こんにちは、渡邊龍一です。
今回のnoteでは、「なぜNazunaでは店舗イベントを現場主導で行っているのか?」という問いに対して、私自身の考えと実践をお伝えしたいと思います。
キーワードは「現場がブランドをつくる」。ロゴでも広告でもなく、Nazunaのブランドは“人”から生まれると、私は信じています。
「この宿、好きかも」と思わせるのはやっぱり“人”
どれだけ美しい町家をリノベーションしても、どれだけ洗練された家具を配置しても、宿の印象を決定づけるのはやっぱり“人”です。
「この宿って、こういう人たちがいる場所だったよね」
「またあの人に会いたくて来ちゃった」
そう思ってもらえるかどうかが、ブランドの質を決める。
もしも、Nazunaのスタッフがその旅の記憶の中にほんの少しでも登場しているのなら。私たちがスモールラグジュアリーという旅館を丁寧に営んできた意味が、そこにあると感じます。
なぜ現場にイベントの裁量を任せるのか
Nazunaでは、季節ごとにイベントを開催しています。
たとえば梅雨には、スタッフとお客様が一緒に“てるてる坊主”を作る体験。
8月に控えている「世界ビールデー」では、京都各地のクラフトビールを集めて振る舞うイベントなど。
これらはすべて、現場スタッフの発案によるものです。
本社が「今月は〇〇イベントをやります」と決めるのではなく、
「今月のテーマは〇〇。詳細は各店舗で考えてください」と伝えるだけ。
あとは、役職や経験年数に関係なく「やってみたい」と手を挙げたスタッフが中心となって企画します。
なぜそんなやり方をしているか。
それは、現場にこそ、お客様の“リアルな声”が集まっているからです。
「今の時期ならこんなお客様が多い」
「最近〇〇が話題になっている」
そういった肌感覚は、現場に立っていないと絶対にわかりません。
だから、マーケティングの専門家ではなくてもいい。
むしろ、日々接客している人こそ、最適なアイデアを持っているんです。
現場との対話が生んだ、新しいカタチ
もちろん、最初からうまくいったわけではありません。
以前は本社でイベントをすべて決めていました。私自身がアイデアを出し、スケジュールも決めて、現場に「やってください」と指示する。
でもこのやり方では、準備期間が短かったり、現場との認識がずれていたり。「こうした方がもっとお客様に喜んでいただけるはず」といった現場からの率直な意見に、ハッとさせられる場面もありました。
そこから、年間スケジュールを事前に立てて、テーマだけ共有し、あとは現場に任せるスタイルに転換しました。2025年はこれを初めて全店舗で徹底し、PRや撮影も含めて本社と連携しながら、よりクオリティの高い企画が実現できるようになりました。
そして、もうひとつ大きな変化がありました。
イベントを通じて、コミュニケーション量が圧倒的に増えたことです。
どんな写真を撮るか、どう発信するか、現場の意図をどう伝えるか――毎回のやりとりを重ねる中で、お互いの理解が少しずつ深まり、「共につくる」感覚が確かに芽生えてきたと感じます。
一人で完結させる方が効率的な場面もあるかもしれません。
でも、現場が参画し、対話を重ねながら企画が育っていくプロセスそのものが、Nazunaというブランドを内側から強くしてくれていると思うのです。
主体性が「おせっかい」を生む
Nazunaのサービス精神の根幹には、「おせっかい」という言葉があります。
ホスピタリティとの違いは、“やってあげたいからやる”という主体性があるかどうか。
「私がやりたいからやる」――この“私”を主語にできる人が増えれば増えるほど、Nazunaのブランドは育っていくと思っています。
お客様から「ありがとう」と手紙やメールをいただくことも多くなり、スタッフたちにとってもそれが何よりのやりがいになっています。
自分が考えたイベントで、お客様が笑顔になる。その体験が、次の「やってみよう」を生んでいくのです。
「紹介で来ました」が12%を超えた理由
最近、全体の約12%のお客様が「友人からの紹介で来ました」と回答してくださっています。これは本当にありがたい数字です。
きっと、「Nazunaっていいよ」「スタッフがあったかかったよ」という声が、自然と人から人へ伝わっているのだと思います。
私たちは“おせっかいで人と人をつなぐ”という理念を掲げていますが、それが現実として形になり始めている――そんな実感があります。
ブランドとは「私」から始まる
ブランドとは一律なものではなく、お客様とのコミュニケーションの中で育まれるものです。
現場で働く一人ひとりが、「私がおせっかいしたい」という思いを持ち、それを行動に移す。
その積み重ねが、「どの施設に行ってもNazunaらしいよね」という共通イメージにつながっているのではないかと考えています。
私たちが目指しているのは、「人と人がつながる宿泊体験」。
その実現のためには、現場の力を信じ、任せ、対話を重ねていくことが何より大切です。
これからも「現場がブランドをつくる」というスタンスを大切にしながら、スタッフ一人ひとりの“私”から生まれるNazunaのブランドを、共につくり続けていきたいと思っています。