町家をリノベーションしたユニークな高級旅館を手がける、ホテルベンチャーのNazuna。
ミシュランガイドを獲得した『Nazuna 京都 二条城』や、日経新聞「専門家が選ぶ全国古民家町屋ランキング2018」で8位を受賞した『季楽 京都 姉小路』など、宿泊業でさまざまな宿を営む反面、業界のベンチャーとして社内の改革にも積極的に取り組んできました。
今回は、その一環として行われた給与テーブルの全公開について、Nazuna取締役会長の大門真悟さんにお話をうかがいました。
大門真悟/OKADO SHINGO
滋賀県出身。関西大学システム理工学部3年の時に、1年間休学し単身ベトナムへ渡り「居酒屋やんちゃ」の立ち上げを経験。卒業後は商社へ就職し、その後2014年にインバウンドの旅行事業を開始。2018年に現在の株式会社Nazuna(以下Nazuna)を設立し、現在5つの旅館と8つの一棟貸しの宿を運営。
「Nazunaらしさ」を失なわずに会社を成長させたい
ーーまず、なぜ人事や評価制度を改革しようと考えたのでしょうか?
従業員の成長速度をもっとあげたいと考えたからです。それから、このまま事業拡大をするとNazunaらしさが失われるかもしれないという心配もありました。
そこでもともとの人事制度を半年かけて見直して、従業員の成長につながるNazunaらしい仕組みを考えました。
ーーどんな評価制度なのか教えてください。
まず、管理職やホテル支配人を目指したい人向けの「ジェネラリストキャリア」と、お客様の満足度をアップさせることに特化した「おせっかい志向キャリア」の2つを設けました。
ジェネラリストキャリアの評価基準表。全7段階にわけられている。
おせっかい志向キャリアの評価基準表。こちらも同じく7段階の評価となっている。
※等級1、等級2は評価項目のすべてをクリアすると昇給
※等級3以下は評価項目の1つを満たせば昇給(次の等級には残り評価項目をすべて満たし、1つ階級上の評価項目を1つクリアする必要あり)
ーーキャリアの評価軸を2つにわけたのはなぜでしょうか?
社員がやりたいことと、会社が社員に求めることをすり合わせたかったというのが一番です。
宿泊業で働く方は、接客が好きな方が多いんですね。でも、会社としては社員に「いつか管理職になって欲しい」という希望があります。
接客と管理職の仕事はまったく違うので、そのままだと社員と会社の希望にズレが起きてしまう。それをなくすために、キャリアそのものを分けることにしました。
ただ、働くなかで違うキャリアに興味を持つ社員もいると思います。そのため、半期ごとにキャリアチェンジができる仕組みも整えました。
ーー自分にあわせた働き方が選べるんですね!
どちらの評価軸にも「おせっかい追求」というユニークな項目がありますが、これはどういう評価基準なのでしょうか?
Nazunaは「おせっかい革命」をミッションに掲げています。
おせっかいというのは「誰かを喜ばせてあげたい」「自分がしてもらったら嬉しいことを他の人にもしたい」という気持ちです。
昔はこういった「おせっかい」が珍しくなかったのですが、時代が進むにつれて「迷惑かもしれない」と考え、他人と関わりを避ける人が増えました。
Nazunaは、そうした「おせっかい」を積極的に行っていきたいと考えています。この私達の根底にある「おせっかい」の理念を、社内の評価制度にもきちんと反映したいと考えました。
ーービジネス上だけでなく、社内からミッションを達成していこうという考えの現れなんですね!
社員が安心して働けるよう給与テーブルを全公開
ーー今回の人事改革では、「給与テーブルをすべて公開」という宿泊業界初のチャレンジもされています。
給与や目指すべきステップを明らかにした方が、社員が働きがいを持って安心して仕事に取り組めると考えたんです。
公開された役割表。
公開された給与テーブル。役割ごとの給与を一目で知ることが出来る。
※表は2023年8月時点のもの。
※給与は基本給、家賃手当(3万円)、賞与(基本給の2ヶ月分を半年毎に一律支給)の3種からなる
※賞与は原則一律支給。ただし売上により変動する可能性あり。
ーー社員の目標になるだけでなく、転職のときの参考にもしやすいですね。
Nazunaはもともと、この業界では珍しくホテル経験者と未経験者が半々で働く企業なんですね。
そのおかげで、ホテル業界と他業界のいいところを合わせた、Nazuna独自の色を生み出すことができています。
その強みをもっと活かすためにも、業界の未経験者でも安心して応募できる給与テーブルの公開が必要だと考えました。
ーー業界未経験の方は、どういう業界からどういう理由で来られる方が多いのでしょうか?
英語を使う職種から転職されてくる方が多いです。具体的には、航空系・販売系・ウェディング系などですね。
志望理由としては「自分がしたい接客・サービスをやりたい」という考えの方が多いです。
ーー様々なバックグラウンドの方が「Nazunaらしさ」を作り上げているんですね!
人事改革を行ったことで会社が社員により責任を持つようになった
ーー宿泊業界としては大胆な取り組みに見えますが、今回の給与や評価制度の公開にあたって、社内から不安や反発はありませんでしたか?
不安や反発の声はゼロでした。
発表後に社内で匿名のアンケートを取ったのですが、ほとんどの従業員から前向きな意見をもらえましたね。
ーー人事改革を行った結果、いまのところ感じている効果があれば教えてください。
今回の改革では、「3年後の理想のNazuna」も社内外に公表しました。その結果、社員と会社の目指すところがはっきりしたのはすごくよかったです。
人事改革で発表されたNazunaの目指す2026年の理想の姿。
はっきりした目標を公開したことで、達成のために会社が社員の成長により責任を持つようになりました。今回の人事改革で、社内のコミュニケーションは円滑になったと感じています。
ーーすでによい効果が出ているんですね! 最後に、Nazunaで働くことに興味がある方へのメッセージがあれば教えてください。
Nazunaは、常に会社ではなく「あなた」が主語です。
もちろん業務領域でできる幅に限りはありますが、自分を主語にできる方はぜひNazunaの一員として、同じ道をともに歩んでいただきたいと考えています。
また、私たちは宿泊業界の革命児になろうと思っています。
常に新しいことにチャレンジし、従業員全員がワクワク・ドキドキ・イキイキしながら働けるNazunaを一緒に作っていければと思います。
ーー本日はありがとうございました!
<ミッション>
おせっかい革命
私たちは"おせっかい”を通じて、仲間の幸せとお客様の感動を追求し、人と人との繋がりの素晴らしさを後継します。
<ビジョン:2026年の姿>
“旅館業界における革命集団”
3つの革命シナリオと事業領域
1.働きがいの革命
2.温泉旅館事業の拡大
3.顧客感動の追求
<バリュー:Nazunaの提供する価値・大切な価値観>
私たちは全てのお客様におせっかいな体験を届けます。
私たちは他のあらゆる宿泊業者と異なり、より革新的でなければならない。
私たちが提供する施設、商品は感動の伴う体験価値に重きを置きます。
私たちは自分がしてほしいことを人にしていきます。
私たちはワクワクすることを選択します。
私たちは共に取り組み、共に進みます。