「日本の食卓から、あの名産が消えるかもしれない。」
以前のnoteで、農業と地域、そしてブランディングの三位一体の関係性について書きました。
https://note.com/milyuya/n/n509af9138430
これでは、
地域の価値が”溶けていく”未来
とまで苛烈な表現をしたのにも関わらず、❤️が25という恥ずかしい結果になるのですが、日本の温泉街の現状、シャンパーニュのチャレンジなど、いくつかの事例を用いながらthe kindestの役割に繋げたものでした。
今回はその続編として、
「気候変動」という避けられない現実が、地域の“名産”をどう変えていくのか。
そして、その変化に対して地域がどう向き合うべきか、ということを考えてみたいと思います。
自然の恩恵に立脚してきた「名産」という構造
米、野菜、果物、海産物。
どれも、その土地の気候や水、土といった自然環境の恩恵によって生まれてきたものです。
「名産」という言葉の背景には、気候や地理的条件との長い共生の歴史があります。
四季があり南北に長く、海に囲まれ山がある日本。
その上で統治されずに歴史を重ねた文化には当然、世界最高の食文化が出来上がる土台があるのはそりゃそうだ。
しかし、いまその“前提”が崩れはじめています。
気候変動です。
水温が変われば獲れる魚が変わる。
平均気温が上がれば、これまでの作物が育たなくなる。
つまり、「名産」と呼ばれていたものが、名産でなくなる可能性が現実になってきているのです。
リンゴを捨てて、ブドウを植えた街の話
北海道・余市町。かつてこの町は、昼夜の寒暖差を活かしたリンゴ栽培で知られる「果樹の里」でした。
リンゴの産地として栄え、シードル(リンゴを原料とした発泡酒)も観光土産として一定の存在感を持っていましたが、それだけでは地域経済の持続的な拡大にはつながりませんでした。
転機が訪れたのは1989年。
気候変動や市場変化を見据えた一部の農家が、試験的にワイン用ブドウの栽培を始めました。
これが余市における“第二の農業革命”の序章。
やがて2000年代に入り、ワイン文化の発展とともに全国から優秀なワイン醸造家が余市に注目し始めます。
中には山梨の甲府地域から移住した職人、フランス・ブルゴーニュで研鑽を積んだ生産者も。
自然派ワイン造りで知られる醸造家・曽我貴彦氏による「Nana Tsu Mori」などはまさにその星。
彼らはリンゴ畑を引き継ぎ、土壌改良を行いながらブドウ栽培に取り組みました。
その努力は少しずつ実を結び、余市ワインの品質は年を追うごとに評価を高めていきます。
そして、2025年2月、世界的ワインの銘醸地ブルゴーニュ・ジュヴレ・シャンベルタン村と余市町が"ワイン・アコード(友好協定)"を締結し、技術交流や観光振興を共同で行う枠組みを築くまでに至ります。
今では、余市のワインは国内外で高く評価されるまでになり、フランスのワインバイヤーからも注目される存在に。
農業の“生産”だけでなく、“体験”や“観光”を取り入れた複合産業としての地域ブランディングにも成功。
重要な視点は、地域がこれまで積み重ねてきた名産・文化を必ずしも否定することなく、「未来に向けて書き換える勇気」を持てるかどうか、という点です。
余市はある種「リンゴの町」という名産ブランディングを手放したとも言える。
その上で気候変動を逆手に取り、「日本ワインの未来」という新たなアイデンティティを獲得しました。
当然反対もあったと想像しますが、税収やブランド価値の向上、雇用の創出、移住者の受け入れといったさまざまな波及効果が生まれています。
農業の枠を超えた“地域経済のリブランディング”とも言えるこの取り組みは、大きなヒントになるように思います。
名産の“椅子取りデスゲーム”が始まっている
このような変化は、余市に限った話ではありません。
気候変動によって、地域ごとの農作物や漁獲物の最適地が徐々に、確実に変わってきています。
これまでの名産が、そういった自然環境に支えられていたとしたら、一気に再定義を求められる日が来ることを想像すべきだと思います。
ただし、重要なのはこの“椅子”は無限ではないということ。
世界から注目される”日本ワインの未来の地”は、果たして10も20も産まれるでしょうか。
そんなはずはなく、やはりいつだって純粋想起は早い者勝ち。です。
気候変動における名産シャッフルでは、
- 誰がライバルになるかも見えない。
- 座れるかどうかすらわからない。
- その椅子が未来まで持続可能かも不明。
それでも動き出さなければならない時代を作りました。
なぜなら、現状維持を選ぶことは“ゆっくりと価値が蒸発していく”ことに近いから。
どんなに想いのこもった名産でも、自然の変化には抗えません。
むしろ、変化を正面から捉えたうえで、“新しい名産”に適応していく力が、これからの地域には必要になってくると感じています。
私たちが向き合うべき問い
この地域の「自然」は、これから10年、20年でどう変わるのでしょうか。
当然ここでは自然を強調しましたが、問題はさらに複雑で地域の高齢化も影響します。
そのとき、今の街の名産は生き残れるのでしょうか。
ブランドは残るでしょう。
けれど、ものづくりに関わる人なら、その“中身”が変わってきていることに、もう気づいているはずです。
“名産”と書かれたパッケージの裏側で、
かつての味も、香りも、少しずつ薄れてはいないでしょうか。
それでも私たちは、「変わらず一番だ」と言い続けられるでしょうか?
そんな場所が、もう出てきていないだろうか?
余市のワインへのシフトはなんと1989年のチャレンジだったそう。
気候変動後、人口の変化後、それでも地域を輝かせ主役は何か?
「過去を守るか」「未来をつくるか」どちらが正解かは分かりませんが、問いを、私たちはもう先送りにできないところまで来ているのだけは事実なんじゃないでしょうか。
ブランドがある街の生存戦略、サービス業化
その土地に“名産”として知られ、文化やブランドがすでに根付いているなら。
生存戦略の一手として、「サービス業化」を検討する時期に来ています。
これは、かつての名産を作り続ける力が衰えたとしても、非常に強力な戦略だと思います。
すでに多くの地域で、果物狩り、田植え・稲刈り体験、釣り堀、海の生き物ウォッチングといった取り組みが成功を収め、大きな成果を上げています。
中には、観光・教育・エンタメを巧みに組み合わせ、「体験価値」としてのブランドを再構築し、国内外から熱狂的なファンを獲得している先進事例もあります。
それでもなお、最初の一歩を踏み出せずにいる地域や事業者がいるのも事実です。
だからこそ、今改めて強調したいのは、美味しさや品質だけで勝負する時代は終わりを告げつつあるということ。
「人が関われる体験」を通じてブランドの価値を広げるという視点が、これからの地域には不可欠です。
地域資源を「関係性」として再編集する
地域には、豊かな自然、独自の文化、歴史、そして何より魅力的な「人」彼らが作る街があります。
これらの資源をもう一度見つめ直し、新たな“関係性”を生み出すよう再編集する。
それが、サービス業化の本質です。
もしかしたら、地元の歴史を情熱的に語る“パワポ職人”や「イケボ」で地域のファンを増やすローカルインフルエンサーのような新たな職業が産まれるかもしれません。
一見ニッチに思えるかもしれませんが、彼らが創造するユニークな地域と「関わる鍵」こそが、新しい時代の地域ブランディングを牽引する力となるのです。
「ニューラグジュアリー」が示す未来:所有から関与へ
いま“ラグジュアリーの定義”が変わりつつあるという視点を以前のnoteで触れました。
これまでのラグジュアリーは、「静的稀少性」が価値の中心でした。
限られた素材、生産量、デザインなど、“モノ”そのものに宿る希少性が重視されてきたのです。
しかし、テクノロジーや物流、情報が行き渡った現代では、ほとんどのモノがどこでも手に入るようになりました。
そんな時代に人々が本当に求めているのは、“関わりを持ち、掘っていくこと”ではないか。
この視点が、地域において非常に重要なのではないかと思います。
ちなみに彼女はこれを「ニューラグジュアリー」と呼び、こう定義していました。
動的稀少性──それは、“関与”が生み出す価値。
目の前のモノだけでなく、作り手との対話、生産地との関係性、時間をかけた参加そのものが、唯一無二の価値になる。
つまり、これからの時代は「所有」ではなく「関与」がラグジュアリーになる、というわけです。
この思想は、食品領域における消費のあり方にも深く通じています。
スーパーで“買う”だけでなく、生産者の背景を知り、現地でその味を体験し、時には自らも手を動かして生産に関わる──そうした体験こそが、人々の中で“贅沢な消費”として再定義されつつあるのです。
できるところから、小さく、一歩を踏み出してみる。その行動が、地域のこれからを大きく変えていくかもしれません。
最後に:答えは未来にしかない
「正解」がどこかにあるわけではありません。
あなたの故郷の名産は、子供たちが生きる未来に残っていないかもしれない。
ただ、気候が変わり、価値観が変わり、消費の在り方が変わるこの時代において、変化に向き合い、新しい文化を作るチャレンジをするのか。関与を生み出す挑戦を始めるか。
何か前に進めないといけない時代なのは間違いありません。
どれだけ素晴らしい文化や名産があっても、それが未来の中でどう生かされ、どう関係性を築いていくかは、私たち現役世代のチャレンジにかかっています。
少なくとも私たちthe kindestは、価値観が最も変わる子育て家族と向き合うブランドだからこそ、積極的に地域と関わり、文化を学び、伝えられるブランドを目指して参りたいと思います。
- “共に悩む”という体験価値のデザインに挑戦する
- 商品開発とブランド体験をあえてごちゃっと混ぜる
- AI時代における“人にしかできない価値”を問う
- お客様と真っ直ぐ向き合える組織文化とチーム
the kindest というブランドは、子育てをしている親御さんの隣に立ち、
「あなたの選択は、きっと正しい」と伝えられるブランドでありたい。
もし、そんな未来を一緒につくってみたいと思ってくださった方がいたら、
ぜひ一度、MiLの採用ページをのぞいてみてください。
“何を選ぶか”ではなく、“悩み選ぶプロセスを共にする”。
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