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日本全国で居住者がいないまま放置された家屋が増え続けている「空き家問題」は深刻な社会課題になっています。Triiku(トリイク)は、空き家をはじめとした「訳あり物件」の買取・再生・販売事業を手がける不動産テック企業。DXとデジタルマーケティングを駆使し、社会課題の解決に取り組んでいます。今回は、同社代表・池上航生に、事業に込めた想いやこれからの展望について聞きました。
目次
ITとコンサルティングで培った起業家としての原点
売主の笑顔が教えてくれた「挑むべき使命」
使命に生きる──Triikuが目指す未来
ITとコンサルティングで培った起業家としての原点
――創業前のキャリアや経験も含めて自己紹介をお願いします。
幼少期からサッカーに打ち込んできました。高校時代は「全国優勝」を目指す厳しい環境で日々練習に励み、インターハイにも出場しました。ただ、「プロを目指していたか」というとそうではありません。サッカー以外にも面白いことがこの世にはたくさんあるのではないかと思い、卒業後は別の道を選ぶことにしました。
大学は、経営システム工学科に進みました。経営理論だけでなく、システムを設計・分析するためのプログラミングやデータサイエンスなど、将来役立つ技術を学べると考えたからです。学生生活は充実していましたが、在学中に出会ったマッチングサービスの創業者との縁が、大きな転機となりました。事業の面白さに惹かれ、次第にのめり込み、最終的には大学を中退してIT業界に飛び込みました。
そのマッチングサービスは、飲み会やパーティーなどで場を盛り上げる人を探したり、特技を披露して参加したい人をマッチングさせるプラットフォームでした。私はその開発・運営に携わり、約2年間の経験を積んだのち独立し、実行支援型コンサルティング事業をスタート。戦略や計画を提案するだけでなく、クライアントと二人三脚で実行まで支援し、ECサービスやCtoCサービスなど幅広い領域でアプリやプラットフォームの立ち上げに携わりました。
こうした経験を通じて、2024年8月に株式会社Triikuを設立しました。
売主の笑顔が教えてくれた「挑むべき使命」
――Triikuを立ち上げた経緯を教えてください。
マッチングサービスの運営に関わっていた当時、不動産業の経営者と交流する機会がありました。業界の深い内情を知るうちに、多くの人が手に負えないと考える空き家などの「訳あり物件」は、社会的な課題であると同時に、その解決を通じて大きな価値を生み出す可能性を秘めていると確信しました。
多くの不動産会社は、手間やリスク、そして収益性の低さから、こうした物件を敬遠しがちです。しかし、その裏には空き家問題に直面し、助けを必要としている多くの人々がいます。「困っている人を救い、社会に貢献したい」という強い思いが私の原動力となりました。単なる慈善活動ではなく、社会課題を解決しながら事業としても成立させるにはどうすればよいか。その答えが、私がコンサルティング事業で培ったDXのノウハウでした。徹底的な業務効率化を進め、オペレーション基盤を整備し、担当者一人あたりの月間対応件数を増やすことで、他社が敬遠する物件でも収益をあげられる独自のビジネスモデルを構築できると確信しました。
――そのように高い理想を掲げて創業したTriikuですが、現在までにターニングポイントはありましたか。
忘れがたい出来事があります。ある売主さまと契約を結んだときのことです。その木造住宅は築50年を超え、親族が孤独死して発見された事故物件でした。地元の業者からは軒並み買取を断られており、売主さまは思い出の詰まった実家をどうすることもできず、途方に暮れていたのです。
私たちが買取を決めたとき、売主さまは深々と頭を下げて「本当にありがとうございます」と感謝してくださいました。単に家が売れた喜びだけでなく、長年抱えていた心の重荷から解放され、思い出の家を新しい買い手に引き継げたことに安堵されたのだと思います。その瞬間、目の前の困っている人を助け、心から喜んでもらえるこの事業に、大きな意義と使命感を感じました。「この仕事は本当に素晴らしい」「本気でこの事業に打ち込もう」と決意できたこの出来事こそ、私にとって最大のターニングポイントです。
使命に生きる──Triikuが目指す未来
――その経験が、「ビジネスで社会貢献を成し遂げたい」という信念を揺るぎないものにしたのですね。
そうです。もちろん、事業として成果をあげることは大切です。しかし、それは会社を持続させるために欠かせない要素に過ぎません。私が本当に目指しているのは、この会社を単なるビジネスの枠を超え、社会にとってかけがえのない存在に成長させることです。空き家問題という社会課題に、Triikuが先頭に立って挑み、日本を、そして人々の暮らしをもっと明るく変えていきたい。その情熱と使命感こそが、私を突き動かすすべてなのです。この出来事は、「社会貢献と収益の両立」という信念を改めて確信する大きな契機となりました。
――では、5年後・10年後にTriikuがどんな存在になっていたいか。展望をお聞かせください。
5年後には、「空き家の相談といえばTriiku」と真っ先に思い浮かべてもらえる存在として、業界で確固たる地位を築きます。そして、10年後には、単なる一企業を超え、空き家問題の解決を支える社会インフラの役割を担います。
空き家問題は、その規模の大きさと複雑さゆえに、国や自治体の協力なしには解決が難しいのが現実です。だからこそ私たちは、業界で揺るぎない信頼を積み重ね、国や自治体と連携しながら、空き家問題解決のための社会インフラを築いていきたいと考えています。
そして最終的には、「空き家ゼロ」を実現し、令和を代表する会社へと成長させたいと思います。