「強火」ではなく「とろ火」で。社長が掲げた、等身大な3つのミッション。
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YTT LINKSが掲げている3つのミッション。
「もっとできる、つながりを深め、日々を面白くする」
会社のミッションといえば、「圧倒的な成長」や「業界を変革する」といった、強火でガンガン進んでいくような熱い言葉をイメージしがちです。
この3つの言葉からも、なんだか「もっと上を目指せ!」と背中を叩かれているような、強いプレッシャーを感じていました。
でも、普段の社長や、社内に流れる空気感は、決してそんな「強火」なものではありません。
このギャップはどこから来ているのか。社長本人に、ミッションに込めた本当の思惑を聞いてみました。
AIに代わられない「いち個人」になるためのスローガン
私「このミッション、初めて見たときは『結構、要求が高いな』と思ったんです」
社長「ああ、そう見えるかもしれないですね。でもこれって、会社を大きくして上場しようぜ! みたいな大文字のミッションじゃないんですよ」
社長によれば、このミッションが生まれた背景には、テレワークが普及した今のエンジニアの働き方に対する、経営者としてのシビアな視点がありました。
社長「コロナ禍で、朝礼から終礼まで誰とも話さずに1日を終えるエンジニアが増えましたよね。でも、ただ言われた通りにコードを書くだけなら、それこそAIのような『替えのきく部品』になってしまう。
だからこそ、マナーや相手を知ろうとする姿勢といった『人間力』がないと、これからは仕事がなくなってしまうという危機感があるんです」
圧倒的な技術力がなくても、「この人にお願いしたいな」「一緒に働きたいな」と思われる人になること。それが、このミッションの根底にある願いでした。
私「なるほど。1つ目の『もっとできる』というのは、技術力だけを指しているわけじゃないんですね」
社長「そうです。実はこれ、最初は『ちょっとできる』という案もあったくらいで。相手が求めているものに対して、少しだけ期待を超える。
エクセルで右上にカーソルを置いておくとか、シートを見やすく色分けするとか、その程度の『ちょっとしたこと』でいいんです。それを続けることで『この人、気が利くな』と思ってもらえる。それが2つ目の『つながり』を生むきっかけになります。
日々が「辛くない状態」を作っていく
そして、話は3つ目のミッションへと移ります。
社長「『日々を面白くする』というのも、会社として新しいことをやっていこう! というビジョンではありません。日曜日の夜に『明日から仕事か……』と憂鬱になるような状態ではなく、個人個人がワークライフバランスを保ち、辛くない状態で、自分なりに『毎日が面白い』と思えることが一番大事だという考えなんです」
「もっとできる」を意識して、相手の期待を少し超える。すると、「この人にお願いしたい」と声がかかるようになり、「つながり」が深まっていく。
そして、つながりを増やした先に、自分自身の仕事や居場所が広がるような面白い変化に繋がっていく。
この3つは独立しているのではなく、ひとつの流れとして繋がっているのだと腑に落ちました。
どんな人と働き、どんな人とは働きたくないか
このミッションを踏まえ、会社として「どんな人と働きたいか」も聞いてみました。
社長「逆に『働きたくない人』から言うと、他人を蹴落としてでも自分が上に上がりたい人や、『私は一切成長したくありません』『挨拶とか無駄なんで』と、最初から周囲をシャットアウトしてしまう人ですね。そういう人は、うちの会社には合わないと思います」
私「では、コミュニケーション能力が高くて、常にポジティブな人がいいんですか?」
社長「いや、シャイでコミュニケーションが苦手でも全然構わないんです。口下手でも、『一緒に組織や自分を良くしていこう』というスタンスを理解して、少しずつでも取り組もうとしてくれる人。そういう人なら大歓迎ですね」
圧倒的なスキルや陽気なキャラクターは求めていない。ただ、自分の周り(つながり)に対して、少しだけ歩み寄る姿勢を持てるかどうか。それがYTT LINKSのカルチャーのようです。
苦しいなら、やらなくていい。ミッションの「ゆるさ」
ただ、いくら自分のためとはいえ、常に「期待を超え続けろ」「人とのつながりを大事にしろ」と言われるのは、少し息苦しく感じる人もいるかもしれません。
私「そういう姿勢が大事なのはわかりますが、全員が最初からできるわけじゃないですよね。これが全部できなきゃダメ、というスタンスなんですか?」
私がそう尋ねると、社長はあっさりと首を横に振りました。
社長「全然そんなことないですよ。全部が全部できなくてもいいし、もし『これをやるのがすごく苦しい』と思うなら、やらなくていいんです」
私「やらなくていいんですか?」
社長「ミッションは絶対のルールじゃありません。あくまで『こういうことを心掛けておくと、社会人として生きやすいよ』『トラブルになりにくいよ』という、道標みたいなものだと思っています。だから、自分に合ったサイズで取り組んでくれればそれでいいんです」
成長を止める「現状維持」はしてほしくないけれど、無理して背伸びしすぎる必要もない。
「全部できたら立派だけど、苦しいならバランスを取ればいい」。そこには、会社としての懐の深さというか、人間らしい「ゆるさ」がありました。
「とろ火」でじっくり、いいものをつくる
インタビューを終えて気づいたのは、社長の思惑は「強火でどんどん進める」ことではなかったということです。
「もっとできる」「つながり」「日々を面白くする」。
この言葉の裏にあったのは、社員を急かして会社の利益を追求するプレッシャーではなく、「とろ火でじっくり煮込んで、『この人と一緒に働きたい』と思われる人を育てていこうね」という、どこまでも社員ファーストな親心でした。
常にギリギリの強火で焦燥感に駆られながら働くのではなく、とろ火の環境で、自分のペースで「この人と働きたい」と思われるエンジニアになっていく。
「圧倒的な成長」という言葉に少し疲れてしまった方や、自分のペースで着実に人間力を高めていきたい方にとって、この「とろ火」の温度感は、とても心地よく響くのではないかと思います。