こんにちは。Stapleのプロダクト制作「staple studio」のメンバーであり、社内のデザインチーム「編集室」の担当もしている伴 恵里香です。普段は家具・什器、OSE(Operation Supply Equipment)の設計デザインからセレクト、また客室に置く案内等の制作物や香りのアイテムなどのプロダクト開発にも携わっています。
伴 恵里香 | ERIKA BAN
埼玉県さいたま市育ち。
staple studio
staple studioは、Stapleの中にあるデザイナーやシェフの小さなクリエイティブ・チーム。場づくりのプロセスにおいて、設計や食、アートといったクリエイティブの領域を横断するだけでなく、ファイナンス、事業計画、そして運営に至るまで、時間軸を縦断するように関わり続けることを大切にしています。単なる空間の設計にとどまらず、その場が文化として根付き、育ち、継承されていくための構造を統合的にデザインすること。そうした、文化的持続性を伴う場づくりを目指しています。
staple studioによる作品は「staple studio products」として発信されていきます。
Stapleとの出会い
スポーツ一家で生まれ育ち、弟妹たちは柔道で全国大会常連。母もインストラクターとして活動をしていて、家族団欒の時間も休日も話題の中心はいつもスポーツでした。そんな環境の中にありながら、私だけはスポーツではなく自分だけの世界に没頭するようになり、好きを突き詰める幼少期を過ごしました。
親戚夫婦が営むアトリエ教室に9歳の頃から通い、デッサンや油絵、木工、七宝焼、陶芸など様々な創作に取り組んでいました。課題があるわけではなく、その時の自分が取り組みたいことを選び、自由に正解のない表現を追い求める。そんな時間が今でも私の癒しであり、もっとも脳が動く瞬間だと思います。
23歳のとき、それまで経験してきた価値基準や思考のプロセス以外のものに触れる必要性を強く感じ、新卒の時に貯めたお金で短期留学へいくことに。言語以外に自分が体現できる分野で感性やキャリアを再定義する近道になるのではと考え、ロンドン芸術大学のChelsea College of Artsの短期コースに通いました。
各国から集まった生徒たちは、同じ題材でもまったく違う捉え方や画材で表現していて、「百人百様」とはこのことだと心から感じたのを覚えています。ロンドンという街全体も、自分らしさを肯定してくれるような空気があり、心の荷がすっと下りた気がしました。
また他のヨーロッパ諸国にも足をのばし、建築やアートをとにかく見て歩きました。その旅で宿泊したホテルや店舗の内装デザイン、OSE、グラフィック、そして何よりスタッフのサービス……すべての要素が組み合わさる良い場作りに感動し、「空間づくり」の道に進むと決めたのです。帰国後は、専門学校に通いなおし建築設備メーカーでの経験を経て内装デザイン事務所に飛び込みました。
半年のインターン期間を経て入社し、デザインやプレゼンテーションの最前線を任せていただき、アイデアが認められ実際にプロダクトや空間が形になったときの嬉しさは今も鮮明に覚えています。
什器や家具、照明をデザインする際はできるだけ実寸で検証し、工作をするかのようにモックアップを作るようにしています。
たくさんの専門家、空間の意味を構成するマテリアルの考え方、静止画ではなく「景色」として空間を捉え、人が居てはじめて完成する空間づくりをすること。この時期に学んだことが今の自分のアウトプットにダイレクトにつながっています。
ただ、体調を崩し一度立ち止まることに。そのとき当時「K5」の支配人・加奈子さんと出会い、Stapleの仕事の内容を具体的に伺いました。まずは岡山のA&AのOSEを手伝わないかという有り難いお誘いから、Stapleに加わりました。
入社後はいくつかの部署を経験させてもらい、今年の4月ごろからデザイン室(設計)と編集室という両軸でクリエイティブ全般に携わっています。
C&Cの各客室のファブリックは街で見つけた景色や地形をもとに、岡山市の街へ意識を向けたデザイン。ご近所に住む作家:浅山さんに岡山県産含む植物で草木染めと縫製をしていただき形になりました。
SOIL Nihonbashi Hotelのために設計したハンギングソファ。天井に設けた天蓋と連続する構成要素としてデザインしました。宿泊の際はぜひご覧ください!
こんな1日を過ごしています
Stapleの拠点に置くOSEをホテルのコンセプトに合わせて企画・制作したり、シャンプーなど香りの開発、カーテンの染色や縫製バランスを寸法に合わせて職人さんとやりとりしたり、家具や什器のデザインからPM業務、 発注、納品まで幅広く行っています。
そのために職人さんを探したり、サンプルチェックを重ねたり。そうして完成したプロダクトの発信もすべく、SNSやWebの構築まわりにも関わっています。
photo by Hayate Tanaka
SOIL Nihonbashi Hotelに向けてデザイン/開発した様々なアイテム
photo by Kyouhei Yamamoto
描きたい未来のかたち
st p.(Staple studio products)は、Stapleの本体でもある「観光」をきっかけに、一時的なホテル空間でのものづくりや関わりにとどまらず、場ありきのプロダクトとして成り立たせていくことで、継続的にその地域経済を循環させていくような活動を目指しています。
staple design studio philosophy
食でいうと、地域の農家さんとつながって、その土地で採れた野菜をいただく。そんな自然の循環のように、プロダクトでも持続可能な関わり方をしていきたいです。
そして、私自身の役割は、作り手さんの活動や商材の情緒的価値として社会に届けること(=ブランディング)。なによりも大切にしたいのは、「作り手ファースト」の姿勢です。
もちろん、経済的な結果も大切ですが、同時にものづくりという“手仕事”に焦点を当て作り手の想いや背景を表現していきたい。地域が持つ特性や魅力を知ってもらうことで、文化そのものが財産であるということを伝えていきたいと思っています。
だからこそ、全国に場(拠点)とチームがいるということは、Stapleのいちばんの強みです。ホテルという拠点を、地域の魅力を発信するハブと捉え、ショールームイベントや撮影、展示などに活用していく。そうした取り組みをオウンドメディアとして展開し、リアルとデジタルを横断したアウトプットにつなげていく必要があると感じています。
地域の作り手さんを巻き込みながら、いつも木工家具をひとつひとつ丁寧に仕上げてくださる松川さん。
こんな人、仲間になりましょう
クリエイティブは、正解がないものだと思っています。でも自分の中で「成功だった」と思える瞬間があって、それは作る過程でどれだけ作り手さんと同じ方向を向いて、一緒にひとつのものを作ろうと思ってもらえたか。その“熱量”で決まると感じています。
これは不思議なもので、ある瞬間パチっとピースがはまって、自分の想像を超えてくる。そしてそれがチーム全体から愛されたときに「つくって良かった」と実感するんです。だからこそ、常に作り手さんへの敬意を忘れずに、長く関係性を築けるよう心がけています。
私自身、至らないところも多く作り手さんにはご迷惑をおかけしていると思います。でも、できるだけ過度な緊張感や一方的な圧力がかからないように、余白やバランスを大事にしています。Stapleでのプロダクト開発は、ただの「ものづくり」ではありません。建築空間や企画チームが生み出した全体のコンセプト、地域特性、料理、そしてオペレーションスタッフたちまで、あらゆる要素を一つの体験として統合していく、“調整剤”のような存在だと感じています。 物質的なものなので、ひとつの要素だけを引き算することはできません。
たとえば、ゲストがチェックインして部屋の扉を開けた瞬間。夕飯前のひととき、夜寝る前。そんなふとした時間に、どんな感覚を持ってくれるだろうか。どんな景色や空気をその人が体験してくれるのか。
そういった瞬間を「言葉のない語り手=ストーリーテラー」として、どう表現するかを考える。ビジュアル先行ではなく、想像力を働かせることを大切にしています。
その「想像すること」の中には、パース(図面やビジュアル)だけでは検証しきれない、大事な感覚があると思っています。
そして何より、会社全体のメンバーや、現場で日々運営しているスタッフたちが、語れるような家具やプロダクトのストーリーをつくること。それが私の一番の責任だと感じています。
地域もコンセプトも異なるさまざまなホテルや拠点をつくっているからこそ、固定概念にとらわれない、プロダクトの在り方があっていい。そんな自由さや広がりを、開発チームや運営メンバーと一緒に、楽しみながら切磋琢磨し考えてくれる方と出会えたら嬉しいです!