メドック出張レポートの最終回は「シャトー・クレール・ミロン」を会場として行われたバロン・フィリップ・グループの試飲会の様子をレポートします。
シャトー・クレール・ミロン会場
クレール・ミロン会場ではバロン・フィリップ・グループの試飲会です。クレール・ミロンのほかに、ダルマイヤック、ムートン=ロッチルド、プティ・ムートンにエール・ダルジャンを味わうことができました。
これまでの試飲から、2022年はポイヤックの多くが品質に恵まれたように思われますが、天候に恵まれたうえ、醸造設備への投資を行い、なによりバロン・フィリップグループの高い醸造技術が加わると、いいワインができるというのは必然というものです。
ワインテイスティング
クレール・ミロン
ダルマイヤック
クレール・ミロンもダルマイヤックもいずれも見事な出来です。
それぞれ豊かな果実味が口内に華やかに広がり、キレイなバランスを保っています。
これに種子までしっかりと熟したらしい、バランスの良いタンニンが加わっています。
また、ダルマイヤックは比較的強い樽を使い、
クレール・ミロンは上品な樽のニュアンスが加わっています。
シャトー・ムートン=ロッチルド
焼きの強い樽香に、凝縮感の強い果実味があり、さらに樽の香りが強めに効いています。
かなりの長期熟成を見越してこのようなスタイルにしているのでしょう。
ただ、樽こそ強めに効いていますが、タンニンは細やかで、バランスのよさが際立っていました。
シャトー・ムートン=ロッチルドといえば
毎年変わるラベルのデザインが人気で、そこに描かれる絵画のコレクションが気になるところ。
販売前は一体どのようなラベルがついているのでしょうか?
答えはテイスティング台の上にありました。
赤字に金色の文字で「ラベルに描かれる絵画は2024年の12月1日に発表となります」という文字の入った仮ラベルが入っていました。
絵画部分のないラヴェルが張られているかと思ったのですが、
その部分に文字が入っていたんですね。
一瞬、これが2024年のラヴェルかとドキっとしてしまいました。
プティ・ムートン
プティ・ムートンは、ダルマイヤックと同じようなやや焼きの深い樽香に、
果実味が広がり、タンニンは多く強さはありながらも収斂性はなく、
比較的若いうちから楽しめそうなバランスです。
シャトー・ピション=ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド
最後は、ポイヤックの重鎮、シャトー・ピション=ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドを訪問。
近年は、シャトー・ピション・バロンの評価の向上が目覚ましいですが、
伝統あるピション・ラランドも負けてはいません。
最新の『ルヴュ・ド・ヴァン・ド・フランス』誌では
二ツ星から三ツ星への昇格を果たし、スーパーセカンドの代表としての面目を取り戻しました。
ワインテイスティング
果実味の凝縮感に程よい樽のニュアンスに、
細やかで柔らかいタンニンは、繊細でエレガントなピション・ラランドのイメージ通りです。
生産エリアの新たな発見
テイスティングの中で、驚きの事実の紹介がありました。
ポイヤック最南端に位置するピション・ラランドが所有する畑の内、
一部の区画は、ポイヤックではなく、サン・ジュリアン=ベイシュヴェルの区画に位置しています。
それにも関わらず、一部のサン・ジュリアン=ベイシュヴェルのワインは
ポイヤックのワインとして生産が認められているとのこと。
土地台帳の行政地図を見比べてみると、サン・ジュリアン=ベイシュヴェルに越境しています。
長い歴史のなかで、行政上の区画が変わったのでしょうか。
法制度の調整の中で、ポイヤック村の村外にありながらAOCポイヤックを名乗れる
例外規定が定められていました。
こうした大変興味深いアネクドートを知ることができるというのも、
こうしたシャトー訪問の醍醐味です。
メドック出張レポ まとめ
ここまでの試飲を終え、
ポイヤックからサンテステーフにかけては果実味のキレイな成熟が感じられました。
普段は評価がやや低調なシャトーであっても、かなり良い出来となったシャトーもあり、
何を飲んでも出来がいいと思えるほどの質的に豊作の年になったのではないでしょうか。
一方でACマルゴーは、酸度の違いから果実の成熟具合まで、
品質のばらつきがやや大きいように思えました。
上述の通り、マルゴーが比較的広いAOCであり、
気候的にとどまらず土壌的差異も大きくなりますので、
これを含めてばらつきがあったのではないでしょうか。
複数年観察していれば、
こうした品質のばらつきももっと細かく考察できるのでしょうけれど、今年はプリムール訪問一年目。興味深い勉強となりました。
素敵なスケジュールを組んでくださったネゴシアンには感謝です。
出張レポート:川崎 大志 / 編集:池田 眞琳