現在、日本企業が直面しているのが、人口減少に伴う生産性の低下という社会課題です。この状況を解決する鍵としてAIへの期待が高まっている一方、AIを導入し、定着させるまでには高い障壁が存在しています。
株式会社キャナルAIは、その導入の壁をハンズオンの伴走支援で巻き取り、企業の挑戦を後押しする組織です。
今回は代表の中村 陸海さんに、起業に至るまでのストーリーから事業の独自性、そして未来の「AI人閥」構想について伺いました。起業家の血を受け継ぎ、「世界に負けない日本を築く」という壮大なビジョンを掲げる背景にせまります。
中村 陸海 / 代表取締役CEO
大阪府大阪市出身。関西学院大学卒業後、新卒でアドバンテック株式会社に入社。財務・資金調達業務に従事し、数十億円規模のプロジェクトを担当。その後、AIの可能性と社会的なニーズの高まりを確信し、2024年7月に株式会社キャナルAIを創業。
「みんなで泣ける会社を」父の背中とチームで達成する喜びが繋いだ起業への決意
ーー起業を志した原体験を教えてください。
経営者である父の影響が大きいです。
高い目標を掲げ働き、家では絶対に弱音を吐かない姿を見ていて、幼い頃から経営者への強い憧れを持っていました。毎年の家族会では各自の目標を確認し合うような、珍しい家族でしたね(笑)。でも、そうした環境で育ったおかげで、「経営者になるためには、どうしたらいいのか」という問いを常に持つようになりました。
ーーお父様が経営者なのですね。大学時代はどう過ごしましたか?
大学時代ウィンドサーフィン部の活動に全力を注いでいました。
主将を務めていたのですが、みんなで目標を持ってお互いに高め合い、チーム全体で結果を出すことの喜びに気づいた経験になりましたね。
過酷な環境での練習でめげそうな時も、先輩後輩問わず励まし合う文化に救われていました。またこのチームでは勝てないと思った時に、自分が部員一人ひとりと1on1を行って本気を引き出した結果、全国優勝者を出すまでに成長したんです。
この全員で目標に向かって達成するという経験は、現在のキャナルAIの組織創りにも強く繋がっています。
ーー大学卒業後はすぐ起業されたのですか?
いえ、大学卒業後は、経営者になるためにお金の流れを学ぼうと、再生可能エネルギーや半導体事業の財務や資金調達の仕事に就きました。1990年代には世界の中でも日本が席巻していた領域です。ここに早い段階で目をつけ事業展開していたのが当時の代表で、その先見の明の凄さに惹かれて入社しました。
実は新卒では入れない部門だったのですが、「将来の起業のためにも、ここで財務を学びたい」と社長に直談判して配属いただきました。そんな尊敬できる経営者のもとで、数十億規模のお金を動かす仕事ができたことは、本当に大きな財産となりました。
一方で銀行との兼ね合いで投資できる範囲が限定されたり、本来日本が強かった半導体領域が海外に負け始めている現実を見た時に、強い危機感と自分自身で事業を創っていく側に回りたいという思いが強くなりました。
ーー働く中でも起業家への想いが徐々に強くなったのですね。
そうですね。そこから踏ん切りをつけられない日々を過ごしたのですが、起業への決意が確固たるものになった瞬間がありました。
ある知人の会社が上場した時のことです。
上場セレモニーに参加したのですが、長年働いてきた方はもちろん、入社して半年のメンバーまでもが涙を流して喜んでいたんです。チームで協力しながらお互いを高め合い、最終的にそれが社会に認められる大きな結果に結びついた。その姿を見て私自身も大号泣してしまい、「自分もこんな風に、本気で誰かのために挑み、最後はみんなで喜びの涙を流せるような会社を創りたい」と強く思ったんです。
過去感じてきた「事業を創りたい」「チームで達成して喜びを分かち合いたい」「日本をなんとかしたい」という想いの全てが結びついた瞬間でした。
迷走の果てに出会ったAI事業との出会い
ーーそこから、どのようにして現在のAI事業とビジョンへと辿り着いたのでしょうか?
起業することに腹は決まったものの、最初は「何の事業をするか」という明確なプランはありませんでした。
働きながら友人とお香の販売に挑戦して在庫の山を抱えたり、アメリカの飲食店におしぼりウォーマーを売り込もうとして全く相手にされなかったりと、試行錯誤の連続でした。
そんな中、AIを学び合うコミュニティに参加し、毎晩遅くまで猛勉強を始めたんです。前職でもAIを使って事業計画や資料作成を大幅に効率化し、社内でも推進役として評価していただいていました。
同時に、周囲の経営者の方々から「うちにもAIを教えてほしい」というお声を多くいただくようになり、市場で求められていると確信して、AIで事業を作っていくこと決めました。
ーー市場として波もきていたのですね。ビジョンである「世界に負けない日本を築く」にどう繋がるのですか?
正直、明確なロジックがあるわけではありません(笑)。
でも、それくらいの使命感を抱いています。
現在自分が25歳なのですが、この年代がこれからの日本を背負うと本気で思っています。せっかく起業して仲間と進むなら、ワクワクしながら、良いことを成し遂げたい。
そこで「勝手に日本を背負ってしまえばいい」と考えたんです。日本のため、企業のため、そして横にいる人のためになることをやる。前職で抱いていた日本の衰退という危機感を払拭し、「世界に負けない日本を築く」。そんな使命感がビジョンの根幹になりました。
ちなみに社名である「キャナル」は琵琶湖疏水のストーリーからきています。
滋賀に琵琶湖疏水という運河があるのですが、歴史を調べると、山を切り崩す十分な技術がなかった時代に当時の若者たちが必死に切り拓いたものなんですね。私たちも同じように、今はない技術や仕組みを切り拓き、AIイノベーションを世界へつなぐ運河になりたいという想いを込めています。
決まったパッケージはない。顧客のためにフルコミットできるコンサルの面白さ
ーーAI研修やコンサルティングを行う企業が増える中、キャナルAIならではの強みはどこにあるのでしょうか?
私たちの事業の強みは、単なるAIツールの使い方研修で終わらせないことです。数日間ツールを教えて終わる一般的な研修会社とは異なり、私たちは3ヶ月から1年以上の長期でクライアントに入り込みます。
AIを導入して生産性を上げるためには、経営層の戦略設計から入り込み、現場の業務フローをどう変えるかまで踏み込む必要があります。さらに、AIで業務が効率化されて残業代が減り、社員が損をするといった現場の矛盾を防ぐため、AI活用を正しく評価する人事制度の構築にまで踏み込んでいます。
だからこそ、研修はあくまで企業を変革するための手段と位置づけ、お客様がAIを使いこなし、自走できるようになるまで伴走する。このAI顧問としての関係性の深さが私たちの強みです。
ーーこの事業に携わる面白さや、得られるやりがいについて教えてください。
自分のアイデアやAIの知見をフル活用して、お客様の企業や部署に最も合った活用方法を自由にカスタマイズして提案できることです。
前金でしっかりとフィーをいただいているので、その予算内であればわざわざ無理なアップセルをする必要もなく、目の前のお客様の課題解決だけに深くコミットできます。
現在、「本当はお客様の課題に合わせて別のアプローチをしたいのに、決められたパッケージ商材しか提案できない」とモヤモヤしている方にとって、そうした制限がない当社の環境は非常に面白いと思います。
点ではなく面でお客様を支援し、副次的にAIとビジネス変革のスキルを身につけることで、自らの市場価値を圧倒的に高められるのがこの仕事の大きなやりがいですね。
挫折を知るからこそ人に寄り添える。根底にある「強くて優しい」文化
ーーキャナルAIが大切にしている「強くて優しい」というカルチャーについて教えてください。
私たちが大切にしている「優しさ」というのは、過去に何かしらうまくいかなかった経験や挫折を味わっているからこそ持てる、他者への思慮性のことです。
実は私自身も、高校時代に強豪ラグビー部と進学のための勉強を両立しようと自分を追い込みすぎた結果、拒食症になってしまった経験があります。限界を迎えそうになった時、監督から食べられなくてもいいじゃないかと声をかけてもらい、心がすっと軽くなって克服できたんです。
そうした経験があるからこそ、今壁にぶつかってもがいている人の痛みがわかるようになりました。うちのメンバーもそれぞれに過去の苦労や葛藤を乗り越えてきた経験を持っています。
ーーその優しさは、実際のクライアント支援においてどのように活きていますか?
現場でAI導入に戸惑ったり、変化に抵抗を感じている方々の気持ちを理解し、ただツールを押し付けるのではなく、まずはクライアントの課題や痛みに深く寄り添うことができるという点で活きています。
しかし、ただ話を聞いて寄り添うだけで終わらないのが私たちの「強さ」です。
クライアントが抱える課題に対して、私たちはAI研修や導入コンサルティングを通じて具体的な解決策を提示し、現状を打破していきます。どんな困難があっても、目の前のお客様のために何ができるかを考え抜き、成果にコミットする。
この「思慮性」と「実行力」の両輪があるからこそ、お客様の変革を後押しする伴走支援ができているのだと思います。
自社をAIの実験場に。お互いを高め合う大人の部活感
ーー社内はどのような雰囲気で仕事を進めているのでしょうか?
社内の雰囲気は、同じ目的に向かって助け合い、お互いを高め合う「部活」のようなイメージです。
仕事の時間は成果にこだわって厳しく取り組みますが、一歩仕事から離れればみんなフラットで仲が良い。競争ではなく、困っているメンバーがいれば見捨てずに引き上げるという「強くて優しい」文化がここにも根付いています。
また、週に1回、メンバーだけでなくその家族や友人も参加できる「全社AI勉強会」を開催しています。
営業の商談録音データをAIに分析させてトップ営業のノウハウを抽出したり、日報のデータをクロス分析してマネジメントに活かしたりと、自社内でAIを活用した実践的な取り組みを共有し合い、チーム全体でノウハウを高めています。
ーーAIの知見がない状態から入社しても大丈夫ですか?
最初からAIの知識がなくても問題ありません。
実際に、入社時はITツールの操作に不慣れだったメンバーも、AIを活用した業務効率化などを実践する中で、今ではトップクラスの活躍を見せてくれています。
ここで大切にしているスタンスは、「まずは自分で触ってみて、次に繋げていく」ということです。
最初から完璧に使いこなす必要はなく、実際の業務でAIを使って成功体験を積むことが第一歩です。私自身も隣でやってみせて伴走しますし、メンバーが新しいツールで困っていたら、みんなで一緒になって調べて解決策を見つけていきます。そうやって共に試行錯誤しながら成長できる仕組みがあります。
正解のない環境で「AI人閥」を創る。未来の仲間へのメッセージ
ーー今後の事業展開についてはどのようにお考えですか?
事業の展開については、いつでもピボットする前提で動いています。
私たちがやっていることは「AI」という軸は絶対にブラしませんが、研修やITコンサル事業に固執しているわけではありません。例えば、AIの技術を活用して自社で不動産業を立ち上げ、最適化して利益を出していくなど、柔軟に事業を変化させていく可能性は大いにあります。
ーー長期的な世界観や、最終的な目標について教えてください。
私たちが最終的に目指しているのは「AI人閥」の創出です。
5年後には300人規模の会社にし、自社だけでなくお客様も含めて圧倒的にAIを使いこなせる、財閥ならぬ「AI人閥」を創り上げたいと考えています。
AIの力を使えば、少数のチームでも最大のレバレッジを効かせることができます。そうしてAIを使いこなせる人材を増やしていくことで、地方にいる人にも平等にチャンスが生まれ、それぞれが自分たちなりの方法で課題解決できるようになります。
そうした人たちが日本からユニコーン企業を次々と生み出していく。それが結果として、失われた技術大国を取り戻し、「世界に負けない日本を築く」というビジョンの実現に直結すると確信しています。
ーー最後に、どのような仲間を求めているかメッセージをお願いします。
正解が決まっていないカオスな環境だからこそ、チームで協力し、お互いを高め合いながら事業を一緒に創り上げていける方とお会いしたいです。
現在の環境で成長の鈍化に焦りを感じている方や、決められた枠組みでの提案にモヤモヤしている方にとって、うちはこれ以上ないくらい夢中になれる環境だと思います。
困難な壁があっても、仲間を思いやる優しさと、最後までやり抜く強さを持って挑んでいく。AIという波にただ乗るだけでなく、自ら波を起こし、私たちと一緒にみんなで泣けるような熱い未来を創っていきたいです。