会社が従業員に対して何を求めているのかを明確化し、組織の成長や個人の成長を促進する「評価制度」。ユウマペイントでは2022年の7月より評価制度の改定を順次進めており、2023年の7月から本運用を開始する予定です。
今回は改定に至った経緯やどのような改定を行ったのか、どのような改定プロセスを辿ったのか、ユウマペイント役員の佐々木さんに詳しくお話を伺いしました。
佐々木 亜沙美 / 役員・採用責任者
高校時代からアルバイトとして働いていたエステサロンに入社後、代表の佐々木との結婚、出産を経て、2008年7月会社設立当初からユウマペイントにジョイン。人事・経営企画をはじめ、財務や労務など幅広い業務を担当している。
評価しづらい項目を省き、従業員の能力で評価ができるように
ーー今回は評価制度の改定に関して伺えたらと思います。まず評価制度を改定しようと思われた背景から教えてください。
これまでの評価制度は創業2年目に作成したもので、評価しづらい項目があったというのが改定に至った大きな理由です。例えば「経営理念を理解し実行しているか」「お客様に誠実に対応しているか」など非常に抽象的な項目もあり、公平な評価がしづらかったんです。
また社会人なら当たり前に行うことも評価項目に入れていました。「挨拶をする」「お客様との約束を守る」など、全員が出来ていて当たり前の項目まで評価制度に組み込んでいるのはどうなのかなとずっと疑念を抱いていたんです。
このような背景から改定を進めています。
ーー具体的にはどのような改定をされているんでしょうか?
簡単に言えば、評価しづらい人格面に関する項目と、全員が守るべき会社のルールのような当たり前に実行すべき項目の2つを省き、スキル面だけの項目で評価制度を作り直しています。以前まではこの3つがごちゃ混ぜに入っていました。
ーーより評価基準をシンプルに、わかりやすくしたということ。
そうですね。またユウマペイントで考えている理想の人材を定めて、そこから逆算して評価制度を改定しています。
私たちの組織における理想の人材は「徳と才を兼ね備えた真のリーダー」です。徳とは人格、才とは能力のことを表します。優れた人格と卓越した能力を持ち、リーダーシップを発揮できる人材を育成して、最終的には挑戦と協力の文化を組織に醸成したい。そのために必要となる評価項目だけを定めています。
評価制度で「才」を、カルチャー施策で「徳」を養う
ーーお話を伺っていると、今回の評価制度の改定では「才」の部分を重視され、「徳」の部分は省かれたように感じます。この理由を教えてください。
おっしゃる通り、今回改定した評価制度では「才」の部分のみを評価する形にしています。なぜなら先程述べたように「徳」の部分は抽象的で、正当に評価がしづらいからです。
また「才」と「徳」には相関関係があり、能力を磨いていくことで、徳の部分も必然的に磨かれるだろうという考えもあります。特にレイヤーが高くなってきて、マネジメントをするような立場になった場合。マネジメント能力を磨くことは人格を磨くことにもつながると思うんです。スキルだけでは部下はついてこないので。
そのため曖昧で、わかりづらい「徳」の部分を評価制度に組み込まず、明確で、わかりやすい「才」の部分だけを評価制度に組み込んでおけば、最終的には「徳と才を兼ね備えた真のリーダー」を育成できると考えました。
ーー「才」の評価が高ければ、自ずと「徳」の評価も高いという判断をするということですよね。
おっしゃる通りです。「才」だけの評価項目を定めましたが、実質、特にマネジメント層は「徳」の部分が備わってないと「才」の評価項目も満たせないと思っています。例えば店長であれば「店舗売上」が30%、「人材育成」が20%のような評価制度になっているので、個人の結果だけを伸ばしていても高い評価は得られないんですよね。
また評価制度に「徳」の部分は入れていませんが、カルチャー施策を実施しています。例えば、経営方針書を作成し、社員に共有、ディスカッションを行っています。
ーー具体的にはどのようなことをディスカッションしていくんですか?
経営方針書は、ビジョンや創業の精神、人材育成の方針、理想の品質の商品などについて書かれています。それを読みながら「安心で安全な暮らしの創造とはどういう意味なのか?」「理想の品質の商品を作り上げるにはどうすればいいのか」とグループディスカッションを行います。
経営方針書に載っている言葉を一人ひとりがどういうふうに捉え、どういう行動をしていくべきなのかを考えてもらう機会を作ることで、人格の成長を促していけたらなと考えています。今後も、四半期に一度行われる全社会議と月に一度行われる部署長の会議の両方で実施をしていく予定です。
あと部署長と社員とで毎月面談をしてもらったり、 社員に自分が掲げてる目標を1週間に1回振り返る週報を書いてもらったりといったことも考えています。
グループディスカッションの様子
「部署長と共に評価制度の改定を」組織全体のことを考えらえる視座の高い人材に
ーーそのようなカルチャー施策で「徳」の部分を養っていこうと考えていると。今回の評価制度の改定でこだわったポイントはどこになりますか?
評価制度の改定に部署長も一緒に参加してもらうことにはこだわりました。前の評価制度は社員に答えてもらったアンケートや相談内容を参考にして、私と社長の2人で決めていたんです。
しかしそれだと、現場と私たちでギャップが生まれていることも多々あって。「社長は社員にこういうことを求めている。だけど現場でいま必要とされるのはこういうことだ」みたいに。
実際、評価制度を運用するのは部署長です。社員たちが働く姿を私たち経営陣よりも間近で見ていますし、直接フィードバックすることも多い。運用する人たちが評価制度をきちんと理解し、納得していないと、社内全体に浸透することは難しいだろうなと考え、改定にも参加してもらいました。
あとこれは副次的な効果かもしれませんが、部署長に評価制度を一緒に考えもらうことで、「徳」の部分の成長にもつながればいいなと。組織をどうすればより良くできるのかという高い視座で物事を考えられるようになってほしいという思いもありました。
ーーボトムアップのような形で改定を進めていかれているわけですね。苦労した点もあるのではないでしょうか?
項目を「会社のルール」「人格面」「スキル面」に分けていくことに苦労しましたね。それぞれで認識にズレがあったので。例えば、「ポジティブな発言をする」という項目を会社のルールとして捉える人もいれば、人格面、スキル面だと捉える人もいて。そういった認識の齟齬をなくすのに時間がかかりました。
ーー評価制度の改定はいつ頃から考えていらっしゃったんでしょうか?
決算月が6月なので、新しい期が始まる2022年の7月から「今年は評価制度を変えよう」と決めていましたね。実際に改定に向けて動き出したのは9月ぐらいからで、周知会を挟んで、年明けから試験運用を始めています。2023年の7月から本運用の予定です。
ーー周知した際、社員からはどのような反応がありましたか?
部署ごとでばらつきがありましたね。営業メンバーからは「どんなことを求められているのかがわかって、寄り道せずに済みそうだ」という声がありましたが、施工管理やバックオフィスのメンバーからは「求められていることはわかったけれど、もう少し具体的にしてほしい」という反応がありました。というのも、営業職に比べて、施工管理やバックオフィスの業務は目標を数値化するのが難しいからです。
そのため、施工管理やバックオフィスメンバーの評価制度に関してはもらった意見をもとに改善して、再度試験運用を行っています。
ーーフィードバックはありつつも、どちらかというと前向きに捉えている方が多いと。
そうですね。ネガティブに捉え、反対意見を出すような人はいませんでした。その要因として考えられるのは、評価制度に対して変更したい項目があれば随時提案できるようにしていることです。
提案なので社長が承認を出さないと通らないですし、提案できるのは部署長のみになりますが、部署や現場の動きに合わせて、その都度評価制度の項目の変更を役員陣に提案できるようにしています。そのようにある程度変更できる幅を持たせているので、反対意見はでなかったのかなと。
また半年評価、1年査定だったものを、3ヶ月評価、6ヶ月査定に変えた点も良かったと思っています。3ヶ月に1回評価があって、半年に一回役職が変わったり、給料が上下したりするので、社員としてはモチベーションが上がりやすいのかなと。評価や査定の期間が短くなったことで、日々の仕事への取り組み方を振り返る機会も増えるので、組織の成長にもつながるのではと考えています。
「守・破・離」で個人の成長と組織の成長の実現する
ーー評価制度を改定することで、社員にどのような変化があればいいと思われていますか?
評価基準がよりわかりやすくなるので、自責思考で働く社員が増えればいいなと思っています。これまでは曖昧な項目もあったため、他責にできる部分もありました。評価されないのは、周りがいけないんだという捉え方もできたわけです。
評価制度を改定することで、そのような言い訳はしにくくなると思います。上手くいかないことに対して自分に責任があると捉えれば、自分はどう変わるべきか、どういう行動が必要かを考えるきっかけになると思うので、個人の成長にも組織の成長にもつながるのではないかなと。
ーー評価制度以外の部分で、どのようなことに今後取り組んでいきたいと考えていらっしゃいますか?
仕組み作りと属人化の促進です。「守・破・離」という言葉がありますよね。仕組みづくりは「守」の部分です。具体的にはマニュアルを整備したいと考えています。
属人化は「破・離」の部分です。業務のほとんどをマニュアル化したとしても、社員には自分の個性をきちんと発揮してもらいたい。例えば電話対応のときに、以前ユウマペイントに関わってくださったお客様からであれば「お客様、大変お久しぶりですね」といったマニュアルにない一言が言える人であってほしいんです。
社長はそのことを「芸で攻める」と言っていますが、そのような属人化を促進するような研修プログラムも実施していきたいと思っています。
ーー今回改定された評価制度の内容は「守」の強化でもありますよね。
そうですね。まずは会社に求められていることをしっかりと行える人材を育てていきたいと思っています。「徳と才を兼ね備えた真のリーダー」で言えば、「才」は「守」であり、「徳」は「破・離」と捉えることもできますね。
会社に求められることはきっちりと守りつつも、各々の人間性を十分に発揮し、周りから尊敬されるような人格者になってもらいたい。そういう人たちが所属していれば、自ずと組織も成長していくと思います。