冨田酒造では、より自然な酒造り、そして古くから引き継がれてきた伝統的な技術の継承を目指し、様々な取組をしています。
無農薬米による酒造り
2010年6月、無農薬栽培の酒米・玉栄の田植えから、冨田酒造と地元篤農家による、無農薬米の酒造りが始まりました。栽培には、随分手間暇がかかりますが、雑草に負けない苗作りや土壌環境など毎年試行錯誤をしながら挑戦しています。余分なものは加えず、その土地を極力ストレートに表現したいと思っています。無農薬栽培米は、減農薬栽培米と比べると、できあがったお酒の味わいに、独特の優しさと柔らかさがあり、手応えを感じています。無農薬栽培米で造ったお酒は「無有(むう)」というシリーズにて商品化しており、現在、お米違いや造り違いで4シリーズを展開しています。
生酛造り
天然の乳酸菌の働きを利用し、酛擦り(もとすり)という作業を行う伝統的な製法「生酛造り」。より蔵の個性の出るその製法は、明治時代まで主流でしたが、今ではごく一部でしか行われないようになりました。冨田酒造においても、いつまで生酛造りをしていたか詳しい資料は残っておらず、かなり長い間途切れていたと思われます。伝統製法による当蔵らしい味わいを求め、2018年より生酛造りを復活させました。生酛造りで造ったお酒は、独特の味幅やコクを持ちながらもどこか凛とした新たな味わいとなりました。
木桶仕込
日本酒の長い歴史を支えてきた木桶仕込み。木桶は、酒桶としての耐用年数が過ぎると、醤油や味噌作りに再利用され、そこには循環が一つのカタチとして存在していました。しかし、戦後になると琺瑯やステンレスタンクが台頭し、昭和中期には、木桶のほどんとが姿を消しました。最後の木桶職人と呼ばれる、大阪の職人さんの引退前にと、以前より検討していた木桶の導入を決め、2020年に初めて木桶を導入しました。木桶に棲みつく様々な菌の働きも加え、当蔵ならではの味わいを醸す酒造りをしていきたいと思います。