の分野で研究の道に進むことも考えていたので、非常に悩んだ記憶があります。でも、ずっと頭の中にあったエネルギー分野での仕事、中でも核融合発電の実現に携われるチャンスに、賭けてみたくなったんです。
高専時代の研究から、核融合が総合科学であらゆる分野の叡智無くしては達成できないことも重々理解していたので、自分の研究が活きる領域が絶対にあると確信できたのも大きな理由ですね。
しかも、Helical Fusionが実現を目指すヘリカル型は、生まれ育った岐阜県にヘリカル型を研究する核融合科学研究所もあったことで、社会実装に最適な強みは理解していたし、馴染みがあったことも、私の背中を押してくれました。
―海外という選択肢もあったのでしょうか?
自分の中で、漠然と「日本に貢献したい」という想いがあって。この国が好きだから、この国で働きたいなと考えています。日本は高い技術を誇り、さまざまな産業基盤を担っています。一方で残念なことに、昨今では多くの技術で他国に追い抜かれていっている事も事実です。そんな中で、今日本にある強みを途絶えさせてはいけないという使命感もあるからこそ、日本から世界初の核融合炉実現を目指すHelical Fusionを選びました。
―現在の担当業務を教えてください。
核融合炉に使用する液体金属のベストミックスを見つけることです。
「ブランケット」と呼ばれる、核融合反応で発生したエネルギーを熱に変換してエネルギーとして取り出す役割を持つ重要部品があり、Helical Fusionでは独自設計に基づいて液体金属を循環させる仕組みを開発しています。ブランケットは、エネルギーの取り出しに加えて燃料の増殖や核融合炉全体の保護といった役割も持つため、液体金属そのもの物性だけでなく、他の材料との相性などさまざまな側面から最適解を考える必要があります。
―難しそうですね、、!具体的にはどうやって最適な配合を見つけるのですか?
シミュレーションと実験を組み合わせて進めます。
ある材料がどんな特徴を持っていて、他の材料と組み合わせるとどうなるか、コンピューターを使ったシミュレーションで予測し、当たりをつけます。その上で、実際に金属の配合・溶解・循環などを行う実験を行って、思い通りになっているか確認、それをフィードバックして次の配合を検討する、といった作業の繰り返しです。
ちょうど入社直前に、岐阜県にある核融合科学研究所内のHelical Fusion専用スペースに実験のための装置「GALOP」*が設置されたので、液体金属の循環についても実験も進めています。
*GALOP: Helical Fusion独自の液体金属ブランケットシステムの要素を実証するために、助川電気工業と開発した実験装置。GAs driven Liquid-metal OPeration の略。
―学生時代に学んだことは現在の仕事にどう活きていますか?
高専では核融合を扱っていたので、全般的に馴染みのある分野ではあります。
実は、高専から直近の博士課程まで一貫して、データサイエンスなどの情報技術を扱うことは共通していて、大学院で身につけたシミュレーション、機械学習の知識やそれらの実験への応用は、液体金属の配合最適化という仕事にも活きているし、Helical Fusionの他の業務にも幅広く応用が効くと思っています。
中でも、材料研究では化学的な知識も求められるので、自分の知識を活かしつつ楽しめていて、私にとっては一番面白い仕事じゃないかと思ってます。特に、データサイエンスをハードウェアや材料開発など、ものづくりに活用したいと常々考えていたので、ある意味最高の環境です。
―普段はどんなふうに仕事をしているのでしょうか。
主にリモート勤務で、自宅からDiscordという社内コミュニケーションツール(SlackやTeamsのようなもの)のチャット機能や、Zoom会議で使ってコミュニケーションを取っています。
担当する液体金属の配合最適化の分野は、発案者でもあるCTOの宮澤さん、安全設計や材料のシミュレーションや安全設計全般をリードするチーフリサーチャーの中村さんと一緒に検討を進めています。
―入社する前と後で、ギャップを感じたことはありますか?
研究開発を重視したスタートアップとはいえ、やはり会社なので、基本は細かく決められたタスクをスケジュールどおりにこなしていくのではないかと想像していました。でも実際は大きな裁量を与えてもらっていて、自由な雰囲気で、それは嬉しいギャップでしたね。
特に感じているのは、若手の意見や新しい提案をすごく尊重してくれる点です。いわゆる新人研修が何ヶ月も続く、というスタイルではないかもしれませんが、その代わりに、早い段階から色々な仕事を任せてもらえて、実践を通して学ぶことを大切にしている印象です。
ただ、決して一人で放置されるわけではないんです。R&D部はその道のプロフェッショナルばかりですし、分からないことがあれば、いつでも気軽に質問できます。知識面でのサポートは驚くほど手厚いですね。また、事務手続きなんかについても不明点は気軽に相談できる環境です。だから、安心して『やりながら覚える』ことができる環境ですし、それが結果的にスタートアップならではの成長スピードに繋がっているんだと実感しています。
自分から『こんなことに挑戦してみたい』とアイデアを提案することも大歓迎という文化なので、主体的に色々な経験を積みたい、早く成長したいという方には、本当に面白いし、やりがいのある環境だと思います。私自身、この風通しの良さと、挑戦を温かくサポートしてくれる雰囲気がとても合っています。
ー前向きで素敵ですね!そんな筑間さんの原動力はなんなのでしょう?
もともと、趣味としても絵を描いたり、クリエイティブなことが好きですね。コアな価値観として、他の人がやれない、自分にしかできないことがやりたいと思っています。
―最後に、未来のHelical Fusionの仲間にメッセージをお願いします!
今まで見たことないものを実現することにワクワクするなら、Helical Fusionでの仕事も楽しめると思います。特にR&D分野は、自分で仕事を作るつもりで考えながら仕事に臨んでみたい人に合っていると思います。