「家族の有無や関係の良し悪しを問わず、その人らしく生き、その人らしく死を迎えられる」
それがケアびーの目指す最終像。
その価値観が生まれた背景、そしてケアびー誕生までのストーリーを紐解きます。
––– 死の概念への関心、それを事業として考え出したきっかけは何ですか?
前述したYahoo! 時代の新規事業コンペで葬儀事業を提案したのが最初です。
祖父が寝たきり状態になったことがきっかけで、いろんなインプットをした際に「より良い最期」について興味を持つようにもなりました。
スペインでは、1階で家族や友人とパーティーをしてから2階で安楽死を遂げる葬儀があると知って衝撃を受け、日本でも実現できないかと、NHKドキュメンタリー「彼女は安楽死を選んだ」の撮影にスイスまで直撃もしました。
しかし安楽死のご支援自体は日本では難しく断念。
次に尊厳死の概念を知り、リビングウィル(事前指示)サイトを作ろうと動いていました。
そうやって未知の世界観に導かれて行動するほど、私は “より良い最期” そのものに関心があります。
––– 検討されていたそれぞれの事業に共通している思いはあるのでしょうか?
周りを良くしたいという思いですね。
「『その人が生きていてよかった』は IT で作れる」と信じています。
死に方そのものはどうにもできないですが、ケアびーに例えば「あの子は良い孫だった」と一言でも音声が残されていれば、遺された人はハッピーじゃないですか。
終末期自体は情報がクローズドで、まだまだ IT が介入することによって良い結果となりうる業界だと思っています。
迷走期を経て、ようやく形に
iPad を使いこなすスーパー祖母と、寝たきりの祖父。そのギャップを埋めたい、祖母のようなスキルを何とか広めたい。でも方法が分からなかった。
そこで3ヶ月間介護施設に住み込んで、高齢者の実態を学ぶことにしました。実際に介護ベッドで寝て過ごしていました。
住み込みを経て、デジタルを扱える高齢者はそういないと分かったんです。
- 「アイコンが分からない」
- 「スタンプの意味が分からない」
など高齢者の IT リテラシーはバラバラで、一元的な IT 支援は難しいと痛感しました。
高齢者1人ひとりが、サービスに合わせて学習する必要性がある一般的な教育型のサービスではなく、パーソナルスマホ教室が受けられるようなものが必要だと思い「ケアびーサポーター付きタブレット」を考案しました。それがケアびーの第一号です。
そうやって実際に使っていただいて、サポーター付きではなく自動で動くようにしようなどと改良を続け、サービスの重きを変えながら今のケアびーに変遷しています。
これからも認知症や寝たきりなどといった、多くの老化現象にアプローチして改善をしていきたいと思っています。
––– 今後に向けて、いつまでにどんな状態を目指しますか?
直近の目標は MRR(月次経常収益) 1,000 万円。固定サブスクだけで年商 1 億円を目指します。
現在は「家族関係は強いが、親の老化でコミュニケーション手段を失った」層に焦点を当て、ケアびー を展開中ですが
2030 年には 3人に1人に身寄りがなくなると言われる中、ケアびーの在り方も変化必至だと考えています。
今後は「自分の生活もあるので、家族(親)にたくさんリソースを割くことはできないけども、元気に生活をしていてほしい」という人に向けたプロダクトもリリースするために現在準備を進めています。
数で言えばこのケースが圧倒的に多いことが見込まれており、私自身もまさにそうだからです。
会社として掲げる「75 歳を迎えたらケアびー」、そして「3人に1人が身寄りがない社会」に向けて、2031 年までに新しい世界観を構築します。
その頃には「老化しても利用できる最期のデバイス=ケアびー」とイメージされる状態を目指したいです。