「月1回、担当営業との面談があります」
SESの求人票を10社分並べれば、たぶん8社にはこの一文が書いてある。
だから、この言葉はもうほとんど何も伝えていない。
エンジニアが本当に知りたいのは、その1時間で実際に何が話されているのかのほうだ。報告会なのか、雑談なのか、それとも――。
今回は、実際に現場のエンジニアと毎月向き合っている営業2名に、対談形式で聞きにくいことまで含めて聞いてみた。
[話し手]
児玉|インフラ領域を中心に、40代以上のベテランエンジニアを多く担当。
渡井|担当は落ち着いたベテラン層から同年代まで。全員と対面で会う。
何人のエンジニアを担当しているのか聞かせてください
渡井:一人あたり8名くらいです。
渡井:この人数は意識的にやっている部分なんです。一人のエンジニアに、一人の営業が割ける時間をめちゃくちゃ長くしなきゃいけないという考え方でやっているので、担当人数は意図的に絞っています。
これは正直な感想なんですが、この業界、担当人数はもっと多い会社のほうが普通ですよね。しかも取材の場では「たくさん任されている」感を出したくなるはずなのに、逆に数字を小さく訂正されたのは初めてです。
児玉:そこを盛っても、入ってくれた人が困るだけなので。
面談は「短く済ませる」ものではない
1回の面談、どれくらい時間をかけていますか?
児玉:人によりますが、1時間から、長いと2時間くらいですね。1回の面談で。
長くないですか? 僕の感覚だと、相場は30分から1時間弱くらいなんですけど。
児玉:たしかに、他社さんだとパパッと終わらせて現場のことだけ聞いて終わり、というのが多いと思うので、うちは長いかもしれません。ランチミーティングみたいな形も多いので、ご飯を食べながらだと自然と1時間は超えちゃうんですよね。もちろん現場が忙しい時期は20分で終わることもあるので、そこはまちまちですけど。
渡井:時間を決めて「はい今日は30分です」とやると、たぶん現場の報告で終わるんですよ。それだと面談の意味がないので。
基本は対面ですか?
児玉:基本は対面です。テレワークの方や、地方に住んでいる方、例えば、栃木や秋田の方もいるので、そういう場合はWebですね。
8名を、毎回1〜2時間。単純計算でもかなりの時間ですよね。
児玉:改めて時間で見ると、確かにかけてますね。いろんなことを話しちゃってるので、一つひとつが長いんだと思います。
児玉:「小さな変化を見逃さない」ための積み重ね
面談で気をつけていること、工夫していることを教えてください。
児玉:一番は、ただ聞くだけで終わらせないことですね。本音を話せるような関係、信頼をつくるところをすごく重視しています。形式的なやり取りで終わってしまうと、そもそも面談をやる意味がないと思っていて。だから本音を引き出せるように、そして小さな変化を見逃さないように、というのは常に意識しています。
「本音を引き出す関係をつくる」って、めちゃくちゃ難しくないですか?
児玉:難しいですね(笑)。なので、普段からレスを早くするとか、困っている時には必ず助けるとか、小さな積み重ねでしかないと思っています。会うこと自体も、その積み重ねの一つですし。
たとえば栃木に住んでいる方が、たまに趣味で土曜日に秋葉原まで来ることがあるんですよ。そういう時は自分も土曜に合わせて出て行って、一緒にお店を回ったりしています。自分は趣味の中身はあまり詳しくないんですけど(笑)。
密度がすごいですね。土日も連絡が来て、それも返している感じですか?
児玉:基本は出るようにしていますね。営業なので。もちろん出られない時もありますけど。
渡井:児玉さんはちょっと特殊だと思います(笑)。でも、そこまでやる人が同じチームにいるというのは、けっこう効いていると思いますね。
渡井:「あなたに会いに来ました」を、隠さない
渡井さんはどんな方を担当されているんですか?
渡井:落ち着いたベテランの方から、自分と同い年より少し上くらいまで、幅広くですね。属性の偏りはあまりないですけど、相性みたいなものはやっぱりあります。
工夫していることはありますか?
渡井:自分は直接会うメンバーしかいないので、言い方はちょっと悪いかもしれないんですけど、「あなたに会いに来ましたよ」を伝わるようにしています。大げさに聞こえるかもしれませんが、「気にしてますよ」というのは、態度で伝えないと伝わらないと思っていて。
あとは正直、仕事の話ばっかりしてもしょうがないじゃないですか。「先週の休みは何してたんですか」とか、仕事以外の話もけっこう聞いています。結果的に、そこから本音が出てくることが多いんですよね。
エンジニア側からしても、「用があるから来た」より「あなたに会いに来た」のほうが、絶対に嬉しいですよね。
児玉:そこは渡井のほうがうまいと思います。自分はどうしても課題解決から入っちゃうタイプなので。
実際、どんな相談が来るのか
正直、「これは参ったな」という相談ってありましたか?
児玉:……「参ったな。」という感じではないのですが、思わず「これはどうしたものかな。」と考えた質問はありました。(笑)
業務や技術の話じゃないところが、けっこう来ますね。介護の話とか、「家を買おうと思っているんですけど」とか。
ケース1:「家を買おうと思っているんですけど」
児玉:その方の場合は、年収に対してこの買い物はどうなのか、という話でした。なので、キャリアプランと、あとはファイナンシャルプランナーみたいな話ですね。お金の流れと資産形成の話をけっこうしました。
それは……自分のキャリアが見えていないと、家って買えないですもんね。
児玉:そうなんです。なので営業的な観点から、「今の君の市場価値はこれくらいで、こっちの方向に行くとこうなる。だからこれくらいの物件なら買っても大丈夫なんじゃないか」と、ロジカルにデータとお金を見せながら話しました。
「相談に乗る」の解像度が違いますね。
渡井:エンジニアって、住宅ローンの審査ひとつ取っても「この先この働き方を続けていいのか」という話になるじゃないですか。そこは営業が答えるべきところだと思います。
ケース2:ご家族の深い悩み
児玉:実は自分が、まさに同じような状況だったんですよ。
ご家族の深い悩みについて相談を受け、自分自身の経験を基に、「うちはこういう風に解決したよ」という実体験をそのままお伝えしました。結果的にその方も、それがきっかけで無事に解決の方向へ進みました。
ご自身の実体験ベースで話せるのは、めちゃくちゃ心強いですね。
児玉:あとは、「今はしんどいと思うけど、うちもその時は本当にきつかった。でも今は普通に笑ってるから、なんとかなるよ」と。そういう話もしましたね。
会社としての意見ではなく、「児玉個人としてはこう思う」「自分だったらこうする」という言い方をするようにしています。踏み込みすぎず、でも本人の気持ちには寄り添う。そこは基準にしていますね。
ケース3:ひと回り近く年上のエンジニアからの、恋愛相談
渡井さんは、これまでで苦労したことはありますか?
渡井:苦労……ではないんですけど、自分にも仕事以外の相談は来ますね。
恋愛相談とか。
恋愛相談。おいくつくらいの方ですか?
渡井:自分より年上の方です。10歳以上……ひと回り近く上ですね。先月、実際にありました。「別れてしまって、どうしたらいいですかね」と。
それ、めちゃくちゃ直近じゃないですか(笑)。なんて声をかけたんですか?
渡井:自分の経験を喋っているだけですよ。年上の方に、大変恐縮なんですけど。「引きずってたら時間がもったいないので、切り替えましょう」と。
男性って、意外と友人にも言いづらかったりしますよね。特に彼女のことを知っている相手だと。
渡井:そうですね。そのあたりのバリアを取っ払って相談してくださったので、こちらも言える範囲で正直に話しました。
児玉:(笑)。恋愛相談は渡井のほうが圧倒的に強いんですよ。自分のところには来ないので。
ケース4:「いつまでSESをやっていればいいんだろう」
渡井:自分のところに来た中でいちばん重かったのは、「いつまでSESを続けるべきなのか。それとも一社のエンジニアとして働くべきなのか」という相談ですね。
あるあるですよね。どう答えたんですか?
渡井:正直ベースで答えるようにしています。
SESのメリットは、ある程度その技術を使えるようになったらプロジェクトを変えられること。変な話、人間関係がどうしても合わないなら、それを理由にプロジェクトを変えることもできる。自分が好ましいと思える職場で働ける可能性が高い。ただ、一つの会社の中でいろんなものが積み上がっていく感覚は得にくいかもしれない。
一社に所属すれば、やりたくないプロジェクトでも業務命令が出れば行くしかないし、基本的にやめることもできない。自分が学びたいことを本当に学べるかどうかも分からない。でも、長年同じメンバーでやっていく中で、人間関係はもっと濃くなるかもしれない。
――という具合に、メリットとデメリットをちゃんと両方伝えた上で、「で、どっちがいいと思う?」と本人に選ばせるんです。「SESがいいよ」とは言わない。
……SESの営業が、SESを勧めないんですか。
渡井:そこで自社に都合のいいことだけ言ったら、たぶん一発でバレます。それに、こっちが誘導して残ってもらっても、結局どこかで無理が出るので。
その方は、今は?
渡井:残ってくれています。結果的に、あれで良かったのかなとは思いますね。
なぜ、そこまで話してもらえるのか
素朴な疑問なんですけど、なぜ営業とエンジニアがそんなにオープンに会話できるんですか? ここまでプライベートを開示してもらえる会社って、そんなに多くないと思うんです。
渡井:理由は2つあると思っています。
1つ目は、「担当人数」です。一人あたりに割く時間を長くしているから、接触の回数と密度が上がって、どんどん打ち解けていける。逆に言うと、20人30人を抱えていたら物理的に無理なんですよ。だから人数を絞るところから設計しています。
2つ目は、性格ですね。内勤のメンバーは全員、基本的に人に興味があるし、人のことを本気で心配する人間なので。
完全に自分の主観ですけど、僕はシンプルに人に興味があるんだと思います。ビジネスライクな関係だと話が広がらないし、単純につまらないなと思ってしまうタイプで。「この人の趣味はなんだろう」「この人のこういう考え方は、自分のこういう場面に活かせそうだな」という興味が、すごく大きい気がします。
元々そういうご性格だったんですか?
渡井:自分は、昔から人の話を聞くのは好きだったかもしれません。どちらかというと、人と話すこと自体が好きなんですよね。だから、相手がどういう人なのかを知りたい、というのは昔からあったと思います。
仕事をするようになってからは、そこに「ちゃんと相手の話を聞く」「一人ひとりに真摯に対応する」という意識がより強くなった感じですね。
適当に対応されたら、自分だったら嫌じゃないですか。「こいつ全然話を聞いてないな」って分かると思うんです。だからこそ、目の前の人にはちゃんと向き合う。自分は、その積み重ねが信頼関係につながっていくんじゃないかと思っています。
児玉:自分は、一人ひとりに真摯に対応している、というのが大きいかもしれません。適当に対応されたら分かるじゃないですか。「こいつ全然話を聞いてないな」って。
プライベートでも同じ感じなんですか?
児玉:同じですね。腹を割って話すというのは、プライベートでも重視しています。友人を連れてきて「どんな人ですか」と聞いても、たぶん同じ答えが返ってくると思います(笑)。
渡井:僕もプライベートは家にいるのが嫌で、外にばっかり出ています。人と会っているので、そこは変わらないですね。
いちばん大きいのは、「聞いた後に動く」こと
児玉:……いま話しながら考えていたんですけど、もう一つ大きい理由があると思います。行動するからじゃないでしょうか。
行動する、というのは…?
児玉:話を聞くこと自体は、誰でもできるんですよ。2時間でも3時間でも、聞くだけなら頑張ればできる。
でもうちの場合、聞いた後に、その営業が必ず内勤に持ち帰るんです。「◯◯さんがこう言っていた」「現場でこういうことがあったらしい」「どうすればいいかな」と、全員の前で共有して、全員で相談して、全員で「じゃあこうしよう」と決めて、実際に動く。
渡井:担当営業一人の判断で止まらないんですよね。だから「担当が動いてくれなかった」がそもそも起きにくい。
児玉:最終的に何かしらの行動は絶対にしているので、「聞くだけで終わらない」から話してくれるのかもしれないなと。
相談しても一方通行だったら、次から相談しないですもんね。
児玉:そうですね。相談したらちゃんと動く。それがセットになっているのが、心を開いてくれている理由なんじゃないかと、個人的には思います。
「技術がわからない営業」であることについて
内勤メンバーの中に、がっつりエンジニア出身の方は?
児玉:ゼロですね。そこは明確な弱点だと思っています。技術的な質問をされると、頑張って調べるし勉強もするんですけど、現場でがっつりやっている方ほどの知識はない。
自分は開発の補助として要件定義に同席したり、お客さんの課題解決で見積もりや工数出しをやった経験はあるので、まったく分からないわけではないです。ただ、「技術で語れる集団です」と胸を張るのは違うなと。
渡井:なので将来的には、現場のエンジニアの方が営業にコンバートする、いわゆる技術営業のようなパターンもありうるかなと思っています。
ただ、今日お話を伺っていて思ったんですが、御社の場合は技術の知識があろうがなかろうが関係なく、人柄と行動で信用されて話してもらえているわけですよね。だとすると、人で選ばれているという事実のほうが強い気がします。
児玉:おっしゃる通りだと思います。
今後、組織が大きくなれば営業も増やしますよね。そのとき、この空気感に合う人ってなかなか希少なんじゃないですか。
渡井:そうですね。人数が増えたら営業も増やす方針ではあるんですが、エンジニアを採用するより営業を採用するほうが基準は高いというか、かなり人を見ています。全く人に興味がない人が入ってきてしまうと、たぶん難しいので。
エンジニアより営業の採用基準が高い、というのは初めて聞きました。
児玉:入ってくれたエンジニアと毎月向き合うのは営業なので。そこが崩れたら全部崩れます。
エンジニアのみなさんへ:「正しい相談の仕方」を教えてください
最後に、これから面談を受ける側になる人に向けて聞いてみた。どういうスタンスで、どんな持ち込み方をしてくれると嬉しいのか。
渡井:正直に伝えてほしいですね。直感的な話をするので、変に嘘をついたり、ごまかしたり、ニュアンスの違うことを言われてしまうと、その後の対応やアクションで先方にも迷惑をかけることになる。直感的に思ったことは、全部そのまま伝えてほしいです。
恥ずかしがらず、後ろめたがらず、素直にぶつかってみる。恋愛相談の実績もありますしね(笑)。
児玉:自分は、本当に小さい悩みをそのまま持ってきてほしいです。「なんかこれ、おかしいな」くらいでいい。ちょっとでも違和感を感じたら相談してほしいですね。小さいうちなら潰せるんですよ。大きくなってから言われても、火を消すのが難しいし、そもそも戻れないところまで来てしまっていることもある。それは本当によくないので。
あとは、「案件に入れただけの営業」ではなく、「一緒にやっていくマネージャー」くらいの認識で、気兼ねなく相談してもらえたら嬉しいです。
渡井:あと、それぞれ得意不得意があるんです。児玉さんは人の話を聞くのがめちゃくちゃ得意だし、僕はたぶん恋愛相談が得意(笑)。だから担当営業だけにとどまらず、「これを相談するならこの人だな」と、いい感じに使い分けてもらえたらいいと思っています。
児玉:そういう意味では、スタンスとしては「営業をどう利用するか」を考えてほしいですね。人によっては、自分はただの「話聞くよおじさん」になることもあるんですよ。ひたすら愚痴を聞く日もあるし、真剣なキャリア相談をされる日もあるし、渡井の恋愛相談の話じゃないですけど、完全に雑談・ガス抜きとして使う人もいる。
あなたにとって都合のいいように使ってください。それがスタンスです。
もちろん「お金貸して」はやめてくださいって感じですけど(笑)。
5人いれば5通りの使い方があって、それに合わせて5パターンで対応する、と。
児玉:そちらが望む形の対応をします。であれば、こちらも対応しやすいので。
この記事を読んでいるエンジニアの方へ
SOKUSHINの月1面談の特徴をまとめてみました。
1|1回の面談は1〜2時間。基本は対面
30分で現場報告を聞いて終わり、ではない。地方在住の方にはWebで、休日に予定が合えば会いに行くことも。
2|相談内容が、仕事の外まで届いている
住宅購入、介護、恋愛、キャリアの岐路。「業務外の話が来る」ことが、関係性の証明になっている。
3|聞いた話は、内勤全員に共有され、全員で動く
担当営業一人の判断で止まらない。「相談したのに何も起きなかった」が構造的に起きにくい。
編集後記
面談での話は家の購入から介護、恋愛相談、キャリアの岐路まで及ぶとのことだった。SESの営業とエンジニアの関係として、それは明らかに一段も二段も踏み込んだ距離感だった。
なぜそこまで話してもらえるのか。答えは、児玉さんの一言に集約されている。
「聞くだけなら誰でもできる。でも、聞いた後に必ず動くんです。」
月1回の面談は、報告会ではない。あなたのキャリアと生活の、月1回の相談窓口です。
もし今、現場のことで小さな違和感を抱えていたり、「このままSESを続けていいのか」と迷っていたりするなら、その話をそのまま持ってきてください。答えを誘導したりはしません。一緒に考えます。
まずは、お話を聞かせてもらえませんか。