コミューン株式会社、取締役CTOの山本です。
今回はトップダウン方向からビジョンを多面的に捉えてみたいと思います。
※この記事はコミューン Advent Calendar企画で執筆され、2023年12月20日に公開された記事です。
ビジョンから見る経営
コミューンのビジョンは「あらゆる組織とひとが融け合う未来をつくる」です。そもそもビジョンとはなんぞや、に関しては諸説あります。わたしが解釈するなら「向かうべき壮大な方向性であり、到達点というよりはその方向に向かって企業として勢いや慣性を発揮していくためのもの」です。
したがって各部門がこれを活用できれば企業としてより一貫性がある活動につながり、結果的にブランドイメージや売上につながるということです。逆も然りで、名ばかりのビジョンで実態は「俺が考える最強の開発部門」「わたしが考えた最強の広報」のように各々が悪い意味でボトムアップ的、散発的に活動しているようでは企業として成長は難しくなるでしょう。
厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ。優良企業は企業“哲学”については強烈に中央集権化し、一方現場では“自主性”を尊重するという両面を持ちます。例えば、スリーエムは製品開発においては自由な空気があるものの、会社の基本精神は「過激な宗派の洗脳されきった信者でさえ顔負けだ」(P53)と言われます。
資料: ピーターズ&ウオーターマン 「エクセレント・カンパニー」
上述のように、企業としてのトップダウン方向の(思想的な)まとまり、対して現場のボトムアップ方向の自主性、創意工夫という両面が経営では求められるということです。
ビジョンから見る部門
多くの場合ビジョンは壮大で抽象度が高く、現場で仕事をするメンバーにそのままでは伝わりづらいのです。したがって各部門、各チームで何段階かにわけて解釈し、日々の業務と繋がりを感じるところまでいわば翻訳する必要があります。
典型的な組織図を見てみましょう。
概ねこのような形になると思います。(なおコミューンはここに「事業」軸が加わり実際にはマトリックス型組織の運営に近い)
ところで皆さんは「部門」とはなにか考えたことはあるでしょうか。当たり前すぎて普段は意識しないかもしれませんが、すべての部門にはまず共通の役割があります。「自企業の生存のために動く」という役割です。
ビジョン云々以前に、企業が死んでは元も子もありませんから、これがすべての土台になります。そのために営業であれば売上を生んでいくことで貢献し、マーケティングであればリードを創出することで貢献し、プロダクト(開発)であればものをつくることで貢献する、のです。
そう考えたときに各部門にとってのビジョンとはまさに船乗りにとっての羅針盤、あるいは登山家にとってのシェルパであるべきだとわたしは思います。というより、そうなるようにうまく翻訳をしてあげることが大切だ、と思います。
言い換えれば企業の生存、成長という目的に対して、部門として中期スパンでどうやって活動していくか、あるいはどういう方向へ向かうべきか、のガイドとなることが大切だということです。(そして結果的に社全体の一貫性につながる)
ビジョンから見る技術
最後にもう少し目線を落としてビジョンと技術の関係性について考察します。
開発者という側面から見た場合、ものづくりは
- プロダクト
- 組織(開発プロセス)
- 技術(広義でのアーキテクチャ)
という3要素が三位一体になりはじめて良い方向へ向かっていきます。
昨今のSaaS開発においてはプロダクトに関してはPdM、一方で組織(開発プロセス)と技術(アーキテクチャ)に関してはエンジニアといった役割分担を行うことが多いかと思います。
といっても100-0できっぱり3者が分裂しているわけではなく、下図のように役割をオーバーラップさせたほうが良いプロダクトづくりにつながることは想像にかたくありませんし実際にそうなっている企業がほとんどでしょう。
ここで着目したいのは赤く塗りつぶした技術とビジョンの関係性についてです。というのは、おそらく最も隔たっているからです。プロダクトとビジョンについては、プロダクトビジョンなるものが別途用意されるほど、親密な関係です。組織についても「あらゆる組織と人が融け合う」というのは直接的に組織や人に言及していますからイメージ、翻訳は比較的容易に行えるでしょう。
一方で技術、アーキテクチャはどうでしょうか。ここでいうアーキテクチャとは単なる設計技法の話ではなく「要素と要素間の関係」という広義の話です。インフラアーキテクチャ、アプリケーションアーキテクチャ、あるいはシステムとステークホルダ間の関係を捉えたコンテクストアーキテクチャ、などを包含したものです。
それらとビジョンとの間に直接の繋がりはありません。もちろん例えば「チームの技術力アップを目指すぜ!」と言うのは歓迎ですが、それだけではビジョンとの直接距離は近づきませんよね。とくにCxOレイヤーであればこの困難な領域こそ表現力を高め、言語化や翻訳を行い続けることが大切だと考えています。その素地があれば、リーダー層やメンバー層は自分の日々の業務とビジョンとの繋がりをより考えやすくなるはずです。(そして結果的に社全体の一貫性につながる)
まとめ
偉そうに書きましたが、じつはCTOのポエムをメジャーバージョンアップする際に思考の中心にある柱を今回文章に起こしました。現在のポエムの味は残しつつ、ビジョンの1段階目の翻訳としてこの柱、あるいは全体観を端的にかつ表現力豊かに言葉にしようと奮闘しています。
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